新型コロナが変えた社員意識。企業はどう対応すべきか

新型コロナが変えた社員意識。企業はどう対応すべきか
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新型コロナとの2年、社員たちの意識の変化を読み、次代に活かす

希望と不安を抱えながら、志も新たに社会人として飛び立つ---かつて4月になると、ビジネス街でよく見られた新入社員たちの姿。それが昨年から、見られなくなっています。いうまでもなく新型コロナの感染拡大が、新入社員たちの活動に大きな影響を与えたからです。

2020年度の新入社員は、学校の卒業式が相次いで中止となったまま入社を迎え、いきなりリモートワークや自宅待機を命じられ、かなりの戸惑いを覚えたものと推察できます。
一方、2021年度の新入社員はすでに1年以上にわたる「新型コロナ」の経験を持ち、リモート面接など今までにない就職活動を経て、それなりの覚悟を持って「社会人」に飛び込んだと考えられます。いずれも、相変わらず制限のある会社生活を送っていると思われますが、わずか1年違いの両者の意識に、何か異なるものはあるのでしょうか。

また新型コロナは、新入社員だけでなく中堅社員から企業幹部まであらゆる人たちに大きな影響を与えています。それはどのようなものなのでしょうか。

コロナ禍で働く社員の意識の変化を、さまざまな調査から考えてみたいと思います。

昨年と比べ、落ち着きを見せ始めた新入社員への対応

さて先にも述べた通り、入社早々リモートワークになってしまった新入社員は、実際にどれぐらいいるのでしょうか。

市場調査会社の株式会社アスマークでは今年6月、新入社員および中途採用社員を対象に調査した「コロナ禍新入社員 意識調査2021」を発表しています。そこに掲載されている新入社員の在宅勤務状況を見てみましょう。

2020年度の新入社員のうち2020年4~5月「ほぼ毎日在宅勤務だった」と答えたのは、全体の32.6%と約1/3にのぼります。その反面、「一度もしていない」が49.5%とほぼ半数を占めています。一方2021年度の新入社員における4~5月の在宅勤務状況は、「ほぼ毎日」が20.5%と減少したのと同時に、「一度もしていない」も40.2%と減少しています(下表参照)。

株式会社アスマーク「コロナ禍新入社員」意識調査2021(2021年6月発表)より
2020年の調査:2020年8月7日~8月12日実施。2020年4月~7月末の新入社員(新卒/中途含む)190名
2021年の調査:2021年5月28日~6月1日実施。2021年4月~5月末の新入社員(新卒/中途含む)132名
参考:株式会社アスマークの上記調査報告ダウンロードページ

この数値から、2020年春時点の企業側のドタバタとした対応の様子がうかがわれます。
おそらく当時新型コロナ感染拡大で企業側の対応が追い付かず、新入社員には在宅勤務という名の「自宅待機」が急場しのぎで行われたのではないでしょうか。

一方2021年の数値からは昨年1年間の反省も含め、企業側が新入社員を迎え入れる体制を整えたのであろうことが察せられます。「一度もしていない」および「ほぼ毎日在宅」が減少しているのは、勤務シフトをうまく組んで、出社日数を減らし感染対策を行った結果です。企業側も、この1年でかなりの対策を練ったのでしょう。

株式会社アスマークのレポートには、もうひとつ注目したいアンケート結果があります。「業務内容の在宅勤務可能可否と、現実のギャップ」という項目です。

これは新入社員が自分の業務を「在宅勤務可能」か「在宅勤務が不可能」か、どう捉えているのか、そして現実に在宅勤務を行っているのかいないのかを尋ねたものです(下表参照)。

株式会社アスマーク前掲レポートより

この調査結果を見ると、「在宅勤務が可能な業務」および「どちらかといえば在宅勤務ができる業務が多い」と思いながら、一度も在宅勤務をしていない新入社員が23.4%(10.4%+13.0%)もいることがわかります。これは、全体の1/4に近い数字です。反対に「在宅勤務ができない業務」「どちらかといえば在宅勤務ができない業務が多い」のに「ほぼ毎日」在宅している人が19.9%(15.0%+4.9%)、と全体の1/5の数字となっています(上記表で着色したセル)。

この結果から業務内容と現実の在宅勤務状況に、ミスマッチがあることが考えられます。ただ留意しておきたいのは、このアンケートはあくまで新入社員を対象にしているため、十分に自分の仕事について把握しきれていないことから派生する誤解であるとも考えられます。

どちらにせよ、企業側は新入社員に対して、在宅勤務を命じる・命じないに関わらず相手を納得させるだけの説明が欠かせないといえるでしょう。

人間関係構築のフォローに加え、キャリアアップの道筋を明確にすること

ここまでは、新入社員の在宅勤務状況と、それにまつわる意識を見てきました。続いて業務における困った点や不安な点を見ていきたいと思います。

株式会社リクルートマネジメントソリューションズが今年6月に発表した「2021年 新入社員意識調査」で、2020年度と2021年度の新入社員を比較した調査結果が発表されていますので、その数値を見てみましょう。

●仕事・職場生活をする上での不安

株式会社リクルートマネジメントソリューションズ「2021年 新入社員意識調査」(2021年6月発表)より
2021年3月~4月。同社新入社員導入研修受講者472名

参考:株式会社リクルートマネジメントソリューションズの上記調査報告ページ

昨年と今年を比べると、何がわかるでしょうか。
2020年に比べ2021年の方が減少した項目は、「先輩・同僚とうまくやっていけるか」「生活環境の変化に対応できるか」「上司とうまくやっていけるか」「十分な収入が得られるか」「雇用が継続されるか」の5項目。

それに対し、2020年に比べ2021年の方が増加した項目は、「仕事についていけるか」「自分が成長できるか」「私生活とのバランスが取れるか」「やりたい仕事ができるか」「会社の風土が自分に合うか」の5項目。前年と比べ増加も減少もそれぞれ5項目ずつですが、はっきりと傾向が見て取れます。

減少した項目は、主に「人間関係」について。そして「雇用そのものへの不安感」です。反対に増加した項目は、主に「自己実現」言い換えると「自分と仕事の関係性」についての傾向が強いようです。

学生時代から社会に飛び立つには、それでなくとも大きな不安を感じるもの。それに加えて2020年度の新入社員は、いきなり新型コロナによって、今までと全く異なる日常に放り込まれてしまったわけです。その中で先輩社員や同僚としっかり関係性を築いていけるのかという不安にさいなまれるとともに、緊急事態宣言などにより社会活動が大きな制限を受け、非正規雇用者の雇い止めなどが起こることで、自分自身の将来にも大きな不安を抱えたのは間違いありません。

一方で2021年度の新入社員は2020年度新入社員に比べ、新型コロナ禍による社会の変化にもある程度慣れたためか、目先の危機感よりもニューノーマル時代において、ワークライフバランスをどう構築していくかといった点に、比重を置き出したのだと考えられます。

だからといって、2020年度の新入社員が抱いていた多くの不安が解消したわけではありません。依然「先輩・同僚とうまくやっていけるか」と不安を感じている人は、数多くいます。そんな人の不安を解きほぐしながら、ニューノーマル、ウィズコロナの時代にどんなキャリアアップを図るのかを明確に提示する必要があります。若い社員とともに企業が成長するための鍵として、見落とせない要因といえるでしょう。

「テレワーク」から「ハイブリッドワーク」の時代へ

新型コロナの影響を受けているのは、新入社員だけではありません。中堅以上の社員の意識にも、大きな影響を与えているといえます。このような社員の意識を探るのに役立つのが、フレキシブルオフィスを展開するWeWork Japan 合同会社が調査した「コロナ禍長期化における働き方意識調査」です(2021年9月発表)。

その中の「週に5日仕事をする場合、何日程度オフィスで働きたいと思いますか」という設問に対する回答を見てみましょう。

●週に5日仕事をする場合、何日程度オフィスで働きたいと思いますか

WeWork Japan 合同会社「コロナ禍長期化における働き方意識調査」(2021年9月発表)より
2021年7月28日~7月30日。主にオフィス内で勤務し、従業員20名以上の企業につとめる20代~60代男女500名

参考:WeWork Japan 合同会社の上記調査報告ページ

この集計では、「毎日オフィスで働きたい」という声は約1/4に留まっています。逆に「オフィスで働きたいとは思わない」つまりリモートワーク志向の人も23.2%と、これも約1/4に留まっています。半数以上の人がリモートとオフィスを業務内容によって使い分けることを望んでおり、いわゆる「ハイブリッドワーク」志向が強まっていると考えられます。

上記の調査では、同時に「働く場所の選択肢として、1番生産性が上がると思うものを選んでください」という設問も行っていますが、「本社オフィスと自宅(在宅勤務)を選択」が38.4%で第1位。「本社オフィスのみ」が25.6%で第2位。「本社オフィスと自宅(在宅勤務)とその他のワークスペースを選択」が18.2%で第3位となっており、働く場所を選択できることに価値を見出している人が半数以上いることがわかります。

従業員に対する選択肢を用意できることが、企業イメージを高める

WeWork Japanでは先にご紹介した調査と同時期に、別途「コロナ禍長期化における働く場所と価値観に関する調査」も行っています。この中で、経営陣、人事・総務担当者に対し「あなたの会社の成長にオフィス戦略が影響を与えると思いますか」という設問を行っていますが、「思う」「どちらかというとそう思う」という回答が57.6%と、半数を超えています。

●あなたの会社の成長にオフィス戦略が影響を与えると思いますか

WeWork Japan 合同会社「コロナ禍長期化における働く場所と価値観に関する調査」(2021年9月発表)より
2021年7月28日~7月30日。主にオフィス内で勤務し、従業員20名以上の企業につとめる20代~60代男女500名(経営層・人事・総務関連:500名)

参考:WeWork Japan 合同会社の上記調査報告ページ

さらに「オフィス戦略」が重要であると思う理由については、「優秀な人材確保につながる」(46.2%)、「従業員に心身共に健康に働いてもらうために重要」(44.4%)、「従業員に能力を発揮してもらうために重要」(42.7%)と、経営層や人事・総務担当者の意識として、働く場所の多様性が企業の魅力、成長戦略の鍵を握ると考えている人が多いようです。

新型コロナによって否応なくリモートワークに踏み切ったものの、実際にやってみると効率的で魅力的なワークスタイルだと気づいた人も多いようです。新入社員を含め従業員の意識は着実に変わりつつあります。従業員の意識の変化に対応できるよう、企業自体の意識を変えていける・・・それが企業イメージを高め、よりよい人材の確保や従業員のモチベーション向上につながる重要な要因であることは間違いないでしょう。

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著者 OPTAGE for Business コラム編集部

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