ニューノーマル時代!有力企業はクラウドコンピューティングで何を狙っているのか?

ニューノーマル時代!有力企業はクラウドコンピューティングで何を狙っているのか?
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既にクラウドコンピューティングは優位性を確立している

コロナ禍の影響により世界的に広がるニューノーマルの状況下で、クラウドコンピューティングを重視する企業が増えている。クラウドコンピューティングとは、ITシステムをインターネット上にあるクラウドに配置し、柔軟性や拡張性、イノベーションを提供することである。そのメリットは「サービス構築の柔軟性」「システムの拡張性」「ITコストの最小化」の3点に大きく分けられる。有力企業はこのクラウドの持つメリットを利用して、ニューノーマル以降に訪れる早い変化への対応を狙っている。

①サービス構築の柔軟性

クラウドコンピューティングでは、「マイクロサービス」と呼ばれるクラウド上のコアアプリケーションをサービスとして組み合わせることで、新たなアプリケーションの開発がスピーディに実施できる。マイクロサービスとは、アプリケーションの構成要素を独立したサービス群へ分割し、連携させる手法だ。マイクロサービスで構成されるシステムは、頻繁に変化するニーズに応じてサービスを簡単に入れ替えられる。既存のシステムに新しい機能を追加したくなる場面はよくあるが、オンプレミスのシステムでは煩雑な既存システムへの影響考慮や限定的なリソースなどの課題があり、すぐにプログラムやソフトウエアを追加・変更することは難しい。しかしマイクロサービスで構成されるシステムは、サービスの追加や入れ替えだけで変更が済むため、オンプレミスのシステムよりも短期間でシステムを更改していける。

さらにベンチャー企業などで主流だったDevOpsという開発スタイルが、クラウドコンピューティングの普及に伴い大企業でも注目されてきている。DevOpsとは、開発担当者と運用担当者が連携することで、サービス/アプリケーションの開発とリリースを短いサイクルで繰り返し行い継続的に改善する手法である。マイクロサービスを使用したシステムと非常に相性が良く、状況に合わせてシステムを効率よく改善していける。

②システムの拡張性

大手のクラウドサービスのバックエンドには、各社が保持する巨大なITリソースが存在し、そのITリソースを後ろ盾に、システムのスケーリングを柔軟に実施できる。多くのクラウドサービスでは自動的なスケーリング機能を実装していて、システム管理者がスケーリングを考慮する場面は少なくなってきている。一般的に新規事業で構築したアプリケーションやキャンペーンサイトなどはアクセスの見込みが立てにくく、またSNSなどでも急激にアクセスが集中して、Webサイトやシステムがダウンすることもよくある。従来のオンプレミスだけのシステムでは、このような事態に対応できなかったが、クラウドの普及によって各社柔軟なシステムのスケールアップ・スケールダウンが可能になった。

③ITコストの最小化

必要な時に必要なだけITリソースを契約できることも大きな魅力だ。クラウドの持つ巨大なITリソースの恩恵を受け、必要に応じて自動的にITリソースをスケーリングし、コストを必要最小限に抑えることができる。

従来のオンプレミスのシステムでは途中でITリソースの使用量を変更することが困難だったため、使用量の最大値を予測してITシステムを構築せざるを得ず、どうしてもコストが肥大する傾向にあった。クラウドコンピューティングでは、必要な時には大きなITリソースを確保し、不要な時にはITリソース使用量を縮小することでコストの適正化が可能だ。

(図1:オンプレミスに対するクラウドコンピューティングの優位性)

現在では、「テレワーク」や「ゼロトラスト」などをキーワードに関連するクラウドコンピューティングの分野が活況である。コロナ禍以降、各社で急速にクラウドの導入が進んでいるが、以前からSaaSやクラウドストレージを活用していた企業はコロナ禍でもスムーズに在宅勤務に移行でき、世の中や働き方の変化に素早く適応できている。また、コロナ禍の後にやってくる次世代のコンピューティング環境では、IoTやVRといった仕組みが活用され、さらに5Gの普及で膨大な数のデバイスや機器が網の目のように相互接続されたメッシュネットワークを構成する。複数のデバイスで構成されたメッシュネットワークを付加価値としてサービスを展開する企業も多く出てくるだろう。世の中では既に、スポーツやコンサートの多視点視聴サービスや、利用者の予約に応じて運行するオンデマンド型公共交通システムなどが登場している。少し前の情報だが、総務省が2017年に発行している「将来のネットワークインフラに関する研究会報告書」でも、将来のネットワークインフラの発展イメージとして、自動走行や遠隔制御などの超リアルタイムサービス、高精細映像配信サービスなどが提示されている。こうした環境を実現するためにもクラウドコンピューティングは欠かせない。

米国調査会社IDGが発表した「IDG Cloud Computing Survey 2020」では、世界中の企業がオンプレミスからクラウドへITインフラを移行している旨が記載されていて、コロナ禍が終了した後もクラウドコンピューティングの普及は加速し続けるとみられている。

世界のクラウド活用最新トレンド

ここからは、「IDG Cloud Computing Survey 2020」を通して、世界の先進企業が考えているクラウドコンピューティング活用の最新トレンドを探っていく。551人のIT導入意思決定者にアンケートを取っている「IDG Cloud Computing Survey 2020」では、オンプレミスのシステムからクラウドコンピューティングへの移行が如実に表れる結果となった。その内容を順番にみていこう。

《81%》過去2年間でクラウドへシステムを移行した企業

世界の組織の81%は過去2年間でクラウドに少なくとも1つのアプリケーションまたはIT基盤の一部を移行している。その割合は2018年の73%から8%増加している。

《92%》IT環境をクラウドで持つ企業

現在、組織のIT環境の92%は何かしらのクラウドシステムを利用している状況で、IT環境全体がすべてオンプレミスであると答えた企業は、わずか8%だった。
さらに今後18カ月で、クラウドシステム利用状況は92%から95%に、同様にSaaSアプリケーションを使用する組織のシェアは24%から36%、アプリケーション開発プラットフォームとしてのクラウドのシェアは、42%から48%に上昇すると予想されている。
なお、ガートナー・ジャパンが2020年1月に調査した内容によると、日本のクラウドコンピューティングの導入率は18%だった。頭では必要性を理解していても思うように導入が進んでいない状態だが、裏を返せばどの企業にもクラウド活用で日本をリードするチャンスがあるといえる。

《32%》2021年IT予算のクラウドコンピューティングへの割り当て予測

世界の組織のクラウド平均投資額は2018年から59%増加していて、2021年にはIT予算全体の32%がクラウドコンピューティングに割り当てられると予測されている。調査完了後にコロナ禍が始まったため、実際に32%の投資がなされるかは不透明だが、クラウドコンピューティング普及の様子から今後もIT予算の中でクラウドの占める割合が伸びていくことは間違いないだろう。
日本でも2020年度のIT予算を増額とした企業が2019年度の33%から3%増えて36%に達したというデータもあり、コロナ禍をデジタル化で乗り越えようという姿勢がうかがわれる。

《50%》特定分野のクラウドへの移行率

各分野のクラウド移行率で顕著なのは、「Webサイト/ Webアプリ」の53%と、「コラボレーションおよびコミュニケーションソリューション」の52%だ。しかしその反面、全体の27%はシステムをクラウドからオンプレミスに戻す予定が立っている。特にレガシーなシステムはクラウド移行が悪い結果を招くこともあるので、じっくりと検討した上でクラウド移行を実施する必要がある。

《55%》2つ以上のパブリッククラウドを利用する組織

クラウドサービスは、サービスによって長所や短所が存在する。高いパフォーマンスを得るには、現状複数のクラウドサービスを組み合わせる必要があることが多いため、55%の組織が2つ以上のパブリッククラウドを利用中だ。
複数のパブリッククラウドを利用する目的は「最高のプラットフォームとサービスオプション」49%、「コスト削減/最適化」41%、「ディザスタリカバリ/ビジネス継続性の改善」40%と続いている。日本の総務省の調査でも、日本企業がパブリッククラウドを利用するにあたり、コスト削減や利便性、可用性の面でのメリットを重視していることがわかっている。

※:本記事ではオンプレミスで運用する自動スケーリングのITシステムをプライベートクラウドとし、その他のIaaSやSaaSなどのサービスを組み合わせたシステムは全てパブリッククラウドと呼ぶ

《67%》クラウド投資のために新しい役割や機能を追加する組織

企業がクラウド投資のために設ける新しい役職の上位5位は以下の通りだ。

・クラウドアーキテクト
・クラウドシステム管理者
・セキュリティアーキテクト
・DevOpsエンジニア
・クラウドソフトウエアエンジニア

現状では、特にクラウドアーキテクトが不足している。クラウドアーキテクトとは、企業のクラウド利用全体を統括する役割である。クラウドソリューションはもちろんのこと、従来のITや情報セキュリティガバナンスにも精通している必要があるため、ハードルが高く、人材が不足する傾向にある。

(図2:世界で進むオンプレミスのシステムからクラウドコンピューティングへの移行)

◎パブリッククラウドの課題について

パブリッククラウドの課題についての上位5点は、クラウドコストの管理、データのプライバシーとセキュリティ、クラウドリソースの保護、ガバナンス/コンプライアンス、クラウドセキュリティスキル/専門知識の欠如と続いていた。
複数のパブリッククラウドを導入する上で、重複サービス契約防止などのコスト管理や、データのプライバシーおよびセキュリティに関する懸念が大きな課題として挙がっている。日本の総務省の調査でも、セキュリティや改修コスト、スキル不足など同様の課題が挙がっているのが現状だ。また、複数のクラウドサービスを利用する場合、複雑で特殊なクラウド管理を強いられる場合が多く、調査結果では実に79%の組織がマルチクラウドのマイナス面を経験していた。近年ではマルチクラウドのマイナス面を緩和するために、クラウドベンダーに依存しないマルチクラウド管理プラットフォームが各社からリリースされている。

クラウドコンピューティングのセキュリティが今後の大きな課題

オンプレミスのシステムからクラウドコンピューティングへの移行は年々加速しており、来年以降も加速は継続するとみられている。しかし課題も複数存在し、企業ではコストの管理やクラウドリソースの保護、スキルの不足などに苦しんでいる。中でもセキュリティ関連事項を課題としている企業は多い。
特にクラウドコンピューティングにおけるセキュリティの課題に関しては、ゼロトラストを中心とした今後主流となっていくであろうセキュリティ対策に対応していく必要がある。幸いひと昔前とは異なり、現在では日本政府のIT総合戦略室から「政府情報システムにおけるゼロトラスト適用に向けた考え方」がリリースされるなど、政府もクラウドに関連する各種ガイドラインを用意している。

次世代のコンピューティング環境では、IoTやVRといった仕組みを活用し、さらに5Gの普及で膨大な数のデバイスや機器がメッシュネットワークを構成する。ネットワークを付加価値としてサービスを展開する企業も多く出てくるだろう。この波に乗り遅れないように自社のセキュリティを強化し、新しい仕組みに対応していきたい。

◎製品名、会社名等は、各社の商標または登録商標です。

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著者 OPTAGE for Business コラム編集部

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