企業の在り方自体に一石を投じる「バーチャルオフィス」

企業の在り方自体に一石を投じる「バーチャルオフィス」
Contents

「テクノロジー」の進化と「サービス」の両輪が、
新しいトレンドを生み出す

2020年はコロナ禍の中、「テレワーク」の普及が進みました。それにともない、働き方の在り方を問う風潮が現れ、このコラムでも何回かにわたり「テレワーク」や「働き方改革」について取り上げてきました。

このような変化には、ネットワークなどの技術が普及したことにより、さまざまな作業がリモートで行えるようになったという背景があります。しかし技術がいくら進化しても、それだけでは広く普及することはありません。多くの人々にとって新しい技術になじみ、使いこなせるようになることは、なかなか難しいことであり、誰もがすぐに手が出せるものではないからです。

ごく普通の人々が先端技術の成果を享受するためには、専門的な知識を持たずとも、誰もが簡単に使いこなせる「サービス」が欠かせないのです。

テレワークで考えると、高速で情報がやり取りできるネットワークサービスはもはや当然として、重要で秘匿性の高い情報を安心してやり取りできるクラウドサービスやセキュリティサービス、さらには遠隔での作業を容易にする各種アプリケーションの登場によって、多くの人々がテレワークで仕事ができるようになりました。

そんな新しいサービスとして、今注目を集めているのが「バーチャルオフィス」ではないかと思います。

会社の存在を仮想化する「バーチャルオフィス」

「バーチャルオフィス」・・・直訳すれば「仮想オフィス」となりますが、この言葉からどのようなものをイメージされるでしょうか。

テレワークが進んでいくと、誰もが在宅(あるいは好きな場所)で仕事をするようになり、「オフィス」自体が不要になるかもしれません。会社にとって社員一人ひとりの自宅が、一種のオフィスになっていくかもしれません。そのことを「バーチャルオフィス」というのでしょうか?実は、違います。

会社が存在する場所・住所には、従業員に「働く場所を提供する」という機能以外に、もうひとつの機能があります。法人組織としてしっかりと登記されている場所、つまり会社が公的に認められた組織として存在している所在地という機能です。これについては、いくらテレワークが進んでも、なくすことはできません。

「バーチャルオフィス」は、単刀直入にいえば、オフィスの「所在地」を代行するサービスで、法人組織としての存在地を「貸してくれる」サービスだといえます。極端にいえば、何も実態のない場所で登記されている会社がすでに存在し、それらを「バーチャルオフィス」と呼ぶのです。

このコラムをご覧のみなさんは、会社組織に所属している方が多いかと思います。みなさんが働いているオフィスが、このような「バーチャル」になることは、今のところはあまり考えられません。では、どのような人が「バーチャルオフィス」を利用するのでしょうか。具体的なサービスを含め、もう少し詳しくご紹介しましょう。

「住所」を貸すことによって派生する、あらゆるサービスを取り込んで進化

では「バーチャルオフィス」が提供しているサービスから、その特徴を探ってみましょう。基本的なサービスとしては、以下のようなものがあります。

●住所貸し

「バーチャルオフィス」を象徴するサービスといえるでしょう。会社やネット販売の店舗を立ち上げる際に、その住所を貸すサービスです。借り手は、借りた住所を法人の本店として登記することも可能です。当然、自分の名刺やホームページに「本店所在地」「本社」などと記載できます。
ただし「士業(税理士など)」「人材派遣業」「職業紹介業」「建設業」「不動産業」「古物商」「探偵業」については登録の住所に実態としてのオフィスが必要ですので、バーチャルオフィスを利用しての開業はできません。
また銀行に法人名義の口座を開設する際、バーチャルオフィスの住所が使えるかどうかは、銀行各社の審査条件によりますので、あらかじめ取引銀行に確認しておく必要があります。

●郵便物受け取り・転送

住所を借りると、そこに各種郵便物や宅配便が送られてきます。それらを実際に借手が居住しているところまで転送してくれます。

●電話代行・転送・秘書サービス

これらのサービスは、随分と前から存在しました。特に個人で起業した人などは、忙しく飛び回っている自分に代わり電話を受けてもらえると、重宝していました。

上記のサービスに加え、法人登記のサポートや、税理士とタイアップした経理代行など、サービス提供会社によっては企業運営にあたる業務を代行するサービスもあります。つまり「起業する」という面での、あらゆる面倒ごとを引き受けるサービス、それが「バーチャルオフィス」といってもいいのではないかと思います。

「バーチャルオフィス」は起業家向け? しかし、現存の企業に影響も

さて、ここまでお読みになった方は、もうお分かりだと思います。「バーチャルオフィス」とは、誰のためのサービスなのか。

すでに長期間、法人として運営されている企業にとっては、「バーチャルオフィス」を利用する機会は、支社や営業所を新たに開設する時に、選択肢として考慮する程度でしょう。あるいは新型コロナ禍の中、オフィス縮小を考えざるを得ない状況になった際、リアルなオフィスの代わりにバーチャルオフィスが選択肢として挙がることも考えられるでしょう。

しかし、今このサービスを最も必要とする人は、これから起業しようと考える方々だといえます。

「バーチャルオフィス」を利用することで、自ら事務所を探し契約するよりも費用も手間も大幅に削減できるのです。しかも「バーチャルオフィス」の場所が、東京や大阪のビジネス街や都心部なら企業としての「箔」も付きます。

しかしその反面、「バーチャルオフィス」であることが明らかになると、かえって企業として軽んじられ、最悪の場合、信頼性を損なうというリスクもあります。

このような問題は、決して他人事ではありません。あなたの会社に出入りする発注業者が「バーチャルオフィス」を利用していた場合、どう対応しますか?反対に、あなたの会社に仕事を発注してきた企業が「バーチャルオフィス」を利用している会社だった場合、受注しますか?あるいは断りますか?それらを想定し対応方針を決定しておかないと、トラブルになる恐れもあるのです。

自社の将来を考える上でも、「バーチャルオフィス」の研究は欠かせない

今後、副業や起業を行う場合、会社の見かけ上の所在地を「バーチャルオフィス」に置き、実際の作業や打ち合わせは「レンタルオフィス」や「シェアオフィス」を使うといった、非常に柔軟な考え方が普及していくかもしれません。

また、このような時代の流れからか、クラウド上に疑似的なオフィスを置き、社員はアバターを使ってミーティングに参加したり、隣にいるメンバーとチャットで気軽に会話できるなど、離れていても一緒に仕事をしているかのように感じさせるサービスも登場しています。バーチャルな世界が広がることで、今までの企業の在り方が、根底から変わっていく可能性があるのです。

これからの人材募集や雇用を考えると、従業員にとって魅力的な企業とは、選択肢として多様な働き方を提示してくれる企業だと考えます。それと同様に、企業であろうとクラウドワーカーであろうと、あるいは「バーチャルオフィス」の企業であろうと、その能力に応じて公明正大に発注できることが、外部から見て魅力のある企業と映る条件になると思います。

企業として多様な働き方を研究する上でも、自社での利用時と取引先企業での利用時、双方の観点で、「バーチャルオフィス」に注目されることをおすすめいたします。

◎製品名、会社名等は、各社の商標または登録商標です。

著者画像

著者 OPTAGE for Business コラム編集部

ビジネスを成功に導くICTのお役立ち情報や、話題のビジネストレンドをご紹介しています。

SNSシェア