- 公開日:2025年12月23日
次世代セキュリティとは?ゼロトラストを支えるMDRの重要性
近年、クラウドの活用やリモートワークの一般化にともない、社内と社外のネットワークの境目がさらにあいまいになったことで、「社外のネットワークは危険」「社内ネットワークは安全」という従来の前提だけでは組織を守れない場面が増えています。こうした背景から、アクセスのたびに安全性を確認する次世代型のセキュリティモデル「ゼロトラスト」が注目されています。
本記事では、次世代セキュリティの基本概念や注目されている理由、その導入ステップに加え、ゼロトラストを運用面で支えるMDRの役割を解説します。
次世代セキュリティとは
次世代セキュリティとは、従来のような「外部からのアクセスは危険だが、社内ネットワークの中は安全」という考え方だけに頼らず、どこからのアクセスであっても一度は疑い、必ず確認するという発想を基盤とした防御モデルです。この新しい考え方は「ゼロトラスト」と呼ばれ、近年のサイバー攻撃の高度化に対応する手段として注目されています。
ゼロトラストでは、利用者・端末・アプリ・データなど、システムに関わるすべての要素について、アクセスのたびに認証・検証を行い、必要最低限の権限だけを付与する「最小権限アクセス」という考え方を重視します。これにより、仮に攻撃者が一部のシステムに侵入したとしても、他の領域へ広がるリスクを抑えられます。
また、攻撃を「入り口で止める」だけでなく、侵入されても被害を最小限に抑えるという視点を取り入れていることから、事業継続性と信頼性を高める仕組みとしても注視されており、多くの企業で導入が進んでいます。
次世代セキュリティが注目されている理由
リモートワークの普及やクラウド利用の拡大により、従来の社内と社外を分けて守る仕組み(境界防御)だけでは対応できない脅威が増えています。サイバー攻撃の高度化も進むなか、ゼロトラストを基盤とした次世代セキュリティの重要性が高まっています。ここでは、その背景と主な要因を解説します。
リモートワークの普及
働き方改革や感染症対策を背景にリモートワークが急速に広がり、自宅やカフェ、出張先など社外から社内システムにアクセスする機会が増えました。その結果、「社外ネットワークは危険だが、社内ネットワークは安全」という従来の考え方だけでは防ぎ切れないリスクが明確になっています。
こうした状況を受け、アクセスのたびに安全性をチェックするゼロトラストが注目され、企業のセキュリティ対策が大きく転換しつつあります。
さらに、この変化に対応するため、24時間365日、専門家が監視し異常を分析する外部サービス(MDR:Managed Detection and Response) への関心も高まっています。ゼロトラストは継続的な運用が求められるモデルであり、自社のリソースでは難しい運用や対応の補完が可能なため、多くの企業でMDRの導入も進んでいます。
クラウドサービスの活用
業務効率化や柔軟な働き方を支える基盤として、クラウドサービスの活用は企業にとって重要性を増しています。ファイル共有や業務アプリの多くがクラウド化し、社外からのアクセスも日常的になっています。
しかし、社内ネットワークを前提とした従来の「境界防御」では、クラウド上のデータや通信経路を十分に守れません。社内外の境界があいまいになるにつれ、不正アクセスや情報漏えいのリスクも高まる状況です。
こうした課題を背景に、アクセス制御や可視化を重視したゼロトラストの導入が進み、クラウドの利便性を損なわず安全性を確保する取り組みが広がっています。
サイバー攻撃の進化
近年のサイバー攻撃は、外部侵入だけでなく内部不正やクラウド環境を標的にするなど、多様化・高度化しています。標的型攻撃やゼロデイ攻撃、ランサムウェアなどは巧妙化しており、従来の境界防御では検知や対応が難しくなっています。
こうした脅威に対し、ゼロトラストを基盤とした多層防御を導入することで、リスク低減につながります。多層防御とは、複数の防御策を層状に組み合わせることで、単一の対策が突破されても別の層で攻撃を食い止める考え方です。これにより、アクセスごとの認証・検証を徹底し、侵入を前提にした迅速な封じ込めにつながります。また、利用者や端末の挙動を常時監視することで、不審な動きを早期に把握できる点も大きなメリットです。
結果として、被害の最小化と事業継続性の確保を両立するセキュリティ体制の実現が期待できます。
次世代セキュリティ導入への課題
ゼロトラストを基盤とする次世代セキュリティは、理想的な防御モデルである一方、実際の導入・運用には多くの課題が存在します。ここでは、これらの課題と、それを解決へ導くアプローチについて紹介します。
コストと運用負荷の増加
次世代セキュリティを導入する際、新たなソリューションの導入や既存システムの再構築に伴い、ライセンス費用や設計費用などの初期コストが発生します。さらに、導入後も継続的な監視や更新が求められるため、運用コストや人材確保の負担も増大します。
こうした課題を解決するには、導入範囲を段階的に拡大し、費用対効果を検証しながら最適化を図ることが重要です。ただし、こうした対応をすべて自社のリソースだけで続けるのは現実的ではありません。そこで近年は、外部の専門チームが脅威を常時監視・分析する、MDRを活用する方法も取られています。
運用設計の難しさ
ゼロトラストを実現するには、ユーザー認証やアクセス制御、エンドポイント保護、ログ管理など、複数のセキュリティ領域を統合的に連携させる必要があります。これらを支える仕組みとして、IDの発行やログイン管理をまとめて行えるIDaaS(Identity as a Service)や、PCやスマートフォンなどの端末の不審な挙動を検知するEDR(Endpoint Detection and Response)などのソリューションを組み合わせることが有効です。
そのため、高度な知識と緻密な運用設計が求められ、特にレガシーシステムを併用する環境では整合性の確保に多くの工数が発生します。また、導入後も設計・検証・維持管理を継続的に最適化していく体制が欠かせません。
こうした複雑性を軽減するには、専門的な知見を持つ外部チーム(MDR)などの活用を通して、運用負荷を分散させると効果的です。
専門人材の不足
次世代セキュリティでは、ユーザーのログイン管理や端末の監視など、複数の領域をまとめて管理する仕組みが必要であり、専門知識が求められます。これらを支える基盤としてIDaaSやEDRが活用されますが、こうした技術を扱える人材が不足しており、ゼロトラストの設計・運用体制を十分に整えられない企業も少なくありません。その結果、導入の遅れやセキュリティ対策の属人化が課題となっています。
また、社内でセキュリティの目的や重要性が共有されていない場合、ポリシー遵守が徹底されず対策の実効性が低下する恐れもあります。これらを解決するには、外部専門家によるマネージドサービス(MDR)の活用や、社内研修を通じた従業員への意識向上などを行い、セキュリティに対する理解を向上させることが重要です。
企業に合った次世代セキュリティ導入のステップ
次世代セキュリティの導入を成功させるには、場当たり的な対策ではなく、段階的かつ戦略的な進め方が重要です。ここでは、次世代セキュリティ導入における4つのステップを紹介します。
STEP1.現状の課題の把握現状の課題の把握
次世代セキュリティの導入は、まず自社の現状を正確に把握することから始まります。ID管理、端末、ネットワーク、アプリケーション、データなどの資産を洗い出し、どの領域にリスクが潜んでいるかを明確にします。特にクラウド利用やリモートワークの拡大により、境界があいまいになっている現在では、情報漏えいリスクの把握が欠かせません。
重要情報の所在と脆弱箇所を特定することで、優先的に強化すべき領域が明確になります。こうした課題を早期に可視化しておくことで、今後のゼロトラスト設計や運用計画を効率的かつ的確に進められるようになります。
STEP2.計画の策定
現状分析の結果を踏まえ、自社が守るべき情報とリスク許容度を明確に定義します。どの情報をどのレベルで保護するかを具体化し、リスクの大きさや業務への影響度を考慮して優先順位を整理します。そのうえで、経営層から現場担当者までが共通の方針を共有し、セキュリティを経営課題として位置づけ意識統一を図ります。これにより、運用上のズレや対策の重複を防げるようになります。
また、既存システムを活かしながらゼロトラスト実現に必要なソリューションを評価・選定します。この際、ビジネス目標やリスク評価に基づき、導入効果・運用負荷・拡張性を比較して最適な構成を決定することで技術的な導入だけでなく、経営戦略と整合したセキュリティ強化を実現できます。
STEP3.システムの導入
導入段階では、すべてのシステムを一度に入れ替えるのではなく、リスクの高い領域から段階的に進めることが重要です。アクセス制御や端末防御など優先度の高い領域から導入を開始し、効果を検証しながら範囲を拡大することで、業務への影響を最小限に抑えられます。
また、選定したソリューションを自社環境に最適化して配置し、認証基盤やネットワーク設計と連携させることが求められます。さらに、既存のインフラやクラウドサービスを有効活用することで、コストを抑えつつ効率的な導入が可能です。導入プロセスでは、実装にとどまらず運用フェーズを見据えた検証と調整を行うことで、長期的に安定したセキュリティ体制を構築できます。
STEP4.継続的な監視と改善
次世代セキュリティは、導入して終わりではなく、脅威の変化に合わせて継続的に見直していくことが欠かせません。アクセス状況やログを常時監視し、異常を早期に検知・対応できる体制を整えることで、被害の拡大を防止できます。また、サイバー攻撃の手法や業務環境は日々進化しており、ポリシーや設定を定期的に更新しなければ、既存の対策が形骸化する恐れがあります。
自社だけでの対応が難しい場合は、サイバー攻撃の脅威から24時間365日、監視・分析・対応を行う外部サービスMDRなどの専門サービスを活用することで、より安定した運用を維持することが可能になります。
まとめ
本記事では、次世代セキュリティの概要や注目される理由、導入ステップについて紹介しました。
次世代セキュリティは、従来の境界防御に依存しない新たな防御モデルとして、多くの企業で導入が進んでいます。しかし、実際の運用には高度な専門知識や継続的な監視体制が欠かせません。
特に、ゼロトラストの考え方を継続的に実現するうえで、MDRは重要な役割を担います。MDRを導入することで、侵入を前提としたセキュリティ体制の運用を現実的に支援でき、限られたリソースでも対策の安定的な継続に寄与します。
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次世代セキュリティの導入や運用に関してお悩みの際は、ぜひオプテージまでお気軽にご相談ください。
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