- 公開日:2020年12月23日
デジタル庁発足で「電子契約」が加速!?メリットや導入方法って?
デジタル庁の創設、押印廃止発言など、相次ぐ「電子化」の流れ
今年の9月に発足した菅内閣で、目玉政策のひとつともいわれていたのが「デジタル庁」の創設です。それに加え行政改革担当の河野太郎大臣が、押印の廃止を訴え賛否両論を呼んだことも記憶に新しいですね。
果たしてデジタル庁はどんな役割を担うのか、まだ具体的に見えてきてはいませんが、「押印廃止」の河野大臣の発言も踏まえて考えてみると、今はまだアナログ的な手法で行われている業務が、一挙に電子化していくことも考えられます。特に今まで押印が欠かせなかった社内りん議、契約関係や経費処理などにおいて、大きな変化が起きる可能性があります。
一般財団法人日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)が発表した「企業IT利活用動向追跡調査2020」(有効回答878件)によると、2020年1月の段階で、「電子契約を採用している」という企業が43.3%とすでに半数近くになっています。また「採用を検討しているという企業」も27.5%で、「採用予定はない」「わからない」という回答を圧倒する勢いとなっています。電子契約に関してみると、すでにかなりの普及が進んでいるといえるでしょう。
そのような背景を踏まえ、これから業務における電子化はいったいどうなっていくのか。どう対応しなければならないのか。そのあたりの話題を、特に「電子契約」を軸にご説明したいと思います。
業務の電子化で欠かせないワード、それが「ワークフロー」
「電子契約」とは、ひと言でいえば「契約書データを、インターネットを介して交換し電子署名を交わすこと」ですが、導入を考えるにあたり特に覚えておいていただきたいワードがあります。「ワークフロー」です。ワークフローとは本来の言葉の意味としては「業務の流れ」そのものを指します。
例えば、社員が新しい営業活動を行うために、企画書を作成し社内りん議を上げたとします。最初に係長が決裁で押印、次に課長が押印、次いで部長が押印、さらに次に部門担当取締役が押印・・・このような手順を、そもそも「ワークフロー」といったのです。この手順については、各社それぞれで異なり、何人もの決裁が必要な企業もあれば、すぐに社長の決裁がとれる企業もあるでしょう。それが一種の、企業文化ともなっていると考えられます。
社内外でのさまざまな契約、決裁手順などの電子化を図るには、まず自社ではどのような手順によって業務が進んでいくかを、図式化するなどして可視化させる必要があります。その中で電子化できるもの、できないものを明確にし、電子化した際の効果を予測していくことが必要となります。現在では図式などで可視化された業務の流れそのものが、「ワークフロー」とされ、また電子化された業務処理体系そのものを「ワークフローシステム」ということもあります。
効率的なワークフローシステムを構築するために、まず作業手順の可視化を
それでは具体的な例を取り上げ、ワークフローを考えてみましょう。下図は、外部業者との契約締結のステップをワークフローとして表したものです。
説明のための図ですので、実際の手続きよりも単純なものとなっていますが、それでも多くの手順が必要なことがわかります。
大きな流れとしては...
①取引先との合意形成と契約書の起案・作成⇒②上長(承認者)への確認⇒
③法務部門による法的確認⇒④契約書の修正⇒⑤上長の承認⇒⑥取引先での承認と押印⇒
⑦上長の押印⇒⑧契約書の保管⇒⑨契約書の廃棄
といったステップになります。
このようにフローとして図式化することで、日ごろ何気なく行っている作業に、どれだけの人間が関与し、どれだけの手順を踏まなければならないのかが見えてきます。この手順をいかに効率よく処理できるシステムにするか、それが「電子契約」の一番のポイントとなります。
電子契約にすることによって得られるメリットとは
それでは「電子契約」を導入するメリットについて考えてみましょう。
まず一つ、通常、紙の契約書による締結では契約金額に応じた印紙税が必要ですが、ペーパーレス化により不要となる点です。さらには契約書を取引先に送る郵送料などのコストも削減できます。
次に、契約の起案から作成、承認までの作業を、各人のパソコンで完結させられるため、業務がスピーディかつ効率的に行える点です。りん議を作成するために出社する必要もなくなり、テレワークの推進にも一役買うことになるでしょう。また、紙の契約書の時にありがちだった「上長が出張に行ってしまって、ハンコがもらえない!」といったトラブルも解消できます。
また、紙の契約書の場合、保管する場所にも注意しなければなりません。数多くの契約書を厳重に保管するには、それなりのスペースとセキュリティが求められます。しかし電子化されれば自社のサーバ内にデータとして保存しておけるので、スペースは取りません。自社サーバがない場合でも、信頼できる電子契約サービス会社を活用すれば、データセンターで安全に保管してもらえます。
さらに紙文書では、仮に改ざんがあった場合も誰がいつ行ったかの追跡が難しい場合がありますが、データなら変更履歴として残しておけるので、改ざんを防止できます。紛失や情報漏えいといったリスクも回避でき、結果的に企業としてのコンプライアンス向上につながります。
作業効率やデータとしての安全性、コスト面を考えても「電子契約」には大きなメリットがあります。
電子契約を導入するにあたって、注意しておきたいこと
非常にメリットの多い電子契約ですが、実際に導入するにはどうすればいいのでしょうか。
まず重要なことは、多くの取引先と電子化にあたっての合意を形成する必要があります。自社では電子化に対応できても、古くからの取引先の中には電子化に対応できないところもあるかもしれません。電子化のメリットなどをじっくりと説明し、一方的な対応や押し付けにならないように注意しましょう。
いきなり全ての契約を電子化するのではなく、一部の契約からスタートすると、仮に導入が上手くいかない場合でも大きなダメージにはなりません。また法律で電子化が認められているものと、まだ認められていないものがあるので注意が必要です。自社で取り組みやすい契約から順次、移行していくのがよいでしょう。念のため、現時点で電子契約が認められているもの、認められていないものを一部抜粋して紹介しておきます。
●電子契約が認められているもの
・雇用契約書・検収書・売買契約書・秘密保持契約書・業務委託基本契約書・業務委託個別契約書・委任契約書・消費貸借契約書・発注書 兼 発注請書 など
●電子契約が認められていないもの
・不動産取引における重要事項説明書面等・定期借地契約、定期建物賃貸借契約書面・マンション管理業務委託契約書面・特定継続役務提供等における契約前後の契約等書面・金融商品のクーリングオフ書面 など
法務部門と協議し、どの契約から電子化を進めるのか、社内で十分に検討を重ねましょう。
電子契約サービス会社の選定ポイント
実際に電子契約を導入するにあたって、自力でシステムを構築する企業は少なく、多くの場合は電子契約サービスを行う会社への依頼が一般的です。サービス会社の選定にあたって注意すべきことを挙げておきます。
●料金
無料プランを用意しているサービス会社もありますが、安全面の担保を考えると、有料プランのサービスを選択すべきと考えます。また契約書の送信料や取引先のアカウント数で料金が異なる場合があります。
●機能性・操作性
電子化は契約書だけなのか、社内申請や承認業務まで電子化するのかといった範囲を決めます。また、契約処理の操作が簡単かなど、実際の操作画面を見て検討します。
●法的効力
見落としがちなのが、この法的効力についてです。電子契約でもメール認証による電子サインで対応できるものもありますが、電子署名法によって紙での押印や署名と同等の法的効力を持つ「電子署名」が必要とされる契約もあります。そのサービス会社が信頼性のある電子署名に対応できているのかどうか、しっかりと確認することが重要です。
まずは1社だけに決め込むのではなく、いくつかのサービス会社に依頼し、自社にあったプランを提案してもらうのがよいでしょう。
政府の後押しもあり、契約をはじめ、さまざまな業務の電子化やデジタル化が今以上に促進されると思われます。まだ先の話だと思っていたら、ある日突然、取引先から対応を求められることもあるかもしれません。この流れに乗り遅れないよう、あなたの会社でも電子契約の導入や取り扱いを検討してみてはいかがでしょうか。
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