人手不足時代の切り札となるか、「クラウドソーシング」事始め

人手不足時代の切り札となるか、「クラウドソーシング」事始め
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労働力・人材不足が加速する中で、打開策はあるのか?

「人手不足」が叫ばれて、久しいですね。東京や大阪などのコンビニ、ファストフードでは、外国人労働者も全く珍しくない時代になっています。外国人労働者の活躍で、なんとか営業できているのは良い方で、深夜営業を断念せざるを得なくなった店舗は、枚挙にいとまがありません。

これらは決して接客業の世界だけの話ではなく一般企業にも及んでおり、特に中小企業では70%以上の会社で人手不足を感じているというアンケート結果もあります(中小企業基盤整備機構2017年アンケート調査より)。

しかしその一方で、「労働力は減っていないのではないか」という声も存在していることをご存じでしょうか?「労働力人口」という捉え方があって、これは15歳以上で事情や疾病により全く働けない人を除いた人口をいいます。この「労働力人口」は、増えているのです。

下のグラフは2008年から2018年の労働力人口の推移です。2012年を境に増加に転じているのがお分かりいただけるでしょう。この要因は、主として働く女性が増えていることにあります。内閣府の男女共同参画局が発表したデータによると、2018年の女性の就業率は69.6%と2008年に比べ約10%も高まっています。また女性の増加率ほどではありませんが、高齢者の就業率もじわじわと上がっており、これらが労働力人口を押し上げていると考えられます。

(出典:総務省統計局2018年労働力調査 労働力人口(男女計)の推移より)

「労働力人口」は、先にも述べた通り完全失業者や休業者、非正規職員、兼業主婦、学生、アルバイト、比較的元気な高齢者などを含みます。このような人々が、もっと能力や技能に応じた適正な職種に就くことができれば、人手不足、人材不足を解消できるかもしれません。

それを可能にする手段の一つが、「クラウドソーシング」なのです。

似たような言葉「アウトソーシング」と「クラウドソーシング」は、どう違う?

「クラウドソーシング」と聞いて、「アウトソーシング」を思い浮かべる方も多いと思います。自分たちの業務を社内の人材で処理するのではなく、社外の人間に処理してもらうという点では、「クラウドソーシング」と「アウトソーシング」は似ています。また「外注・請負」とも似ています。ではそれぞれ、どう違うのか?

まず「アウトソーシング」は、「外注・請負」と混同されることもありますが、厳密に区別すると企業がコアな業務に集中するため、コア業務以外の分野を外部によって補完することを指します。つまり「外注・請負」がある作業の工程を委託・受託するのに対し、「アウトソーシング」は、1分野、1業種をまるまる委託・受託することをいいます。ただ、先にも書いたように、今や「アウトソーシング」も「外注・請負」も、同じように受け止めている方も多いのではないかと思います。

「アウトソーシング」や「外注・請負」の良い点は、委託相手の顔が見えやすいことにあります。実際に会って打ち合わせするケースも多く、それだけに工程管理や作業品質にも信頼が持てますし、業務を進めて行く上でも安心です。その反面、外注先が固定的になり、マンネリ化につながることもあります。

これに対して「クラウドソーシング」は、今現在、企業が必要とする人材を、インターネットを使って臨機応変に集められる点が最大の特長となります。次章で、具体的にご説明していきましょう。

顕在化できなかった労働力を掘り起こす可能性を持つ「クラウドソーシング」

「クラウドソーシング」の「クラウド」は、「Crowd」、つまり「群衆」や「大衆」を意味します(ちなみにインターネットを使うことから、クラウドコンピューティングの「Cloud=雲」と混同しやすいので、注意しましょう)。つまり自社で必要な作業を、「群衆」の中の誰かに委託することを指します。委託する作業内容としては、データ入力などの事務作業や翻訳、プログラミングなどIT系の作業、デザイン、取材、写真撮影などクリエイティブ系の仕事が多いようです。

受託する側(個人)は、クラウドソーシングのマッチングサービスを提供するサイトなどに、自分の得意分野などを登録しておきます。また企業が募集している案件の中から自分に適したものがないか検索し、あればエントリーしていきます。委託したい側(企業)は、「こんな作業をしてくれる人材を求む」とマッチングサイトで告知するか、登録された委託者の中に適正人材がいないか、検索して探していきます。要するに仕事と人材のマッチングを、インターネットを使って大々的に行っているわけです。

では企業にとって「クラウドソーシング」を利用するメリットは何でしょうか。ひとつは、コストダウンが図れることです。従来の外注先やアウトソーシング先が、高度なプロフェショナルが多いことに対し、クラウドソーシングに登録している人は、プロからアマチュアまで幅広いスキルを持った方がいると考えられます。その中から、スキル・コスト等の要件が合う方を柔軟に選定することで、従来よりも安く外注することができます。

今までなら埋もれていた才能に、思わず出会える・・・しかも安価で・・・そんな可能性もあるのです。時と場合によっては、大きな戦力となって、あなたの仕事を助けてくれるかもしれません。

委託・受託双方にメリットがあり、「働き方改革」からも大きな注目が

「クラウドソーシング」は、企業にとってのメリットだけでなく、受託する側にも大きなメリットを持っています。先に「労働力人口」はここ数年、増えていると書きました。生活のために、非正規での雇用や不本意な職種に就いている人もいるはずです。また小さな子どもがいる、あるいは身内の介護のため、働ける時間や場所に制限があり、働きたくてもなかなか仕事に就けないという人もいるでしょう。

「クラウドソーシング」はインターネット上での受発注が中心のため、自宅で好きな時間に作業ができます。それによって、現在は仕事に就けない人も仕事がしやすくなります。また近年では、副業を奨励する企業も増えていますが、「クラウドソーシング」が副業を志向する従業員の受け皿になっているとも考えられます。ひょっとすると、本業で磨いた才能が、他の企業でうまく活用されるかもしれないのです。

委託側にも受託側にも大きなメリットがある「クラウドソーシング」は、登録の気軽さもあってか、年々登録者数を増やしており、2017年9月末の時点で約152万人となっています(総務省「平成30年版 情報通信白書」より)。「情報通信白書」では、「働き方改革の一環として副業・兼業の推進が図られているが、クラウドソーシングはこれを実現するために有効な手法でもある」と記載されており、政府の後押しも考えられます。企業として活用しない手はないと思われます。

委託先、受託先がWin-Winの関係になることが、「クラウドソーシング」の理想

「クラウドソーシング」のメリットばかりを説明してきましたが、当然ながら良いことばかりではありません。あなたの会社が何かの作業で「クラウドソーシング」を利用する際の注意点もご説明しておきましょう。

まず、第一に挙げたいのは品質面での不安です。アマチュアでも登録しやすいため、技量が未熟な人たちがいることも考えられます。

大手のクラウドソーシング・マッチングサイトに掲載されている仕事内容では、パワーポイント作成、エクセル作成、プログラミング、アプリ開発、ブログ・記事作成、取材、撮影、イラスト、デザイン、映像編集などIT系とクリエイティブ系が多いのですが、これらは技量のあるなしにかなり左右される職種です。そのため委託する際には「費用」だけで選ぶのではなく、今までの作品を事前に提示してもらうなど、十分に検討できる余裕を持って発注するようにしましょう。手軽に発注できるからといって、焦りは禁物です。

第二には委託先の都合もよく聞いて、彼らがベストな状態で作業に取り組めるようにすることです。こちらの都合を一方的に押し付け、そのために無理な作業状況になってしまっては、せっかく見つけたタレントも本来の力量を発揮できなくなる恐れもあります。お互い歩み寄って、できるだけ良い環境で受発注できるようにしましょう。

「クラウドソーシング」を、会社にとって便利な仕組みとして位置付けるのではなく、これからの日本の「働き方」を開拓していく、未来のための仕組みとして位置付け、委託先も受託先もみんなが良い成果を上げられるシステムとして育てていく、そのような気概で接していけば、おのずと良い方向に道は開けていくのではないかと思います。ぜひ一度、お使いになってみてはいかがでしょうか。

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著者 OPTAGE for Business コラム編集部

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