もう限界!Excelによる予算管理がもたらす弊害

もう限界!Excelによる予算管理がもたらす弊害
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Excelにおける予算管理の限界

企業の目標に対して全社員が共通認識を持ち、効率的に企業活動を行うためには、企業の経営状況を正確に把握するための予算管理が必要になる。
予算管理で利用される代表的なツールといえば、表計算ソフトのExcelであろう。Excelは、少しのパソコンスキルがあれば誰でも扱うことができ、使い方によってさまざまな用途に対応できることから、多くの企業で活用されている。

Excelが非常に便利なソフトであることに間違いはない。だが、Excelに依存し過ぎると、シートやファイルの数が肥大化し、Excelメタボの状態に陥ってしまうことで、予算管理業務に多大な弊害をもたらすことになる(図1)。

(図1:Excelにおける予算管理の限界)

【弊害➀】 各部門からの予算案収集の手間

予算案は、各部門にフォーマットを配布して記入してもらうことが一般的である。ただし、予算案の記入には時間を要することが多い。また、誤った箇所に記入されてしまうと、その誤りを修正する手間が生じてしまう。
Excelは、排他制御を外して複数人での同時更新を可能にすることで入力効率を上げることができる。しかし、更新箇所が被ってしまうと、正しい値とは異なった値が記録されてしまう可能性がある。

【弊害②】 Excelフォーマット改修の手間

Excelフォーマットは、予算管理の担当者の手で独自に作成されることが多い。そのため、予算管理プロセスや勘定科目、自社の組織改変など、関連項目の変更が生じるたびにフォーマットを修正する手間が生じる。ここで修正漏れが発生した場合、予算管理の業務に多大な手戻りが発生する可能性がある。
また、シート内に思わぬリンクが存在することもあり、フォーマットを改修することによってリンクが崩れると、他の箇所まで修正が必要になることもある。

【弊害③】 集計用ファイルへの転記ミスなどによる手戻り

各部門へフォーマットを配布して予算案を記入してもらう場合、予算案を集約する際に転記の作業が発生する。この転記作業にはミスがつきもので、手戻りやExcel関数の間違いなどが発生することがある。セル保護機能やリンクを利用すればミスは減るだろうが、0にすることは難しい。

【弊害④】 ファイル管理の煩雑化

予算案のフォーマットを部署ごとに配布して作成することで管理すべきファイルが多くなる。その結果、最新バージョンのファイルが分からなくなったり、情報の反映漏れが発生しやすくなる。
また、社内のファイルサーバに予算案ファイルを保存する場合は、ハードディスクの残容量を圧迫しないように注意しなければならない。

【弊害⑤】 即時性のないデータ

昨今の企業経営には、四半期の決算に出てくる予算状況ではなく、その瞬間のデータを元にした素早い経営判断と意思決定が求められる。しかし、Excelによる予算管理では、集計に時間がかかり、リアルタイム性に欠けた判断を下す危険性がある。
また、管理要員が存在しない場合は、「予算があると思って使ったらすでに枯渇していた...」という事態が発生する可能性もあり得るだろう。

【弊害⑥】 分析手法の制限

Excelは表計算ソフトであり、複数種類のグラフを作成できるため、ある程度の分析は可能である。
しかし、データを参照するためには、事前にデータをまとめてグラフを出しておく必要があるため、経営分析や財務分析などの際に、自由でより高度な分析を行うことは難しい。また、分析するデータが増えることで、Excelのレスポンスの低下を招く恐れもある。

これらの弊害から、Excelのみで行う予算管理に限界を感じている担当者も少なくないはずだ。顧客リストや見積書などの一般的な資料の作成や管理という程度であれば、Excelで十分対応できるだろう。しかし、予算管理など複数の部門が関わり、大量のファイルを扱う必要がある業務においては、Excelですべてを管理するのは難しいのが実情だ。

Excelよりも効率的な管理を可能にする予算管理システム

そのため、事業規模が拡大し、管理するデータ量が増えるにつれて、Excel以外のツールで管理する方法が必要になる。
そこで、Excel依存の体質から脱却し、生産性向上を図ることを目的に、多くの企業で導入されているのが予算管理システムである。
予算管理システムは、経営戦略に基づいた予算構成の作成や業務管理、予算と実績の差異要因の可視化など、Excelの機能だけでは実現が難しい機能を備えたツールである。

たとえば、予算関連事項に変更があったとしても、予算管理システムであればマスタデータを修正するだけで済み、期日までに所定のマスタデータへ入力すれば予算案収集の手間もかからない。集計はシステム内で自動的に実施されるため転記の必要がなく、システム上にデータを保持するためファイルを管理する必要もない。さらには、データが即時で反映されるため経営会議前の分析もスムーズで、さまざまな分析手法の利用も可能となる(図2)。

(図2:予算管理システムの導入がもたらすメリット)

予算管理システムを導入することで、Excelの弊害であるシートやファイル管理の煩わしさから解放され、より効率的な予算管理が可能となるだろう。

予算管理システムの導入で失敗しないためのポイント

とはいえ、何も考えずにシステムだけ導入したとしても、思ったような効果が上がらず失敗に終わる可能性が高い。予算管理システムの導入で失敗しないためには、事前に確認しておくべきポイントがいくつかある。

◆費用対効果を必ず計算しておく

ITシステムの導入において、まず確認すべきはコストメリットである。Excelの非効率な予算管理をストップできるのであれば、かなりのコスト削減と生産性向上の効果があるはずだが、ITシステムの導入には、膨大な手間と費用がかかるため、コストメリットを出せる根拠が必要となる。
コストメリットを算出する際には、各部署の記入にかかる時間やトラブルの対応時間を明確にし、システムの導入費用と比較する必要がある。

◆社内要件のヒアリングは明確に

コストメリットを出せると判断できたら、次は要件定義のフェーズに入っていく。各部署から予算システム対応要員を集めてプロジェクトチームを結成すると、その後のヒアリングやその他の作業がスムーズに進みやすくなるだろう。
要件のヒアリング漏れがあると、手戻りが発生する確率が跳ね上がる。要件のヒアリングに対応しない部署があった場合でも、個別に聞きにいくなどして、必ず要件を確認するようにしたい。ヒアリングに対応しないからといってそのまま構築を進めてしまうと、使えないシステムができあがる可能性が高くなるので注意が必要だ。

◆サービスイン後の運用体制を検討しておく

ITシステムの運用には多数の作業項目が存在する。システムのバグ対応、パッチの適用、障害時の体制など、各ケースで誰が担当するのかを明確に取り決めておく必要がある。システムへの予算入力も、誰がどのように実施するのか取り決めておかないと、後々のトラブルの元になる。
また、システムを導入しても活用されなければ意味がない。そのため、運用開始前には、関係各所に使用方法や運用体制を説明していく必要もある。

◆他システムとの連携を考慮する

予算管理システムを導入する規模の企業であれば、社内に基幹システムが複数存在するはずである。その場合、予算管理システムを単体で構築するとかえって手間が増える恐れがあるため、各システムとの連携を考慮する必要がある。
例えば、社内に稟議システムがあるのであれば、稟議起票の度に予算管理システムから予算の残金データを取得できるような仕組みがほしい。SaaSのサービスを利用する場合も、連携しやすいインターフェースを持っているかどうか事前に考慮する必要がある。

◆自社の予算管理形式にシステムを合わせられるか確認する

パッケージシステムやSaaSシステムを導入する場合、社内の業務発展に伴う拡張性の有無を確認しておく必要がある。また、予算案を入力しやすい画面であるかどうかも重要になってくる。
社内の作業フローを変更することは容易ではない。社内への説明と、都度対応のフォローなどを要する。とはいえ、システムに合わせて作業フローを改善するチャンスでもあるため、説明などのコストと比較して検討する価値は十分にあるだろう。

◆予算シミュレーション機能は豊富か確かめる

各部門で出した予算案から財務諸表を作成した後は、目標値との比較を実施する。目標に達していない場合、予算シミュレーションによる問題の洗い出しと調整が必要になる。
例えば、トップダウン予算とボトムアップ予算など複数の予算パターンでの比較、問題発見のための予算項目掘り下げ、見積予算内の構成数値の変更など、予算シミュレーション機能の豊富さも確かめておくべきである。

また、システムによっては予算管理の機能は全体の一部であり、設備投資管理や販売案件管理、目標管理(人事考課)といった幅広い用途に利用できるツールも存在する。
使用目的や企業規模によって、適切なツールは変わってくる。もし既にExcelの限界を感じているのであれば、予算管理システムの導入を検討してみてはいかがだろうか。

◎製品名、会社名等は、各社の商標または登録商標です。

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著者 OPTAGE for Business コラム編集部

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