- 公開日:2020年09月09日
バックオフィスで効果絶大!? ニューノーマル時代を支えるAIチャットボットの可能性は今!
コロナ禍や働き方改革でテレワークが推進される今、より一層高まるチャットボット導入への期待
新型コロナウイルス感染予防のため、企業の間で緊急課題となったテレワーク導入。しかし信用調査会社の東京商工リサーチによると、「新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、在宅勤務・リモートワークを実施しているか」というアンケートに対し、「在宅勤務を現在実施している」と回答した企業は、全体の31.0%に留まったことがわかった(調査実施期間:6月29日~7月8日)。テレワークを導入できない理由として、社内インフラが整備できないことや、そもそも人員が不足していることなどが背景にあるとみられる。また、契約書などの書面に押印する慣行が根強く残っているバックオフィス部門では、押印作業のためだけに出社するケースも多く、それらが在宅勤務を拡大する妨げとなっている。
しかし、コロナ禍の長期化に加え、労働人口減少をカバーするための多様な人材の確保や、ワークライフバランスの向上など働き方改革推進におけるメリット、さらに地域活性化や環境負荷低減などの社会的意義も含め、今後も日本ではテレワークが推進される見込みだ。
そのためには、これまでとは違うかたちで顧客や社内とコミュニケーションをはかる仕組みを作り、働き方の効率化を推進する必要がある。そこで昨今注目されているのが、従業員や顧客からのさまざまな問い合わせに対して、プログラムが自動回答を行ってくれるチャットボットの導入だ。
株式会社ジャストシステムが運営する、マーケティングリサーチに関する情報サイト「Marketing Research Camp(マーケティング・リサーチ・キャンプ)」の月次調査「人工知能(AI)&ロボット月次定点調査」[2019年4月~12月度]によると、チャットボットの認知率は全体の約7割、利用経験は全体の約2割であることがわかった(図1)。
このように、チャットボットの認知率は高まっており、今や顧客向けだけでなく、社内向け(ヘルプデスク)に活用している企業も多い。テレワークや時差出勤などの導入が進み、ビジネスチャットがメールや電話の代替手段として普及するなど、『チャット』はより身近な存在になってきている。チャットボットの市場は、IT調査会社のITRによると、2022年度に100億円規模になるとの予測も発表されている。
そこで今回は、社内ツールとして、バックオフィス部門や情シス部門が導入する際の事例を挙げて、「チャットボット導入」で期待できる効果や導入時のポイントについて紹介していきたい。
社内コミュニケーションの実情 バックオフィス部門の業務実態とは
総務や人事、経理、また情報システムを含むバックオフィス部門は、企業活動を支える組織としての通常業務に加え、今回のコロナ禍のように、計画外の業務にも臨機応変に対応することが求められる。そのような業務が輻輳する状況に比例して、社内からの問い合わせも従来以上に増え、対応に追われているのが実情である。その結果、本来業務への対応が遅れてしまうケースも多々発生している状況だ。
そこで、社員からのさまざまな問い合わせに対して、プログラムが自動回答してくれるチャットボットがあれば、バックオフィス部門の業務効率化やテレワーク推進を後押しできる。
「社内利用」としてチャットボットを選ぶ理由
社内向けチャットボットは、バックオフィス部門を中心とした「問い合わせを受ける側」の部署における、電話対応からの切り替えを主目的とした導入が主流だ。業務効率化や生産性向上が実現できると注目度が高まり、導入が進んでいる。
また、チャットの会話履歴を解析することができるため、不明点やトラブルなどに対する社員のリアルな声を見える化し、バックオフィス業務の品質アップにつなげる効果もある。社員の潜在的な不満を解消することのできるツールとしても多くの企業に評価されている。
さらに、チャットボット自体の性能、AIによる学習能力も近年進化し続け、ユーザーの信頼は高まっている。チャットによる社員とのやり取りを学習し、どういった問い合わせが多いかなどの分析を行うことで、より満足度の高い問題解決へと導くだろう。
これまでの「有人チャット」「チャットボット」の特徴
ここまでチャットボットについて説明してきたが、チャットボットは人が対応する有人チャットと比較されることがある。その理由は、人が対応する有人チャットには、チャットボットにないメリットが存在するからだ。ここからは、社内向けに「有人チャット」「チャットボット」を導入した際のメリットとデメリットについて考えたい。
まず、有人チャットの場合は、専任担当者が対応するため、社員の質問に対して臨機応変な対応が可能だ。ただし、担当者では回答できない複雑なものや、相談ベースの内容については、専任担当者が然るべき対応箇所に連携し、社員が二度手間にならないような体制強化は必須であろう。また、チャットは、気軽に問い合わせが行える分、電話やメールで対応する場合よりも問い合わせの件数が増える傾向にある。そのため、対応が追いつかず、返信が遅れてしまうなど、パフォーマンスが下がることが考えられる。
一方で、チャットボットによる自動対応の場合、プログラムにより問い合わせへの自動回答が可能となる。担当者は直接の問い合わせ応対件数も減るため、本来業務に時間が使え、業務効率も上がる。ただし、チャットボットは、あらかじめ設定された内容や保有のデータ範囲内でしか回答ができないため、社員の満足を得られず、チャットボットに対する信頼が薄まり、メールや電話の問い合わせだけを利用する状態に戻ってしまう恐れがある。
社内向けツールとしてチャット導入を検討している場合は、このような有人チャットとチャットボットの特性を理解し、それぞれのメリットとデメリットを知った上で、自社の課題にあったチャットサービスの導入を検討すべきだ。
チャットボットの今 ―チャット、RPA、AI の3機能が重なり進化したソリューション
チャットボットは、前述の通り既存の対応フローやデータの範囲で回答するため、有人チャットと比べて、問い合わせ応対の質は落ちる。ヘルプデスクへの問い合わせが完全無人化、完全自動化となった場合、コスト面や人員面など会社として多くのメリットを得られるが、人工知能のAIに100%を求めることは難しいのが現状だ。
そこで近年登場したのが、チャット、RPA、AIの3機能を持ち合わせた融合型チャットボットと有人チャットの「ハイブリッド型」(図2)である。この活用によりユーザーに対して丁寧で正確な情報の提供を実現できるようになった。
この3機能融合型チャットボットと有人チャットとの「ハイブリッド型」では、まずチャットボットが質問を受け付け、次にAIが問い合わせ内容をどのフローに入れるか判別する。そのフローに沿った内容をチャットボットが自動回答するのである。この仕様により、ほとんどの問い合わせ応対を自動化することが可能となる。また、社員の意図する回答ができない場合には有人チャットの担当者へシームレスに移行し、対応を継続することもハイブリッド型の特長である。
チャットボットの導入で失敗しないためにどうすべきか?
このように、社内ツールとしてチャットボットを導入するケースが増え、バックオフィス部門のFAQ※を代替するツールとして業務の効率化を実現している。
(※)FAQ:Frequently Asked Questionsの略で、頻繁に尋ねられる質問とその答えのこと。
しかし、導入にあたっては課題もある。導入時には、学習データとして読み込ませるFAQにおいて、問い合わせ内容と回答内容を十分に関連付ける必要がある。つまり、社員から寄せられた質問に対して、チャットボットがRPAによる自動処理で満足のいく回答を返すことができるようになるには、導入時のプログラムから社内全体で意見を出し合って、AIにFAQの内容を学習させ、回答できるかどうか繰り返し検証や修正を行い、チャットボットを育て続けなければならない。
失敗例としては、導入するにあたって、単独部署(最も多いのが情報システム部門)の担当者だけでチャットボットの回答フローを考案してしまうケースがある。専門知識をもたない社員の視点で考えられていないため、社内公開後に想定外の質問が殺到し、チャットボットが機能しなかったり、社員の目線に合わないFAQを作成してしまうことがある。
そのため、社内向けにチャットボットを導入する場合は、部門を超えた社内横断プロジェクトとして捉える必要がある。
このように、働き方改革や新型コロナウイルスの影響により、私たちの生活は大きな変革の時期を迎えており、新たな時代の問い合わせ応対ツールとして、チャットボットが主要な手法になるのは間違いない。自社の社内問い合わせ業務の特性を理解し、チャットボットを有効に活用していきたい。
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