エージェント型AIとは?自律的に「動く」AIの仕組み、活用事例まで解説

エージェント型AIとは?自律的に「動く」AIの仕組み、活用事例まで解説

ChatGPTをはじめとする生成AIの普及により、業務効率化は劇的な進化を遂げました。しかし、従来のチャット型AIは「回答」は得意でも、システム操作や外部連携まで実行するのは難しい場面があります。

そこで注目されるのが、目標に沿って判断し行動する「エージェント型AI(Agentic AI)」です。本記事では、エージェント型AIの定義や仕組み、従来の生成AIとの違い、そして企業における具体的な活用事例や導入のポイントを解説します。

Contents

エージェント型AIとは?

エージェント型AIとは?

エージェント型AIとは、与えられた目標を達成するために、AI自らが「何をすべきか」を判断し、外部ツールやシステムと連携しながら自律的に行動するAIの総称です。

従来のチャット型AIが「ユーザーの問いかけに対してテキストや画像で回答すること」を主眼としているのに対し、エージェント型AIは「目標達成に必要な手順を自ら考え、外部システムと連携して業務プロセスそのものを完結させること」を目的に設計されています。

なお、関連する用語として「AIエージェント(AI Agent)」と「エージェント型AI(Agentic AI)」があり、現在の市場では分けて語られたり、混在したりする場面も見られます。Gartner®は2025年5月のリリース「Gartner、AIエージェントとエージェント型AIに関する見解を発表」では両者を次のように定義しています。

"AIエージェント:デジタルおよびリアルの環境で、状況を知覚し、意思決定を下し、アクションを起こし、目的を達成するためにAI技法を適用する自律的または半自律的なソフトウェア

エージェント型AI:組織のために行動し、自律的に意思決定を下してアクションを起こすために、組織に代わって行動する権利を付与された、目標主導型のソフトウェア・エンティティ。記憶、計画、センシング、ツール利用、ガードレールなどのコンポーネントと共にAI手法を使用して、タスクを完了し、目標を達成する"

本稿では「エージェント型AI」を広義に扱うことで、その一形態として実用が進む「AIエージェント」にも焦点を当てつつ、狭義のエージェント型AIが持つ将来性にも触れていきます。

エージェント型AIの活用はビジネスシーン(BtoB)だけにとどまらず、個人向け(BtoC)の領域でも、「パーソナルアシスタント」としての活用が進んでいます。これは、旅行の候補比較から予約・日程調整までユーザーの好みに合わせて支援するなど、個人のニーズに合わせて生活を支える自律的なパートナーとしての役割を指します。

(※)Gartner®, プレスリリース, 2025年5月14日, "Gartner、AIエージェントとエージェント型AIに関する見解を発表"

https://www.gartner.co.jp/ja/newsroom/press-releases/pr-20250514-ai-agent

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エージェント型AIを構成する主な要素

なぜエージェント型AIは自律的に動くことができるのでしょうか。ここでは、その仕組みを支える主要な構成要素について解説します。

Planning(計画)

目標達成に向けた「思考」を担います。例えばユーザーから「今月の売上レポートを作成して関係者に送っておいて」といった曖昧な指示を受けた際、AIはそれを「データの抽出」「グラフの作成」「メール本文の執筆」「送信」といった複数のステップに分解し、最適な作業フローを自動生成します。

Tool Use(ツール使用)

外部システムを操作する「手足」の役割を担います。AIはテキストを生成するだけでなく、APIを通じてCRM(顧客管理システム)、ERP(基幹システム)、メール、チャットツール、RPAなどを操作します。これにより、実際の業務を「代行」することが可能になります。

Reflection(内省)

アウトプットの質を担保する「検品」の役割を果たします。出力した結果が妥当かどうかをAI自身が評価します。もしエラーが出たり、目標に到達していなかったりした場合は、原因を分析して手順を修正し、再実行します。この自律的な改善ループが精度の向上に寄与します。

Multi-Agent(マルチエージェント)

複数のAIによる「チームプレイ」で高度な自動化を支えます。各AIが「調査担当エージェント」「分析担当エージェント」「実行担当エージェント」といった専門の役割を持ち、連携します 。単体のAIモデルでは対処しきれない複雑な業務や多角的な判断が必要な工程も、エージェント同士が協調することで、一気通貫で完結させることが可能になります。

従来の生成AI(チャット型)との違い

エージェント型AIと従来のチャット型AI(生成AI)の主な違いを以下の表にまとめました。

従来の生成AI(チャット型) エージェント型AI
主な役割 Q&A、文章作成、要約(回答中心) 業務プロセスの実行、タスク完結(実行中心)
動作の起点 ユーザーによる詳細な指示(プロンプト) 最終的な「目標」の設定(目標ベース)
処理のプロセス 単発の応答 思考・計画・実行のマルチステップ
外部連携 限定的(主に学習データ内での回答) 各種SaaS、CRM、ERPなどと柔軟に連携

両者の最大の差は「自律性」にあります。チャット型AIは人間が逐一指示を出す必要がありますが、エージェント型AIは「目標・ゴール」さえ与えれば、その過程にある複雑な手順をAIが自ら組み立てて実行することが可能です。

また、エージェント型AIは顧客情報を管理するシステム「CRM」や、会計・販売・在庫など基幹業務を統合するシステム「ERP」といった業務アプリケーション、そしてそれらを含む各種SaaSと連携できる点も大きな特徴といえます。

エージェント型AIの主な種類

エージェント型AIは目的や設計思想によっていくつかのタイプに分けると理解しやすくなります。ここでは代表的な分類を見ていきましょう。

目標ベース型

最終的なゴール(目標)を与えると、達成に必要な行動をAIが自ら選択し、手順を組み立てて進めるタイプ。人間が詳細な指示(プロンプト)やマニュアルを逐一用意しなくても、要件に沿って自律的にタスクを完遂してくれるため、指示出し側の工数を劇的に削減できるのが特徴です。

活用例:「予算3万円以内で、来週の大阪出張のホテルと新幹線を予約しておいて」と伝えるだけで、最適な手配を完了させる。

学習型

運用を重ねるなかでユーザーからのフィードバックや過去の対応データを取り込み、判断や提案の精度を継続的に改善していくタイプ。使用を重ねるごとに自社の社内ルールや独自の対応傾向を学習し、組織に必要なものを理解する「自社専用の高度なAI」へと成長します。

活用例:過去の対応履歴やベテラン社員による修正内容を学び、カスタマーサポートの回答精度を日々向上させていく。

協業型(マルチエージェント)

役割の異なる複数のエージェントが連携し、調査・分析・実行といった工程をチームで分担して進めるタイプ。単独のAIでは処理しきれないほど負荷の高い業務や、専門性の分かれる複雑なプロセスも、エージェント同士が協調することで一気通貫での自動化が可能になります。

活用例:「調査担当」が市場情報を収集し、「分析担当」が自社への影響を整理、「実行担当」がレポート作成と社内ツールへの反映までを連携して行う。

反射型(単純・モデルベース)

あらかじめ設定されたルールや特定の条件に応じて、即時に判断・実行を行うタイプ。判断基準が明確な定型業務において、24時間365日ムラのない安定した自動化を実現するのに適しています。

活用例:サーバの負荷異常など特定のアラートを検知した際に、あらかじめ決まった切り分け手順の実行と、関係部署への通知を自動で行う。

エージェント型AIを導入するメリット

エージェント型AIを導入するメリット

エージェント型AIの導入によって得られる効果は、業務の一部を自動化することにとどまりません。AIが目的に応じて判断し、複数のシステムを横断して動くことで、日々の業務の進め方や役割分担に変化が生まれます。その結果、現場の負担を軽減しながら、組織全体の動きを円滑にすることが可能です。

ここでは、企業活動の中でエージェント型AIがどのような価値をもたらすのか、詳しく見ていきましょう。

業務効率化と圧倒的な時間削減

エージェント型AIは、データ入力や定型処理といった単純作業だけでなく、一定の判断を伴う非定型業務まで自律的に処理できる点が特長です。業務の前後関係を理解したうえで作業を進めるため、人が都度指示を出す必要がありません。

また、定型作業を肩代わりすることで、担当者は分析や改善、顧客対応といった付加価値の高い業務に時間を振り向けやすくなります。例えば、日次・週次のレポート作成や情報転記、定型メール作成などに費やしていた時間を削減し、企画や提案の質を高める動きにつなげられるでしょう。

データに基づいた迅速な意思決定

エージェント型AIは、社内外に分散したデータを収集・整理し、分析から示唆の抽出までを一連の流れで実行できます。人の手を介さずに処理が進むため、担当者ごとの判断のばらつきや、分析にかかる時間的ロスを抑えられる点もメリットです。

さらに定量データと過去の事例をもとに、一定の基準で判断材料を提示できるため、意思決定のスピードと再現性が高まります。結果として、変化の早いビジネス環境にも柔軟に対応しやすくなるでしょう。

例えば、在庫状況と市場動向を常時モニタリングし、欠品リスクが高まった段階で発注案を作成・関係者に通知するといった先回りの動きができれば、機会損失の最小化にもつながります。

システム間の「連携ハブ」として機能

多くの企業では、CRMやERP、各種SaaSが部門ごとに導入され、業務がシステム間で分断されがちです。エージェント型AIは、これら複数のシステムを横断して操作する役割を担い、業務のつなぎ役として機能します。

既存システムを大きく改修することなく、データ取得や更新、通知といった処理を自動化できるため、実務レベルでの業務統合が進みます。既存資産を活かしながら連携を積み上げられるため、比較的低コスト・短期間で業務改善やDXの効果を出しやすい点もポイントです。システム間の壁を意識せずに業務を進められる点は、企業にとって大きな利点といえるでしょう。

部門別・エージェント型AIの活用事例

部門別・エージェント型AIの活用事例

ここでは、エージェント型AIが企業内のどのような部門で、どのような課題解決に寄与しているのかを具体的に解説します。

大きな特徴は、個別業務の自動化に加えて「人が判断すべき領域」と「AIに任せられる領域」を切り分けて設計できる点にあります。

部門ごとの代表的な活用シーンを通じて、導入後の業務イメージを掴んでみてください。

情報システム

情報システム部門では、監視ツールから大量に発生するアラートへの対応が遅れたり、特定の担当者に障害対応のノウハウが集中したりといった課題が生じがちです。

エージェント型AIを導入すると、発生したアラートをリアルタイムで検知し、過去のログや類似事例を参照しながら原因候補を自動で整理します。そのうえで、影響度や緊急度を判定し、適切な優先順位でチケットを起票。担当者には初動対応の指針を提示し、対応内容をまとめた運用レポートの作成までをAIが担います。

これにより、業務の属人化を防ぎつつ、障害対応のスピードと品質を両立することが可能です。

バックオフィス(経理・総務・人事)

バックオフィス業務では、伝票処理やデータ照合といった定型作業に加え、内容の不備や金額の不一致といった「例外対応」が発生することで人の手による判断と作業が必要になることが負荷になりがちです。

エージェント型AIは、請求書の発行から入金確認、差異が発生した場合の確認メールや督促文案の作成までを一連の流れとして自動化します。また、人事領域では、従業員情報の変更をきっかけに、勤怠管理や給与、福利厚生など複数の社内システムを横断して更新作業を代行することも可能です。

AIが自律的にワークフローを回すことで、人が判断すべき例外処理にのみ集中できるようになり、業務全体の生産性と正確性が向上します。

営業・マーケティング

営業・マーケティング部門では、顧客情報の入力漏れや事前調査の不足により、商談準備に十分な時間を割けないケースが少なくありません。

エージェント型AIを活用すれば、商談の録音データから要点を抽出し、その内容を顧客情報の管理ツールであるCRMへ自動で反映できます。あわせて、競合他社の動向や市場情報をWeb上から収集・分析し、次回提案に向けた資料のドラフトを自動生成することも可能です。

さらに、顧客と自社の空き時間を踏まえた日程調整、招待の送付、事前資料の共有、フォローアップメール作成と送信までを一連の流れとして支援することで、商談の準備だけでなく実行力も高められます。

このように事務作業をAIに任せれば、営業担当者は顧客との対話や戦略立案に一層集中できるでしょう。

カスタマーサポート

カスタマーサポートでは、FAQでは解決できない手続きが多く、結果的に有人対応が必要になることが課題です。

エージェント型AIは、顧客との対話を通じて注文のキャンセルや返金処理といった手続きを判断し、人間が介在せずに自律的にバックエンドシステムと連携しながら処理を完結させます。

また、問い合わせ内容や過去の対応履歴、利用状況などを踏まえて顧客ごとに最適な案内を提示できれば、対応品質の均一化に加えて、よりパーソナライズされた顧客体験にもつながります。

単なる一次対応の自動化にとどまらず、業務処理そのものをAIが担うことで、サポート品質の均一化と対応コストの削減を両立できるでしょう。

エージェント型AIを導入・運用するためのポイント

エージェント型AIを導入・運用するためのポイント

エージェント型AIは高い自律性を持つ一方で、権限の設計や運用ルールが不十分だと、誤操作や不適切な実行、機密情報の取り扱いといった問題につながる可能性があります。そのため、導入にあたっては段階的な検証とガバナンス設計が重要です。

ここでは、実際の導入プロセスに沿って、企業が押さえておくべきポイントを整理して紹介します。

1.活用領域の選定とリスク管理

導入初期は、万が一の失敗時にも備えて、事業への影響が限定的な領域から着手することが重要です。

エージェント型AIは事実に基づかない情報を生成する「ハルシネーション」を起こす可能性があります。送金やデータ削除といった高リスク操作については、すべてをAIに任せきりにするのではなく、人間が最終的な確認と責任を持つ仕組みを整える必要があります。AIが自律的に実行案を作成し、最終的な実行ボタンのみ人間が押すという設計にすることで、安全性を担保しながら高度な自動化を両立させることが可能です。

また、AIがどのデータを参照し、どのような判断を行ったのかを追跡できるよう、判断プロセスや根拠をログとして可視化しておく必要があります。

2.データ連携とアクセス権限の最適化

エージェント型AIに許可する操作範囲を明確に定義することは、セキュリティ面で欠かせないポイントです。

例えば、システムごとにAI専用のアカウントを発行し、必要最小限の権限のみを付与することで、意図しない誤操作や情報の持ち出しを防ぎます。また、個人情報や機密情報を扱う場合には、AIが参照するデータの範囲の限定や、マスキング処理の実施といった「情報の取り扱いに関する管理体制」を整備することも重要です。

3.スモールスタートによる効果検証

最初から全面的な自動化を目指すのではなく、PoC(概念実証)を通じて精度や業務適合性を確認します。

ここで特に重要なのが、エージェント型AI特有の費用対効果の検証です。エージェント型AIは目標達成のために「自ら試行錯誤(ループ)」を繰り返す特性があるため、従来のAI以上にAPI利用料などのコストが変動しやすい側面があります。本番運用を見据えた費用対効果の検証も重要です。

あわせて、現場担当者にAIの特性や限界を共有し、人とAIが協調する前提で運用ルールを改善していく姿勢が求められます。例えば、1回の実行にかかるAPIコストの目安を把握したうえで、想定外の多重実行を防ぐための回数制限や上限設定、停止条件を設けて検証することが不可欠です。

4.本格展開と運用設計

検証結果を踏まえ、エージェント型AIの利用部門を段階的に拡大していきます。その際、「最終的な意思決定の責任は人間が負う」という原則に基づき、責任範囲やエラー発生時の対応フローを明確に定義しておくことで、安定した自律運用を行うことが可能です。

技術導入と同時に運用設計まで見据えることが、エージェント型AI活用を成功させる鍵となります。

まとめ

まとめ

エージェント型AIは、これまでの「AIとの対話」を一歩進め、「AIによる業務完結」を実現する画期的な技術です。システム間の分断を解消し、自律的な判断と行動を可能にするこの仕組みは、労働人口減少に直面する日本企業にとって強力な武器となるでしょう。

まずは自社のどの業務に「意思決定や実行をAIに一定程度任せる余地があるか」を整理し、リスクの低い範囲からその可能性を試してみてはいかがでしょうか。自律的に「動くAI」の活用が、企業のDXを次のステージへと引き上げてくれるはずです。

◎製品名、会社名等は、各社の商標または登録商標です。

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著者 OPTAGE for Business コラム編集部

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