「働き方改革法」施行までに、押さえておきたいポイント

「働き方改革法」施行までに、押さえておきたいポイント
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法改正のポイントと、特に注意すべき点

このメールマガジンをお読みの方なら、もうすっかりご存じだと思いますが、2018年5月31日の衆議院、さらに6月29日の参議院で「働き方改革を推進するための関連法律の整備に関する法律案」、通称「働き方改革関連法案」がそれぞれ可決され、成立しました。これにより、2019年4月より順次、関連法の改正が施行されることになっています(企業規模により、施行時期が変わります)。

この改正によって、企業としてはどのような対応しなければならないか、いろいろ情報収集中の方もいらっしゃるかと思います。

そこで今回は、改正法で企業として特に注意すべきポイントなどを、一緒に勉強していきながらご紹介したいと思います。

さて、今回の「働き方改革関連法」のテーマを具体的に挙げると・・・

1.残業時間の上限規制

2.有給休暇の取得を義務化

3.フレックスタイム制の見直し

4.インターバル制の普及促進

5.高度プロフェッショナル制度の新設

6.同一労働・同一賃金の実現

7.中小企業での残業60時間超の割増賃金率引き上げ

8.産業医の権限強化

となります。この中でも特に注目すべき「1.残業時間」「2.有給休暇」「6.同一労働・同一賃金」を簡単にご紹介したいと思います。

実質無制限に近かった「残業時間」に、厳格な制限が

世の中の、いわゆる「ブラック企業」の代表ともいえるのが長時間残業でしょう。今回これが大きく変わります。ひと言でいうと、今まで「なあなあで済ましていた」ことが「厳格化」され、罰金や懲役を科せられるようになるのです。

今までも残業時間は1カ月45時間、年間360時間を限度基準として示されてはいましたが、この数値はあくまで「基準」であり、法律的に決められた限度ではありません。また労使協定(いわゆる36協定)の「特別条項」によって、事実上、限度はあってないようなものでした。これが先に「なあなあで済ましていた」と述べた要因です。

しかし今回、1カ月の残業上限時間45時間、1年360時間(1年単位の変形労働時間制では、1カ月42時間、1年320時間)と法律的に決められたわけです。
事実上、青天井ともいえた「36協定」で定めることができる時間外労働・休日労働の限度時間については、1カ月100時間未満、1年720時間以内と定められました(ただし、原則上限時間である45時間を超過できるのは、6カ月以内)。さらに、複数の月の平均残業時間を80時間以下にしなければなりません。
この限度を超えて労働させると、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金となりますので、特に注意が必要です。

(例)仕事熱心なAさんは、超繁忙である会社の求めに応じ、4月、1カ月の残業と休日労働を上限時間近くである90時間しました。5月も繁忙は続いたため90時間しようと考えましたが、そうなると4、5月の平均残業時間が80時間を超えるため、5月は70時間だけ残業しました。その後、6~9月も平均80時間を超えないようにそれぞれ60時間、残業しました。
Aさんは、すでに4~9月まで、1カ月の原則上限である45時間を超えて残業しているため、残りの半年は、もう月45時間を超えて残業できません。超えた場合、会社に罰則が科せられます。

社員任せになりがちだった「有給休暇」管理も、会社側で

「有給休暇」についても、今までなら社員自身が「忙しくて、取ってられない」で済ますことも多かったのではないかと思います。しかし、これも年10日以上の年次有給休暇が与えられる社員には、1年以内に5日の有給休暇を取得させるよう"義務付け"られました。

有給休暇には、会社側から全社一律あるいは部署ごとや個人ごとに休暇取得日を指定できる「年次有給休暇の計画的付与制度」というものがありますが、この「計画的付与制度」と合わせても5日にならない場合、社員の意向を聞いて「いついつ休暇を取るように」と指示して取得させなければ、会社は労働基準法違反となりますので、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金となります。ただし有給休暇の付与日数のうち、5日は個人が自由に取得できる日数として残さなければならないため、全てを「計画的付与制度」で与えることはできません。

有給休暇は社員に与えられた権利です。だからといって取得については義務化されていたわけではなく、これまで社員任せになっていなかったでしょうか。上記の通り、法令違反は企業側の罰則となるわけですから、来年4月以降は会社が積極的に社員の有給休暇取得を励行するよう、少し意識を変える必要があるかもしれません。

会社や上司が率先して、社員に有給休暇を取らせる必要があるでしょう。

課題もまだまだ多い「同一労働・同一賃金」

正社員など無期限雇用フルタイム労働者(正規雇用労働者)と、パートタイム、派遣、アルバイトなど非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差を解消させるため、今回の改正に「同一労働・同一賃金」が盛り込まれました。大企業では2020年4月から、中小企業でも2021年4月から正式に導入される予定です。

ただこの問題には、非常に微妙な部分も含まれます。まず「不都合な待遇差を解消」と書かれていますが、何をもって「不都合」なのか、「不都合でないのか」が、まだ明確とはいえないからです。それに「正社員同士」でも、必ずしも同一労働・同一賃金ともいえないとの指摘があります。なぜなら社員の年齢・社歴・家族の構成といった要素で、賃金に違いのでる場合もあるからです。

実施予定が2020年4月(大企業の場合)と、残業などに比べ施行が遅いのは、そのあたりの詰めと調整を行う時間が、もっと必要だからではないかと考えられます。

ここで私たちが覚えておかねばならないことは、「非正規労働者にも、もっと賃金を払わねばならなくなる」というネガティブで単純な結論ではなく、正規でも非正規でも労働者が多様な働き方を選択できるような社会が求められている、ということだと思います。いずれにせよ同一労働・同一賃金について、実施される2020年までにまだまだ議論も出てくると思いますので、充分、注意して見守る必要があるでしょう。

「働き方改革法」をしっかりと処理し、ホワイト企業への第一歩を

今回の改正法は、今まで黙認されてきたことや、労・使・国の間で「なあなあで済まして」きたことが厳しく規定されたことで、違反の場合、罰則が科されるという、一見、企業側にとって非常に厳しい内容に思えます。しかしこれをきっかけに、会社の中で、「働き方」というものをよく議論することで、よりよい職場に変えるチャンスにもなります。

改正の最大のテーマは、そのタイトルに記されている通り「働き方」の改革に他なりません。「残業などで時間をかければ、しっかりと仕事をしている」という見方から、「仕事時間の長短ではなく、仕事の質を重視」する見方へと切り替えること。

あるいは、社員が休みたい時、誰に気兼ねすることもなく休める、そんな職場の雰囲気を造ること。さらには正規社員も非正規社員も分け隔てなく、自分の仕事にやりがいと達成感をもって取り組めること・・・。これらが改正の目指すものではないかと思います。「働く」ことの意味を、みなさんもう一度、しっかりと考えて、会社をホワイトに、明るい色に変えるようにしていきましょう。

労使が協調し、「働く意味」を考え、「働き方」をよりよい方向に変えていくことが必要です。

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著者 OPTAGE for Business コラム編集部

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