- 公開日:2024年05月14日
ライドシェアとは?カーシェアリングとの違いや利用方法、注意点を解説
ライドシェアは、アメリカをはじめ世界で普及し始めている移動サービスの一つです。日本でもライドシェア解禁に向けた議論が交わされており、2024年4月から部分的にサービスが提供されることになりました。
サービスを利用することで、移動手段が増えたり移動コストを抑えられたりといったメリットがあるため、利用を検討している人も少なくないでしょう。
今回は近年話題となっているライドシェアについて、メリットや国内外の現状、注意点などを解説します。
ライドシェアとは?
ライドシェアとは、タクシーの営業許可がない一般のドライバーが有償で顧客を送迎するソーシャルサービスのこと。ドライバーと同じ方向に移動したい人を結びつけて"乗車(Ride)"を"共有(Share)"するため、ライドシェアやライドシェアリングとも呼ばれています。
使っていない資産をインターネットを介して必要な人に利用してもらうため、シェアリングエコノミー※1の一形態に位置付けられています。料金は乗客とドライバーでガソリン代などを負担し合うため、交通費を抑えることが可能です。欧米ではすでに普及しており、スマートフォンアプリなどを通じてライドシェアがおこなわれています。
※1:シェアリングエコノミーとは、インターネットを介して個人同士あるいは個人と企業などの間で資産を共有することで成り立つ経済の一形態のこと。民泊やカーシェアなどが代表的。
ライドシェアの形式
ヒッチハイクのように無償のライドシェアもありますが、話題となっているライドシェアは有償のサービスを指し、海外では「TNC型」と「PHV型」の2つに大別されます。
【TNC(Transportation Network Company)型】
TNC型は、配車プラットフォームを提供する事業者が中心となり、ドライバーに課す要件を定めたりドライバーや運行の管理をおこなったりするのが特徴です。アメリカやカナダ、オーストラリア、中国、ブラジルなどの国々で導入されています。
【PHV(Private Hire Vehicle)型】
PHV型は、個人タクシーから派生した形式です。TNC型と同様にプラットフォームを活用するケースもありますが、ドライバーへの要件は国ごとの規制があり、公的なライセンスの取得や登録などが求められます。イギリスやフランス、ドイツなど主にヨーロッパ圏で導入されています。
カーシェアリングとの違い
カーシェアリングは車の貸し借りを目的としており、企業あるいは一般の個人から車を借りて共同利用するサービスです。車を借りるという点ではレンタカーと同様のサービスといえるでしょう。
このほか、国内では2021年11月から"タクシー「相乗りサービス」"が解禁されました。こちらもライドシェアと似ていますが、配車アプリなどを介して目的地の近いユーザー同士をつなぎ、タクシーに相乗りすることが大きな特徴です。
ライドシェアが注目を集める背景
これまで、日本では一般人が自家用車を使って有償で人を送迎することは、「白タク」と呼ばれる違法行為とされていました。しかし、タクシーの供給不足を背景に有償のライドシェアが部分的に認められ(2024年4月時点)、新たな移動手段のひとつとして関心を集めているのです。
帝国データバンクが2023年11月に発表した特別企画:「全国タクシー・ハイヤー業界」動向調査によると、タクシー会社の1割以上が10年のうちに人手が半減しており、全体を平均すると従業員数は1社あたり2割も減少しています。
一方で、2024年現在は訪日外国人数が過去最高になることが予想され、ライドシェアの導入はタクシードライバーの不足による移動・消費などの機会損失を防ぎ、日本経済に好影響をもたらす可能性もあるでしょう。
また、ライドシェアによって車1台あたりの乗客数が増えることで、交通渋滞の緩和や二酸化炭素の排出量削減も期待できます。国内外ではESG投資※2への関心も高まっており、こうした脱炭素への貢献は環境改善の観点からも注目されています。
※2:ESG投資とは、投資先の企業を選ぶ際に環境・社会・ガバナンスの3つの観点を考慮する投資手法
ライドシェアを利用するメリット
広い視点で見ると、ライドシェアはタクシー会社の人手不足をカバーし、国内での移動や消費活動を促したり、相乗りによってCO2排出量を削減したりといった効果が考えられます。
それだけではなく、ライドシェアで相乗りする乗客やドライバーなどの個人単位にももちろんメリットがあります。それぞれ見ていきましょう。
乗客にとってのメリット
移動のためにライドシェアを活用する乗客には、大きく3つのメリットがあります。
【移動にかかる費用を抑えられる】
ライドシェアの料金体系にもよりますが、基本的にはタクシーの運賃よりも低い料金で利用できます。例えば、利用料がガソリン代や高速代などの実費を折半するだけで済む可能性もあり、移動にかかる費用を抑えられるのは大きなメリットになるでしょう。
【公共交通機関よりも柔軟に移動できる】
電車やバスなどの公共交通機関は決まったルートを走行しますが、ライドシェアを活用すればより柔軟に移動できる可能性があります。
もちろんドライバーとマッチングする必要はあるものの、タクシー不足や公共交通機関の維持が困難なエリアで、新たな移動手段を確保できます。
【相乗りすることで道中を楽しく過ごせる】
利用シーンなどによって異なりますが、相乗りによって移動中のコミュニケーションを楽しめる場合もあります。
例えば、乗客とドライバーが同じ観光スポットを旅の目的地にしている場合、旅行やグルメなどの話題で盛り上がったり、有益な情報をシェアできるかもしれません。
ドライバーにとってのメリット
相乗りする人だけでなく、運転する人にとっても次に挙げるようなメリットを享受できます。
【移動費を抑えられる】
乗客と同様に、ライドシェアを通じて移動にかかる費用の軽減が可能です。ドライバーの目的地までの一部分でも相乗りする人がいれば、その分のガソリン代や高速代が抑えられるでしょう。
【新たな収入源になる】
2024年現在、国内での規制や整備は議論を進めている途中ですが、ドライバーにとって新たな収入源になる可能性もあります。通勤やショッピングなどを目的とした移動だけでなく、空いた時間にライドシェアの乗客を送迎すれば、収入を得られるかもしれません。
海外・国内におけるライドシェアの現状
世界中で広まりつつあるライドシェアですが、実際どのように利用されているのでしょうか。ここでは、海外や日本におけるライドシェアの現状を紹介します。
海外の場合
近年、欧米をはじめ中国やインドなどの海外ではライドシェアが急速に普及しています。特に大手のプラットフォーム提供事業者が世界800以上の都市に進出し、現地の競合企業と市場を争っている状況です。従来のタクシーよりも安価に利用でき、アプリ上で手軽に車を手配できるといった利便性から、多くの人がライドシェアを利用しています。
ただし、飲酒運転やドライバーから暴行を受けるなどのトラブルも少なくありません。そのため、事前に互いの性別を確認できたり、乗客が評価したドライバーの情報を事前に確認できたりといったサービスが展開されている事例もあります。
シンガポールの配車サービスでは、ドライバーの登録に厳格な審査を課しているほか、車載レコーダーの設置やワンタップで緊急ダイヤルにつながるシステムをアプリに搭載するなどして安全に配慮しています。こちらも注目しておきたいポイントです。
国内の場合
国内では本格的なライドシェアの導入前に、いくつかの地域で実証実験がおこなわれています。
例えば、国家戦略特区で規制が緩和された兵庫県養父市では、地域のタクシー会社と連携して2018年から実証実験を開始。市内の登録ドライバーがタクシー会社からの運送依頼を受け、顧客を目的地まで送るサービスが展開されています。
このほか、京都府京丹後市では2016年から配車アプリなどを活用した実証実験をおこなったり、神奈川県三浦市では2024年から実証実験に協力するドライバーの募集を開始したりと、すでに各地で取り組みが始まっています。
ライドシェアに反対する声も
政府で議論が交わされているほか、複数の自治体でライドシェアの実証実験がおこなわれていますが、経営圧迫の可能性があるタクシー会社をはじめ、一部の人から反対の声が上がっているのも事実です。
引用:MM総研「ライドシェアに関する社会受容性調査」(2023年10月)
MM総研が2023年に発表した調査によると、海外でライドシェアの利用経験がある人ほど、国内でのライドシェア導入に賛成する割合が高い一方、利用経験がない人ほどサービス導入に否定的な傾向が見られました。犯罪に巻き込まれる可能性や運転の質、事故発生時の責任の所在などが懸念点として挙げられています。
国内での法規制と例外規定
一部地域でライドシェアの実証実験がおこなわれているものの、道路運送法78条では有償によるライドシェアが原則禁止となっています。
ただ、以下に挙げたケースは有償に該当せず、例外的に許可や登録が不要です。
- 送迎してもらった好意に対する任意の謝礼
- 移送のお礼として自宅で採れた野菜などを渡すこと
- 運送行為に付随するガソリン代などの費用 など
出典:「道路運送法における登録又は許可を要しない運送の態様について」(国土交通省)
このほか、「自家用車有償旅客運送」も例外として認められています。バスやタクシーといった輸送サービスを受けることが難しい場合、市町村やNPOなどが国土交通大臣の登録を受けていれば自家用車で有償の送迎をおこなっても問題ありません。
国内ライドシェアの今後は?
2024年4月から、以下に挙げた一部地域で日本版ライドシェアが解禁されました。
- 東京都:23区、武蔵野市、三鷹市
- 神奈川県:横浜市、川崎市など
- 愛知県:名古屋市、瀬戸市など
- 京都府:京都市、宇治市など
このほか、札幌市や仙台市、さいたま市、千葉市、大阪市、神戸市、広島市、福岡市などの地域でも2024年5月からライドシェアの実施が予定されています。
部分的な解禁ではあるものの、地域ごとに定められた台数・曜日・時間帯に限り、一般ドライバーが有償で人を運ぶことが認められます。また、現時点でのライドシェアはタクシー会社が配車アプリを使って運行管理をおこない、支払いはキャッシュレスとなっているのが特徴です。
ただ、将来的にライドシェアが全面的に解禁された場合、アメリカや中国といった海外の大手事業者が参入してくる可能性もあるでしょう。
ライドシェアの利用で注意すべきポイント
一般の方も利用できるライドシェアですが、利用する際はどういった点に注意すべきかを解説します。また、ライドシェア市場への参入を検討している企業は、改善が必要な点として確認しておきましょう。
乗客が注意すべきポイント
すでにライドシェアが導入されている海外では暴行事件なども起きているため、安全面は特に注意しておきましょう。乗客によるドライバーの評価システムなどが導入されているケースもあるものの、ドライバーと乗客との間でトラブルが発生する危険性があることは考慮しなければなりません。
また、タクシーとは違って一般の方が運転するため、ドライバーの資質や運転技術が担保されていない可能性があります。安全に目的地に到着するためにも、ライドシェアサービスを利用する際はこうした点に注意しておきましょう。
ドライバーが注意すべきポイント
国の規制やプラットフォーム側の体制にもよりますが、ライドシェア中に問題が発生した場合はドライバーが責任を負うことになるかもしれません。特に乗客との揉め事や事故に遭ったときの賠償など、大きな責任を個人が負うことになる可能性がある点は把握しておきましょう。
また、ドライバーが副業目的でライドシェアに登録している場合、プラットフォーム提供事業者がサービスを停止すると、ドライバーは何の補償もなく収入源を失う可能性があります。
まとめ
2024年4月から部分的に解禁されることとなったライドシェア。これまで有償で人を送迎することは違法でしたが、タクシー業界の人手不足などを背景にサービス導入に向けた取り組みが進められています。
本格的な導入にはまだまだ課題点があるものの、交通の利便性が向上したり環境への負荷を軽減したりと、さまざまなメリットもあります。相乗りする乗客とドライバー、ライドシェアの利用を検討している双方が、安全を第一にプラットフォームの規約や注意点などを確認しておきましょう。
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