「タイパ」時代、時間の価値への理解度が勝負を分ける!

「タイパ」時代、時間の価値への理解度が勝負を分ける!

2022年の流行語にも挙げられていた「タイパ」。「タイムパフォーマンス」の略語であるこの言葉を、みなさんも何回か、耳にされたことがあると思います。今回は「タイパ」とはどういうものかを再確認するとともに、それによって私たちの消費行動がどう変わっていくかについても検討してみたいと思います。

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「コスパ」と並ぶ重要ワード、「タイムパフォーマンス」とは

先にも書いた通り、「タイパ」は「タイムパフォーマンス」の略語です。よく似た言葉で、すでに私たちにとって馴染みあるものに「コスパ」があります。「コスパ」は「コストパフォーマンス」の略語で、「かかった費用(コスト)のわりに、効果(パフォーマンス)が優れていたこと」を、「コスパがいい」といいます。

その例からいくと、「タイパ」はさしずめ「時間対効果」とでも訳せるでしょう。要するに、「かかった時間のわりに、効果が優れていたこと」となります。

「かかった時間」とは、何でしょうか?

例えば上映時間が2時間の映画があるとします。その映画を1.5倍速で再生すると、2時間の映画が1時間20分で観られることになります。音声や音楽はヘンに聞こえるかもしれませんが、ギリギリ内容は理解できるでしょう。2時間かかっていたものが1時間20分で済む。つまり40分、得したことになる。これが「タイパ」の一例です。

このようなトレンドを裏付けるものがあります。YouTubeや動画配信サイトでは、今や再生速度が調節できる(YouTubeの場合、0.25倍速から2倍速まで)のは当たり前となっており、「タイパ」を重視するユーザーにも対応させていることがわかります。

「早送り再生で、果たして観たことになるのか?」とお思いの方も多いと思います。実は「タイパ」には、賛否両論があります。実際、映像作家や俳優からは、このような風潮に対する疑問も出ています。

2時間の映画を、2時間かけずに観る方法は早送り再生だけではありません。もっと極端な例を挙げましょう。誰かがその映画のストーリーや内容をまとめて文章化したものを、5分ほどで読んで内容を知る。つまり2時間を5分で済ます・・・それさえも「タイパ」と捉えることができるのです。よくSNSやブログで見かける「ネタバレ」というコンテンツが、それにあたります。

上記のようなことを聞くと、「タイパ」という言葉をご存じではなかった方には、「タイパ」とはとんでもないものに思えたかもしれません。少し極端な例に過ぎましたので、もう一度、「タイパ」についてしっかりとご説明したいと思います。

時間に追われる若年層、Z世代から普及した「タイパ」

「タイパ」は、そもそもZ世代を中心に普及してきたものとされています。内容を深く理解するよりも全体的な流れを把握し、話題に乗り遅れないようにしたい、といった要望から生まれたものです。

Z世代は「デジタルネイティブ」、つまり生まれた時から身の回りにIT、デジタル機器があり、成長の過程でそれらに慣れ親しんできた世代でもあります。情報の入手がマスメディア中心だった以前の世代とは異なり、ネットを中心として膨大なコンテンツに囲まれて暮らしているZ世代では、多くの情報を効率的に収集することが求められています。それが「タイパ」を受け入れる素地となっています。

「かける時間を短く」という要望は倍速再生だけでなく、コンテンツそのものの短時間化も促進しました。動画投稿サイトでは数秒~数分程度の短時間画像が人気を呼び、TikTok、YouTubeショート動画などが非常ににぎわっており、ショート動画の主役は主に、Z世代の若者たちです。

このようにZ世代から流行しはじめた「タイパ」ですが、今や多くの世代に受け入れられようとしています。三菱UFJ信託銀行と株式会社ヴァリューズが共同で行った調査によると、「あなたが普段行っている『タイパ』関連の行動は何か」という問いに対する回答では、「動画の倍速再生」が全体として最も多く、20代の男性では56.5%、女性で55.7%と過半数を超えています。また50代の男性でも46.9%、女性は45.3%と、世代を問わず広がっていることがわかります。

(三菱UFJ信託銀行とヴァリューズ共同研究調査のデータをもとに作成)

◎【三菱UFJ信託銀行×ヴァリューズ共同研究調査】 2023年2月、18歳以上の男女17,284人を対象にした調査分析より。

詳細は下記をご参照ください。

https://www.valuesccg.com/news/20230418-5965/

「タイパ」で重要なのは、時間の有効活用の方法

「タイパ」が全世代的に普及した理由は、以前からあった「時短」への流れと合致したからだと考えられています。しかし、「時短」だけが「タイパ」ではありません。では、どのような「タイパ」があるのか、「タイパ」を実現するための新たな製品やサービスを紹介しながら説明しましょう。

(1)内容を理解する時間を短縮する

先に紹介した倍速再生など、手っ取り早くストーリーや内容を知ることで、時間効率を上げようとするもの。1冊の本を10分程度でわかるようにする要約サービス「flier」も人気を集めています。皆さんが今お読みの、世の中でトレンドやICTの話題を手早くお伝えする本コラムも、それに当たるかもしれません。

(2)食事のための時間を短時間化する

食品の世界では、以前から冷凍食品やインスタント調理など、時短の傾向がありましたが、それにますます拍車がかかっています。しかも単に冷凍・インスタントにするだけではなく、レンジ調理のみで本格的な味が楽しめるもの。身体に必要な栄養を「ながら食べ」で摂れるようにしたものなど、新しい製品が次々と発売されています。

(3)面倒な作業を自動化し時間を創出する

ロボット掃除機、ドラム式洗濯乾燥機、食器洗い乾燥機は、現在の家電の「3種の神器」といわれています。今まで人が行っていた作業を完全自動化することで、できた時間を有効活用することも、「タイパ」にあたります。企業におけるDXやさまざまな代行サービスも、「タイパ」のひとつといえるかもしれません。

(4)スキマ時間を有効活用する

TVCMでもお馴染みの「ココナラ」など、自分の得意なものを登録しておき、依頼があれば空き時間で対応するものや、最短1時間から働けるアルバイトを紹介する「タイミー」など、空き時間でできる仕事を斡旋するサービスが続々と登場、多くの人が登録しています。また24時間対応や、ほんのわずかな時間でも利用可能なフィットネスクラブなども、「スキマ時間の有効活用」という面で「タイパ」だといえます。

以上、4つのタイプにわけて「タイパ」を説明しましたが、ビジネスシーンでもこのトレンドは確実なものとなってきています。

例えばリモート会議や遠隔監査、ウェビナーでの講習などは、(1)の短時間化の流れに乗っているものです。またDX化は(3)の面倒な作業の自動化に、そして最近、奨励する企業も増えてきた副業は、(4)のスキマ時間の活用に繋がるものです。

このように「タイパ」は、生活の多くの面で取り入れられてきているといえます。

「タイパ」時代、消費行動の鍵は「時間の価値に寄りそうこと」にあり

このような「タイパ」の時代に、企業としてはどう対応すればよいのでしょうか。時間を短縮できるものを作ったり売ったりすればよいのかというと、そう単純なものではないと考えます。

例えば同じ上映時間2時間の映画でも、映画によってその2時間の充実度、満足度は異なっているはずです。名画を楽しむ人にとっては、2時間の至福の時間を1時間20分に縮める方が、はるかに「タイパ」が悪いといえるかもしれません。

つまり「時間」のどのような点に価値を見出すかで、「タイパ」の意味も変わってくるのです。1時間の空き時間、のんびりと過ごしたいと思う人、寸暇を惜しんで仕事をしたいと思う人、それぞれに1時間の価値は違いますし、また同じ人でも場合に応じて、価値も変わっていきます。

必要なのは、「タイパ」そのものなのではなく、「時間の価値に寄りそうこと」だと考えます。

先にも書きましたが、YouTubeでは再生速度が0.25、0.5、0.75、標準、1.25、1.5、1.75、2倍速と、8段階から選べます。きめ細かな再生速度を用意しておくことで、多彩なユーザーの多彩な鑑賞スタイルに対応し、ユーザーが「観たい」と思った時の思いに寄り添えるようにしているのです。

このように「タイパ」によって、人、マーケットは「時間の価値」を意識し始めたと考えられます。手っ取り早さに価値を見出す人、じっくり向き合う時間に価値を見出す人、まったく時間をかけたくない人・・・注意が必要なのは、それらの人が別々ではなく、同じ人の違う局面で起こるかもしれないということ。その時その時に応じて対応できるものが、「タイパ」の優れた製品やサービスとして認知してもらえる可能性が高いはずです。

あなたの会社が提供されている製品やサービスを、「時間の価値」という側面で検討してみませんか? そこから新しい発想が生まれるかもしれません。

◎製品名、会社名等は、各社の商標または登録商標です。

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著者 OPTAGE for Business コラム編集部

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