2019年版、CRM最前線とこれまでを振り返る

2019年版、CRM最前線とこれまでを振り返る
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「顧客満足」とは、いったい何ぞや!? そこからCRMを振り返ると・・・

「CRM」。一度は耳にしたことがあると思います。「CRM」とは、「Customer Relationship Management」の略で、そのまま直訳すれば「顧客関係管理」になります。「顧客関係」というものをどう捉えるかでこの言葉の定義も変わることがありますが、大きくは「顧客満足」を向上させて、自社の商品やサービスを継続して購入してもらったり、熱心なファンになっていただくためのシステムを構築することをいいます(システム自体を指す場合もあります)。

ところで「顧客満足」とは、一体何でしょうか。第一、顧客に満足を与えないビジネス、商売といったものが、果たして存在するのでしょうか? 単純に考えると「ありえない」はずです。しかし、よくマスコミなどで、「客に厳しく注文を付ける店主」「気に入らない客を怒鳴ったり追い出したりする店主」が居るお店が紹介されますが、それがかえって名物となり客が行列を作る・・・といった話題を耳にすることがあります。それらのお店には、おそらく店主の不機嫌さや怒りを上回る、顧客を「満足」させる要因があるはずです。腰を低くしてお客さまに笑顔を振りまくだけが、「顧客満足」ではないことがわかるでしょう。顧客とお店の関係性とは、実に奥深く面白いものなのです。

今日は「CRM」のざっとした歴史を振り返るとともに、最新の「CRMツール」の機能、選び方などをご紹介していきます。

バブル崩壊とともに、前時代的だが平和な「顧客関係」の時代が崩壊!

「CRM」という概念とともに、「顧客満足」がマーケティングの世界で注目され始めたのは、日本では1990年代末からです。筆者はその最大の理由は、店と顧客のつながりが希薄になってきたからだと考えます。また大型量販店の隆盛で、低価格を選ぶ購買傾向が顕著になりました。そこに90年代初頭のバブル崩壊が加わったことで「安さ=善」といった傾向が強まったのです。

同時に、メディアの進化により消費者の情報化が進み、消費者ニーズが非常に多様化したことで、従来の企業主導のプロダクト・アウト(商品ありきの発想)では限界が来てしまったため、顧客主導のマーケット・イン(消費者ニーズからの発想)に転換する必要に迫られたのです。このような顧客主導の発想を支えるものとして、一躍注目を集めたのが「CRM」、つまり「顧客関係管理」という概念だったのです。

契機となったのが、1998年にアメリカの「アンダーセン・コンサルティング(現アクセンチュア)」が出版した書籍「CRM-顧客はそこにいる」(日本版は村山徹, 三谷宏治訳で東洋経済新報社が1999年1月に発行)という書物ではないかと思います。同書では「CRM」を、「ITシステムを利用し顧客データの分析をもとに顧客を理解し、インターネットやコールセンターなど新しいチャネルを使用して顧客との関係を深めるマーケティング手法」と定義され、当時普及しはじめていたパソコンやインターネットなどITツールの浸透もあり、旧来的なマーケティング手法に行き詰まっていた多くの企業に受け入れられたのです。

「CRM」によって、顧客のセグメント、最適顧客の抽出が促進

前述の書籍「CRM-顧客はそこにいる」では、実際に「CRM」を行う方法として、「顧客データベース」の活用が提唱されました。年齢、家族、職業といった顧客の属性はもちろん、購入履歴やサービスの利用履歴、問い合わせやクレームの有無などを詳細に記録し、顧客の購買行動を分析することで「CRM」を可能とさせるのです。

その分析方法のひとつとしてよく持ち出されたのが「RFM分析」という分析手法でした。懐かしく思われる方もいるかもしれませんね。念のため解説しておくと「R」は「Recency」の略で「最終購入日」を指します。「F」は「Frequency」の略で「累積購入回数」を指します。「M」は「Monetary」の略で、「累積購入金額」を指します。この3つを多角的に組み合わせて分析することで、お客さまの購入動向を詳しく類推していこうとする手法です。

「RFM分析」では、顧客満足の追求だけでなく「たまにしか来店しないけど、その度に大きな買い物をする顧客」「1回あたりの購入金額は小さいが、非常に頻繁に来店する顧客」「昔はよく頻繁に買い物をされたのに、ここ1年ほど来店頻度が減っている顧客」といったように顧客をセグメントすことができ、それぞれにあったプロモーションを展開したり、購入する可能性の高い顧客だけにDMを発送するなど、最適顧客の抽出や販売促進策の効率化も進みました。

顧客データの全社的な統合で、戦略的な顧客管理が可能に

昔は「CRM」という"言葉"はなかったと思いますが、それに似た考え方や顧客対応はありました。また、パソコンが普及してからは、エクセルやデータベースソフトを使って、CRM的な作業をしていた方もいると思います。しかし旧来的なデータベースの場合、管理できるのは顧客の連絡先や購買履歴などであり、それ以上の顧客の深い情報については、営業マンや店員の個人的な技量に頼っていました。

それに対し、最新のCRMツールでは、非常に詳細な情報が管理できます。会社名・部署名・担当者名といった定量情報に加え、購買目的・顧客の志向性やニーズといった定性情報を統合して管理できます。また前章でご説明した「RFM分析」を含めた商品・サービスの購買実績、頻度や予算などから、次期購入見込み度など、次の購入機会に関する情報を一元登録し、社内で共有できるのです。

さらに最新のCRMツールでは、顧客情報をもとに商談状況、訪問スケジュール、見込み度と実績などをトータルに管理し、顧客管理から日々の活動、案件の管理までを一度の入力で行い、あらゆる情報にアウトプットできるようになります。社内の全部門で、見込み客と案件の現状が「見える化」できることで、とても効率的で無駄のない販売戦略が構築できるようになります。また、最近関心が高まっている「マーケティングオートメーション(MA)・ツール」との連動を図ることで、顧客創出から育成までもを含め、戦略的なマーケティング活動が可能になります。

全社で顧客データの共有、見える化を図ることで、社内作業の効率化も期待できます。

「CRMツール」の導入と、ツール選びのポイント

では自社で「CRMツール」を導入するとして、いったい何から取りかかればいいのでしょうか?まずは自社の状況に合うソフト選びが大切です。再度、「CRMツール」の主な機能をまとめておくと・・・

●顧客とのやり取りや購入履歴、次のアプローチなど顧客情報を全社で可視化できる
●顧客情報を用いて、より的確な分析が可能となり、顧客へのサポート、提案が行える
●営業担当個々の力量に頼るのではなく、一定品質での顧客情報管理ができる

ツールが持つこれらの特長を自社の業務に活かす上で、以下のようなポイントを基準として、ソフトを選んでみてはいかがでしょうか。

①求める指標が可視化できるか?
販売戦略や企業の規模によって、どのような指標を求めるのかが異なってきます。店頭やECサイトといったチャネルによっても、求めるものは変わって来ると思います。自社が何を求めるのか、それを可視化することができるのかを考えましょう。

②自社で運用が可能か?
情報入力に高度な操作が必要になるなら、従業員の負担が増え、下手をすると使われなくなってしまいます。操作性については、誰もが理解し操作できるものを選びましょう。

③セキュリティ対策は十分になされているか?
顧客情報は、第一級の機密情報だと考えてください。仮に流出でもしたら、企業の信頼性を根底から崩壊させる可能性もあります。ツールがどのようなセキュリティ対策をとっているか、しっかりと把握しておきましょう。

④クラウド型かオンプレミス型か?
自社にシステム環境を構築しない「クラウド型」は導入が手軽で、比較的低価格で導入できます。一方、社内でシステムを構築する「オンプレミス型」は費用もかかりますが、その代わり自社に適したカスタマイズができたり、社内ネットワークを使うため外部への情報漏洩のリスクなどが低い点がメリットとなります。

いずれにせよ、それぞれの企業で求める機能性や価格等も含め、専門家のアドバイスも得ながら、真に役立つ「CRM」を構築するようにしましょう。それによって、企業と顧客の関係は、きっと新しい段階に入っていくことになると思います。

◎製品名、会社名等は、各社の商標または登録商標です。

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著者 OPTAGE for Business コラム編集部

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