- 公開日:2025年01月22日
モダナイゼーションとは?現代ビジネスに不可欠なシステム最適化を解説
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近年、多くの企業が抱える課題として、老朽化したレガシーシステムの刷新が挙げられます。このような状況を解決する鍵となるのが「モダナイゼーション」です。
本記事では、モダナイゼーションについて、マイグレーションとの違いや手法、重要とされる理由や進めるうえでのポイントを紹介します。
モダナイゼーションの概要
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ここではモダナイゼーションやマイグレーションとの違いについて紹介します。
モダナイゼーションとは?
モダナイゼーションとは、老朽化したシステムやプロセスといったIT資産を、ビジネスの視点から最新の技術に適合した形へと最適化・刷新することを指します。例えば、企業の基幹システムとして長年使用されてきた古いメインフレームを、オープンシステムやクラウドなどの最新技術を活用したシステムへ移行する取り組みなどがあります。
「モダナイゼーション」という言葉は、「モダナイズ(modernize)」から派生したもので、近代化や現代化を意味する英語の名詞です。IT分野では、「ITモダナイゼーション」や「システムモダナイゼーション」とも呼ばれ、業務効率化やセキュリティ向上を目指す取り組みとして注目されています。
マイグレーションとの違い
モダナイゼーションとマイグレーションは、どちらもシステムの変更やアップグレードを伴いますが、その目的や方法には明確な違いがあります。
モダナイゼーションは「近代化」を意味し、既存のシステムやデータ資産を活用しながら、最新技術や現代のビジネス環境に適応したシステム全体の最適化を指します。これにより、セキュリティの強化や業務効率の向上が期待できます。
一方で、マイグレーションは「移行」を意味し、既存のシステム構造や要件を維持しつつ、データやシステムを別のIT環境に移行することに焦点を当てた手法です。マイグレーションは、モダナイゼーションを実現するための手段のひとつです。
これらの取り組みには、ビジネスのニーズや目標に応じて適切な選択が求められます。
モダナイゼーションの手法
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モダナイゼーションには、「リホスト」「リライト」「リビルド」「リプレース」の4つの手法があります。ここではそれぞれの違いについて紹介します。
リホスト
リホストとは、既存のアプリケーションやデータを最新のシステム基盤へ移行する手法です。この方法は、業務を中断せずに進められるため、ビジネスへの影響を最小限に抑えながら、低コストかつ短期間での移行が可能です。オンプレミス環境からクラウド環境にそのまま移行する「クラウドリフト」などがあります。
ただし、リホストでは古いシステム設計やプログラムがそのまま引き継がれるため、最新技術との互換性が十分でない場合があります。そのため、システム全体の性能向上や柔軟性を求める場合は、他のモダナイゼーション手法と組み合わせることが推奨されます。
リライト
リライトとは、既存システムの古いプログラム言語を新しい標準的な言語へ書き換える手法です。この方法を活用することで、コードが統一され、保守性や将来的な拡張性が向上します。また、自動変換ツールの活用により、比較的低コストで効率的にリライトを進めることが可能になります。
しかし、ツールの変換精度や元のシステムに関するドキュメントの整備状況が不十分な場合には、追加の人手や時間が必要となることもあります。
リビルド
リビルドとは、既存システムの基本的な仕様や機能を維持しながら、新しい技術を活用してシステム全体を一から再構築する手法です。この方法は、新システムを設計・実装する際に選択肢の幅が広がるため、柔軟なカスタマイズが可能になります。その結果、業務ニーズに合わせた最適なシステムを構築できる点が魅力です。
一方で、リビルドは他のモダナイゼーション手法と比較して、設計や開発のコストや工数が増えやすいという課題があります。そのため、長期的な投資効果を見据えた慎重な計画と実行が求められます。既存の業務要件を維持しつつも、最新技術の利点を最大限に活かしたい企業に適しています。
リプレース
リプレースとは、既存システムを全面的に新しいシステムへ置き換える手法です。この方法は、業務プロセスの見直しやビジネスモデルの最適化が可能となり、企業の競争力の向上が期待できます。例えば、従来のオンプレミス環境で運用していたシステムをクラウド環境へ移行して改修する「クラウドシフト」などが該当します。
一方で、リプレースは他のモダナイゼーション手法と比較して、初期コストや作業負荷が増えやすいという課題があります。そのため、予算計画を十分に立てたうえで、段階的な実行プロセスが求められます。既存システムの一新は、長期的な成長を目指す企業にとって有効な手法となるでしょう。
モダナイゼーションが重要な理由とは
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ここでは、モダナイゼーションが重要となっている理由について3つ紹介します。
セキュリティやパフォーマンスの向上
モダナイゼーションは、古いシステムの非効率性を解消し、業務効率や生産性を大幅に向上させる効果があります。老朽化したシステムを使い続けると、セキュリティホールが増え、サイバー攻撃や情報漏えいのリスクの高まりが懸念されます。モダナイゼーションを通じて最新のセキュリティ対策を導入すれば、これらの脅威に対応できます。
例えば、クラウドベースのシステムに移行することで、定期的なセキュリティ更新が自動化され、最新の脅威にも迅速に対処できる環境が整います。また、ランサムウェアなどのサイバー攻撃に対する防御力を強化すれば、システム障害やデータ損失といったリスクの軽減が可能になります。
モダナイゼーションは、業務の信頼性を向上させるだけでなく、企業のIT基盤をより堅牢で安心できるものへと進化させる重要な取り組みといえます。
コスト削減
老朽化したシステムを維持し続けると、高額なメンテナンス費用や運用コストが企業の財務負担となります。しかし、モダナイゼーションを進めれば、これらの維持費用の大幅な削減が可能です。例えば、クラウド環境への移行により、自動化されたメンテナンスやスケーラブルなリソース管理が可能になり、運用の効率化が期待できます。
さらに、クラウドなどで用いられるスケーラビリティを活用することで、企業の成長や需要の変動に応じてITリソースを柔軟に調整でき、コストの最適化につながります。これにより、効率的なIT戦略の構築が可能です。
DX化の推進
DXの推進にあたり、レガシーシステムは大きな障害となる可能性があります。経済産業省が2018年に発表した「DXレポート」では、既存システムのブラックボックス化が指摘されており、この状態が市場の変化への対応力を低下させるリスクをもたらすとされています。結果として、ビジネスモデルの柔軟性が失われ、迅速な変更が困難となり、デジタル競争において後れを取る恐れがあります。この状況は「2025年の崖」と呼ばれ、早急な対応が求められています。
さらに、レガシーシステムには、維持管理費や人件費の増加、災害時のシステムトラブルによるデータ消失といった問題も存在します。これらの課題が解決されない場合、2025年以降には年間最大12兆円の経済損失が発生する可能性が指摘されています。
レガシーシステムのモダナイゼーションを迅速に進めることで、DXの推進を加速し、企業の競争力を維持することが求められています。
出典:DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~(経済産業省)
モダナイゼーションを進めるうえでのポイント
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企業がモダナイゼーションを進める際、どのような点に注意すべきでしょうか。ここでは、3つのポイントを紹介します。
既存システムの理解と課題の明確化
モダナイゼーションを進めるためには、まず既存システムを深く理解することが重要です。具体的には、システムのアーキテクチャ、使用技術、依存関係、データフロー、業務プロセス全体を把握する必要があります。この分析により、システムの構成要素を洗い出し、それぞれがビジネスにどのように貢献しているかを評価できます。
次に、システムの強みと弱みを分析し、改善が必要な領域を特定します。これにより、現状の問題点や技術的な制限が明らかとなり、新システムの設計指針が得られます。その後、移行計画を策定し、リスクの特定と軽減策を講じることで、プロジェクトの成功率を向上させることができます。
最終的には、これらの情報を基にモダナイゼーションのロードマップを作成し、段階的な実装へと進むことで、効率的かつ効果的なシステム刷新を実現できます。
関連規程・要領の見直し
モダナイゼーションを進める前に、社内の関連規程や業務要領を最新のシステム環境に合わせて見直すことが必要です。レガシーシステムの導入当時に制定された規程は、現在の業務フローや技術環境に適さず、そのままでは新システムの運用に支障をきたす可能性があるためです。
特に、システムセキュリティやデータ管理に関する規定は、時代の変化に伴う新たな脅威やリスクを考慮する必要があります。サイバー攻撃の多様化やデータ保護の重要性が増す現代では、最新のセキュリティ要件や業務効率に合うよう、柔軟かつ包括的な見直しが求められます。
徹底的なテストの実施
モダナイゼーションを成功させるためには、新しいシステムが求められる要件を確実に満たしているかの徹底的な検証が欠かせません。新システムがスムーズに稼働し、既存システムから移行したデータを正しく処理することが不可欠なためです。
テストの際には、実際の業務環境を可能な限り正確に再現した設計を行うことが重要です。これにより、新しいシステムが実際の業務で問題なく動作するかを事前に確認できます。また、使用するテストデータは、実際の業務データの特性を反映したものを採用し、システムの現実的なパフォーマンスを評価します。
このように徹底したテストを実施することで、移行後のトラブルを最小限に抑え、システムの信頼性と安定性の確保が可能になります。
まとめ
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本記事では、モダナイゼーションについて、マイグレーションとの違いや手法、重要とされる理由や進めるうえでのポイントを紹介しました。モダナイゼーションは、老朽化したレガシーシステムがもたらすリスクを解消し、企業の競争力を高める重要な取り組みであるものの、多くの企業がどのように着手すればよいのか悩んでいるのが現状です。
オプテージでは「業務改革・ITコンサルティングサービス」を通じて、企業の経営戦略を理解し、最適なソリューションを提供しています。特定の製品やサービスに依存せず、中立的な立場で企業に最適なソリューションの提供が可能です。
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