ハイブリッドクラウドとは?メリットやデメリット、構成例まで解説

ハイブリッドクラウドとは?メリットやデメリット、構成例まで解説

ハイブリッドクラウドは、企業のITインフラにおいて、柔軟性と効率性を両立させるための重要な選択肢として注目を集めています。一方で、運用や管理の複雑さなどの課題も存在します。
本記事では、ハイブリッドクラウドの基本概念や、利用におけるメリットとデメリット、導入の手順や効果的な構成例について紹介します。

Contents

ハイブリッドクラウドとは?

ハイブリッドクラウドの概要

ハイブリッドクラウドは、パブリッククラウド、プライベートクラウド、オンプレミスなどといった、異なる種類のコンピューティング環境を連携させて運用する仕組みを指します。これにより、各環境の強みを最大限に活かしつつ、弱点を補完することが可能になります。

例えば、セキュリティやカスタマイズ性に優れるプライベートクラウドは、機密性の高いデータの管理に適していますが、コストが高くなりがちです。そこで、コスト効率に優れたパブリッククラウドを併用することで、全体の費用を抑えつつ、必要なセキュリティレベルを維持できます。

さらに、オンプレミスと組み合わせることで、クラウド環境では対応が難しい高度なセキュリティ設定や制御、カスタマイズも実現可能になります。

ハイブリッドクラウドとマルチクラウドの違い

ハイブリッドクラウドとマルチクラウドの違い

ハイブリッドクラウドと混同されやすい「マルチクラウド」という運用形態があります。どちらも複数のクラウド環境を活用する点では共通していますが、ハイブリッドクラウドは異なる種類の環境(パブリッククラウド、プライベートクラウド、オンプレミスなど)を連携させる運用形態を指します。

一方、マルチクラウドは複数のクラウドサービスを並行して利用し、障害リスクやベンダーロックインを回避する手法です。そのため、利用方法や計画を明確にしたうえで、ハイブリッドクラウドとマルチクラウドのどちらで構築するのかを決めるとよいでしょう。

ハイブリッドクラウドのメリット

ハイブリッドクラウドのメリット

ハイブリッドクラウドを導入することで得られるメリットはいくつかあります。ここでは、ハイブリッドクラウドのメリットを3つ紹介します。

セキュリティの向上

ハイブリッドクラウドでは、機密性の高いデータをプライベートクラウドやオンプレミスに保存することで、外部からの不正アクセスや情報漏えいリスクを大幅に軽減できます。

例えば、重要なデータはオンプレミスで管理し、機密性の低い業務データはコスト効率の良いパブリッククラウドに分散させる、といった方法があります。これにより、安全性を確保しつつ、柔軟かつ効率的なIT運用が可能になります。

リスク分散が可能

ハイブリッドクラウドを導入することで、企業は災害やサイバー攻撃などの予測できないリスクへの耐性を高めることができます。単一のクラウドやオンプレミス環境だけを利用している場合、トラブルが発生するとシステム全体が停止し、大きな被害を受けるリスクがあります。

しかし、ハイブリッドクラウドであればデータやシステムを複数環境に分散管理できるため、万が一の際も迅速に復旧でき、業務の継続性とインフラの信頼性を維持することが可能です。

コストダウンにつながる

ハイブリッドクラウドをうまく活用することで、システム全体の運用コストを効果的に削減できます。セキュリティ性が高いプライベートクラウドやオンプレミス環境は、導入・運用に多くのコストがかかるため、全てのデータをそれらに保存すると非効率です。

ハイブリッドクラウドなら、機密性の高いデータは自社管理に、一般的な業務データはコストを抑えやすいパブリッククラウドに振り分けることで、最適なコストバランスを実現できます。

ハイブリッドクラウドのデメリット

ハイブリッドクラウドのデメリット

ハイブリッドクラウドはメリットがある一方、運用の複雑さやコスト管理の難しさなどのデメリットも存在します。ここでは、ハイブリッドクラウドの課題について解説し、対策と併せて紹介します。

メンテナンスの複雑化

ハイブリッドクラウドでは、複数のクラウド環境や物理サーバを組み合わせて運用するため、システム管理が複雑になりやすいという課題があります。管理項目の増加やシステム全体の可視性低下により、保守作業の負担が増し、セキュリティリスクも高まる恐れがあります。

このため、それぞれのインフラ環境や統合方法に精通した担当者を配置し、一元管理や監視体制を整えることが求められます。

コスト管理が難しい

ハイブリッドクラウドでは、複数のインフラ環境を組み合わせて利用するため、コスト管理が非常に難しくなります。各環境のコスト構造が異なり、どこにリソースを投入すれば全体の最適化を図れるかを見極めるのは容易ではありません。

パブリッククラウドの比重を減らしすぎると、プライベートクラウドの負荷が増え、結果的にコスト増加を招くリスクもあります。効果的に運用するには、正確なコスト把握と複雑な最適化計算が不可欠です。

ハイブリッドクラウドが増えている理由

ハイブリッドクラウドが増えている理由

近年、ハイブリッドクラウドを導入する企業が増加しています。その背景にはどのような理由があるのでしょうか。ここでは、具体的な要因について紹介します。

オンプレミスとクラウドのいいとこ取りができる

ハイブリッドクラウドは、パブリッククラウド、プライベートクラウド、オンプレミスといった異なる環境を組み合わせ、それぞれの特長を活かして運用できるクラウドの形態です。

例えば、プライベートクラウドやオンプレミスは、セキュリティやシステムのカスタマイズ性に優れています。機密性が高いデータや特別な要件がある業務データを扱う場合には、これらの環境が適していますが、全てを運用すると、多くの初期投資や高額な運用コストがかかってしまうという課題があります。

そのため、コスト効率の良いパブリッククラウドを併用することで、必要なときに必要なだけのリソースを利用できるため、コストを抑えることができます。これにより、セキュリティを確保しつつ、ITコストの最適化を図り、限られた予算内でバランスの取れたシステム運用の実現が可能です。

サイバーセキュリティ上の脅威が増大している

近年、サイバー攻撃の脅威は企業活動に深刻な影響を及ぼしており、ITインフラのセキュリティ強化はこれまで以上に重要視されています。

情報通信研究機構(NICT)の「NICTERダークネット観測統計」によると、ダークネットにおける1IPアドレス当たりの年間総観測パケット数は、2015年から2024年の間に約10倍に増加しました。

この増加は、マルウェアの感染活動など、インターネット上で発生している何らかの不正行為が原因である可能性が高く、こうした攻撃の急増は、サイバー空間における脅威の拡大を示すものといえます。

1IPアドレス当たりの年間総観測パケット数

出典: NICT「NICTERダークネット観測統計(過去10年間)(NICTER観測レポート2024)」を基にグラフを作成

ハイブリッドクラウドを活用することで、万が一サーバが攻撃を受けた場合でも、情報漏えいの被害を最小限に抑え、業務停止などのリスクを軽減できます。また、データの重要性や特性に応じて保存場所を適切に分けることで、被害の拡大を防ぐことも可能です。

企業の規程・要領によりクラウド環境が利用できない

近年、システム開発においてクラウドサービスの利用を優先する「クラウドファースト」を推進する企業が増える一方で、機密情報や個人情報を扱うシステムについては、オンプレミスで管理するよう規程や要領で定める企業も少なくありません。

クラウドは柔軟性やコスト効率に優れる一方、外部からの攻撃リスクに考慮する必要があります。そのため、セキュリティを重視すべき領域はオンプレミスに残しつつ、業務効率化やコスト削減を目指す部分にはクラウドを活用するという、安全性と利便性を両立できるIT戦略が可能なハイブリッドクラウドの導入が増えています。

ハイブリッドクラウド導入の流れ

ハイブリッドクラウド導入の流れ

ここでは、ハイブリッドクラウドを導入する際のステップを4つに分けて紹介します。

1.必要な情報を明確化する

ハイブリッドクラウドを導入する前に、導入の目的や、扱うデータの重要度・性質を明確にしたうえで要件定義を行います。これが曖昧なままだと、最適なクラウド構成やサービス選定ができず、過剰投資やセキュリティリスクを招く恐れがあります。

特に、古いシステムや特殊な要件を持つデータはクラウド化が難しい場合もあるため、移行対象の整理と優先順位付けを事前に行うことが重要です。

2.データに合わせて仕分けを行う

続いて、データごとに機密性や容量の変動を見極め、適切な環境へ仕分けします。例えば、機密性の高いデータは、アクセス制御や内部統制がしやすいプライベートクラウドやオンプレミスに保存し、アクセス頻度が高くスケーラビリティを求めるデータはパブリッククラウドに配置する、といった使い分けが考えられます。

データ配置を最適化することで、可用性、拡張性、法令対応のバランスを取りつつ、コストやリスクの抑制が可能になります。

3.最適なクラウドサービスを選ぶ

データの仕分けが完了したら、それぞれの特性に応じて最適なクラウドサービスを選びましょう。サービスごとにコストモデル、性能、対応地域、サポート体制などが異なるため、自社の目的や用途に適したクラウドサービスの選定が重要です。

選定が難しい場合は、企業のIT環境の運用や保守を外部の専門業者に委託できる「マネージドサービス」を活用するのも有効な手段です。

4.データの移行を行う

最後に、仕分けに従ってデータを移行します。移行の際には、データの盗難や情報漏えいといった脅威から守るため、VPNなどのセキュリティツールを活用するとよいでしょう。

さらに、移行期間や影響範囲を考慮した移行計画を事前に立てることで、スムーズかつ安全なデータ移行を実現できます。

ハイブリッドクラウド活用における効果的な構成例とは

ハイブリッドクラウド活用における効果的な構成例とは

ここでは、ハイブリッドクラウドの具体的な活用イメージを持っていただくために、一般的な構成例を紹介します。

BCP対策の構成例

BCP対策を重視した構成例では、オンプレミスやプライベートクラウドのシステムやデータを、パブリッククラウドへ定期的にバックアップする仕組みが効果的です。

万が一、自社のデータセンターに障害が発生した場合でも、クラウド側に切り替えることで迅速な業務復旧が可能となります。バックアップ体制を整えておくことで、事業継続性の確保とダウンタイムの最小化を実現できます。

需要の変動に対応する構成例

需要の変動に対応した構成例では、注文システムなどアクセスが集中しやすいシステムを、スケーラブルなパブリッククラウドに配置することで、突発的なアクセス増にも柔軟に対応できるようになります。

一方で、顧客情報などの変動が少なく、機密性が求められるデータは、セキュリティの高いプライベートクラウドで運用します。このような処理負荷とデータ特性に応じた適切な使い分けにより、コスト効率の向上と安定したシステム運用を実現できます。

まとめ

まとめ

本記事では、ハイブリッドクラウドについてメリットやデメリット、導入の流れから効果的な構成例などを紹介しました。ハイブリッドクラウドは多くのメリットを持つ一方で、運用や管理の難しさから導入をためらう企業も少なくありません。

こうした課題に対し、オプテージでは、お客さまの拠点とクラウドをイーサネットVPNやIP-VPNを通じて直接接続を可能にする自社クラウドサービス「Neutrix Cloud」や「ユーティリティ クラウド」を提供しています。また、自社クラウドだけでなく、パブリッククラウドやクラウドの運用・管理を支援するマネージドサービスもご提供しており、お客さまのニーズに合わせた最適なご提案が可能です。

ハイブリッドクラウドについてお悩みのことがありましたら、ぜひオプテージまでお気軽にご相談ください。

◎製品名、会社名等は、各社の商標または登録商標です。

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著者 OPTAGE for Business コラム編集部

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