ナイトタイムエコノミーはビジネスに活かせる?国内外の事例や進め方も解説

ナイトタイムエコノミーはビジネスに活かせる?国内外の事例や進め方も解説

アメリカやイギリスなど、先進国で実施されている「ナイトタイムエコノミー」。日本でも注目を集めており、新型コロナウイルスの影響によって停滞した経済活動を再生させる戦略のひとつとして期待が寄せられています。
しかし、実際に進めるにあたって何をすればよいのか、そもそもナイトタイムエコノミーとは何なのか把握していない方もいるでしょう。
今回の記事では、ナイトタイムエコノミーの基礎知識をはじめ、国内・海外での事例や進め方など、事業者やビジネスパーソンが押さえておくべきポイントを解説します。

Contents

ナイトタイムエコノミーとは?

ナイトタイムエコノミーとは?

ナイトタイムエコノミーとは、夜間におこなわれる経済活動のこと。国際カジノ研究所 所長の木曽崇さんが2017年に出版した『「夜遊び」の経済学 世界が注目する「ナイトタイムエコノミー」』では、居酒屋やナイトクラブといった夜遊びを思わせるものだけでなく、夜間医療や24時間体制の生活インフラなども該当すると定義しています。
また、国土交通省 観光庁が2019年3月に発表した「ナイトタイムエコノミー推進に向けたナレッジ集」によると、ナイトタイムエコノミーの時間帯は18時から翌日朝6時まで。地域ごとの特色を活かして経済活動を促せるよう、政府でも推進している取り組みです。

■ ナイトタイムエコノミーが推進される背景

海外ではすでに定着しているナイトタイムエコノミーですが、日本でも推し進めようという動きが見られます。その背景として挙げられるのは、経済に与える好影響の可能性です。
海外での市場規模は、ロンドンで約3.7兆円、ニューヨークで約2.1兆円といわれていますが、日本では夜間のコンテンツが乏しいために、せっかくの市場を活かしきれていません。観光庁が外国人を対象におこなったアンケートでも、海外と比べて日本での夜間の満足度は低いという結果になっており、夜間の楽しみ方に多くの需要があることがうかがえます。

ナイトタイムエコノミーに注目が集まっているのは、こうした観光客からのニーズをはじめ、今まで活かしきれていなかった夜間市場の開拓により、日本経済の好転が期待できることが要因です。

ナイトタイムエコノミー実施によるメリットの例を以下にまとめました。

●    高い経済効果が見込める
●    新たな雇用創出につながる
●    宿泊や飲食、アクティビティ、交通事業などへ波及しやすい
●    歴史・文化などの魅力を活かしやすい

企業・ビジネスパーソンはどうとらえるべき?

ナイトタイムエコノミーは高い経済効果が期待できる取り組みではありますが、事業者やビジネスパーソンは、どういった見方をすべきなのでしょうか。
事業内容や職種などによっては関与が難しい場合もありますが、ナイトタイムエコノミーは広範囲に波及する取り組みです。

事例や進め方については後半で取り上げますが、ナイトタイムエコノミーはイベント開催や夜間営業だけでなく、インフラの整備や支払い方法の多さなども欠かせないポイントです。金融系の事業者であればキャッシュレス決済のサポート、公共交通機関であれば運行時間の延長など、事業者がサービスを提供する機会は豊富にあります。
そのため、ナイトタイムエコノミーを主体となって進めたり、取り組みの一部をサポートしたりと、企業・ビジネスパーソンが関わる余地は十分にあるでしょう。

海外におけるナイトタイムエコノミーの事例

ここからは、実際に海外でおこなわれているナイトタイムエコノミーの事例を3つの国・地域に分けてご紹介します。

【海外事例1】オーストラリア・シドニー

海外におけるナイトタイムエコノミーの事例

まず、シドニーでおこなわれているナイトタイムエコノミーの事例は、「The Rocks Pub Tour」と「Vivid Sydney」の2つ。
The Rocks Pub Tourは2時間30分のツアーで、街歩きをしながらシドニーの歴史を探るというもの。老舗のパブ4軒を訪ねてクラフトビールやワインなどを1杯ずつ楽しめます。プロのガイドが案内してくれるため、お酒を楽しみながら街について知ることができるコンテンツです。
また、毎年5月末に開催されるVivid Sydneyは、官民協力の大型イベント。光・音楽・アイデアの3分野で構成され、アーティストによるインスタレーションなどの作品や、国内外のミュージシャンが集う祭典です。シドニー市内と郊外の一部が舞台となり、訪れる人を非日常の空間へと誘ってくれます。

【海外事例2】アメリカ・ニューヨーク

眠らない街としても知られるニューヨークは、以前から夜間帯の経済活動が盛んで、人気ミュージカルを上演する「ブロードウェイ」もそのひとつ。日中だけでなく19時や20時に開演することもあり、終演が23時以降になることも珍しくありません。しかし、24時間運行の地下鉄があるため、時間を気にせずナイトライフを楽しめます。
また、メトロポリタン美術館などは21時までの夜間開館を実施している曜日があり、日中とはまた違った雰囲気でのアート鑑賞が可能です。周辺のレストランやバーも夜遅くまで営業しています。このように、日没後にゆったりとした時間を楽しむための選択肢が多い点は、ナイトタイムエコノミーの好事例として、日本においても非常に参考になるでしょう。

【海外事例3】カナダ・ケベック

ケベック州最大の都市・モントリオールの東にあるゴルジュ・ド・コアティクック公園でも、ナイトタイムエコノミーが実施されています。公園の魅力を世界に発信したいという思いから始まったプログラム「FORESTA LUMINA」は、イルミネーションで煌びやかに照らされた森を歩くというもの。地域に伝わる神話や伝説をイメージして光や音を駆使し、幻想的な空間を演出しています。主に20時以降に実施され、毎日のように完売している人気イベントです。

国内におけるナイトタイムエコノミーの事例

海外では広く実施されているナイトタイムエコノミーですが、日本でも東京を中心に参考となる例があります。赤坂と品川エリアでの事例を2つ見てみましょう。

国内におけるナイトタイムエコノミーの事例

【国内事例1】東京・赤坂

六本木にある「ビルボードライブ 東京」は、100年以上の歴史を持つライブレストラン。国内外のアーティストがステージに立ち、毎日のようにさまざまなアーティストの演奏を堪能できます。フードやドリンクが充実しているほか、平日の営業は22時までと、比較的遅くまで楽しめるのが魅力です。

【国内事例2】東京・品川

2018年に千秋楽を迎えた「WA!!」も、ナイトタイムエコノミーの一例といえます。これは2017年8月から9ヵ月にわたって品川プリンスホテル ステラボールで公演されていた国内最大級の舞台。空中を舞う躍動感や過激なアクションなど、見るものを飽きさせないエンターテインメントです。
夜20時からの公演があったため、仕事終わりのビジネスパーソンや、日中の観光を終えた国内外からの観光客が多く訪れたようです。

ナイトタイムエコノミーを進めるために必要なコト

夜間営業をおこなっている店やイベントなどは以前から国内でも多くみられましたが、ナイトタイムエコノミーの観点で見ると、まだまだ夜間の経済活動を促せているとはいえません。深夜まで営業している美術館や娯楽施設だけでなく、交通機関などの整備や安全面への配慮も必要でしょう。

ナイトタイムエコノミーを進めるために必要なコト

ここからは、実際にナイトタイムエコノミーに着手するために必要なポイントを解説します。

規制緩和と安全面への配慮

まず、観光客が深夜帯も安心して楽しめるよう、受け入れ側の体制を整えることが欠かせません。たとえば、遊休施設やお店の規制・条例を緩和して夜間でも営業を可能にすることが挙げられます。営業時間の変更に際し、各事業者は行政などへ申請が必要になるため、申請をスムーズにおこなえるよう手続きの簡素化も進めていかなければなりません。
また、地域住民だけでなく、観光客の安全面にも配慮が必要です。ニューヨークやアムステルダムなどでは「ナイトメイヤー(夜の市長)」と呼ばれる役職が置かれています。住民や警察などが連携して夜間パトロールをおこなうなど、安心して楽しめる街づくりを目指すことが大切です。

ターゲットの設定

ナイトタイムエコノミーを進めるにあたり、街に呼び込みたいターゲットを明確にする必要があります。たとえば、インバウンド向けにナイトタイムエコノミーの取り組みをおこなう場合、大都市での刺激・エンターテインメントや、現地の人との交流などを求めている人が多いようです。また、旅先での消費活動は大きくなる傾向にあるなど、外国人観光客のニーズをもとにターゲットを設定してみましょう。
もちろん、こうしたニーズやターゲットに意識を向けるだけでなく、地域にどのようなコンテンツがあって、ナイトタイムエコノミーに活かせるのかを考えることが重要です。

インフラの整備

ナイトタイムエコノミーの成功には、交通、言語、決済、ITといったインフラの整備が欠かせません。ただ、安易にインフラを充実させたとしても活用されない可能性があるほか、ナイトタイムエコノミーは回遊性を高めることで大きな成果が期待できます。そのため、必要なインフラを考える際はターゲット像を具体的なものにし、何を楽しみに来るのか、どのようなルートで移動するのかを明確にしましょう。
また、近年は決済方法が多様化しており、手軽に支払いができるキャッシュレス決済の需要が高まっています。こうした支払いの容易さは消費額に影響を及ぼすことから、地域の経済活性化を後押しするためにも、インフラの整備は入念におこないましょう。

コンテンツの整理

ナイトタイムエコノミーの醍醐味ともいえるのがコンテンツです。各地域でどのような観光資源があるのかを整理し、可視化しましょう。観光資源について考える場合は、「文化資源」と「自然資源」の2つに分けてみるのがおすすめです。
文化資源には、最先端の技術を使った建築物や飲食といったトレンド関連のものをはじめ、アミューズメント施設や歴史的建造物、文化施設、ショーなどがあります。自然資源はロケーションや自然現象、生物などがあり、季節によって違う表情を見せる日本にはぴったりのコンテンツとなるでしょう。
また、地域との交流を求めている観光客に対しては、祭りやツアーなど既存のコンテンツを活かす方法もあります。新しいものを作らずとも、既存のものを活かすことでもナイトタイムエコノミーを実践できます。どのようなコンテンツを活用するのかを考えたうえで、取り組みを進めていくとよいでしょう。

まとめ

世界中で取り組まれているナイトタイムエコノミーは、日中だけでなく夜間帯の経済も活性化させるため、市場規模を拡大できる手段のひとつです。近年では、コロナ禍によって停滞していた経済を復活・成長させる方法としても着目されています。地域の魅力を再発掘できるほか、関わる企業・人も多くなるため、雇用創出や新たなビジネスのきっかけにもなるでしょう。

ナイトタイムエコノミーのまとめ

◎製品名、会社名等は、各社の商標または登録商標です。

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著者 OPTAGE for Business コラム編集部

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