GX(グリーントランスフォーメーション)とは? 取り組み事例や企業のメリットを解説

GX(グリーントランスフォーメーション)とは? 取り組み事例や企業のメリットを解説

近年、政府をはじめ多くの企業で関心が高まっている「GX(グリーントランスフォーメーション)」。カーボンニュートラルや脱炭素に取り組むことで、地球温暖化や森林破壊といった環境問題の解決につなげる狙いがあります。
しかし、GXへの取り組みは環境改善へのアプローチとしてだけでなく、経済社会の変革にもつながる可能性を秘めていることをご存知でしょうか。 今回は、ビジネスパーソンが押さえておきたいGXの概要や政府・企業の取り組み事例、企業が取り組むことでのメリットなど、幅広く解説します。

Contents

GXとは?

GXとは

Green Transformation(グリーントランスフォーメーション)の略称であるGX。これは、脱炭素社会に向けて温室効果ガスを発生させる化石燃料の使用を減らし、太陽光や風力などから発電するクリーンエネルギーに転換していく取り組みなどを指しています。また、それと同時に経済社会システムを変革させ、持続可能な成長を目指している点も特徴的です。
環境問題については20世紀頃から関心が高まっていましたが、なぜ今になってGXが話題となっているのか。GXへの理解を深めるために、背景についても確認していきましょう。

GXが推し進められる背景

世界中でGXへの関心が高まっている背景には、地球温暖化の深刻化が大きく関わっています。
環境省の地球環境局が2023年に公開した「IPCC 第6次評価報告書(AR6)統合報告書(SYR)の概要」によると、2020年末までに実施された政策よりも効果的な政策を2030年までに実施しなければ、2100年の世界の平均気温が2.2〜3.5℃も上昇するといわれています。
地球温暖化の進行によって豪雨や山火事、干ばつといった自然災害が引き起こされ、食糧難や資源不足などにもつながりかねません。
地球温暖化による環境問題の深刻化を防ぐため、世界各国では温室効果ガスの排出量削減を目指し、日本政府でもカーボンニュートラルの実現を国際的に約束しました。またGXへの投資が掲げられ、ESG投資の市場が拡大している点もGXが推し進められている背景にあります。

カーボンニュートラルとは?

温室効果ガスの"排出量"と"吸収・除去量"を均衡させ、全体としてゼロになっている状態のこと。植林や森林管理などによる温室効果ガスの吸収を考慮しながらも、排出量を可能な限り削減していく計画です。
なお、温室効果ガスにはメタンや一酸化窒素、フロンガスなどが含まれていますが、そのなかでも二酸化炭素が大きな割合を占めています。

ESG投資とは?

「Environment Social Governance」の略称であるESG。これらは環境・社会・企業統治の3つを指しており、企業が持続可能な成長を目指すために重要な要素といわれています。 投資は財務状況などを中心に判断されることも少なくありませんが、ESG投資の場合は企業がESGの3要素に配慮していることも重要視されます。 世界におけるESG投資額の統計を集計している「GSIA」が発表した「GLOBAL SUSTAINABLE INVESTMENT REVIEW 2020」によると、2020年時点の主要5市場でESG投資の金額が35.3兆ドルに達しました。この額は2018年の時から15%増加しており、総運用資産額に占めるサステナブル投資の伸び率は2.5%ポイントも増加しています。

GXを目指す政府の取り組み

GXを目指す政府の取り組み

世界的に注目されているGXですが、国内ではどのような動きがあるのでしょうか。政府の取り組みについて見ていきましょう。

【内閣】GX実行会議

GXを実行するうえで必要な施策を検討するために開催されているのが、GX実行会議です。内閣総理大臣を議長に、GX実行推進担当大臣や内閣官房長官、有識者などにより構成されています。
GX実行会議の開催は2022年7月から始まり、直近では2023年11月に8回目の会議が開かれました。これまでの議題には、「今後10年を見据えたロードマップ」や「環境省の取組」のほか、各有識者からの提案もあり、GX実現に向けた話し合いがおこなわれています。

【環境省】GXを支える地域・くらしの脱炭素

2022年12月に「GXを支える地域・くらしの脱炭素」を発表した環境省は、2020年から2025年度までの集中期間に政策総動員をおこなうなど、2050年までのカーボンニュートラル実現に向けて取り組んでいます。 2025年までに人材や技術、資金などを積極的に支援して脱炭素先行地域を選定するほか、省エネ住宅や電動車などの重点対策に取り組むことで、先進的な自治体の取り組みをサポート。また、農林水産省の「みどりの食糧システム戦略」や、国土交通省の「国土交通グリーンチャレンジ」などの政策プログラムと連携し、カーボンニュートラルの実現を目指しています。

【経済産業省】GXリーグ

2023年から本格的に活動が始まったGXリーグ。これはGXに取り組む会社「GX企業」が産官学と協働する場であり、約600の企業が参画しています。
また、主に4つの活動をおこなっており、産官学の交流・対話から実践、情報発信まで幅広い取り組みを実践しているのが特徴的です。

1.【実践:自主的な排出量取引】

排出量削減の達成に向けた取り組みの推進・開示のほか、温室効果ガスの排出削減量を企業間で売買する「カーボンクレジット」市場によって自主的な排出量取引を行う。

2.【共創:市場創造のためのルール形成】

「CO2ゼロ商品の認証制度」など、カーボンニュートラル時代における市場創造のためのルール作りや、新たなビジネスモデルについて議論・検討する。

3.【対話:ビジネス機会の創発】

"脱炭素領域のスタートアップ企業・起業家"と"GXリーグに参画している企業"の連携を促すなど、2050年のカーボンニュートラル実現を見据えて、ビジネス機会について話し合いを行う。

4.【交流:自由な創発・交流の場】

2050年カーボンニュートラル実現を目指す参画企業同士の連携や創発、共創を促すため、ディスカッションや情報交換などの機会を設ける。
参考:「GXリーグ

GXリーグでは温室効果ガス排出量の削減など、GXに取り組む企業が外部から正しい評価を受け、成長できる社会の実現を目指しています。

【日本・海外】GXを目指す企業の取り組み

GXを目指す企業の取り組み

政府はGX実現に向けたさまざまな取り組み・支援をおこなっており、同様にGXに取り組む企業も多くあります。
国内と海外の企業でどのような取り組みをおこなっているのか、それぞれ紹介します。

国内企業の取り組み事例

【自動車メーカー】

国内のある大手自動車メーカーでは、工場で排出されるCO2の排出ゼロを目指して取り組んでいます。
また、2050年までの取り組みを会社独自に定めており、工場でのCO2排出量削減だけでなく、車の使用時に排出されるCO2の排出量ゼロに挑戦しています。

【総合建設会社】

ある大手ゼネコンでは、2050年カーボンニュートラル実現に向けて、多角的に取り組んでいます。例えば、独自開発したシミュレーションツールを活用し、CO2排出量の多い施設群を特定。省エネ機器への更新や省エネ改修など、CO2排出量を抑えられるリノベーションを提案しています。
このほか、省エネ建築への建て替えや施設の統廃合など、ゼネコンならではの取り組みを行っています。

海外企業の取り組み事例

【テクノロジー企業】

アメリカのあるテクノロジー企業では、2015年からすでにエネルギー効率の向上や低炭素の設計、事業活動のカーボンニュートラル化などに着手してきました。その結果、温室効果ガスの排出量を40%削減することに成功しました。その後もサプライヤーに温室効果ガス排出量の削減を促すなど、製品の製造から販売にかけて再生可能エネルギーを100%使用するよう取り組んでいます。

【一般消費財メーカー】

日用品や食料品の製造・販売をおこなっている企業では、環境負荷を半分に低減する目標を掲げており、2030年までに事業で使うエネルギーを全て自然エネルギーに切り替えることを決定しました。
また、水とエネルギーの使用量を減らすために洗濯洗剤を新たに開発するなど、消費者視点での取り組みもおこなっています。

GXへの取り組みが企業にもたらすメリット

GXへの取り組みが企業にもたらすメリット

地球温暖化をはじめとする環境問題の深刻化を背景に、GXの実現は大きな意味を持っています。一方で、企業側からすれば、GXへの取り組みによるコストの増大や対応可能な人材の不足などが懸念点として出てくるでしょう。
しかし、GX実現に向けて動くことは、企業にとっても大きなメリットがあります。どういったメリットがあるのか、詳しく見ていきましょう。

企業イメージの向上

近年は環境問題がメディアに取り上げられる機会も多くなり、環境に配慮された製品やサービスを重視する消費者も増えてきました。
そのため、GXへの取り組みの一環として、再生可能エネルギーの使用や環境負荷を抑えた商品の製造・販売により、企業のブランドイメージ向上が期待できます。こうした取り組みが求職者に好印象を与えることで人材不足の解消が見込めるほか、ESG投資を受けやすくなるのもメリットです。

公的予算の増加が見込める

GX実現に向けた取り組みは、企業のみが大きな負担を被るわけではありません。脱炭素に関わる事業に取り組む企業に対して、通常よりも増額した補助金を支給する「ものづくり補助金(グリーン枠)」など、公的予算の活用が期待できます。
このほか、事業再構築補助金の「グリーン成長枠」を活用すれば、温室効果ガスの削減に貢献しながら新規事業に挑戦することが可能です。

コストの削減

温室効果ガスの排出量を削減するためには、自社で使っているエネルギー量を減少させるか、クリーンエネルギーに切り替える必要があります。エネルギーの使用を節約した場合は、製造や販売などにかかるコストを削減できるでしょう。
また、初期費用がかかる可能性もありますが、太陽光発電パネルなどを使って自社で電力をまかなえば、電気代を節約することも可能です。

まとめ

GXのまとめ

電力プランの切り替えをはじめ、再生可能エネルギー設備を導入したり、エネルギー使用量を削減したりと、GXへの取り組みは中小企業であっても始められます。また、温室効果ガスの排出削減量を企業間で売買できる「カーボンクレジット」を活用すれば、GXの貢献だけでなく資金調達をおこなうことも可能になるでしょう。

政府による支援のほか、自治体ごとにGX実現への支援をおこなう体制を整えているため、GXに取り組む際は地域と連携することもおすすめです。
「GXに取り組みたいけど、何をしたらいいかわからない」「ノウハウがないから心配」という事業者様は、オプテージまでご相談ください。
オプテージでは脱炭素(CN)・GXコンサルティングの事業も展開しており、温室効果ガスの排出量算定やカーボンニュートラルの戦略立案、削減施策の実行など、カーボンニュートラルへの取り組みを丁寧にサポートします。またGXビジネスの開発なども全面的に支援が可能です。GX実現に興味のある方は、ぜひオプテージまでご連絡ください。

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著者 OPTAGE for Business コラム編集部

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