- 公開日:2026年03月24日
災害対策でデータセンターが有効な理由とは?背景や活用のメリットを解説
地震や水害などの自然災害によるITシステムの停止は、企業活動に深刻な影響を及ぼします。データ消失やサービス中断は顧客の信頼を損なうだけでなく、事業継続そのものを脅かす恐れがあります。こうしたリスクに備え、データセンターを活用した災害対策が注目されています。
本記事では、災害対策に有効なデータセンターの機能やメリットを整理し、導入時の確認ポイントや実際の活用事例を紹介します。
なぜ今、災害対策にデータセンターが注目されるのか
自然災害の頻発化・激甚化により、停電・通信障害が発生するリスクが増大しています。さらに、ITシステムの高密度化が進む中で、自社サーバルームでは対応しきれない課題が顕在化しています。
ここでは、災害におけるシステム基盤の選択肢として、データセンターが注目されている背景をみていきましょう。
データセンターが災害対策として注目される背景 ①災害リスクの質の変化
前述のとおり、近年の災害は、頻発化・激甚化が進み、停電・通信障害といったインフラ被害などの影響が長期化することも多くなりました。
2024年1月に発生した能登半島地震では、広範囲で停電が発生し、通信基地局も800局以上が停波しました。また、同年8月に発生した日向灘地震では、初めて「南海トラフ地震臨時情報」が発表され、広域災害への備えの重要性があらためて注目されました。
こうした障害が発生すると、被害地域に設置されたサーバやネットワーク機器は、停電・空調停止・通信断絶などの影響でシステムダウンを招き、業務継続が困難になります。また、水害により社屋内のサーバルームに設置している機器類が浸水し、サーバ内の業務データを復旧できず、業務が数か月停止したケースもありました。
災害リスクの質の変化により、これまで以上に業務継続への対策が求められており、改めて立地・建物・設備が災害前提で設計されているデータセンターの有効性が注目されています。
データセンターが災害対策として注目される背景 ②業務のデジタル依存の深化
現代社会では、事業活動の多くがデジタル化し、基幹業務や顧客接点がシステムに強く依存するようになりました。業務の一連の流れがシステム上で連動しており、一部の停止が後続処理の滞留を招き、出荷遅延や売上計上の遅れが発生し、場合によっては資金繰りにも影響します。特にECサイトや予約サイト、契約管理など、お客さま向けのシステムが停止すると、売上機会の損失だけでなく、問い合わせ・クレーム対応が増加し、信用毀損が起きやすくなります。
また、24時間利用されるシステムでは、営業時間外であってもWebサイトは利用可能な状況が当然という顧客意識が根底にあります。加えて、BtoBでもAPI連携など自動処理が普及し、夜間バッチや週末処理を含めて、相手先のシステムと同期して動くケースが増えました。その結果、システム停止の影響は自社内にとどまらず、取引先の業務停止や契約上のペナルティ、機会損失の拡大につながりやすくなっています。
こうした背景から、現代社会では、災害が起きても最低限維持すべき業務を定義し、そのための復旧目標(RTO/RPO)を現実的な水準に設定する必要が高まっています。「止められない業務」の増加が、可用性や遠隔地での復旧を前提とするデータセンターへの注目を後押ししています。
災害対策におけるデータセンターの機能
データセンターでは、さまざまな災害を想定し、立地選定から災害を考慮した建物設計や、電力・通信の多重化などの徹底した対策を実施することで、災害時にも安定運用を継続できる仕組みを備えています。ここでは、その主な機能を解説します。
物理的な防災・減災機能
データセンターは、建設段階から運用まで、あらゆる層で防災・減災の技術を取り入れたさまざまな機能が組み込まれています。
まず、立地選定の段階で活断層がない強固な地盤や浸水リスクの低い地域を選び、災害発生確率を最小化します。建物には免震構造を採用することで、地震の揺れが建物に直接伝わることを防止し、重要設備が損傷するリスクを大幅に減らすことができます。
また、火災対策では、一般的なスプリンクラーとは異なり、窒素ガスなどの不活性ガス消火設備を導入しています。水を使わずに酸素を遮断して消火するため、機器へのダメージを最小限に抑え、消火後もサーバが継続利用できる可能性を高めています。
加えて、電力の冗長化や、通信回線もキャリアフリーとして複数のキャリアを引き込み、経路の多重化に対応しているデータセンターもあります。これにより、単一障害点をなくし、災害時でもサーバの安定運用を維持できる仕組みを整えています。
多重化された電力供給機能
24時間365日の運用が求められるシステムでは、わずかなシステムダウンでも経営に大きな損失を与えます。こうした事態を防ぐため、データセンターでは災害時を想定した停電対策が徹底されています。
例えば電力は、冗長化した複数回線から受電することで、片方の電源が停止した場合でも給電を継続できる仕組みが整えられています。さらに停電時には、UPS(無停電電源装置)が瞬時に給電を開始し、非常用発電機の起動までをカバーします。その後は、燃料備蓄による非常用発電機が長時間の電力供給を継続するため、災害時も安定した運転を維持できます。
このような多重化された電力供給機能により、災害による停電が発生した場合でも、データセンターは安定した運用を継続できます。
データセンター活用で得られるメリット
災害対策としてデータセンターを活用する主なメリットは2つあります。順に紹介します。
短期間で可用性・早期復旧力の向上が可能
事業継続性(BC)とは、重要業務を止めない、または停止しても許容範囲内で復旧し、損失を最小化するといった人・拠点・プロセス・外部委託先・情報を含めた考え方や能力のことを言います。BCP(事業継続計画)は、事業継続性を実現するための具体的な計画書や手順です。
BCやBCPの中で、ITサービスの継続は非常に重要な位置づけであり、データセンターは有効な災害対策として位置づけられています。
データセンターを活用することで、電源(UPS・非常用発電機)・冷却(空調)・通信(回線)を多重化しやすく、1か所の故障で全停止する単一障害点を減らすことができるため、優先して検討すべき事項です。
自社で同等の冗長化を一から設計・施工し、運用体制まで整えるには時間とコストがかかります。一方、冗長化された設備と運用が整備されたデータセンターを利用すれば、可用性と早期復旧力を短期間で高められ、事業継続性の向上が図れます。
事業停止による「多大な経済的損失」の回避
前述のとおり、業務システムの停止は企業に多大な経済的損失をもたらします。
データセンターを活用する最大のメリットは、こうしたダウンタイムによる損失を抑制できる点です。電源・空調設備の冗長化や専門チームによる24時間365日の監視体制により、万が一の際も復旧時間を最小化できます。これにより、業務システムの停止により発生するリスクも大幅に軽減できます。
なお、データセンターも「絶対に止まらない」わけではありません。自社の事業継続計画に基づき、目標復旧時間(RTO)や目標復旧時点(RPO)を明確にしたうえで、必要な冗長化レベルを満たすデータセンターを選定することが重要です。
データセンター導入時に確認すべきポイント
データセンターの選定では、災害対策の実効性だけでなく、同時被災リスクへの備え、平常時・緊急時を問わない物理セキュリティ、そしてサービス品質とサポート体制を総合的に確認することが重要です。ここでは、導入時に押さえるべき重要ポイントについて解説します。
同時被災リスクへの備えができているか
災害対策で最も重要なのは、本番環境とバックアップ先が「同じ災害で一緒に止まる」事態を避けることです。内閣府が公表する「事業継続ガイドライン -あらゆる危機的事象を乗り越えるための戦略と対応-」においても、同時被災しない拠点の確保が求められています。
確認すべきポイントは、立地・電力・通信において「同じ要因で同時に止まらない」設計になっているかです。立地は同一都市圏・同一水系に集中していないか、電力は冗長化されているか、通信は同じ局舎や経路を通っていないかを押さえておきましょう。
特に関東圏では、富士山噴火による広域インフラ停止も想定しておく必要があります。降灰の影響により、電力・通信・交通に同時に支障が生じる恐れがあります。例えば、碍子への付着による広域停電や、通信基地局の停止、データセンターの停止・機能低下が起こり得ます。結果として、関東圏内の複数拠点が一斉に機能停止する可能性があります。
このように、距離だけでなく、同時被災の要因も踏まえて拠点分散を検討する必要があります。
参考:内閣府「事業継続ガイドライン -あらゆる危機的事象を乗り越えるための戦略と対応-」
サービスレベル・サポートの体制
データセンター導入では、設備品質とサービス品質の両面を事前に確認することが重要です。
設備品質については、日本データセンター協会(JDCC)が定める「データセンターファシリティスタンダード」が、建物の堅牢性・電気設備・空調設備・セキュリティなど14項目をティア1~4の4段階で評価しています。各ティアで想定される稼働信頼性(ティア4で99.99%以上)を参考に、自社に必要な水準を見極めましょう。
サービス品質については、稼働率の水準だけに着目するのではなく、計画停止の扱い、障害時の復旧目標、通知手段と通知タイミング等を事前に確認しておくことが不可欠です。あわせて、障害時の連絡体制や現地対応(リモートハンズ等)の対応範囲を明確にしておくことで、万一停止が起きた際にも混乱を最小化し、安定した運用につなげられます。
また、サポート品質は受付時間、エスカレーションの経路と責任分界、現地対応の可否・条件によって実質が大きく変わります。導入前に提供内容を確実に確認しましょう。
参考:日本データセンター協会「データセンター ファシリティ スタンダード Ver3.0 【ダイジェスト版】」
データセンター活用による災害対策の事例
データセンターを活用した災害対策は、業種や課題によって多様な形で実現されています。ここでは、3件の実際の導入事例を紹介します。
事例1:遠隔地でのDR(ディザスタリカバリ)による事業継続性の向上
A社では、インターネット経由で顧客にシステムを提供する事業を展開していました。顧客の重要データを扱うため、災害時でもサービスを継続する必要がありましたが、複数拠点でのバックアップだけでは不十分で、本番拠点が被災した際に実際に切り替えて稼働できる仕組み(DR:ディザスタリカバリ)が課題でした。
そこで同社は、データセンターを活用した災害対策として、本番拠点と地理的に離れた遠隔地に災害復旧用のバックアップ環境を構築しました。遠隔地としては、非常時でも空路・陸路の交通手段を確保しやすく、実際に現地へ到達しやすい都市を選定しました。単なるデータ保存ではなく本番環境の代替機能を担える設計とし、既存とは異なる通信会社のネットワークを選択することで同時停止リスクを軽減する構成としました。
その結果、本番拠点が被災しても遠隔地が代替機能を果たせる体制が整い、事業継続性が向上しました。
事例2:ハイブリッドクラウド構成で非常時の多拠点化とサービス拡大を実現
B社では、メインサービスであるコンテンツ配信の遅延・未達が許されず、災害などの非常時でも通常と同じように使える体制が求められていました。しかし、専用の通信回線を前提とした運用では、回線を用意しにくい拠点や利用環境の違いが壁となり、サービス提供範囲を広げにくい課題がありました。
そこで同社は、災害時の事業継続性を強化するため、サーバを自社設備からデータセンターへ移行しました。あわせて、データセンターとクラウドを直接接続することで、データの多拠点化を前提に配信基盤を再設計しました。既存の専用回線との接続を維持しながら段階的に移行し、運用支援サービスを組み合わせることで、移行時の互換性の問題も解決しました。
その結果、非常時の多拠点対応と、従来は提供が難しかった拠点にもサービス提供範囲を拡大できました。さらに、導入・運用コストや監視の作業負担が削減され、平常時の運用負荷も軽減しました。
事例3:データセンターを活用した「災害復旧サービス」の提供
ITサービスを取り扱うC社では、お客さまにおいて震災を契機に事業継続への意識が高まり、災害時のリスク分散として遠隔地に復旧拠点を構築するニーズが急増していました。しかし、「遠隔地にある」だけでは不十分で、事業基盤の確かさや運用保守の品質が担保されないと顧客の信頼を得にくい状況でした。
そこで同社は、独立性や幅広い顧客対応力、総合的なサービス体系、同等レベルの運用・保守体制などを保有する事業者が提供するデータセンターを基盤として採用し、「災害復旧サービス」を開始しました。
その結果、顧客ニーズに即した広域災害を見据えた事業継続を支えるサービスを実現。災害を想定した大規模訓練などを実施し実効性を確認できたことで、顧客の安心感と評価につながりました。
まとめ
本記事では、災害時におけるデータセンターの有効性や導入時の確認ポイント、実際の活用事例を紹介しました。
データセンターでは、さまざまな災害対策が施されており、自然災害の頻発化・激甚化が進んでいる今、業務継続性を求められる企業においては非常に重要な基盤として改めて注目されています。
オプテージ曽根崎データセンター(OC1)は、地震対策として床免震構造によりサーバ室内の揺れを250Gal(ガル)以内に抑える設計を採用しています。水害対策では電源設備を2階(地上6メートル)以上に配置し、高潮や河川氾濫時でもサービス継続が可能です。JR大阪駅から徒歩約12分の立地で、ライブオペレーションなど充実した運用サポートも提供しており、日本全国のバックアップ拠点として有効な選択肢となります。
災害対策としてデータセンターをご検討される際は、ぜひオプテージまでご相談ください。
◎製品名、会社名等は、各社の商標または登録商標です。
