クラウドが実現する働き方変革、鍵を握るのは「ネットワーク環境」

クラウドが実現する働き方変革、鍵を握るのは「ネットワーク環境」
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テレワーク導入企業の8割以上が効果を実感

2016年9月、内閣官房に「働き方改革実現推進室」が設置され、働き方改革の取り組みが提唱された。政府は、少子高齢化に伴う生産年齢人口減少の問題を解決するため、働き手を増やし、出生率を上昇させ、労働生産性を向上させる取り組みを本格化させた。
改革実現に向けた具体的方針として、同一労働同一賃金などの処遇改善や長時間労働の是正、高齢者の就業促進などが示された。そして、それらと同時に掲げられた注目すべき方針が「柔軟な働き方がしやすい環境整備」である。

いま、子育てや介護によって労働時間に制約を受ける従業員が増えており、離職を余儀なくされるケースも少なくない。深刻な人手不足で悩む企業や、長時間労働で成り立っている企業では、人材の確保と生産性の向上が喫緊の課題であり、従業員一人ひとりに働きやすい環境を提供し、業務効率を向上させる取り組みが必要不可欠となっている。
そこで注目されているのが、「テレワーク」という働き方である。時間や場所の有効活用を可能にするテレワークの推進により、従業員の働き方を変革することで、育児休業からの早期復帰、短時間勤務のフルタイム化、介護離職の防止だけでなく、高齢者が通勤せずに在宅で勤務できるようになることから、高齢者の雇用促進も期待できる。
また、業務を効率化することで無駄な残業が解消されれば、従業員の個人としての時間が増え、私生活も充実し、人生をさらに豊かなものにするワーク・ライフ・バランスの実現に寄与する可能性も秘めている。

総務省が2017年6月に発表した「平成28年通信利用動向調査」によると、テレワークを導入していると回答した企業に対して、その導入効果を尋ねた結果、「非常に効果があった」と回答した企業は30.1%、「ある程度効果があった」と回答した企業は56.1%となり、合わせて86.2%の企業が「効果があった」と回答している。(図1参照)
テレワークを導入した多くの企業が導入効果を実感しており、導入の意義を示す結果となっている。

図1:テレワーク導入企業の8割以上が効果を実感

図1:テレワーク導入企業の8割以上が効果を実感(出典「平成28年通信利用動向調査」)

テレワークに欠かせないセキュアなクラウド利用

そして、テレワークの活用において、多くの企業で導入されているのがクラウドサービスである。コスト面での利点に加え、大規模な設備を配置する必要がなく運用面でのメリットも大きいことから、クラウドサービスを利用する企業が急増している。
オフィスや自宅、移動中の電車の中など、場所を問わず社内環境にアクセスでき、会社にいるのと同様に業務を行うためには、クラウドの利用が欠かせない。
例えば、書類や資料の共有、チャットやオンライン会議システムでのコミュニケーションなど、クラウドサービスを使うことで、どこにいてもオフィスと同じような環境で仕事をすることが可能になる。今や、基幹業務システムもクラウドでの環境整備が進んでおり、もはやクラウドを活用しなければ仕事が成り立たないといっても過言ではない。

しかし、テレワークを社内に根付かせ、クラウドの利用を推進するためには、十分なセキュリティを確保する必要がある。PCやスマートデバイスを社外に持ち出して仕事をすることでセキュリティレベルが低下し、情報漏洩するようなことがあれば、企業の信用は一瞬で失墜してしまう。そのような最悪の事態を招かぬよう、社外であっても社内と同レベルのセキュリティ環境を整備しなければならない。

そこで鍵を握るのが、セキュアな接続を可能にするネットワークの構築である。自宅や外出先から社内環境にアクセスする場合、インターネットのように誰でも利用できるオープンなネットワークを利用してしまうと、通信データの漏洩や改竄のリスクが高まってしまう。
そのため、例えば、インターネットから分離された完全閉域型のVPN網を利用することで、悪意のある第三者から重要なデータを守り、出先にいながら高セキュリティなリモート接続が可能になる。データが行き来する閉域網は、通信事業者が自社のサービスとして構築、管理している。通信事業者によって管理されたネットワーク内で通信を行うため、一般のユーザーはアクセスできない。(図2参照)

図2:閉域ネットワークにより高セキュリティなリモート接続が可能

図2:閉域ネットワークにより高セキュリティなリモート接続が可能

テレワークの導入を進めるうえで、必ず課題に挙がるのがセキュリティリスクだ。ここを解決せずに、テレワークの利用は進まない。
しかし、国を挙げての働き方改革が進み、大企業を中心にテレワークが導入され始めた背景には、いつでもどこでもオフィスと同じ環境が手に入るクラウドサービスの充実と、情報漏洩などのリスクからデータを守るセキュリティ技術の進歩がある。

いち早くテレワークを導入し、成果を上げた企業の成功事例をご紹介する。
都内に本社を置く某食品メーカーがテレワーク制度を導入したのは2013年のこと。時間と場所に拘束されない柔軟な働き方の実現、業務効率と生産性の向上を目的に、ワークスタイル変革に着手したのがきっかけだ。当時の対象者は、子育てや介護に従事する従業員や入社3年目以降の一部の従業員のみ。週に2日までという制限もあった。
しかし、より効果的な制度構築のため、対象者を拡大。現在では、日数の上限も撤廃され、約半数の社員が週に1回はテレワーク制度を利用するまでに拡大している。

テレワーク導入当初は、シンクライアント環境を使用した自宅PCでの作業が原則だったが、2016年にはオフィスPCをモバイル化。書類はデジタル化され、スカイプやテレビ会議システムなども備えている。VPNを使用することで、強固なセキュリティを確保し、ネットがつながる環境であれば、社内外どこでもオフィスと同じ環境で仕事をすることが可能になった。
また、出勤管理はモバイルPCのログを利用。実質労働時間やテレワークの利用状況を見える化している。
これらの取り組みの結果、テレワークの導入前と比べて、生産性は25%増、女性の離職率は約40%減少したという。

同社では、今年度中にはフルフレックス制やノー残業デーを導入する予定だ。働き方は、時代の流れや個人の価値観で変わるもの。すべての従業員が最大限に能力を発揮できる企業を目指して、より柔軟な働き方を追求している。

◎製品名、会社名等は、各社の商標または登録商標です。

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著者 OPTAGE for Business コラム編集部

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