スリープテックとは?睡眠の重要性やサービス例、 ビジネスへの活かし方を紹介

スリープテックとは?睡眠の重要性やサービス例、 ビジネスへの活かし方を紹介
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「人生の約3分の1を眠りに費やしている」と言われるほど、睡眠は人間にとって必要な行為です。近年は「睡眠負債」という言葉が流行したほか、世界的に活躍している著名人が睡眠の重要性を語ることも増え、眠りへの関心が高まっています。
こうした潮流の中、ITやAIを睡眠に活用した「スリープテック」に注目が集まっており、個人での活用だけでなく、企業にとっての新たなビジネスチャンスとして捉えられています。
今回はスリープテックをテーマに、市場規模やサービス事例、睡眠が与える心身への影響などを解説します。私生活やビジネスに活かせるITのトレンドを見ていきましょう。

スリープテックとは?

スリープテックとは

スリープテックは、「Sleep(睡眠)」と「Technology(技術)」を合わせた造語で、大きく2つのことを指しています。
一つは、睡眠改善を図る製品・サービスを提供することで、電動リクライニング機能を備えた「センサー付きベッド」などがイメージしやすいでしょう。
そして、もう一つは科学的な視点から睡眠を分析することです。眠っているユーザーの状態をデータとして収集する「スマートフォンアプリ」が代表例として挙げられます。ユーザーは自身の睡眠の質を視覚的に把握できるため、就寝時間を変えたり生活習慣を見直したりといった改善に役立てられます。
いずれもITやAIを活用するという点では共通していますが、スリープテックをきちんと捉えるためにも、2つの視点があることを把握しておきましょう。

睡眠が重要視されている背景

睡眠が重要視されている背景

近年は世界中で睡眠に対する関心が高まっており、海外ではマイクロソフトの共同創業者であるビル・ゲイツ氏や、Meta(旧Facebook)の元COOであるシェリル・サンドバーグ氏も睡眠を重視しているといわれています。
また、日本では将棋の藤井聡太棋士やプロ野球選手の大谷翔平選手も睡眠を大事にしているといわれていますが、なぜこれほど睡眠に注目が集まっているのでしょうか。
スリープテックの本質ともいえる睡眠がなぜ重要視されているのか、まずはその背景を解説します。

生産性・経済活動に与える影響

睡眠が重要視されている背景の一つに挙げられるのが、生産性や経済活動に与える影響の大きさです。アメリカのシンクタンク「ランド研究所(RAND Corporation)」が2016年に発表した調査結果によると、日本の睡眠不足による経済損失は年間1,380億ドル 、当時のレートで約15兆円にも及ぶとされています。 また、仕事に対するパフォーマンスの維持・向上にも睡眠が大きく関わっているといわれています。例えば、睡眠不足によって集中力が低下しミスが重なる、業務中に居眠りしてしまうなどの可能性は十分にあるでしょう。 個人単位で見ると集中力の低下や居眠りなどは小さな損失ですが、それが積み重なることによって社会全体で大きな損失となってしまいます。 睡眠は仕事で高いパフォーマンスを発揮するために欠かせないため、質の高い眠りを意識している方は少なくないのでしょう。

※ランド研究所「Why sleep matters -- the economic costs of insufficient sleep A cross-country comparative analysis

心身の健康に与える影響

睡眠の質は仕事のパフォーマンスだけでなく、心身の健康にも大きく関わっています。 e-ヘルスネット(厚生労働省)が公表している「睡眠と生活習慣病との深い関係」では、質の悪い睡眠が生活習慣病の罹患リスクを高めるほか、症状の悪化を招く可能性があると言われています。 このほか、神経系や免疫系、内分泌系などの機能にも睡眠 が影響を及ぼすという研究結果もあり、心身への被害は軽視できないものです。

子どもから高齢の方まで睡眠は健康に関わる行為であるため、自分だけでなく家族の健康を気にかけて睡眠環境を整えている方もいるのでしょう。

スリープテックのサービス例

スリープテックのサービス例

スリープテックは睡眠の質を改善するためにさまざまなサービスが開発されていますが、具体的にどのようなものが生み出されているのでしょうか。
ここでは代表的なサービスの例を3つご紹介します。ご家庭での活用をはじめ、新たなビジネス展開のヒントとしても参考にしてみてください。

【サービス例1】ウェアラブル端末

腕時計型やリストバンド型のほか、メガネ型やイヤフォン型などの身につけられるIoT機器であるウェアラブル端末は、スリープテックと相性の良いアイテムです。
特に活用しやすいのは、スマートウォッチやスマートバンドなど腕に巻くタイプのウェアラブル端末でしょう。時計だけでなく脈拍の計測や通話など数多くの機能を搭載していますが、製品によっては睡眠管理機能を搭載したものもあります。

ウェアラブル端末を装着した状態で眠りにつくことで、睡眠中の心拍数や深呼吸数などを計測し、スマートフォンアプリを介して確認することが可能です。

このほか、イビキの対策・予防が行えるウェアラブル端末など、睡眠の質やユーザーの悩みに応えてくれるサービスが展開されています。

【サービス例2】アプリ

睡眠を分析するためのスマートテックとして、スマートフォンアプリの開発も積極的に行われています。
例えば、ユーザーの睡眠サイクルをモニタリングし、日・週・月次で睡眠レポートを作成してくれるアプリを見聞きしたことがある人もいるでしょう。
アプリによっては寝言やイビキを録音してくれる機能を備えたものもあり、自分では分からない就寝中の様子を把握することも可能です。また、アプリがユーザーの睡眠の深さを自動で把握し、起床しやすいレム睡眠 の時にアラームを鳴らしてくれるサービスもあります。
睡眠に注目が集まる昨今、社内で昼寝の時間を設ける「シエスタ制度」を導入する企業もありますが、こうしたアプリを活用して従業員の睡眠の質や生産性の向上につなげてみるのも良いでしょう。

【サービス例3】寝具

寝具業界の中でも、スリープテックの研究やサービス開発に力を入れている企業があります。
例えば、ベッドや枕などの寝具をただ販売するのではなく、ユーザーの体型を測定・分析することによって、その人に合った寝具を提案できるようになりました。ほかにも、管理医療機器としての認証を受けたマットレスも提供しており、温熱と電位による治療が行えます。
"寝る"という行為は毎日のように行うものですが、睡眠という切り口から治療にアプローチするなど、スリープテックは多くの可能性を秘めた分野なのです。

スリープテックの市場規模

株式会社矢野経済研究所が2022年に発表した調査によると、2018年で13億円だったスリープテックの市場規模が2023年には75億円、2025年には105億円にまで拡大すると予測されています。

スリープテックの市場規模

※ 出典:株式会社矢野経済研究所「スリープテック市場に関する調査(2022年)」(2022年10月21日発表)

毎年15%以上の成長が予測されているスリープテックは、非常に将来性の高い分野といっても過言ではありません。特に近年はAIをはじめとする技術の進歩が目覚ましいため、企業・ビジネスパーソンが関わるチャンスは十分にあるでしょう。

企業がスリープテックと関わる際のポイント

企業がスリープテックと関わる際のポイント

業界や事業内容など、スリープテックへの関わり方は企業によって異なりますが、自社でサービスの開発や提供を行うほかにも、福利厚生などで活用する選択肢もあります。
それぞれ詳しく解説しますが、スリープテックと関わる際に押さえておきたい課題点も確認しておきましょう。

サービスを開発・提供する

企業の関わり方の一つに、自社でスリープテックのサービスを開発・提供することが挙げられます。
スリープテックは、寝具などの睡眠に直接関わるものとテクノロジーを組み合わせるほか、アプリなどを活用して間接的に関わることが可能です。また温度や光、音といった就寝環境は睡眠の質を左右する要因といわれているので、こうした空間づくりの面でも企業が関わる余地は十分に残されています。

自社で活用する

スリープテックのサービス開発・提供を行う以外にも、企業が関わる方法があります。それは、すでにリリースされているスリープテックサービスを自社で採用することです。 睡眠計測のウェアラブルを従業員に支給し、睡眠不足と判断された社員には専門医による診断を受ける機会を設けるなど、福利厚生の一環としても活用できます。
従業員の睡眠の質が改善されれば、社員の健康や生産性の向上なども期待できるため、ある程度のコストをかける価値は十分にあるでしょう。

スリープテックの課題を把握しておく

スリープテックの国内市場規模は年々拡大していくことが予測されています※が、いくつかの課題点があることも把握しておきましょう。 例えば、スリープテックでユーザーの睡眠状況を計測・分析したとしても、正確なデータが取得できていない可能性があります。というのも、睡眠の質を左右する要因は多岐にわたり、正確に分析できないケースもあるためです。また、必要な睡眠時間は個人差があるほか、年齢などによっても異なります 。 企業がスリープテックと関わる場合は、こうした課題点があることを把握したうえで専門家の力を借りるなど、必要な対策を講じましょう。

※株式会社矢野経済研究所「スリープテック市場に関する調査(2022年)」(2022年10月21日発表)

まとめ

スリープテックのまとめ

睡眠不足による日本の経済損失が指摘されたこともあり、少しずつ睡眠の重要性が広く知られるようになってきました。ユーザーの睡眠の質を改善するために数多くのスリープテックサービスが展開されていますが、まだまだ発展途上なので企業目線でも将来性のある分野といえるでしょう。
良質な睡眠が集中力や生産性の向上に関わってくるため、ビジネスパーソンにとっても注目のサービスです。ご自身の生活に取り入れるだけでなく、ビジネスの観点からもスリープテックにアンテナを張ってみてはいかがでしょうか。

◎製品名、会社名等は、各社の商標または登録商標です。

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著者 OPTAGE for Business コラム編集部

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