「企業活性化の秘訣は「シニア」!?高齢者雇用&戦力化の現在地

「企業活性化の秘訣は「シニア」!?高齢者雇用&戦力化の現在地
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「2025年問題」を踏まえ、長期的な視点に立った高齢者雇用計画が必要

12月に、「2025年問題」を中心に日本の高齢化社会の問題点についてご紹介しました。その中で挙げていた数字を見ると、少々悲観的になってしまいそうです。しかし平均寿命も健康寿命も延び続ける中、高齢者を単に「老人」と捉えるのではなく、「成熟した現役世代予備軍」と捉えることで、新たな希望をもって未来に立ち向かえるのではないか、とも述べました。

世の中を見れば、確かに元気な高齢者を多く見かけます。実際、仕事に疲弊した現役世代より人生を謳歌している方々もたくさんいます。今回はそんな方々を企業の新しい戦力とする、つまり高齢者雇用について解説していきたいと思います。

現在、少子高齢化社会の日本では、現役世代の減少が顕著になっており、深刻な人材不足に直面しています。DXによりオートメーション化が進んでいるものの、まだまだ自動化できない業務も存在し、「業務のIT化」と「人材の確保」を両輪で進めることが重要だと言えます。そして、労働者の立場からも、老後の生活のために少しでも長く働き、安定した収入を得たいというニーズが、これからますます高まっていくでしょう。

そのため、高齢者の戦力化が、国家的な課題となっており、多くの企業で定年の延長や定年後の再雇用が進められています。あなたの会社では、いかがでしょうか。5年、10年といったスパンで考えた場合のリクルート計画は進んでいますか。そういったことを検討していただくためにも、今回の記事を参考にしていただけたらと思います。

さて高齢者の雇用、戦力化には2つの方法があります。ひとつは、現在すでに雇用している従業員を、継続して雇用し続ける方法。もうひとつは、リタイアした高齢者をリクルートし雇用する方法。この両面から、高齢者の戦力化について考えてみましょう。

約8割と圧倒的に多い、「60歳定年制」の企業

まず第一歩として、企業の高齢者雇用の現状を見ていきましょう。定年を何歳に設定しているのか、また再雇用の状況はどうなっているのでしょうか。

厚生労働省の「就労条件総合調査結果の概況」(2017年)によると、定年を60歳としている企業は79.3%。61~64歳が2.9%、65歳が16.4%、66歳以上が1.4%となっています。8割近くの企業が60歳定年としており、65歳はまだまだ非主流といえます。ただ2007年度に厚労省が行った「就労条件総合調査」によると、60歳定年制の企業は86.6%、65歳は9.0%でしたので、この10年ほどの間に少しずつですが60歳定年制の企業が減少していることがわかります。

企業規模別定年年齢の比率

出典:厚生労働省 「就労条件総合調査結果の概況」平成29年 を加工して作成

興味深いのは、60歳定年制は従業員数の多い企業の比率が高く、65歳定年は従業員数が少ない企業の比率が高いことです。従業員数の少ない企業の方が制度面で「小回りが利く」状況であり、雇用においても柔軟な対応が取れているのがわかります。ちなみに、同調査で「定年制を定めていない」という企業は、全体では4.5%。従業員1,000人以上の企業では0.7%であるのに対し、30~99人の企業では5.8%となっており、規模の小さい企業は制度自体が緩やかであり、これは一種の企業的魅力につながるのではないかと考えられます。

企業と従業員がWin-Winになれる、定年後の継続雇用・再雇用

さて、多くの企業が採用する60歳定年制ですが、それでは定年到達者の処遇はどうなっているのでしょうか。厚労省の前掲の調査とは異なりますが、「高齢者の雇用状況」(2020年)調査結果によると、定年に到達した従業員のうち継続雇用された者は85.5%。継続雇用を希望せず退職した者が14.4%。継続雇用を希望しながら雇用されなかった者が0.2%となっています。

60歳定年企業における定年後の雇用状況

出典:厚生労働省「高齢者の雇用状況」令和2年を加工して作成

希望しながら雇用されないという方がわずかながら存在するものの、多くの場合、希望すれば継続雇用される状況といえます。定年を61歳以上に設定している企業も含め、実質ほとんどの方が希望さえすれば65歳までは働ける環境にあるといえるでしょう。

ただ最初にも述べたように、現在の社会状況を考えると、さらなる定年延長、あるいは定年制を廃止するなど積極的な高齢者雇用を試みる必要があるかもしれません。それが企業にとっても被雇用者にとってもWin-Winな結果になることが予想されるからです。

企業としては人材不足の解消と業務の安定化。社内事情や仕事に長じた社員が残るのですから、確実に計算できる労働力を手にできることになります。実務レベルにおける指導的な役割も期待できます。被雇用者にとっては、安定した収入はもちろんですが、働ける場があることで、生きがい、やりがいを感じることができ、精神的に健全に暮らせる可能性が高まります。

熟練の従業員に「逃げられる!?」可能性も考慮する必要が

しかし単純に「それでは定年を延ばそう」「定年制をやめてしまおう」というわけにもいきません。定年制の調査で従業員数の多い企業ほど60歳定年制が多いのは、企業の規模ゆえに就業規定を容易に変更できないことが、理由のひとつとして考えられます。定年の延長や廃止は、給与や年金や保険といった負担の増大につながります。従業員が多いほど、簡単には踏み出せません。

また定年した従業員を再雇用する場合、どれほどの報酬を与えるかが重要な問題となります。正規の従業員として貰っていた報酬から、嘱託扱いとなり大幅に報酬がカットされるケースが多いのです。

日経BPコンサルティングが2021年1月に行った調査によると、定年前と後の年収を比べると、「定年前の6割程度」が最も多く20.2%。さらに「5割程度」が19.6%、「4割程度」が13.6%と続きます。定年前と同等、あるいはそれ以上と答えた人は、1割にも満たないことがわかりました。だいたい半分程度になるものと考えてよいでしょう。このような報酬の減額に、従業員自身が継続雇用を求めず、他の会社に再就職、あるいは自営する可能性があります。

上記の日経新聞社の調査では、「定年後の勤務先や働き方」についても質問しています。定年前の同じ会社で働くという人が65.3%と約2/3を占めていますが、いいかえれば約1/3の人が、定年前とは異なる企業に「再就職」していることになります。従業員にも「働く場」を選ぶ権利があるということは、しっかりと理解しておく必要がありそうですね。

※参考資料:日経新聞社「給料4~6割減が過半、定年後再雇用の厳しい現実」より

再雇用だけでなく、外注など多彩な業務依頼が可能に

有能な人材が継続雇用・再雇用を希望せず、自社から別の会社に移る...これを反対から見ると、他社で経験を積み、自社の従業員にはない能力を持った人材が新たにリクルートできる、ということになります。そんな新しい人材の活用で、今までになかった知見やノウハウが導入でき、社内の活性化が期待できます。

リクルートの方法については、今や百花繚乱。テレビCM等で耳にする有名転職サービスが、競うように高齢者向けの求人・求職情報を掲載しています。内容も幹部や管理職などの経験者専用であったり、技術者専用のものであったりと枚挙にいとまがありません。

さらには人材を求める企業と仕事を探す高齢者を、ICT技術やAI技術によってジョブマッチングさせるというサービスも登場しています。これは高齢者が企業に応募する過程で、興味や関心といったものをAIが学習し、高齢者本人も想像していなかった仕事内容・企業への応募を提案するといったものです。企業にとっては、自社が抱える案件に対し最適な人材を、そう大きな負担もなく確保できるというメリットが生まれます。

これらのサービスでは、長期間の再就職というスタイルだけでなく、例えば中長期の顧問契約、週1日の業務委託、外注といった多彩なスタイルでの業務依頼が可能です。そうなると「再就職」という雇用形態に縛られず、もっと自由で流動的な人材活用が可能となります。

案件ごとに外注としてシニアの能力を活用するようになると、再雇用で発生する諸々の負担・責任が軽減され、経費の節約につながります。企業としても意欲的に、シニア向けマッチングサービスを検討すべき時代に差し掛かっていると思われます。そう、高齢者の戦力化は、「再雇用」というスタイルだけではないのです。

自分自身のためにも、「定年後」を積極的に考えてみませんか?

このようなシニア向けのマッチングサービスは、定年を迎える従業員にとっても大きなメリットを提供してくれます。「継続雇用・再雇用」「再就職」に加えて、自営する、フリーランサーになるという選択肢が増えるからです。自分のやりたい仕事を選んで請け負い、自分の経験、能力を活かして好きな時間に仕事を行う・・・ある種、理想的な働き方だと思いませんか?

この記事の読者のみなさんは、企業に属している方が多いと思います。定年が間近な方も、まだまだ先のことだとお考えの方もおられるでしょう。しかし、企業として今から「高齢者戦力化」に取り組んでおくことは、あなた自身にとっても大きなメリットとなって還元されるはず。

そのような視点を持って、企業人として高齢者の人材登用を考えてみませんか。「戦力化される高齢者」とは、まさに未来のあなたなのです。

◎製品名、会社名等は、各社の商標または登録商標です。

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著者 OPTAGE for Business コラム編集部

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