ニューノーマル時代を切り拓く、「非接触」「非対面」の世界

ニューノーマル時代を切り拓く、「非接触」「非対面」の世界
Contents

コロナ禍が収束しても、さらなる進歩が期待される技術分野

新型コロナによって、一挙に進化したもののひとつに「非接触・非対面」という行動様式があります。ウイルスに感染しない、させないための基本的な振る舞いとして推奨され、私たちの暮らしの中に取り入れられました。

最も単純なものとしては、人と人の間に透明のアクリル板やビニールシートを置き、飛沫による感染を防ぐといったものです。飲食店やコンビニなど小売店のカウンターなどで、よく見られます。このような物理的な障壁はマスクと似たところがあり、新型コロナの流行が収まるにつれて無くなっていくことが考えられます。

その反面、流行が収まっても無くならないと思われるものがあります。その代表格がキャッシュレス決済。購入客と店舗スタッフが接触せずに済むという点が非常に有効だと認識され、導入が進みました。しかし使っていくうちに単に新型コロナ対策だけでなく、現金を持ち歩いたり探したりする手間が省けるといった使い勝手の良さが浸透し、今後もキャッシュレス決済はますます広がっていくものと考えられます。

また以前は人が現地に移動することによって行われていた活動を、リモートで行う機会が増えていますが、このようなリモート化も移動時間やコストの削減につながるというメリットが評価され、さらに加速すると考えられます。

今回は、コロナ禍が収束しても私たちの暮らしの中に定着していくであろうと思われる、非接触・非対面技術の最新動向についてご紹介しましょう。

高度なセンシング技術により「非接触」は「仮想接触」へ

「非接触技術」の中で、今最も注目されているのが、ボタンなどに直接触れることなく操作を可能とするテクノロジーでしょう。もともと新型コロナ感染拡大以前から、広い範囲にわたって活用が進んでいました。例えば、自動ドアや照明の自動オンオフといった技術がそれにあたります。

自動ドアや照明の場合、多くは人感センサーなどによって制御されており、非接触技術の進歩のひとつはセンシング技術の進歩ともいえます。現在、導入が進みつつある非接触タイプのエレベーターは、ボタンの近くにかざされた手(指)を感知し、階数を指定するなどの操作を行います。ボタンに触れず指を差すだけで操作する場合、行きたい階とは別の階のボタンが反応するといった誤動作も考えられます。しかしセンサーの反応距離を高精度に設定できる技術が確立され、実用化が進みました。

このような非接触の世界で最も注目すべき技術が、指などの動きを読み取るセンサーと空中に画像を表示させる「空中ディスプレイ」を組み合わせた「空中タッチパネルディスプレイ」でしょう。この技術を使えば、物理的なボタン、キーボード、スイッチといったもの自体が存在せず、完全な非接触が実現できます。いや「完全な非接触」というより、「仮想接触」といった方が正しい表現かもしれません。

この「空中タッチパネルディスプレイ」の用途としては、病院などの受け付け、集合住宅のインターホン、コンビニのレジといった不特定多数の人が利用し、しかも衛生面で高い管理が求められる場所での応用が考えられています。現在、多くのメーカーがこの技術の実用化に挑んでおり、すでに実証実験を開始しているところもあります。

無人店舗の実現を促す「セルフレジ」の進化

「非接触・非対面」という点で注目したいキーワードに、「無人化」があります。

顕著な例としては、スーパーマーケットなどで導入が進むセルフレジが挙げられます。スタッフが商品スキャンまでを行い、購入客が清算を行うものが「セミセルフレジ(ハーフセルフレジとも)」、購入客自身が商品スキャンまで行うものを「フルセルフレジ」といい、購入客と店舗スタッフの接触を極力、抑制しようとするものです。

一般的なセルフレジは商品を1点ずつスキャンしますが、ユニクロやGUが一部の店舗で導入しているセルフレジは、商品のタグ(値札など)に埋め込まれた「RFID」によって、一瞬にして商品点数や価格を読み取る仕組みになっています。ちなみに「RFID」とは「Radio Frequency Identification」の頭文字を取ったものです。商品識別情報を記録したICチップをタグに埋め込み、無線通信等を使って情報のやり取りを行う自動認識技術のことで、レジ待ちの時間を大幅に短縮するものとして期待されています。

RFID以外に購入商品を一度に読み取るシステムとしては、複数のカメラを使った無人レジもあります。ただ、このシステムの場合、多数のカメラを設置する必要があり、導入コストが高額になっていました。

それをたった1台のカメラとAIによる高度な画像認識技術で行えるようにしたのが、丸紅と京セラが共同で開発する「スマート無人レジシステム」です。両社は22年の夏より実証実験に入ると発表しています。従来に比べ比較的、低価格なシステムとなることが期待されるため、これから個人商店などでの無人レジ化や、無人店舗の増加などにつながるかもしれません。

無人化のもうひとつの柱「ロボット技術」

「無人化」のもうひとつの手段として、この数カ月の間に急激にIT関連ニュースで取り上げられることが多くなったのが「配膳ロボット」だと思われます。「配膳ロボット」は飲食業などで人間のスタッフが行っていた配膳、あるいは下げ膳を自律走式するロボットによって行うことで、日高屋、サイゼリヤ、すかいらーくといった大手飲食チェーンで導入が進んでいます。

元来は店舗スタッフと来店客の接触を抑えるために導入された配膳ロボットですが、客側が魅力に感じている点は、意外にも「店内でスムーズに移動する」「一度にたくさんの料理が届く」という点にありました(下記グラフ参照)。
その理由として、人間の配膳能力が1日に200~300皿であるのに対し、配膳ロボットは約400皿で、店側にとっては座席回転率の向上、来店客側にとっては速やかな配膳・下げ膳によってストレスが低減できた点などが考えられます。

◎日本トレンドリサーチ「配膳ロボットに関するアンケート(2022年4月25日発表) 」調査結果を元に一部を加工して作成。
調査期間:2022年4月17日~4月19日/調査対象:全国の男女420名/調査方法:インターネットでのアンケート

ロボット代替業務は今後も、オフィスなどの受け付け業務、AIチャットボットによる問い合わせ、クレーム処理、テーマパーク等でのガイド、倉庫内での出荷配送業務、宅配便の配送・・・といった分野での取り組みが始まっています。

このような状況から「AIやロボットが人間の仕事を奪う」とネガティブに捉える方もいるかもしれません。しかしオフィスでは「RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)」などのDX化により煩雑な業務から解放され、より創造性の高い仕事に専念できるようになりました。ロボット代替でも同様のことが期待できるのではないでしょうか。

建築分野では、カメラ映像によるリモート立ち会いが一般的に

「非接触・非対面」の話題として、最後に取り上げたいのが「リモート」化です。

2022年3月29日、国土交通省は令和4年度より『建築現場における「遠隔臨場」を本格的に実施』すると発表しました。

従来、同省直轄の土木事業工事では「段階確認」や「立会」、「材料確認」を監督職員が現場に出向き、発注者立会のもとに行っていましたが、現地に出向かずWeb通信を使用した「遠隔臨場」で行うというものです(以上、用語等は同省資料掲載のものを使用)。
国交省では新型コロナの感染が拡大した令和2年より「遠隔臨場」を試行していましたが、現場への移動時間や立ち会いに伴う待ち時間の短縮など、効果が確認されたということで、いよいよ今年度からの本格実施となった模様です。

このような国交省の後押し(?)もあり、特に建築・土木の業界では身体に装着するウェアラブルカメラを使った現場臨場のリモート化が急ピッチで進んでいます。現場スタッフが頭部やヘルメットなどに装着した小型カメラの映像と音声を、遠方の事務所に居る責任者がリアルタイムで確認し指示できる「遠隔支援カメラシステム」が、多くの工事現場で使われるようになりました。

そして、ウェアラブル端末の機能は幅広く、健康管理機能やGPS機能など多岐に渡ります。用途に合った形で、メガネ型や時計型などさまざまな種類があり、今や建築や土木分野だけでなく、製造現場における品質管理、新入社員研修、救急搬送時の治療支援、警備業での駆け付け支援などでも応用されるようになっています。5G回線がさらに普及し、高画質映像が低遅延でやり取りできるようになると、さらに用途、需要が拡大していくと考えられています。

全てが融合し、新しい「働き方」と企業風土を創り上げていく

いかがでしたか?テレワークやWeb会議と同様、当初は新型コロナ感染拡大による苦肉の策として始まった「非接触・非対応」技術の導入ですが、今や感染予防よりも仕事の効率化、働き方改革を実現するためのツールとして脚光を浴びています。そして新しい生活様式、働き方、つまりニューノーマルとして定着していくのは確実だと思います。

ニューノーマルの時代は、以前の記事でも取り上げた「メタバース」「ハプティック技術」「5G」「画像認識」といった最先端の技術が加わり、生活スタイルや働き方を大きく変えてしまうかもしれません。

人類は長い歴史の中で、大きな災難を乗り越えながら新しい時代を切り拓いてきました。日本で新型コロナの感染が拡大して、約2年半。まだまだ収束まで時間はかかりそうですが、その中で確かな光も感じられます。さて、「非接触・非対面」の技術が、どんな未来を呼ぶのでしょうか。

◎製品名、会社名等は、各社の商標または登録商標です。

関連サービスのご紹介

著者画像

著者 OPTAGE for Business コラム編集部

ビジネスを成功に導くICTのお役立ち情報や、話題のビジネストレンドをご紹介しています。

SNSシェア