「こんなはずでは...」企業が陥りがちな間違ったIT化

「こんなはずでは...」企業が陥りがちな間違ったIT化
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IT投資に潜む"勘違い"

昨今、働き方改革やデジタルトランスフォーメーションへの取り組みを背景に、IT投資に対する前向きな流れが継続している。
矢野経済研究所の調査によると、国内民間企業のIT投資は、2019年度に12兆7,800億円、2020年度に12兆9,840億円へと拡大する見通しである(図1)。

(図1:国内民間IT市場規模推移と予測(矢野経済研究所調べ))

職場を見回してみても、気付けばさまざまなところで業務効率化や業務改善を狙ったIT化が進んでいることだろう。
しかし、IT化に踏み切ったのは良いが、導入前よりも仕事が増えてしまったり、IT化による費用対効果が感じられず、「こんなはずでは...」と頭を抱えている企業が多いのが実状である。
ITツールを導入したことで満足し、「業務効率化に役立っている」と勘違いしているケースも見られ、現場から反発の声が上がることもしばしば見受けられる。

一見便利そうに見え、業務の効率化も進んで、時代にもキャッチアップしているかのように映るIT化。しかし、それに振り回されて効率が下がるようでは本末転倒だ。加えて、大規模なITシステムを導入する場合は莫大なコストが発生し、業績にも大きく影響する可能性があるため、IT化の失敗が時として企業の命運を分けることにもなる。

よくある"間違ったIT化"

企業がIT化で失敗してしまう原因で多いのが、現場の声を聞かずにIT化を進めてしまうことである。
昨今では中小企業でもIT化が進んで来ており、導入に向けてITベンダーと交渉を進める経営者も少なくない。
しかし、経営者も含め、中小企業にはITの知識に長けた人材が少なく、本当に必要な課題が何なのか分からないまま、漠然としたイメージでIT化を進めてしまうことがある。
その結果、新たなシステムを導入したのは良いが、以前と比べて使い方が複雑になったりシステム操作が増えるなど、逆に作業が煩雑になってしまうといった事例も見受けられる。

また、十分な構想もないままシステム導入の対象を広げ過ぎてしまい、後になって取り返しがつかなくなるというケースも少なくない。例えば、販売管理システムを導入する際に、現場の声を拾い上げてあれもこれもと要望が膨れ上がり、追加カスタマイズを行った結果、当初の導入目的から乖離してしまい、使いにくいシステムが出来上がってしまうというような事例である。
このようなケースでは、改めて新しいシステムを導入するにしても莫大な費用が発生してしまうほか、システムそのものが放置されることで運用コストが垂れ流しになってしまうというリスクもはらんでいる。

その他にも、新たなシステムの採用に際して、事前に部門同士で何を連携し、何を共有化すべきなのか刷り合わせを行わずにシステムを導入した結果、部門間の連携で新たな業務が発生するようになってしまい、生産性が著しく下がってしまったというような失敗事例も存在している(図2)。

(図2:よくある"間違ったIT化"の失敗例)

IT化の成否を分けるポイント

ここまでIT導入による失敗事例をいくつか紹介してきたが、もちろん企業がIT武装すること自体は悪いことではない。
重要なことは、よくある失敗事例から「IT化の成否を分けるポイント」を学び、自社の取り組みに生かすことである。

「CRM導入」でよくある失敗と解決ポイント

例えば、大企業や、組織が大きくなってきた中小企業では、顧客管理にCRM(Customer Relationship Management)ツールを導入しているところも多い。CRMは、顧客のニーズを具体的に把握したり、メール・電話などのやりとりも全社で共有することができるほか、一元的に集約された顧客情報を可視化し、その情報を元により精度の高い情報を提供することで顧客の囲い込みも可能になるなど、効率の良い営業活動を可能とする便利なツールである。
しかし、便利なツールであるが故に、「導入すれば自然と売り上げが上がる」と安易に考えている企業担当者も少なくない。その結果、部門ごとでバラバラに導入してしまっていたり、部門間の連携に無駄が生じ、「CRMは効果が上がらない」という結論に至ってしまう。
CRMの導入で成否を分ける要因は、『導入目的の明確化』と『導入体制の確立』にある。CRMの導入は時として業務プロセスの見直しを伴うこともある。その場合、CRMを利用する担当者には導入の目的と意義を理解してもらい、日々の運用でどのように活用するのかを知ってもらう必要がある。また、導入後の体制維持には、部門ごとの調整や連携が欠かせない。常に企業は部分最適ではなく、全体最適の目線でプロジェクトを遂行する必要があるだろう。

「RPA導入」でよくある失敗と解決ポイント

また昨今、大企業を中心にRPA(Robotic Process Automation)の導入が進んでいる。ホワイトカラーの単純なデスクワークを代行・自動化するRPAは、人件費削減、アウトプットのミスの軽減、業務スピードアップ、クリエイティブな領域に裂く時間の増加といったメリットを享受することができる。そのため、経理や人事、総務といったバックオフィスで行う定型業務の自動化などで採用が進んでいる。

しかし、RPAを導入する場合、トップダウンでいきなり全社導入を展開していくと、部門間で業務の進め方やルールが異なるため、意見が統一されないということがよく起こる。また、現場主導になり過ぎても、管理の行き届かないRPAロボットが次々と生まれてしまい、社内のシステム運営に悪影響を及ぼす可能性もある。
導入時は各部門でRPA化したい業務を洗い出し、導入部門や適用業務についてしっかりと議論を重ねた上で、まずは短期導入やスモールスタートなど、最少の投資で始めることを検討すべきであろう。

「VDI導入」でよくある失敗と解決ポイント

さらに現在、働き方改革を旗印にテレワーク実現に向けた環境整備が進んでおり、PCのデスクトップ環境を拡張する仮想デスクトップ(VDI:Virtual Desktop Initiative)などを導入する企業も多い。
VDIはPCのデスクトップ環境を拡張するソフトウエアの一種で、サーバ内の仮想サーバ環境でOSやアプリケーションを実行し、手元の端末に画面上の情報だけを転送するという仕組みである。端末に情報は残されないため、PC紛失時の情報漏えいの危険性が軽減されるため、外出先のPC使用が禁じられていた企業でも導入が容易となり、これまで活用できていなかった隙間時間で現場の業務効率がアップするなどの効果が期待できる。
また、VDIを取り入れることでサーバ一括管理による情報展開が可能となり、部門間を跨いだ展開も容易となるだろう。
しかし、導入に際してオフィス内に仮想デスクトップを管理するサーバやVPN装置を設置したり、社外で使用する端末にもVPNソフトをインストールする必要があるため、それ相応の初期コストは発生する。さらにサーバやストレージのサイジングが適切ではない場合、導入後に「特定の時間帯にレスポンスが低下する」といった事態が発生するケースも多い。
そうならないためにも、VDI導入時には普段の端末の使い方や従業員の働き方を事前に調査し、SIベンダーなどとしっかり相談した上で最適なVDI環境を構築する必要があるだろう。

目的達成のための「手段」に過ぎないITツール

これらのITツールはあくまで「手段」であり、「目的」ではない。また、利用するのは当然のことながら人間側であり、使い方1つでメリットにもデメリットにもなりうるため、導入前の熟考は必須と言えるだろう。
画一的になりがちなIT化ではあるものの、ニーズは企業の数だけ存在する。間違ったIT化によって業務効率を下げてしまわないように、自社に最適なIT化を常に模索し続ける必要がある。

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著者 OPTAGE for Business コラム編集部

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