一般的な総合病院とは異なり、特殊な専門病院であるため通常のパッケージソフトでは対応不可能。そこで多様な選択肢を持つケイ・オプティコムさんを選びました。前職のNPO法人神戸画像診断支援センター立ち上げ時にも、遠隔画像診断システムのネットワーク整備を依頼しており、その仕事ぶりは高く評価していました。今回もシミュレーションする時間があまりない中、使いやすいシステムを構築してもらったと思っています。今後とも良きパートナーとして小回りの効くサポートを期待しています。
神戸低侵襲がん医療センター 様
最先端のがん治療を支える適応力の高い医療情報ソリューション
- 課題
- 業務効率化 / セキュリティ対策強化 / BCP対策
- 業種
- 医療
- 従業員規模
- 101名~500名
- 導入サービス
- インターネットハイグレード / インターネットオフィス / データセンターサービス / 医療情報ソリューション
年々がん患者数が増加の傾向にある中、世界に先駆けて、超高齢社会に突入した日本では、高齢者にやさしいがん治療が求められている。その一つの答えを示すのが、今年4月に開設された「神戸低侵襲がん医療センター」である。切らずに治すことを目指す、今後のがん治療のモデルケースとなる先進施設。その基盤を支えているのは柔軟性と拡張性を特長とする『医療情報ソリューション』である。
サービス導入レポート
超高齢社会に求められるがん治療とは
体にメスを入れずに、がんを治す。手術を行わないので、全身麻酔が不要。そんな新しいスタイルのがん治療に、神戸低侵襲がん医療センターは取り組んでいる。
「『小さく見つけてやさしく治す』を基本理念として、放射線治療と抗がん剤、カテーテルを使ったIVR※1などに特化したがん治療を行っています。何よりの目的は、医学用語で言う低侵襲、すなわち患者に与えるダメージをできる限り抑えながら、がんを治療することです」と、病院長の藤井正彦氏は設立趣旨を語る。
その土台となるのが、飛躍的な進歩を遂げた放射線治療技術である。放射線治療は長年にわたり、手術ができない場合の補助対応策とされてきた。ところが今では、前立腺がんや子宮頸がん、早期の肺がんや食道がんなどでは、外科手術と治療成績は同等になってきている。また、局所進行子宮頸がんでは、抗がん剤と放射線治療の併用療法が最も優れた治療、すなわち標準治療であることがコンセンサスになっている。
「低侵襲のがん治療は、これからの超高齢社会に欠かせない技術です。高齢者が増えれば、がん患者もさらに増加します。ところが全身麻酔の必要な手術は体への負担が大きく、高齢者には耐えられないケースも出てくるでしょう。そんな状況を救うのが低侵襲治療です。臓器切除による機能低下を防ぎ、術後のQOL※2を維持することも低侵襲治療のメリットです」と、藤井氏は新しい治療法への思いを語る。
神戸低侵襲がん医療センターでは、最新鋭の機器による放射線治療との相乗効果が期待できる抗がん剤治療や、がんの早期発見を可能にする高度な画像診断にも力を入れる。がんは小さければ小さいほど、治療時の体への負担も少なくなるのだ。
(※1)IVR(血管内治療)
抗がん剤をカテーテルで局所に投与することで、副作用を抑えて効果を何倍にも高める治療法
(※2)QOL(Quality of Life)
患者の生活機能ができるだけ保たれ、人間らしい生活を続けられること
欠かせない他の医療機関との連携
神戸低侵襲がん医療センターは、神戸医療産業都市の一角にあり、がん治療に特化する同センターにとって、この立地は大きな意味を持つ。治療を完結するためには、他の医療機関との連携が欠かせないからだ。
「当センターは、放射線診断、放射線治療に腫瘍内科、消化器内科など、一部の診療科に限られています。高齢者の場合は治療過程で心筋梗塞や脳出血など他の疾患を発症するリスクに備えなければなりません。そんなときに、バックアップしてくれる総合医療機関が必要なのです」と、語る藤井氏。母体である神戸大学医学部附属病院はもちろん、すぐ近くに位置する神戸市立医療センター中央市民病院や先端医療センターによるサポートは、患者に大きなメリットをもたらす。
もとより一方的に協力を求めるわけではなく、放射線治療に適した患者は積極的に受け入れる。センター内には常に最新鋭の放射線装置が設置され、患者はこれを使った治療を受けることができる。機器は耐用年数にこだわらず、新世代機の登場に合わせて随時入れ替える予定だ。
「がん治療に特化した我々のような施設と、他の医療機関との連携は、日本では他に例がありません。低侵襲治療だけではなく、新しい連携の在り方についても、今後のモデルを示せればと考えています」と、藤井氏。
最先端の施設が「病院情報システム」に求める条件
新しい医療の姿を表現する施設には、それにふさわしい「病院情報システム」が求められる。システム構築にあたって最重視されたのが柔軟性と拡張性だ。
当初は50床程度と小規模なスタートとなり、備える機能も一般的な総合病院とかなり異なる。そのため通常300床程度の総合病院を対象とするオールインワンのパッケージソフトはがん治療に特化した病院に不要なシステムが付いてくる一方で、肝心の放射線部門システムなどの特殊機能がカバーされておらず、まさに「帯に短し襷に長し」だ。「結局、電子カルテ、医事会計などの基幹システムから部門ごとに必要なシステムまでを、個別に選択して統合することになりました」と、藤井氏はシステム構築の基本的な考え方を語る。
さらにもう一点、重視されたのが将来的な拡張性だ。開院当初は規模を抑えるとしても、今後もスケールアップが予定されている。電子カルテ閲覧端末の増加とコストアップが比例するような事態は避けたい。
「ご要望にお応えできるようWeb方式の電子カルテをご提案しました。これならライセンスフリーなので、端末の数が増えてもコストは変わりません」と、ケイ・オプティコム法人・公共事業推進本部の藤原孝則は提案理由を説明する。
「リプレースが必要となる時期には、経年劣化やデータの蓄積などにより、一般的にレスポンスが低下するものです。ところがケイ・オプティコムさんのシステムを導入している他の医療機関に話を聞くと、そうしたトラブルは起こらないとのことで安心しています。イニシャルからランニングを含むコストメリット、リプレース時を含むシステムの安定性、さまざまなメーカーのシステムから必要なものだけを揃え、カスタマイズニーズに柔軟に対応してくれる総合力などを勘案し、ケイ・オプティコムさんの提案が最善と判断しました」と、藤井氏は選定理由を語る。
『医療情報システムサービス』概要図
医療機関連携のカギとなる情報共有
患者のサポート体制を万全なものとするため、前にも述べたとおり、神戸低侵襲がん医療センターは、神戸大学医学部附属病院をはじめ中央市民病院など他の医療機関との連携を重視している。連携をスムーズに進めるカギは情報共有にある。以前、NPO法人神戸画像診断支援センターの立ち上げに参画した藤井氏の情報共有に関する問題意識は、「データ劣化を防ぐこと」にあった。
「情報システムのどこかに紙ベースの運用が入り込むと、一気にデータの精度が下がります。こうした事態を避けるために神戸大学の医事情報部や中央市民病院に対して、地域医療連携ネットワークの導入を働きかけています」と、藤井氏。
仮にいずれかの病院が電子カルテシステムの更新時にクラウド導入に踏み切れば、神戸低侵襲がん医療センターもクラウド化し、同じサーバへデータを蓄積することでシームレスな情報共有が可能となる。
マルチベンダー体制ならではの導入プロセス
システム構築から運用に至るプロセスでは、マルチベンダー体制ならではの課題があった。ゼロベースからのシステム構築には、相当な作り込みと念入りな擦り合わせが必要となるのだ。
「さまざまなシステムを利用していた医師やスタッフが一から新たなシステムを利用するのですから、使いやすいシステムにするためにはかなり試行錯誤しました。何度もシミュレーションを実施することが大切だと感じましたね」と、開発のプロセスを藤井氏は振り返る。また、導入後もシステムに関する問い合わせにすぐに対応できるようセンター内にヘルプデスクを設置し、フォロー体制も万全だ。
「今回のシステム導入にあたっては、歯科との連携も課題の一つとなっていました。基本的なフォーマットが異なる歯科の電子カルテとの融合をいかに図るか。ケイ・オプティコムさんには、かなり汗をかいてもらいましたが、システム全体のブラッシュアップも含めて、まだまだ頑張っていただかないと」と、副院長の重廣健氏は今後の要望を語る。
神戸低侵襲がん医療センターは、患者への情報提供に関しても新たな考え方で取り組んでいる。そこで採用されたのがデジタルサイネージだ。
「がんという特殊な病気に関する情報は、可能な限り視覚的に理解してもらうべきだと考えています。その点、表現力豊かなデジタルサイネージには大いに期待しています」と、重廣氏は語る。
ケイ・オプティコムの『医療情報システムサービス』は、病院運営に必要な情報システムを、メーカーの枠にとらわれることなくトータルにプロデュースする。この『医療情報システムサービス』だけでなく、デジタルサイネージやネットワークなどをトータルで提供する『医療情報ソリューション』は、今後の日本の医療界を支える強力な基盤である。
ネットワーク構成
お客さまプロフィール
- 神戸低侵襲がん医療センター
- 神戸市中央区港島中町8-5-1
- TEL:078-304-4100(代表)
- http://www.k-mcc.net/
最新の放射線治療、化学療法、IVR、内視鏡治療、画像診断を中心として、低侵襲のがん医療に特化した専門病院。呼吸で位置が変わるほど微細ながん細胞さえも追尾し、放射線を的確に照射できる最新装置を備える。民間から出資を募る特別目的会社として設立され、運営の自由度を確保する一方で、人材確保などに関しては母体となる神戸大学医学部附属病院の全面的な支援を受ける。神戸医療産業都市の他の中核施設と連携を図りながら、低侵襲に特化した治療を徹底し、日本のがん医療におけるパイオニア的存在となっている。
- お客さまの声
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柔軟で機敏な対応力を評価しました
神戸低侵襲がん医療センター
理事長・病院長
神戸大学客員教授
藤井 正彦氏
サービス名、会社名等は、各社の商標または登録商標です。
掲載内容は2013年9月時点のものです。
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