- 公開日:2023年04月26日
「空の産業革命」離陸!ドローン・レベル4で世界は変わる!?
ドローンの新たな制度で、いよいよ「空の産業革命」が本格化
2022年12月5日より、無人航空機、いわゆるドローンについての新制度がスタートし、「レベル4」での飛行が可能となりました。これによりドローンの用途が一挙に拡大し、「空の産業革命」が本格的に始まるといわれていますが、ドローンは知っていても、「レベル4って何?」「空の産業革命って?」という方もいるかもしれません。
今回のコラムでは、それらの用語説明も含め、ドローンが切り拓く新しい世の中について考察してみたいと思います。
ドローン「レベル4」飛行までの経緯
今やすっかりおなじみになった「ドローン」ですが、そもそも「ドローン」とは「オスのハチ」の意味です。なぜ無人航空機のことを「オスのハチ」と呼ぶようになったのでしょうか。プロペラの羽音がハチの飛ぶ音に似ているなど諸説ありますが、実はハッキリとはわかりません。
そもそも軍事用として、1930年代から開発が始まり、1935年イギリスが無人飛行に成功し、1940年代にはアメリカも開発に成功。第二次世界大戦後もずっと軍事用として使用されていましたが、1980年代から、民間での活用も始まりました。
日本では1987年に無人ヘリコプター(形状はヘリコプターですが、無人ですので分類上はドローンになります)が販売され、農薬散布や空撮などに使用されるようになったのが始まりです。
本格的に浸透しはじめたのは、2010年フランスで発売された一般消費者向けの「AR Drone」からとされています。「AR Drone」は、Wi-Fiで接続したスマートフォンを使って操作できることや、高解像度の動画を見ながら操縦できるという楽しさから、「ホビードローンの元祖」とも呼ばれ、ヒット商品となりました。これを契機に小型化、低価格化が進み、業務だけでなく趣味やスポーツにも活用されるようになりました。
「レベル1」~「レベル4」は、ひとことで言えば飛行スタイルの違い
日本でもドローンの普及が進む中、新たな技術開発や法整備等が必要となったため、2015年、政府は関係省庁、メーカー、利用者団体などをメンバーとする「小型無人機に係る環境整備に向けた官民協議会」を開催。2016年に「小型無人機の利活用と技術開発のロードマップ」を発表し、ドローンの利用形態を「レベル1」から「レベル4」に分け、技術開発や環境整備、法規の整備などを見据えながら、順次、認可していくことにしたのです。
それぞれのレベルで可能となる飛行スタイルと主な用途例をまとめたものが、下表です。
(※)内閣官房「レベル4飛行の実現、さらにその先へ」掲載の図をもとに作成。
原資料は下記よりダウンロードできます。
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/drone_platform/pdf/20220721kouen.pdf
上の表でおわかりいただけるように、「手動による操縦/自動・自律飛行※」「目視内での飛行/目視外での飛行」「無人地帯での飛行/有人地帯での飛行」の3軸によって、それぞれのレベルが決められています。
2022年12月5日の法改正まで、ドローンで可能だったのは・・・
●目視内での手動操縦による飛行(レベル1)
●目視内での自動・自律飛行(レベル2)
●無人地帯における目視外での自動・自律飛行(レベル3)
有人地帯、つまり人が居る場所では墜落や激突などの可能性も考慮し、目視外での自動・自律飛行は禁止されていました。要するに街中での飛行、利活用には、まだまだ大きな支障があったのです。
(※)「自動飛行」「自律飛行」には、今のところ明確な違いはないとされます。ただ、GPSを利用するものを「自動飛行」、SLAM技術(周辺環境の情報と自機の位置を把握しながら、自動的に航路を決めていく技術)を利用するものを「自律飛行」とすることが多いといわれています。
有人地帯におけるドローン自動・自律飛行がもたらすもの、
それが「空の産業革命」
冒頭でも少し紹介しましたが、政府が現在、強力に進めようとしている施策のひとつが、「空の産業革命」です。
政府が発表した「空の産業革命に向けたロードマップ ~小型無人機の安全な利活用のための技術開発と環境整備~」によると「空の産業革命」とは、「多様な産業分野の幅広い用途に小型無人機が利用されるようになることで、小型無人機による空の活用を通じて、産業、経済、社会に変革をもたらすことと考えられる」とされており、まさにドローンの「レベル4」飛行が前提となっていることがわかります。
それでは「レベル4」で想定されている、ドローンの用途をご紹介しましょう。
まず、有人地帯での目視外・自律飛行が可能になったことで、都市部での物流に大きく貢献することは間違いありません。
交通渋滞や人手不足などが、配達遅延の原因となっていますが、ドローンを使った自動配送が可能になれば、それらの課題も一挙に解決できます。トラック等の使用が減るため、配送会社にとってはガソリンなどの燃料費の節約につながります。さらにCO2の発生を抑えることにもなり、環境面におけるメリットも期待されています。
また、高齢化や地方の過疎化から買い物難民の急増が考えられる「過疎地・離島物流」。これから急拡大が見込まれる在宅医療ニーズに対応した「医薬品物流」。農業従事者の高齢化からドライバー不足が深刻化する「農作物物流」などで、ドローンの活用が進んでいくでしょう。
都市部では、フードデリバリー・商品デリバリーサービスも一部、実証実験が進められ、ドローンがスマート物流を担う存在になると考えられます。
産業保安、農林水産・・・、深刻化する人材不足を、ドローンで解消!
人材不足は現在の日本の、あらゆる業界で問題となっています。その中でも、ひときわ深刻な状況にあるのが産業保安分野です。「産業保安」とは、電力、火薬類、都市ガス、LPガス、高圧ガスなどの安全を確保・維持するためのもの。その分野で熟練した保安人材が大量に退職していく反面、若年層の雇用が進まず産業基盤そのものが大きく揺れています。
そのような問題を、ドローンやIoT、ビッグデータ、AIを使用して解決しようとする「スマート保安」の推進が、官民一体となって進められています。「スマート保安」では危険領域での作業、稼働状況の遠隔監視といった用途で、ドローンの活用機会が増えていくことが考えられます。
また農林水産分野でも人材不足が叫ばれています。日本の食料問題にも関わる課題でもあり、解決に向けてドローンを活用した「スマート農業」への取り組み、実証実験も始まっています。
農薬散布の他、ドローンで撮影した画像のAI分析により、野菜の育成状況を的確に把握することで作業時間を削減する取り組みや、赤外線カメラ搭載のドローンを夜間飛行させ、有害な鳥獣の生態分析へ活用するといった取り組みが始まっています。
「レベル4」飛行にあたって、必要となったこと
活用範囲を大幅に広げる「レベル4」飛行ですが、新たに必要となったことがあります。
まずひとつは、「無人航空機操縦者技能証明」。従来、ドローン操縦には明確な資格(免許)はなかったのです。しかし有人地帯で目視外飛行するためには、国交省が認定する操縦ライセンスの一等資格が必要となりました。
もうひとつは「機体認証制度」。「レベル4」飛行を行うには、登録検査機関による検査を受けた機種だけになります。自動車における車検と同じだといえます。
その他にも、細かな規定が新たに設けられましたが、人々の頭の上を目視外で飛ばすのですから、当然の話だといえるでしょう。厳しい規定により安全性が高まり、上空を気にせず安心して暮らせるなら、むしろ歓迎すべきだといえます。
ところで「無人航空機操縦者技能証明」制度の開始によって心配されていることがあります。それはドローン操縦士の人材不足。多くの産業分野で人材不足解消の切り札と見られているドローンですが、肝心の操縦士不足が心配されるのは、ちょっと皮肉めいていますね。
しかし、これはあまり深刻な問題にはならないかもしれません。なぜなら今、副業としてドローン操縦士に大きな注目が集まっているからです。「手に職を持つ」という面で、ドローン操縦士は大きな魅力であり、そのための技能証明取得に向けたセミナーなども相次いで開講されています。
「レベル4」飛行は、まだ始まったばかり。さまざまな産業分野で、ドローン活用の実証実験が行われます。思いもかけない用途が生まれるかもしれません。ここ数年のドローンの「飛び先」に、ぜひご注目ください。
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