SASEとは?仕組みやメリットから導入手順まで解説

SASEとは?仕組みやメリットから導入手順まで解説

リモートワークやクラウドサービスの急速な普及により、企業のネットワークセキュリティ環境は大きく変化しています。従来の境界防御型セキュリティでは対応しきれない現代のビジネス環境において、注目を集めているのがSASEです。
本記事では、SASEの基本概念から導入メリット、従来技術との違いまで、企業のDX推進に有用なこの技術について詳しく解説します。

Contents

SASE(サシー、サッシー)とは

SASE(サシー、サッシー)とは

SASE(Secure Access Service Edge)は「サシー」または「サッシー」と読み、ネットワークとセキュリティの機能を統合したクラウドベースのサービスです。従来は拠点ごとにファイアウォールやVPNなど複数のセキュリティ機器を導入し、さらにクラウドへのアクセスを確保するためWANの構成を複雑化させていました。

しかしSASEの考え方では、SD-WANなどのネットワーク機能と、ファイアウォールなどのセキュリティ機能をクラウド上で統合し、必要とする拠点やユーザーへセキュリティとネットワーク機能をオンデマンドで提供する仕組みを構築します。これにより、企業はネットワークとセキュリティを一元管理し、柔軟なアクセス環境を提供できます。

SASEの歴史

SASEの概念は、アメリカ合衆国のGartner®社によって提唱されました。従来のネットワークに存在していた、「拠点ごとの個別管理によってセキュリティの統合的な運用が難しい」という問題を解決するために登場したのが、このSASEという考え方です。

発表当初は将来の方向性を示す理論的な枠組みとして紹介されていました。しかし、コロナ禍によるリモートワークの急速な普及や、クラウドサービスの活用加速を受けて、その現実的な有用性に注目が集まり、実際の導入が進むようになったのです。

Gartner®社は、Gartner Glossary※1でSASEについて次のように定義しています。

"SASEは、SD-WAN、セキュアWebゲートウェイ(SWG)、クラウドアクセスセキュリティブローカー(CASB)、次世代ファイアウォール(NGFW)、ゼロトラストネットワークアクセス(ZTNA)などを含むネットワークとセキュリティ機能を、サービスとして統合して提供する仕組みです。SASEは、支店、リモートワーカー、オンプレミス環境などからの安全なアクセスを支援します。また、デバイスやユーザーのID、リアルタイムの状況、セキュリティやコンプライアンスのポリシーに基づき、ゼロトラストアクセスを実現します。"

現在では、SASEはクラウドを前提とした現代のITインフラに最適な、セキュリティとネットワークの融合モデルとして、業界全体に広く認知されています。

(※1)Gartner®, Gartner Glossary, April 4th, 2025 Secure Access Service Edge (SASE) https://www.gartner.com/en/information-technology/glossary/secure-access-service-edge-sase
GARTNERは、Gartner Inc.または関連会社の米国およびその他の国における登録商標およびサービスマークであり、同社の許可に基づいて使用しています。All rights reserved.

SASEが注目される背景

近年のデジタルトランスフォーメーション(DX)の加速により、企業のIT環境は大きく変化しています。特にコロナ禍をきっかけとしたリモートワークの急速な普及は、従来の境界型セキュリティモデルの限界を露呈させました。

また、SaaSやクラウドサービスの利用拡大により、データなどが社内ネットワークの外に分散し、従来のVPNなどでは対応しきれない状況が生まれています。こうした背景から、ユーザーの場所を問わず、一貫したセキュリティポリシーを適用できるSASEが注目されているのです。

VPNとの違い

VPNは暗号化されたトンネルを使って特定の拠点や端末とネットワークを直接接続する技術ですが、VPNはネットワークの安全な接続に特化しているため、接続先のセキュリティ対策は別途必要です。一方、SASEはVPN技術を大きく進化させたもので、ネットワークとセキュリティをクラウドで統合し、一元管理するアーキテクチャです。

また、VPNはリモートアクセス時のパフォーマンス低下が課題ですが、SASEはグローバルに分散したクラウドインフラを活用することで、場所を問わず高速な接続を実現します。

ゼロトラストとの違い

ゼロトラストとSASEは密接に関連していますが、根本的に異なる概念です。ゼロトラストは「何も信頼しない、常に検証する」という基本理念に基づくセキュリティの考え方であり、組織の内外を問わず全てのアクセスを検証します。

一方、SASEはこのゼロトラスト思想を実現するための具体的なアーキテクチャであり、ネットワークとセキュリティ機能をクラウドで統合して提供します。ゼロトラストが目指すべき目標や原則を示すのに対し、SASEはその実現手段を提供する実装フレームワークといえるでしょう。

CASBとの違い

CASBとSASEは、どちらもクラウドセキュリティに関わる重要な技術ですが、その範囲と目的に明確な違いがあります。CASBはCloud Access Security Brokerの略で、クラウドサービスの利用に特化したセキュリティゲートウェイです。主にSaaS(Software as a Service)アプリケーションへのアクセス制御やデータ保護に重点を置いています。

一方、SASEはCASBの機能を包含しつつ、より広範なネットワークセキュリティとWANの機能を統合したフレームワークです。つまり、CASBはSASEを構成する要素のひとつといえるでしょう。

SASEの仕組みとアーキテクチャ

SASEの仕組みとアーキテクチャ

ここからはSASEの仕組みとアーキテクチャについて解説します。

SASEの構成要素と仕組み

SASEの構成要素は、大きく分けてネットワークサービス1つと、セキュリティサービス4つで成り立っています。

サービスの種類 サービス名 機能
ネットワーク SD-WAN
(Software-Defined Wide Area Network)
ウェブトラフィックを監視・制御
セキュリティ SWG
(Secure Web Gateway)
マルウェアや不正サイトからの保護
セキュリティ CASB
(Cloud Access Security Broker)
クラウドアプリケーションの利用状況を可視化。
データ漏えい防止やコンプライアンス確保。
セキュリティ ZTNA
(Zero Trust Network Access)
ユーザーやデバイスのゼロトラスト認証
セキュリティ FWaaS
(Firewall as a Service)
トラフィックのフィルタリングやセキュリティポリシーの適用

これらの要素がクラウド上で統合され、単一のプラットフォームとして機能することで、場所やデバイスを問わず一貫したセキュリティとネットワークサービスを提供できます。

クラウドネイティブアーキテクチャとは?

SASEはクラウドネイティブアーキテクチャが前提となります。クラウドネイティブアーキテクチャとは、クラウド環境を最大限に活用するために設計された構造のことです。コンテナ技術やマイクロサービスを基盤とし、アプリケーションを小さな独立したサービスに分割することで、柔軟な拡張性と高い可用性を実現します。

SASEはこのアーキテクチャの採用により、トラフィック量の変動に応じて自動的にリソースを調整し、常に最適なパフォーマンスを維持できるのです。また、地理的に分散したクラウドノードを活用することで、ユーザーの場所を問わず低遅延のサービス提供が可能になります。

ポリシーベースのアクセス制御

SASEにおけるポリシーベースのアクセス制御は、ユーザーやデバイス、場所、アプリケーションなどの多様な属性に基づいてアクセス権限を動的に判断する仕組みです。

例えば、社内のパソコンからは全システムへのアクセスを許可しつつ、私用デバイスからは機密性の低いデータのみへのアクセスに制限するといった柔軟な運用が可能になります。ポリシーは一元管理されるため、組織全体で一貫した制御を実現しながらも、部門や役職に応じた細やかな権限設定も可能です。

SASE導入のメリット

SASE導入のメリット

ここからはSASE導入のメリットについて解説していきます。

セキュリティの強化

SASEの最大のメリットは、セキュリティの大幅な強化です。従来の境界型セキュリティと異なり、SASEはネットワークとセキュリティをエッジで統合することで、あらゆる接続ポイントを保護します。

データの暗号化、不正アクセス防止、マルウェア対策など複数のセキュリティ機能が統合されているため、多層防御による包括的な保護が可能です。さらに、継続的な監視と分析により、異常な振る舞いを早期に検知し、セキュリティインシデントの発生を未然に防ぐことができます。

コスト削減と運用効率の向上

SASEの導入により、企業は複数のセキュリティ製品やVPNを個別に管理する必要がなくなり、コスト削減が期待できます。従来のアプローチでは、各拠点にファイアウォールやVPN装置などの物理機器を設置し、それぞれに対して更新やパッチ適用などの管理が必要でした。

SASEはこれらの機能をクラウドベースの単一プラットフォームに統合するため、ハードウェア投資を削減し、保守コストも低減します。また、一元管理によって運用チームの負担が軽減され、ITリソースをより戦略的な業務に振り向けることができます。

高い柔軟性と拡張性

SASEの大きな魅力は、ビジネス環境の変化に合わせて柔軟にスケールできる点です。従来型のネットワークセキュリティでは新拠点の追加時に物理機器の導入が必要でしたが、SASEではクラウドベースのアプローチにより、数クリックで新拠点やリモートワーカーを安全に接続できます。

また、トラフィック量が急増しても自動的にリソースを拡張し、パフォーマンスの維持が可能です。季節変動のある業種や急成長企業にとって、この柔軟性は非常に価値があります。さらに、グローバル展開を目指す企業も、各国の規制に合わせたセキュリティポリシーを容易に適用できるため、国際的なビジネス拡大をスムーズに進められます。

SASEのデメリットや導入における注意点

SASEのデメリットや導入における注意点

SASEは多くのメリットをもたらす一方で、導入には慎重な検討が必要な側面もあります。ここからはSASEのデメリットや注意点について詳しく見ていきましょう。

ネットワーク品質への依存

SASEはクラウドベースのサービスであるため、インターネット回線の品質に大きく依存します。特に帯域幅が不足していたり、遅延が発生したりすると、SASEのパフォーマンスが著しく低下する恐れがあります。

クラウドプロバイダーのエッジロケーションからの距離によっても遅延が生じる可能性があるため、導入前には十分な回線診断と、必要に応じた帯域の増強計画を立てることが重要です。万が一の回線障害に備えたバックアップ回線の確保も検討すべきでしょう。

一元管理ゆえの運用課題

SASEの一元管理は多くのメリットをもたらす一方で、運用面での課題も存在します。複数のセキュリティ機能とネットワーク機能を統合管理するには、幅広い専門知識を持つ人材が必要となります。ポリシー設定の複雑さも課題です。

組織全体の一貫したセキュリティポリシーを設計・実装するには、事業部門ごとの要件を適切にバランスさせる必要があります。これらの課題に対応するためには、段階的な導入と継続的なトレーニングプログラムの実施が不可欠です。

初期導入のハードル

SASEの導入初期段階では、既存のネットワークインフラとの統合が大きな課題となります。長年使用してきた従来型のネットワーク機器やセキュリティ製品をSASEアーキテクチャに移行する際には、互換性の問題が発生することがあるからです。

また、組織全体のセキュリティポリシーを再設計し、クラウドベースのアプローチに適応させる必要が生じることから、多くの時間と専門知識が求められます。適切な人材が確保できない場合は、外部の導入支援企業へ頼ることも検討しましょう。

SASE導入の3ステップ

SASE導入の3ステップ

SASE導入を成功させるためには、段階的なアプローチが重要です。ここからはSASE導入の3ステップについて解説します。

目標設定と導入計画の策定

SASE導入の第一歩は、自社のセキュリティ目標とネットワーク要件を明確に定義することです。まず現状のネットワークインフラとセキュリティ体制を評価し、どのような課題があるのかを特定しましょう。次に、短期・中期・長期の目標を設定し、優先順位をつけることが重要です。この段階で、経営層の理解と支援を得ることも成功の鍵となります。目標が定まったら、自社に最適なSASEソリューションを選定し、導入計画を策定します。

導入と運用

導入計画が承認されたら、いよいよSASE実装のフェーズに入ります。まずはパイロット部門や小規模なユーザーグループから段階的に導入し、問題点を早期に発見することが重要です。この段階でセキュリティポリシーの適切な設定が不可欠で、組織のセキュリティ要件を反映した詳細なルール作りが求められます。同時に、エンドユーザーへの教育も欠かせません。新しいアクセス方法や認証プロセスについて、わかりやすいマニュアルや研修制度を用意しましょう。

評価と検証

SASE導入後は定期的な評価と検証が不可欠です。セキュリティインシデントの減少率、ネットワークパフォーマンスの向上度、運用コストの変化などの定量的指標を測定しましょう。ユーザー体験調査も実施し、アクセス速度や使いやすさについてのフィードバックを収集します。これらのデータをもとに、当初設定した目標との乖離を分析し、必要に応じてポリシーやアーキテクチャの調整が必要です。継続的な改善サイクルを確立することで、常に最適なSASE環境を維持できます。

まとめ

まとめ

SASEは、クラウド時代のセキュリティとネットワークの統合という新たな枠組みを実現します。導入にはいくつかの注意点があるものの、段階的なアプローチで対応が可能です。今後は、AIとの統合やさらなる自動化が進み、より高度なセキュリティ体制の構築が期待できます。未来のデジタルビジネスを支える基盤として、SASEの可能性に注目していく必要があるのです。

オプテージでは、ネットワーク機能とセキュリティ機能を一体として提供するSASE対策サービス「OPTAGE SASE powered by Prisma Access」を提供しています。導入から運用までをトータルで支援しますので、運用負担を軽減したい企業さまにもおすすめです。

SASE導入をご検討の際は、ぜひオプテージまでお気軽にご相談ください。

◎製品名、会社名等は、各社の商標または登録商標です。

関連サービスのご紹介

著者画像

著者 OPTAGE for Business コラム編集部

ビジネスを成功に導くICTのお役立ち情報や、話題のビジネストレンドをご紹介しています。

SNSシェア