- 公開日:2026年09月28日
病院向け電子カルテのシェア・ランキングの見方|順位だけで選ばないための視点
電子カルテの更新時期を控え、他院のシステムを気にされる病院経営層の方は少なくありません。しかし、電子カルテは病床規模や医療機能によって求められる要件が大きく異なります。順位や導入実績の数字を基準にシステムを選ぶと、「現場運用に合わない機能過多」「使い勝手の悪さによる現場の混乱やコスト高騰」につながるリスクがあります。
そこで本記事では、電子カルテ市場の全体像や数字の客観的な見方を解説した上で、中規模病院※が本当に重視すべき選定基準と、失敗しないリプレースのポイントをご紹介します。
(※)本記事では病床数200〜399床の医療機関を「中規模病院」としています。
病院向け電子カルテの市場とシェアの全体像
厚生労働省の調査などによると、病院市場での電子カルテ普及率は施設規模で大きく異なります。
400床以上の大規模病院では令和5年時点で93.7%と導入がほぼ一巡した一方、200〜399床の病院では79.2%、200床未満は59.0%にとどまります。医療DXの推進に伴うシステム導入・刷新の余地が依然として大きく残されている状況です。
参考:厚生労働省「医療分野の情報化の推進について」
大規模病院と中規模病院でのシェア構成の違い
400床以上の大規模病院では、複雑な基幹システムとの連携や高度な診療機能が求められる背景から、実績豊富な大手ベンダーのシェアが高く固定化しやすい傾向があります。
一方、200〜399床の中規模病院では、従来のオンプレミス型だけでなく、初期費用や運用管理費を抑えやすいクラウド型システムも広く普及しています。
多種多様なベンダーが参入しているため選択肢が豊富であり、自院の医療機能や運用体制に合わせた柔軟な比較検討が可能です。
近年の傾向|クラウド型電子カルテの普及とシェア拡大
近年、国の医療DX推進策や補助金等による後押し、初期費用の抑制やBCP(事業継続計画)対策の観点から、クラウド型電子カルテの普及とシェア拡大が進んでいます。
一方で、病院市場全体の実情としては、セキュリティやレスポンス面への懸念、既存インフラとの兼ね合いから、現在もオンプレミス型が大多数を占めているのが現実です。
国によるクラウド移行支援の動きが強まる一方、現場ではインフラ環境や運用の安全性に応じた慎重な判断が求められており、自院のネットワーク環境等を含めた総合的な比較検討が不可欠となっています。
電子カルテの比較・情報収集を行う際の注意点
国が進める医療DXのロードマップでは、将来的なデータ共有を見据えたシステムの標準化がより一層求められています。そのため、単に過去の導入実績や古い比較情報だけを鵜呑みにすると、今後の標準化や制度変更への対応が遅れてしまうリスクがあります。
情報収集を行う際は、その情報が最新の制度や将来の動向に対応しているかなど、前提条件を丁寧に見極めることが不可欠です。
参考:厚生労働省「医療DX令和ビジョン2030」
注意点①導入実績の「病床規模・診療科」の内訳
電子カルテのリプレースを検討する際、近隣施設での実績やネットの情報は貴重な参考材料になります。ただし、提示された実績数などの表面的な数字だけにとらわれないようにしましょう。
重要なのは「どのような病床規模や診療科で使われているか」という内訳の確認です。自院と同等の規模や医療機能での運用実績が含まれているかを精査しなければ、実際の運用段階で現場の業務フローと乖離してしまう原因になりかねません。
注意点②病床規模ごとの「システム適合性」の違い
大規模病院で高い評価を得ている電子カルテが、中規模病院にそのまま適合するとは限りません。
高度医療向けのシステムは多機能である反面、中規模病院にとっては機能過多となりやすく、画面操作の煩雑化や無駄なカスタマイズ費用の発生、スタッフ教育の負担増につながることがあります。
費用対効果と現場の使いやすさを両立させるためにも、自院の病床規模や診療体制に応じた最適なシステム適合性を見極めることがリプレース成功における重要なポイントです。
電子カルテシェア上位=中規模病院に最適とは限らない理由
シェア上位の大手製品が、必ずしも中規模病院の運用体制やIT予算に適合するとは限りません。ネームバリューや順位のみで選択してしまうと、機能過多による操作の複雑化や想定外の維持費用が発生し、運用面や費用面で失敗に陥る中規模病院のケースがあります。
自院の規模や運用体制、予算感に合致した製品を冷静に見極める姿勢が、選定成功のカギです。
機能過多によるコスト増加と現場の使いにくさ
病院向けのシステムには多種多様な機能が搭載されていますが、自院の診療機能や運用体制に合わない過剰な機能は、現場と経営の双方にリスクをもたらす可能性があります。
自院にとって不要な機能が多く含まれていると、画面操作や入力フローが複雑化し、日常的な業務を担う医師や看護師などの現場スタッフに大きな負担をかける要因となります。
さらに、十分に活用しきれない機能のために導入費用や高額な維持・保守費用を払い続けることは、長期的に病院経営を圧迫しかねません。
他院での導入実績や機能の豊富さだけで判断せず、「自院の現場運用に本当に必要な機能を見極めること」が、運用の効率化とコストの適正化を実現する重要なポイントとなります。
院内のIT保守体制と合わないことによる運用トラブル
専任のIT担当者が十分に配置できる環境を前提とした大規模病院向けシステムは、IT人材が限られる中規模病院では運用トラブルの要因となる可能性があります。システム障害時の一次対応や各種設定の確認・変更を院内だけでは迅速に行えず、医療現場に過度な負担が集中する恐れがあるためです。
自院の保守体制に合致しない複雑なシステムを選択すると、日常業務の遅延やセキュリティ管理の不徹底や形骸化を招き、診療の継続性や病院運営の安定を損なう重大なリスクへとつながる可能性があります。
中規模病院がシェア以外に見るべき選定基準
厚生労働省のガイドラインでは、電子カルテの運用において厳格なセキュリティ対策や堅牢なバックアップ体制の整備が求められています。
そのため、シェアや順位といった表面的な数字だけで判断すると、導入後の現場運用や予期せぬトラブルに対応しきれないリスクがあるでしょう。
ここでは、製品ランキングなどの数字には表れにくい、実務的・経営的な選定軸として、3つの観点を解説します。
参考:厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン第7.0版(令和8年6月)」
自院の医療スタイル(地域連携・院外利用・多職種連携)に合っているか
選定時には、自院が展開する独自の医療スタイルとの親和性を十分に確認する必要があります。特に、訪問診療や地域医療連携に注力する病院では、院外からタブレット等の端末を用いて安全に閲覧や入力を行える環境が欠かせません。
また、将来的な病院機能の拡充や地域包括ケアへの参画を見据えることも大切です。医師・看護師・薬剤師・リハビリスタッフなど多職種間で円滑に情報共有・連携できることも重要です。
多様な診療形態や現場の柔軟な働き方に対応できる、拡張性の高いシステム構造を備えているかを厳密に評価しましょう。
クラウド/オンプレを自院の環境や将来像に合わせて選択できるか
電子カルテの構築形態は一元化せず、自院のインフラ環境や運用体制、将来の事業計画に合わせてクラウド型・オンプレミス型のいずれか、または両者を組み合わせたハイブリッド型から柔軟に選べることが望ましいといえます。
例えば、院内での高速処理や既存システムとの連携を重視する場合はオンプレミス型が適している一方、BCP(事業継続計画)や拠点追加・災害対策の観点ではクラウド型が有効な場合もあります。
将来的なシステム更新や事業拡大、既存インフラとの整合性も見据え、最適な構成を選定・提案できるかが、ベンダー選びの大きなポイントとなります。
法改正やシステム改修時の運用保守サポートの手厚さ
電子カルテは導入して終わりではなく、定期的な診療報酬改定や厚生労働省ガイドラインへの確実な対応が求められます。こうした変更に対して、システム改修だけでなく、設定変更や運用見直しまで含めてどこまで任せられるのかを事前に確認しておくことが重要です。
また、予期せぬ障害発生時の迅速な復旧に加え、障害時の一次対応、問い合わせ窓口の一元化、受付時間、現地対応の可否、稼働後の伴走支援まで含めて確認することが重要です。
ベンダーの親身で手厚いサポート体制と高い信頼性は、病院の業務継続性と現場職員の負担軽減を左右する不可欠な選定基準となります。
シェアの数字より「任せられる範囲」を比べる
医療機関を標的としたサイバー攻撃が問題となる中、厚生労働省の関連ガイドラインでは医療情報システム全体の安全管理の重要性を示しています。
電子カルテの導入にあたっては、ソフトウェア単体の機能比較にとどまらないようにしましょう。電子カルテ本体だけでなく、通信ネットワークの管理やセキュリティ、バックアップ、障害対応まで含めて、システム全体についてベンダーにどこまで責任をもって任せられるかを精査する必要があります。
ベンダーの対応範囲と自院が担うべき範囲を明確にしたうえで、導入後の保守・運用支援や障害対応まで含めた「総合的な提供体制」を、厳密に比較・評価することが重要です。
参考:厚生労働省「医療分野のサイバーセキュリティ対策について」
電子カルテはソフト機能だけで動いているわけではない
電子カルテシステムを安全かつ止めることなく稼働させるには、画面の操作性といったソフトウェア面だけでは不十分です。通信ネットワークやセキュリティ、バックアップに加え、院内の無線LAN、端末管理、災害対策まで含めたインフラ全体の安定稼働が不可欠となります。
どんなに優れた機能をもつ電子カルテであっても、一度ネットワーク障害やサイバー攻撃による侵害、端末トラブルが発生すれば、現場の診療そのものが停止してしまうリスクがあります。
そのため、システム本体だけでなく、関連インフラを含めた統合的な運用管理が求められます。
IT人材が少ない病院ほど一社集約(ワンストップサポート)がカギになる
専任のIT人材が不足している病院では、電子カルテやネットワーク、セキュリティ、保守が複数ベンダーに分かれていると、問い合わせ先が分散し、障害時の切り分けや調整負担が院内側に集中しやすくなります。
その結果、障害時に責任の所在が曖昧になって原因特定や復旧作業の大幅な遅れにつながるため、これらを一元管理できる体制かどうかを確認することが重要です。
インフラ構築から日々の保守運用までワンストップで任せられる体制を整えれば、院内スタッフの負担を大幅に軽減し、トラブル発生時にも迅速かつ確実な診療継続が可能です。
数字を参考にしつつ、自院基準で選ぶ
市場シェアやランキング情報は参考資料の1つに過ぎず、重要なのは「自院の規模や体制、今後の診療方針にマッチしているか」という視点です。他院の評価に左右されず、自院が抱える現場課題を確実に解決できる軸で選定を行うことが成功のカギとなります。
特に専任のIT担当者が限られる中規模病院こそ、電子カルテ単体の機能比較にとどまらず、ネットワークやセキュリティといったインフラ全体を一括で相談・構築できる体制かどうかも確認しておくとよいでしょう。
自院に最適な電子カルテの仕組みや、ネットワーク構築についてのご相談は、下記よりお気軽にお問い合わせください。
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