データマネジメントとは?企業活動に活かすポイントやメリットを解説!

データマネジメントとは?企業活動に活かすポイントやメリットを解説!

DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進により、近年さまざまな情報がデータとして保存されることが多くなってきました。特に取引先との受発注や顧客情報、売上などのデータは重要で、これらの情報をもとに企業は経営判断を下します。
企業活動を進めるうえで、必要なデータを適切なタイミングで活用するためには、データマネジメントの観点を持って取り組むことが不可欠です。今回はデータマネジメントの概要をはじめ、メリットや注意点、取り組む際のポイントを解説します。

Contents

データマネジメントとは?

データマネジメントとは?

データマネジメントは、ただ収集したデータを管理するだけでなく、目的に応じていつでも活用できる状態でデータを維持・管理することです。

扱うデータは広範囲にわたり、解析や分析が容易な「構造化データ」やテキストや音声のように規則性のない「非構造化データ」など、さまざまなデータが含まれます。

そして、企業がデータマネジメントに取り組む際は、データを蓄積するシステムの構築・設定だけでなく、データの品質やセキュリティも管理・維持する必要があることを理解しておきましょう。

データマネジメントのニーズが高まる理由

データマネジメントへの関心が高まっている背景には、通信技術の発達とともにさまざまな情報のデータ化が進んでいることが挙げられます。

例えば、電子帳簿保存法の改正により、2024年1月から経理に必要な帳簿などを電子データで保存することが可能になるなど、データ活用の範囲が広がっています。

マーケティング情報や顧客情報など、さまざまなものが情報化され、どのようなデータを管理・活用するかが注目されています。また、組織内でデータが分散して蓄積され、正確性の担保が難しく、データ管理に多くの時間や労力を要する企業も見られます。こうした状況を改善しようと、データマネジメントによる一元管理を目指す企業が増えています。

データマネジメントは11の知識領域に分けられる

先述のように、データマネジメントにおけるデータの範囲が広いため、独自に維持・管理・活用を進めると煩雑になり、うまく機能しない可能性があります。

そこで、データマネジメントの定義から具体的な提案まで幅広く紹介している書籍『DMBOK2』を参考にしてみるのもおすすめです。

DMBOKは「Data Management Body of Knowledge」の略称で、データマネジメントに関する知識体系をまとめた国際規格の書籍の第2版を『DMBOK2』と呼んでいます。

例えば、本書ではデータマネジメントの概念を11の知識領域に分けて定義しています。

データマネジメントは11の知識領域に分けられる

出所:『データマネジメント知識体系ガイド 第二版』 DAMA International編著、DAMA日本支部、Metafindコンサルティング株式会社 監訳、日経BP

これら11の知識領域での取り組みをおこなうことで、データが持つ情報資産としての価値をさらに高められると考えられています。

管理・活用するデータの範囲

データマネジメントで対象となるデータは多岐にわたります。例えば、「構造化データ」としての顧客データ、商品データ、販売データや、「非構造化データ」としての音声・画像・動画データなどがあります。構造化データは関係データベース(RDB)に格納しやすい一方で、非構造化データは格納が困難ですが、データマネジメントではどちらのタイプも管理・活用することが求められています。

また、「メタデータ」もデータマネジメントの管理対象です。メタデータとは、データを作成した人や日時などの記録情報であり、「データカタログ※1」や「データリネージ※2」などに活用できます。

※1:データカタログとは、企業が扱うメタデータを集約して、カタログのように一元的に管理する目録のこと。
※2:データリネージとは、データの作成から現在までの履歴を全て追跡可能にすること。

データマネジメントのメリット

データマネジメントのメリット

実際に企業がデータマネジメントに取り組むことで、どういったメリットが得られるのでしょうか。主なメリット4つを解説します。

業務効率化を図れる

データマネジメントの代表的なメリットとして挙げられるのは、業務効率化の促進です。社内のデータが整理され、正しい状態で管理されていれば、従業員や経営者は業務を進めるうえで必要な情報をスムーズに取得できます。

データを探す手間や他の社員に尋ねるといった無駄を省けるため、社内全体の業務効率化を図れるでしょう。

意思決定を素早くおこなえる

職位に関わらず、何かしらの意思決定をするうえでは根拠となるデータが必要になります。販売状況や過去の事例といった必要なデータを素早く取得できれば、意思決定にかかる時間を短縮することも可能です。

仮にデータマネジメントがなされておらず、必要なデータが見つけにくい状態では、データの収集・分析に相応の時間を費やさなければなりません。また部署によってデータの定義が異なれば、他部署への確認や調整が必要になり、意思決定あるいは提案などの際に時間的コストがかかってしまうでしょう。

規則性のないデータを管理できる

データにはさまざまな種類がありますが、非構造化データのように規則性がないデータを活用できている企業は多くないでしょう。

しかし、非構造化データには画像や音声などのデータも含まれており、データの中身やタイミングによっては経営活動をおこなううえで重要な情報が入っている場合もあります。

非構造データの種類
画像 撮影写真、スキャン画像、3D画像など
音声・動画 コールセンターの応答記録、録音・録画データなど
Officeドキュメント 議事録、企画書、提案書、見積書、発注書など
その他 Eメール、CADデザインデータなど

データマネジメントでは規則性のないデータも管理することができるため、業務効率化だけではなく、利益につながるチャンスをつかむ確度も高められるでしょう。

セキュリティ意識を高められる

データマネジメントの導入によって、データに対するセキュリティ意識を高められます。例えば、データのアクセス権限を定めたりモニタリングしたりすることで、重要なデータの流出や閲覧を防ぐことも可能です。

また、データの取り扱いに関するルールを社内で設けることで、従業員のセキュリティ意識向上も期待できるでしょう。

データマネジメントの課題

データマネジメントの課題

データマネジメントの導入はメリットがある一方で、課題もあります。特に導入から実施までの道筋を立てておかなければ、社内での運用が円滑に進まなかったり、組織や階層を横断した連携ができなかったりする場合もあるでしょう。

どういった点に注意すればよいのか、以下で解説します。

経営層から従業員まで必要性を理解する必要がある

データマネジメントを導入する際に注意してほしい点の一つは、経営層の承諾が必要であることです。経営層がデータマネジメントのメリットを理解していなければ、「コストがかかる取り組み」と見なされ、導入が難しくなったり、十分な予算が確保されなかったりする可能性があります。

また、実際にデータの収集・活用をおこなう社員や、データ管理者の意識付けも重要です。データマネジメントに向けたシステム化や改修がおこなわれていなかったり、運用ルールが十分に浸透していなかったりすると、収集したデータをビジネスに活用することが困難になります。

組織・階層を横断した連携が難しいケースも

全社が一丸となってデータマネジメントに取り組むことで、データの共有や整理がスムーズに進み、組織や階層を越えた連携も容易になります。しかし、データマネジメントの重要性やルールが不明瞭に伝わると、組織や階層間でのズレが生じ、連携が困難になってしまうかもしれません。

特に、大規模な会社では組織が細分化されており、部署やプロジェクト単位でデータが個別に扱われる「サイロ化」が生じることがあります。サイロ化が進んでいる企業がデータマネジメントを推進する場合、一つの部署から始める、効果が出やすい領域に着手するなどの施策が効果的です。

データマネジメントに必要な3つの事前準備

データマネジメントに必要な3つの事前準備

従業員数や会社の規模などによっては、データマネジメントを導入するハードルが高くなる場合もあります。

データマネジメントを円滑に進めるためにも、ここで紹介する3つの事前準備をおこなったうえで、経営層の承認を得たり従業員への周知をしたりと、社内環境を整えておきましょう。

組織編成

データマネジメントを運用する前に、分析チームと協力してデータパイプライン※3を構築したり、分析用のデータを準備したりといったことが必要になります。そのため、データアーキテクト※4をはじめデータベース管理者やデータ開発者などを中心に、データマネジメントの組織編成や担当者を決定しましょう。

※3:データパイプラインとは、複数のソースからデータを収集・分析し、ユーザが利用しやすい形で提示するために使うプロセスやツールのこと。
※4:データアーキテクトは、企業内外のさまざまな情報を収集・管理し、データを活用しやすい形に整備したり仕組みを構築したりする専門家。

データ活用の現状把握

続いて、データがどのように収集・蓄積・活用されているかの現状を整理します。このデータの流れを理解することで、管理方法や活用先が組織ごとに異なるなど、社内の課題点を特定できます。

また、現時点でできていること・できていないことが明らかになれば、データマネジメントに使用するシステムやツールは適切なものを採用できるでしょう。

今後のデータ活用方法を設計する

データマネジメントの目的は、蓄積されたデータをビジネスに活かすことです。企業や組織ごとにデータの活用方法が異なるため、どのように管理・活用すれば効果的に利用できるのかを設計しましょう。

例えば、どういったデータを収集するのか、収集したデータはどこに蓄積していくのかを考えます。そして、蓄積されたデータを誰がどのように使うのか、どのようなメリットが得られるのかを明確にすることがポイントです。

これにより、現状把握のときには見えなかった課題点も浮き彫りになり、より自社に合ったデータマネジメントを設計できます。

データマネジメントの進め方

データマネジメントの進め方

データマネジメントを自社で進めていくにあたり、具体的にどういったことをおこなう必要があるのでしょうか。

ここからは、データマネジメントを実施するための6つのポイントを解説します。

ガバナンスルールの策定

初めてデータマネジメントに取り組む場合、導入後すぐに複雑なルールを設定してしまうと、現場での人的なミスにより収集・管理すべきデータに誤りが生じる可能性があります。

そのため、保管するデータの内容やデータを安全に保つための方法、データへのアクセス権限が付与される人物の基準など、基本的なルールを設けることから始めましょう。

例えば、アクセス権限の段階を決める場合は、社内外から閲覧できる「公開用データ」、従業員のみアクセスできる「社外秘データ」、一定の職位以上がアクセスできる「機密データ」のように分けます。

収集したデータを加工する

企業によっては本社と支社で使用しているシステムやサービスが異なり、種類や形式が異なるデータが混在する場合もあるでしょう。しかし、種類や形式の異なるデータを雑多にまとめるだけではデータマネジメントにならないため、収集したデータの加工が必要になります。

事前準備の際に確認した企業全体のデータや運用方法に合わせて、統一されたメタデータなどに加工していきましょう。

データを蓄積する

加工されたデータは、一カ所に蓄積していきます。企業によっては蓄積するデータの量が膨大になりますが、一カ所に集約することでデータを一元的に扱いやすくなるためです。

なお、データの蓄積にはデータマネジメント用のシステム導入も検討してみましょう。顧客データをはじめ、会計システムや人事管理のデータなどを統合し、時系列で確認できるツールもあります。

蓄積したデータを分析・活用する

データを統一された形式に加工・蓄積したあとは、グラフや表などにすることで可視化されたデータとして活用できます。企業や従業員の利用目的に合わせて活用することで、経営戦略を立てたり客層に合わせた戦略を立てたりすることも可能です。

また、BI(ビジネスインテリジェンス)と呼ばれるツールを活用すれば、膨大なデータをグラフや集計表などにまとめられ、意思決定の際に役立てられます。データマネジメントと相性が良いため、併用してみるのもおすすめです。

データ利用の状況把握と評価

データマネジメントの導入後、データがどのように活用されているのかをモニタリングしましょう。蓄積されたデータに欠損や不備がないか、データを使って意思決定がなされているか、業務効率を改善できているのかなどを評価しましょう。

改善と教育の継続

データマネジメントの現状を把握することで、新たな課題が見つかることも珍しくありません。

例えば、特定の部署から蓄積されたデータに不備があった場合は、部署単位でデータの蓄積方法を教育します。また、データを業務に活用しきれていない社員がいれば、使い方をレクチャーするなど、状況に応じた改善策の実施も重要です。

まとめ

まとめ

データマネジメントは適切に運用できれば企業活動に大きく役立てられます。しかし、この記事で取り上げたように、経営層から従業員にいたるまで組織全体の理解が得られなければ、データの利活用は思うように進まないでしょう。

今後のビジネス展開のためにデータマネジメント導入を検討している企業は、事前準備から導入後の運用までの道筋を明確にしたうえで、取り組みを進めてみてください。

◎製品名、会社名等は、各社の商標または登録商標です。

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著者 OPTAGE for Business コラム編集部

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