軍事用語からビジネス用語に。今さら聞けない「VUCA」とは?

軍事用語からビジネス用語に。今さら聞けない「VUCA」とは?
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1990年代後半、アメリカの軍事用語として使われはじめた「VUCA」

もし「今さら、聞くに聞けないビジネス用語ランキング」を選んだとしたら、上位に食い込んできそうなのが、「VUCA(ブーカ)」ではないでしょうか。
みなさんは、ご存じでしょうか?「聞いたことはあるけど、説明してといわれると、ちょっと困る・・・」とドキッとした方も多いかもしれませんね。

「VUCA」とは、英語の「Volatility(変動性)」「Uncertainty(不確実性)」「Complexity(複雑性)」「Ambiguity(曖昧性)」の4つの単語の頭文字を取ったものです。それぞれの言葉の意味から想像できるかもしれませんが、将来の予測が非常に難しい状況を示すワードです。そもそもはアメリカの軍事用語として、1990年代後半から使われはじめました。

米ソの冷戦時代が終結し、世界の対立構造が「資本主義vs共産主義」「国vs国」といった単純な構図では予測しづらくなってきたことから生まれました。実際、その後の世界のあり方は複雑になり、紛争の理由も宗教・民族・経済格差など、相手もテロ組織や宗教原理主義者など多様化しています。戦い方も武力によるものに加え、最新のICTやAI技術を活用した情報戦・サイバー戦が重要な戦術となっています。

このような状況下では、従来の戦略や戦術だけでは通用せず、相手や戦況に応じて戦い方を変えていく必要が出てきました。そこで生まれたのが「VUCA」というワードだったのです。

しかし最近ではビジネスの世界でも、この言葉が話題となっています。3年間のコロナ禍により人々の価値観が揺らぎ、暮らしのあり方も変化したため、さまざまな局面で先が見通しづらい状況に陥っています。そのような状況を理解するため「VUCA」が注目され、企業として時代をどう乗り超えていくのか、どう未来像を描くのかに関心が高まっているのです。

「VUCA」を構成する、4つの単語の意味とは

では具体的に「VUCA」とは、どのような状況を指すのか、そこからご紹介したいと思います。最初にも述べた通り、「VUCA」は4つの英単語の頭文字のこと。ひとつずつ簡単に説明すると・・・

Volatility(変動性)
ICTをはじめとする最新テクノロジーが日進月歩で進化しています。また世の中もそれに伴い、急激に変化することがあります。それにより将来の見通しが立てづらい状況を表します。

Uncertainty(不確実性)
大規模自然災害や感染症のまん延などは、突然、私たちの暮らしに襲いかかり、企業にも大きな影響を与えます。予測不能な事態が、企業に大きなリスクをもたらすことを表します。

Complexity(複雑性)
さまざまな分野でグローバル化が進み、今までのやり方や考え方では通用しなくなっています。ビジネスの世界でも相手国に応じた戦略が求められるなど、ますます複雑化していることを表します。

Ambiguity(曖昧性)
先に挙げた「変動性」「不確実性」「複雑性」がからみあうことで生まれるものが、「曖昧性」とされています。未来を確実に捉えきれない状況を表します。

少子高齢化による社会的な不安に加えコロナ禍もあり、現在の日本は明るい未来像がなかなか想像しづらい世の中になっています。そんな風潮から「VUCA」が広く受け入れられるようになったわけです。

「VUCA」への対応は、情報収集・分析と、常に学ぶ姿勢

では「VUCA」の時代を迎えて、私たちはどのように対処すればよいのでしょうか。

「VUCA」が示す4つの英単語と、それぞれが示す意味をよくみると、必ずしも「なすすべもない」言葉ばかりでないことがわかります。

「Volatility(変動性)」と「Complexity(複雑性)」は、テクノロジーの変化やグローバル化によって、従来の方法論(『勝ちパターン』といいかえてもよいかもしれません)が通用しなくなることを示しています。そうであるならば最新のテクノロジーやサービス、あるいはビジネス相手国の商習慣や社会性についての情報を常に収集・分析し、学ぶ姿勢を忘れないことで、ある程度は解決できるはずです。

4つの言葉の中で、「Uncertainty(不確実性)」とされる大規模自然災害や感染症などは、さすがに100%回避できるものではありません。しかし今回のコロナ禍や、東日本大震災、阪神・淡路大震災などは、私たちに貴重な経験と教訓を残してくれました。それら過去の事例などの情報を収集・分析し、「災害・感染症はいつか必ず、また起こる」ということを前提として対処することにより、ダメージは軽減できます。

上記に挙げたような最新情報の取集・分析、さらには過去の事例の研究などを積重ね、目の前の課題にスピーディに取り組んでいくことが重要です。中長期的な展望ではなく、短期的な成果を挙げること。成果を積み重ねていくことで「Ambiguity(曖昧性)」を排除していくのです。

「VUCA」に加え、一緒に覚えておきたい「OODAループ」とは

情報収集と分析、そして"学ぶ"といっても、具体的にどうすればいいのでしょうか。そのヒントとなるのが、「VUCA」とセットで語られることが多いキーワード「OODA(ウーダ)ループ」です。

これも「VUCA」と同様、アメリカ軍の用語で、スピーディな意思決定を導くメソッドとして用いられたものです。「OODA」は「Observe(観察)」「Orient(状況判断)」「Decide(決定)」「Act(実行)」の頭文字から取られており、これを繰り返す(ループ)ことで、より適切な決定が行えるようにするものです。ビジネスを例にすると・・・

① 観察は、市場や顧客ニーズ、顧客心理などのデータを収集し状況を把握することです。
② 次に情報を分析し、どのような製品やサービスであるべきか状況判断を行います。
③ 製品化や試作化を決定します。もちろん「製品化しない」という決定もあり得ます。
④ 製品の発売など、実行に移します。
⑤ 実行した結果を観察・分析し、次の状況判断を行っていく・・・とループさせます。

「PDCAサイクル」に似ていますが、「P(計画)」から始まるPDCAは、スタートするためにはそれなりの準備期間が必要なのに対し、「O(観察)」から始まる「OODAループ」はすぐにスタートできる点、そして問題に対して柔軟に対応できる点が大きな違いとされます。そのスピーディさが、「VUCA」時代の一種の「切り札」として注目を集めているのです。

迅速な意思決定と多様な意見を受け入れられる度量が必要

将来を見通しづらい「VUCA」時代に最も必要なのは、目まぐるしく変化する状況に対する迅速な対応です。そのために先に紹介した「OODA」のような、スピード感ある意思決定のメソッドに注目が集まっているわけです。

ただ意思決定を迅速に行うにしても、たった一人の独断専行になってしまっては意味がありません。短期間で、多様でさまざまな意見を求め、議論しながらまとめていける強いリーダーシップとコミュニケーション力が欠かせません。

「VUCA」時代に対応するため、まずは現状の意思決定のプロセスを今一度、見直してみるところから始めてみてはいかがでしょうか。

◎製品名、会社名等は、各社の商標または登録商標です。

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著者 OPTAGE for Business コラム編集部

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