ユーザー企業の取り組み事例も!「ローカル5G」で期待される未来像と課題

ユーザー企業の取り組み事例も!「ローカル5G」で期待される未来像と課題
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5Gの利便性を引き上げるローカル5G

5Gは、LTE-Advancedの次の世代となる第5世代移動通信システムであり、総務省が2019年に発行した「第5世代移動通信システム(5G)の今と将来展望」では、5Gの主要性能は「超高速(最高伝送速度 10Gbps)」「超低遅延(1ミリ秒程度の遅延)」「多数同時接続(100万台/km2の接続機器数)」と定義されている。これら3つの主要性能により、高精細な動画の高速ダウンロードやロボット操作、多数のセンサー接続などが可能になるほか、近年では5Gの利便性を引き上げる「ローカル5G」と呼ばれる仕組みも登場している。
ローカル5Gとは、通信事業者ではない企業や自治体が、一部のエリアまたは建物・敷地内に専用の5Gネットワークを構築する仕組みのことである。運用するには無線局の免許を取得する必要があるが、ローカル5Gの仕組みを活用することで、通信事業者によって提供されているパブリック5Gがないエリアでも5G通信を利用することが可能となる。
ローカル5Gは外部のネットワークから遮断された環境でデータを送受信できるため、通信帯域を確保しやすく、また外部のネットワークと不必要な通信が発生しないため、パブリック5Gをそのまま使用するよりもセキュリティの面で優れている。

(図1:パブリック5Gとローカル5G)

IDC Japanが2020年5月25日に発表した国内5G通信サービスの市場予測によると、2020年から2024年にかけての国内5Gネットワーク回線数の年平均成長率は107.6%で、2024年末の回線数は2億2,763万回線に達し、国内モバイル通信サービス市場全体の26.5%を占めるとされている。
2025年のローカル5Gは、利用施設数8,430施設、利用端末数545万端末、金額は4,118億円と予測する調査企業もあり、今後は5Gという新たな基盤の上でAIやIoT、ビッグデータの活用が加速し、社会全体のデジタル化が進められていくこととなるだろう。

ローカル5Gのユーザー企業による取り組み事例

日本政策投資銀行が発行した「5G/ローカル5Gレポート」によると、ローカル5Gを活用した事例として、次のような取り組みが紹介されている。

■5Gを活用したジェットエンジンの製造工程高度化

とある航空機エンジンの製造会社は、5Gを活用したジェットエンジン製造工程の高度化に成功している。ブレード統合ディスク(ブリスク)は、ディスクとブレードが単一の部品として製造され、ジェットエンジン内の空気を圧縮する目的で使用されるパーツであり、非常に高い精度が求められている。ブリスクは金属から削り出して作られるのだが、その求められる精度の高さゆえに、不良品が多く出てしまうことが問題だった。そこで5Gを活用し、ブリスクの製造現場に3.5GHz帯で動作するEricsson製の5G試験システムを導入した。超低遅延通信でブリスク上に取り付けた加速度センサーの情報を受け取り、評価システムで状況を適宜確認して、必要に応じて製造マシンを調整のうえ研磨作業にフィードバックすることで、不良品の発生を減らしていった。その結果、削減額は1つの工場で約2,700万ユーロ、世界で最大3億6,000万ユーロと報じられている。

■自動車製造用ロボットの集中制御

とある大手自動車メーカーでは、製造ラインで稼働する数百~数千のロボットの制御プログラムを5Gで中央制御することに成功している。
元々大規模な生産ラインを保持していた同社は、制御プログラムのティーチング(ロボットアームなどの作業位置の決定)をロボットごとに実施しなければならず、その作業は非常に煩雑だった。
そこで生産ラインの高度化を目的に、各ロボットに組み込まれていた制御プログラムを5GとLTEで中央制御するようにした。制御プログラムは30ms程度の遅れが生じても問題ないため、LTEで対応し、ロボット制御は5ms未満の低遅延通信が必要なため、5Gを活用するなど用途に応じて規格を使い分けている。
結果として、ジョブ変更作業の時間短縮などの効果が出ている。将来的には、AGVなど無人搬送車やサプライチェーンと連動した自律最適な生産ラインの構築などを目指して5Gの活用を推進中だ。

■可搬の5Gネットワーク構築サービスの実証実験開始

とある情報通信企業では、ICT化が進む建設現場において仮設型の無線ネットワークの需要が高まると予測し、可搬の5Gネットワーク構築サービスの実証実験を進めている。
建設事業者は3Gすら来ていない地域で半年~数年の作業を強いられるため、工事現場にICTを浸透させるためには仮設の5Gネットワーク網の構築が急務だ。そこで、工事現場などにおけるICTを活用した作業員の安全管理の実現に向けて、実証実験を2019年12月に実施している。

このサービスが実現すれば、必要な期間だけ迅速に可搬のネットワークを提供でき、ネットワーク構築費用を削減できる。またi-Construction※のユースケースとして掲げられている、遠隔地からの建設現場リアルタイム監視や、建機の制御などが身近になるだろう。

(※)i-Constructionとは、ICTを建設現場に導入することによって、建設生産システム全体の生産性向上を図り、魅力ある建設現場を目指す取り組み

ローカル5G普及にネックとなる課題

目的や用途に応じた5Gネットワークの構築が可能となるため、大きな可能性を秘めるローカル5Gではあるが、5Gがリリースされたばかりということもあり、端末の種類が乏しく、大半は実証実験のフェーズにとどまっているのが現状だ。無線LANと違い、携帯網ならではの設計や運用の難しさもある。
特に5Gで使用されている「ミリ波」が行きかう28ギガヘルツ帯は、電波の直進性が高く障害物に弱いという特徴を持つ。注意すべきは障害物による遮蔽で、基地局のアンテナと端末との間を人が通過するだけでも信号が減衰する。だが、任意の方向に電波のビームを形成することで、カバレッジの拡大、複数ユーザーとの同時通信によるセル容量の拡大などを実現する「ビームフォーミング」や「反射波」などを活用することで信号の減衰を補える可能性もあるため、設計のノウハウ次第では十分な通信性能を出すことも可能である。

(図2:ビームフォーミングや反射波などを活用する方法も)

製造業で高まるローカル5Gへの期待

このように5Gの環境整備には課題がありつつも、ローカル5Gへの期待は高まり、免許申請件数も増加している。特に製造業の分野では、企業が工場の敷地内に専用ネットワークを整備して、ロボットによる自動運転や遠隔制御を行う「スマート工場」にローカル5Gが最適だと考えられている。
Wi-Fi6の登場によって無線LANでもGbpsクラスの無線通信が可能となったが、限られた空間において限られたエッジデバイスで通信する場合には、ローカル5Gに分があるといえる。ローカル5Gは、ユーザー認証のためにAPN(Access Point Name)やパスワードに加えてSIMカードが必要であり、Wi-Fi6よりもセキュリティ面で優れているためだ。また、5Gでは通信の超低遅延化や低消費電力のセンサー等IoTへの対応も検討されており、製造業の発展促進への期待が寄せられている。

5Gでの無線通信方式の標準仕様は、「3GPP(Third Generation Partnership Project)」と呼ばれる団体が定めている。3GPPは、各国の通信標準化団体が基礎となって1998年に結成された団体だ。3GPPが定めた無線通信方式の標準仕様は「5GNR(5G New Radio)」と呼ばれている。
2017年12月に初版としてリリース15(超高速)がリリースされた5GNRは、今後さらに5Gの機能追加を検討している。この5GNRへの機能追加を含めた5G高度化の流れは「5G evolution」と呼ばれる。

現在リリースされている最新のものはリリース16(超高速+超低遅延+多数同時接続)で、主要な拡張機能のひとつに「URLLC」の拡張がある。URLLCとは、Ultra-Reliable and Low Latency Communicationsの略で、高信頼・超低遅延通信のことである。
現在の産業用IoTでは無線通信にWi-Fiが使われるケースが多いが、さまざまなシステムが稼働する工場では電波の相互干渉が起こりやすく、混雑時の遅延変動も避けられない。リリース16では、こういった相互干渉が抑制できるようになった。
さらに、リリース16では次のような拡張機能が取り入れられている。

・消費電力の改善
・信頼性の高いネットワーキング
・多重入出力の機能強化
・ライセンスのない帯域での5GNR操作 等

また、リリース17(リリース16の強化)では、
・監視カメラやウェアラブル端末等に向けた5G NR仲介機能の運用最適化
・IoT運用での少量データの上下通信最適化
・車両同士の通常/緊急通信など、搭載機器同士の直接通信機能の強化
・他周波数帯の適用可能性に向けた検討 等
といった内容が予定されている。

3GPPの公式サイトには、リリース18の研究もすでに始まっていると記載されている。これらの内容が策定されることで「スマート工場化」の実現も容易になっていくだろう。今後の5Gの動向に期待したい。

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著者 OPTAGE for Business コラム編集部

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