運用効率化と統制を実現!クラウド時代のセキュリティ基盤とは?

運用効率化と統制を実現!クラウド時代のセキュリティ基盤とは?

近年、企業のデジタル変革が加速し、クラウドの利活用は事業運営に不可欠となっています。その一方で、クラウド環境の拡大に伴い、セキュリティ統制や運用の効率化が大きな課題となっています。
特に、品質とセキュリティの確保、監査・統制の管理、環境構築の効率化は、多くの企業が直面する重要な課題です。
本記事では、これらの課題について紹介し、クラウド環境を安全かつ効率的に運用するためのポイントを紹介します。

Contents

クラウド利活用の拡大に伴う課題

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ここでは、多くの企業が直面する以下の3つの課題について紹介します。

品質とセキュリティの確保

クラウドを活用する際、特に重視されるのが「品質」と「セキュリティ」です。品質は、システムの安定稼働や適切なパフォーマンス・可用性・信頼性の維持を指し、セキュリティは、不正アクセスや情報漏えい、サイバー攻撃からデータを守ることを指します。

クラウド環境を利用する際、企業が定めた品質とセキュリティの基準を確保する必要があります。しかし、そこには複数のエンジニアが関与するため、それぞれの知識やスキルレベルの違いによって、設定ミスやセキュリティインシデントなどのリスクが高まるという課題があります。

監査・統制の効率化

クラウドの導入が進むなかで、複数のクラウドアカウントや異なるクラウド環境を併用する企業が増えています。しかし、その一方で、監査や統制の仕組みが複雑になり、企業全体のセキュリティを一元的に管理することが難しくなるという課題が生じています。

特に、全社的にセキュリティリスクを可視化するには高度な知識が必要であり、各クラウド環境の管理基準の違いが運用の一貫性を損なう要因になることがあります。さらに、手作業による監査やログ収集は非効率かつヒューマンエラーを引き起こす原因にもなります。

環境構築の効率化

企業がクラウドでシステムを構築する際は、迅速かつ安全に進めることが求められます。しかし、手作業によるセキュリティ設定は時間と手間がかかるうえ、人的ミスを引き起こしやすいという課題があります。

さらに、環境ごとに設定のばらつきが生じると、セキュリティリスクの増大や管理の非効率化につながります。一貫性のない設定は、セキュリティ基準の遵守を難しくし、運用負担を増やす要因となります。クラウド環境が複雑化するなかで、構築プロセスの効率化とセキュリティの確保は、企業にとって重要な課題の一つです。

課題への対応

課題への対応

これらの課題に、どのように対応すべきでしょうか。ここでは、その解決策としての取り組みを紹介します。

品質とセキュリティの確保

クラウドの活用を安全かつ効果的に進めるためには、標準化・自動化・継続監視の3つの施策を推進していくことが鍵になります。

標準化の推進

安定した運用を実現するには、統一された運用ルールやセキュリティポリシーの策定が欠かせません。

例えば、システムごとの設定基準をテンプレート化し、組織全体で統一することで、設定ミスを防ぎ、セキュリティの一貫性を確保できます。

独立行政法人情報処理推進機構(IPA)では、企業向けに「クラウドサービス安全利用の手引き」を公開しており、企業がクラウドサービスを利用する際に注意すべきポイントをわかりやすく紹介しています。策定時の参考として活用するとよいでしょう。

自動化ツールの導入

手動での設定はミスを招きやすく、運用負担の増大につながります。そのため、Infrastructure as Code(IaC)を活用した自動化を推進し、品質を確保することが重要です。

IaCを導入することで、本番環境と開発環境の設定が異なるといった問題を回避できます。また、「すべてのストレージはデフォルトで暗号化する」「管理者権限を持つアカウントにはMFA(多要素認証)を必須化する」といった設定の一貫性も確保することができます。

継続的なセキュリティチェック

クラウド環境のセキュリティを維持するには、設定ミスやセキュリティリスクを継続的に監視し、問題が発生する前に対処することが求められます。これを実現するために、継続的にセキュリティ設定を監視できるツールの導入が推奨されます。

監査・統制の効率化

企業全体の監査・統制を適切に行うためには、「統合監査基盤の構築」と「セキュリティダッシュボードの活用」の2つのアプローチを行うことが大切です。これにより、クラウド環境において、セキュリティ設定の遵守状況を可視化し、セキュリティインシデントのリスクを最小限に抑えながら、運用の効率化を実現することができます。

統合監査基盤の構築

クラウドの活用が進むにつれ、複数のアカウントを一元管理できる基盤の整備が求められています。統合監査基盤を構築することで、運用の効率化やセキュリティ統制の強化が可能になります。

クラウド環境の複雑化にともない適切なアカウント管理とセキュリティポリシーの統一が重要視されています。統一された監査基盤を活用することで、運用状況を一目で把握することができます。

セキュリティダッシュボードの活用

システムの安全性を確保するには、リアルタイムでセキュリティ状況を監視することが重要です。セキュリティダッシュボードを活用することで、潜在的なリスクを即座に可視化し、迅速な対応が可能になります。

特に、近年はサイバー攻撃の侵入から被害拡大までの時間(ブレイクアウトタイム)が短縮されており、迅速な検知とアラート発出が不可欠です。ダッシュボードを導入することで、異常な挙動を即座に察知し、被害を最小限に抑えることができます。

環境構築の効率化

セキュリティ設定を手作業で適用すると、設定漏れや誤設定のリスクが増大し、一貫性の確保が困難になります。また、ポリシー遵守のための手作業による設定は非効率です。そこで、「セキュリティ設定のテンプレート化」と「プロビジョニングの自動化」を活用し、標準化された環境を迅速に展開することが推奨されます。

セキュリティ設定のテンプレート化

セキュリティを強化するには、設定の統一が不可欠です。AWSやAzureなどのクラウドサービスのテンプレートを活用することで、設定のばらつきを防ぎ、セキュリティホールを最小限に抑えられます。

組織のポリシーに沿った「標準化されたセキュリティ設定」を適用することで、安全かつ効率的なクラウド運用が実現できます。

プロビジョニングの自動化

システムの構築を効率化するには、IaCを活用した自動化が有効です。IaCを導入することで、セキュリティ設定を組み込んだ環境を自動的に構築できます。

これにより、一貫したセキュリティポリシーの適用、運用コストの削減、インフラ管理の効率化が実現し、より安全なクラウド運用が可能になります。

運用効率化と統制を実現するクラウドセキュリティの基盤について

運用効率化と統制を実現するクラウドセキュリティの基盤について

AWSやAzureなどのクラウドサービスでは、企業が求めるセキュリティ要件を満たすため、様々なサービスが提供されています。ここでは、これまでの課題への対応に有効なサービスを紹介します。

アクセス管理の強化

AWS IAMやAzure Active Directoryを活用することで、ユーザーやグループごとに最小権限のアクセス制御を設定でき、不要な権限付与を防げます。

さらに、多要素認証(MFA)を導入することで、不正アクセスのリスクを軽減することが可能です。適切なアクセス管理を徹底することで、クラウド環境全体のセキュリティを強化し、安全なシステム運用を実現できます。

監査とコンプライアンスの強化

AWS CloudTrailやAzure Monitorを利用することで、クラウド内のすべての操作を記録し、不正アクセスや不審な活動をリアルタイムで監視できます。

これにより、異常な挙動を即座に検知し、対応の遅れを防ぐことが可能になります。適切な監査基盤を整えることで、クラウド環境の透明性を高め、セキュリティリスクを最小限に抑えることができます。

セキュリティリスクの可視化

AWS Security HubやAzure Security Centerを導入することで、クラウド全体のセキュリティ状況を統合的に監視し、セキュリティの設定不備や脅威を早期に発見できます。

可視化することによって、リスクの把握と迅速な対応が可能になり、セキュリティレベルの向上につながります。

設定履歴とポリシーの管理

AWS ConfigやAzure Policyを活用することで、リソースの設定変更を追跡し、セキュリティポリシーへの準拠を確保できます。

リソースの設定履歴やポリシーの管理を自動化することにより、安全で統制の取れた環境が維持できます。

セキュリティインシデント対応

AWS GuardDutyやAzure SentinelなどのAIを活用したセキュリティツールを導入することで、脅威を自動検出し、悪意のある行動をリアルタイムでアラート通知できます。

これにより、重大なインシデントを素早く特定し、対応を強化できます。また、専門知識がなくても大量のログから重要な脅威を見極められるため、時間とコストの削減にもつながります。

環境構築の自動化

AWS CloudFormationやAzure Resource Managerを活用することで、一貫性のあるインフラの展開と管理の最適化が可能になります。

これにより、手作業による設定ミスを防ぎ、属人化や非効率な運用を抑制できます。また、企業全体のポリシーに基づいたインフラ構築をコード化することで、環境ごとのばらつきをなくし、安全かつ統制の取れたクラウド環境を構築できます。

取り組み事例に学ぶクラウド運用の最適化

取り組み事例に学ぶクラウド運用の最適化

オプテージでは、2022年にAWS環境でセキュリティ統制基盤の運用を開始し、2024年にはAzure環境でも展開を開始しました。この基盤により、社内の100を超えるアカウントで統制された運用が実現しています。以下の取り組みが成功の鍵となりました。

ベストプラクティスの活用

AWS Well-Architected FrameworkとAzure Well-Architected Frameworkを基に設計を徹底し、信頼性、セキュリティ、パフォーマンス効率、コスト最適化、運用上の優秀性といったクラウドアーキテクチャの重要な要素を基盤設計に組み込みました。

具体的な取り組みとして、マルチアカウント戦略を活用し、運用環境を分離することでセキュリティを強化し、最小権限の原則でリスクを軽減しました。また、セキュリティアラートやログの一元化と可視化を実現することでセキュリティ統制を実現しています。

自動化ツールの導入

AWS CloudFormationやAzure Resource ManagerなどのIaC(Infrastructure as Code)を活用し、セキュリティ設定や環境構築を自動化することで、セキュリティ品質を確保するとともに運用効率を大幅に向上させています。

セキュリティ教育の実施

社内のクラウド利用者を対象に、クラウドセキュリティガイドラインの策定や、AWSおよびAzureにおける具体的なセキュリティ対策の実践方法に関する研修を実施し、全社的なセキュリティ意識の向上を図りました。

まとめ

まとめ

クラウド事業の拡大に伴い、セキュリティや運用管理の課題を解決するためには、セキュリティ対策を最優先に考えた運用と管理が不可欠です。本記事が読者の皆様の課題解決のヒントになれば幸いです。

オプテージでは、クラウドベンダーが推奨するセキュリティ設定の適用や、脆弱性の検知などを行う「AWS/Azure セキュリティ対策支援」を提供しており、安心してクラウド環境をご利用いただけます。

クラウドの運用にお困りの方へ、運用改善のヒントを掲載した資料をこちらからダウンロードいただけます。貴社のクラウド運用の参考にしていただけますと幸いです。


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著者 OPTAGE for Business コラム編集部

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