データセンターの消費電力はなぜ増え続けるのか?背景と省エネ対策を紹介

データセンターの消費電力はなぜ増え続けるのか?背景と省エネ対策を紹介

近年、クラウドサービスやAI技術の発展に伴い、データセンターの重要性が急速に増しています。しかし、データセンターの増加は電力消費の増大という課題も生んでおり、持続可能な運営に向けた対策が求められています。
本記事では、データセンターの利用状況や消費電力問題、省エネ対策の取り組みについて紹介します。

Contents

データセンターの概要

データセンターの概要

ここでは、データセンターとその電力消費の現状について紹介します。

データセンターとは

データセンターは、サーバやネットワーク機器を安全かつ効率的に設置・管理するために設計された専用施設です。内部にはサーバラックや高速回線、冷却装置、大容量電源などが完備されています。

近年、クラウドサービスの普及や生成AIの発展に伴い、AI処理に特化した高性能GPUを備える「AIデータセンター」も登場しています。こうしたインターネット活用の拡大により、データセンターは企業のデジタル変革に欠かせない存在となっています。

データセンターの利用状況

データセンターは世界中で普及が進んでおり、総務省の報告によれば、2024年3月時点でアメリカには5,381カ所、欧州には2,100カ所、日本には219カ所のデータセンターが存在しています。市場規模も2020年に新型コロナウイルス感染症による工事の延期やサプライチェーンの混乱などが影響して一時減少したものの、現在は安定した成長を続けています。

国内でもデータセンター市場が活発化しています。総務省の「令和6年版 情報通信白書」によると、国内のデータセンターサービスの売上高は2022年に約2兆円でしたが、2027年には約4.1兆円と、2倍以上の成長が予測されています。

日本のデータセンターサービス市場規模(売上高)の推移及び予測

出典:「日本のデータセンターサービス市場規模(売上高)の推移及び予測」令和6年版 情報通信白書(総務省)

また、千葉県印西市や北海道石狩市といった地域では、電力供給の利点を活かした「データセンター集積都市」が形成されつつあり、データセンターの拠点として注目されています。

データセンターの消費電力が増えている理由

データセンターの増加に伴い、消費電力の高さが大きな課題となっています。資源エネルギー庁の報告によると、現在の技術で省エネ対策を行わずに運用を続けた場合、データセンターの消費電力は2030年には900億kWh、2050年には120,000 億(12兆)kWhに達すると予測され、約133倍の増加が見込まれています。

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出典:「ICTインフラの消費電力量見通し(対数グラフ)(データセンター)」電力需要について(経済産業省 資源エネルギー庁)を加工して作成

現在建設中の大規模データセンターは、人口100万人規模の都市と同程度の電力を消費するとの試算がでています。データセンターは、膨大な通信や機器の冷却のために多くの電力を使用するほか、AIやGPUなど高消費電力の技術が普及することで、さらなる電力消費が生まれています。

データセンターの消費電力問題がもたらすリスク

このままデータセンターの消費電力の問題を放置すると、さまざまなリスクが発生する可能性があります。ここでは、そのリスクについて紹介します。

電力需要に対応できなくなる

資源エネルギー庁の「令和4年度エネルギーに関する年次報告(エネルギー白書2023)」によると、日本の発電量は2021年度に10,328億kWhで、2010年度から算出方式が変更されつつも、10,000億kWh前後で安定しています。

発電電力量の推移

出典:「発電電力量の推移」 令和4年度エネルギーに関する年次報告(エネルギー白書2023)(経済産業省 資源エネルギー庁)

今後、生成AIやロボットの活用をはじめとするデジタル化の進展により、データセンターの需要が増加し、電力需要が高まると予測されています。これにより、国内の電力供給に圧力がかかる懸念が高まっています。

特に、AIやクラウドサービスの普及に伴うデータセンターの需要増加が、電力インフラに負担をかけ、将来的に電力不足に陥るリスクが指摘されています。

データセンターの建設が規制される

北欧諸国では、冷涼な気候を活かしてデータセンターの誘致を積極的に進めてきましたが、予想外の消費電力問題が浮上しています。

特にアイルランドでは、ハイパースケーラーやクラウド企業のデータセンター誘致を推進した結果、2030年には国内総電力の31%をデータセンターが消費すると予測されています。このため、アイルランド政府はデータセンター建設を制限する方向へ政策を転換しました。

日本でも、データセンターの増設に伴い、同様の電力供給の課題が生じる可能性が懸念されています。そのため、エネルギー効率の改善や安定した電力供給の仕組みづくりが必要とされています。

可用性の損失

データセンターでは、安定稼働を維持するためにさまざまな対策が講じられていますが、まれに電力障害が発生することもあります。

電力供給が一時的に途絶えると、サーバに保存されているデータの一部にアクセスできなくなる可能性があります。また、十分な電力が供給されない場合には、一部の機器が一時停止し、データセンターの稼働率を下げる要因になることもあります。

こうした状況を防ぐため、多くのデータセンターではバックアップ電源や冗長化構成が整備されており、可用性が維持されるよう配慮されています。

データセンターの省エネ対策とは?

データセンターの省エネ対策とは?

データセンターの消費電力問題に対処するため、日本では官民一体となってさまざまな取り組みが進められています。特に経済産業省は、2030年までに消費電力を40%削減する目標を掲げて対策を講じています。ここでは、その対策の一部をご紹介します。

ベンチマーク制度の導入

省エネ法の「ベンチマーク制度」に、2022年4月からデータセンター業が新たに対象業種として追加されました。この制度は、エネルギーを多く消費する事業者に省エネ目標を設定するもので、データセンター業界もその対象となり、消費電力削減への取り組みが求められています。

具体的には、エネルギー効率を示す指標「PUE」をベンチマークとし、目標値を1.4に設定しています。この値は、上位15%の効率的な事業者が達成する水準を基準としており、IT機器や空調設備が高効率なほど目標に近づけます。

これにより、データセンターのエネルギー消費の最適化が期待されています。

新たな技術の開発

データセンターの消費電力削減を目指して、さまざまな新技術が開発されています。注目されている技術の一つに「液浸冷却」があります。この技術は、サーバを冷却液に浸して冷却することで、従来の空冷方式に比べて熱効率を数十倍から千倍に向上させることが可能になります。また、省スペースでありながら消費電力を約40%削減する効果があり、大きな期待が寄せられています。

さらに、「光電融合技術」という技術も注目されています。これは電気配線を消費電力の少ない光配線に置き換えるもので、電気と光を組み合わせたハイブリッド方式として研究が進められており、エネルギー効率の向上が見込まれています。

これらの技術を組み合わせることで、将来的にはよりエネルギー効率の高いデータセンターが実現し、省エネとサービスの信頼性の向上が期待されています。

カーボンニュートラルの導入

カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出量と吸収量を相殺してゼロにすることを指し、排出削減だけでなく、吸収や除去も含めた総合的な対策が求められます。

その一例として、北海道美唄市の「ホワイトデータセンター」では、雪を活用した冷却システムにより二酸化炭素排出量ゼロを実現しています。この雪冷房システムのおかげで、夏場でもPUE値は国内平均の1.7を大幅に下回る1.04を達成。また、このデータセンターの利用によって、温室効果ガスの排出削減量や吸収量を「J-クレジット」として国から認証を受けることができ、グリーンエネルギー経営の証明にもつながります。

さらに美唄市は、再生可能エネルギーの活用を推進し、バイオガス発電所の建設も計画しており、持続可能な地域づくりに貢献しています。

立地や周辺環境の活用

データセンターのエネルギー効率向上と脱炭素電源の確保を目指し、立地や周辺環境を活用する取り組みが加速しています。

例えば、Googleはネバダ州にあるデータセンターに地熱発電を活用した電力網を導入し、安定的にクリーンエネルギーを供給しています。また、Amazonは原子力発電所直結のデータセンターを買収し、持続可能で安定した電力供給体制を確保する戦略を取っています。日本国内でも、再生可能エネルギーのみを使用したデータセンターが稼働し始めており、今後このような脱炭素型データセンターはさらに増える見通しです。

これらの事例は、環境負荷を軽減しつつ安定した運用を支えるモデルとして、他の地域や事業者にも影響を与えています。

まとめ

まとめ

本記事では、データセンターの利用状況や消費電力問題、省エネ対策の取り組みについて紹介しました。データセンターは現代のデジタルインフラの要ですが、消費電力の増加が課題となっています。

オプテージの「梅田北データセンター」では、関西電力グループの技術力を活かして、高品質な電力を安定供給しています。また、外気を活用した効率的な冷却システムを導入し、サーバを熱から守る工夫も施されています。さらに、最新の空調設備や太陽光発電の活用、レイアウトの最適化により、従来よりも省エネ効率が向上したデータセンターとなっています。

また、2026年1月から大阪市曽根崎エリアで、実質的再生可能エネルギー100%を使用した「曽根崎データセンター」の運用を開始予定です。

データセンター全般についてお悩みのことがありましたら、ぜひオプテージまでお気軽にご相談ください。


◎製品名、会社名等は、各社の商標または登録商標です。

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著者 OPTAGE for Business コラム編集部

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