アンコンシャスバイアスとは?職場での無意識の思い込みなどの具体例を紹介

アンコンシャスバイアスとは?職場での無意識の思い込みなどの具体例を紹介

アンコンシャスバイアスは無意識バイアスとも呼ばれ、無意識の思い込みや偏見を意味する心理学用語です。アンコンシャスバイアス自体に大きな問題はありませんが、職場におけるアンコンシャスバイアスの浸透はさまざまな悪影響を及ぼすことがあります。
本記事ではアンコンシャスバイアスの種類や、職場での具体例などを詳しく解説します。

Contents

アンコンシャスバイアスとは

アンコンシャスバイアスとは

アンコンシャスバイアスとは、無意識の思い込みや偏見、先入観などを意味する心理学用語です。アンコンシャスバイアスは過去の経験や価値観、知識などが基礎となって生まれます。

アンコンシャスバイアスは「高速思考」とも呼ばれ、大枠で物事を理解して判断するために欠かせないものです。しかし、アンコンシャスバイアスには無意識のうちに他者を傷つけたり、自身の可能性を狭めたりするデメリットもあります。

アンコンシャスバイアスが注目されるようになった背景

アンコンシャスバイアスが注目されるようになった背景には、ダイバーシティの考え方の普及があります。ダイバーシティとは多様性を意味する英単語であり、性別や年齢、国籍などの違いを尊重する考え方のことです。

また、近年では多様性を活かして経営の成果につなげる「ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)」という考え方も広まってきました。このダイバーシティ&インクルージョンを推進するには、アンコンシャスバイアスに気づく必要があると指摘されています。

ダイバーシティ&インクルージョンは、少子高齢化による労働力の減少や、日本企業の海外進出などにおいて欠かせません。こうした背景に伴い、アンコンシャスバイアスへの気づきは、働き方改革の実現を目的とするなかで注目度が上がってきています。

アンコンシャスバイアスの主な種類

アンコンシャスバイアスの主な種類

一口にアンコンシャスバイアスといっても、他者に対するものもあれば、自分に対するものもあり、全て含めると200種類以上にものぼります。ここでは、アンコンシャスバイアスの主な種類を具体例とともにまとめました。

正常性バイアス

正常性バイアスとは、予期せぬ事態や自分にとって都合の悪いことが生じた場合に、楽観的に考えてしまう認知の特性を指します。

例えば、自然災害に見舞われたり、思わぬ事件に巻き込まれたりした際に、「きっと大丈夫だろう」「これくらいなら問題ない」と思い込んでしまうのが正常性バイアスです。

同調バイアス

同調バイアスとは、大多数の意見に合わせようとする心理状態のことです。自分の意見や信念をねじ曲げてでも多数派に従ってしまうことで、誤った判断をくだすリスクがあります。

具体的には、従業員の大多数が支持しているからと意見を合わせたり、災害時に「みんな避難していないから避難する必要はない」と判断してしまったりする状態です。

権威バイアス

権威バイアスとは、権威のある人や団体の意見を無条件に支持する心理傾向を指します。権威バイアスは意思決定における認知的な歪みであり、人それぞれの考え方や価値観の多様性を損ないかねません。

例えば、上司や専門家などの権威のある人が発言した場合に、「従うべきだ」「これで間違いない」と思い込んでしまうのが権威バイアスです。

アインシュテルング効果

アインシュテルング効果とは、過去の経験や慣れ親しんだ考え方に固執し、別の考え方や答えを無視してしまう状態を指します。物事を多面的に見られなくなり、可能性を狭めてしまう恐れがあるため注意が必要です。

アインシュテルング効果の例として、複数の解き方があるにもかかわらず、教えられた解き方にこだわってしまう状態が挙げられます。

ハロー効果

ハロー効果とは、他者が持つ特定の特徴に引きずられて、全体の評価が歪んでしまう心理作用のことです。ハロー効果はハローエラーとも呼ばれ、本質を見極められずに誤った評価をくだす恐れがあります。

例えば、大手企業で働いた経験のある人材を優秀だと思い込んだり、一度でも優秀ではないと判断した人材に対して過小評価してしまったりと、実際とは乖離した評価をくだしがちです。

ステレオタイプ

ステレオタイプとは、広く浸透している固定観念や先入観、思考の型を指します。ステレオタイプは生まれた国や年代によって異なり、他者を性別や学歴、世代などで分類して判断することです。

ステレオタイプにバイアスがかかると、「男の子は青、女の子は赤を選ぶのに、男の子が赤を選ぶなんて変わっている」「女性は地図を読めないから、道案内を任せるのは不安」といった考え方にとらわれます。

確証バイアス

確証バイアスとは、自分の仮説を立証するために、自分にとって都合のよい情報だけを集めてしまう傾向のことです。反証する情報を無意識のうちに排除してしまうことで、固定観念や偏見が強まる恐れがあります。

具体的には、血液型で性格を決めつけたり、肯定的なレビューばかり信じたりする状態です。

インポスター症候群

インポスター症候群とは、自分の能力や実績を評価されていても、それを認められずに自分を過小評価してしまう心理状態のことです。育ってきた環境や社会の変化が原因となっている場合が多く、過度に失敗や批判を恐れる傾向にあります。

インポスター症候群に陥ると、周りに評価されたとしても「私はみんなを欺いている」という感覚にさいなまれることも少なくありません。

職場におけるアンコンシャスバイアスの具体例

職場におけるアンコンシャスバイアスの具体例

アンコンシャスバイアス自体に問題があるわけではありませんが、知らず知らずのうちにアンコンシャスバイアスが悪い作用を引き起こすことがあります。特に職場では、アンコンシャスバイアスが原因で人間関係に亀裂が生じたり、従業員のパフォーマンスが下がったりすることがあるため注意が必要です。

以下に、職場で起こりやすいアンコンシャスバイアスの具体例を挙げました。ご自身の職場でこのようなことがないか一度確認してみましょう。

  • 業務上のミスを見つけたが、誰も指摘しないから大丈夫だと判断する
  • よいアイデアを思いついたが、みんなが支持しているアイデアに賛成する
  • 間違いなく上司の言うことが正しい
  • 効率の悪さに気づいているものの、教えられたとおりの方法で進める
  • 能力や実績を評価されたが、自分にはできないと役職を断る

職場におけるアンコンシャスバイアスは、勤続年数が長くなるにつれて見過ごしがちになります。また、アンコンシャスバイアスに気づいていても、仕方ないと諦めてしまっている方も多いので、この記事をきっかけに改めて職場の在り方を考えてみてください。

職場に潜むアンコンシャスバイアスに対処するメリット

職場に潜むアンコンシャスバイアスに対処するメリット

ここからは、職場に潜むアンコンシャスバイアスに気づき、適切に対処するメリットを解説します。職場環境を整えるためにも、アンコンシャスバイアスへの対処に取り掛かりましょう。

ハラスメントの防止につながる

アンコンシャスバイアスのなかでも、性別や年齢に関する無意識の思い込みや偏見はハラスメントにつながりやすくなります。ハラスメントが横行すると、心身に支障をきたす従業員が出てきたり、職場の人間関係が悪くなったりすることも少なくありません。

アンコンシャスバイアスに対処できればハラスメントを防止でき、従業員が仕事に集中できる心地のよい職場環境を作れるでしょう。

従業員のパフォーマンス向上が期待できる

アンコンシャスバイアスは従業員のパフォーマンスに影響を及ぼすため、業務効率化を図りたい場合はいち早くアンコンシャスバイアスに対処することをおすすめします。例えば、「女性にはできない」「自分の意見なんて」といったアンコンシャスバイアスに対処できれば、従業員のモチベーションによい影響が出て、パフォーマンス向上を図ることも可能です。

離職率の低下につながる

アンコンシャスバイアスはハラスメントの増加や、従業員のモチベーションの低下の原因になり得ます。その状態を放置してしまったために、従業員の離職率が上がり、人材不足から抜け出せなくなるケースも少なくありません。

職場に潜む無意識の思い込みや偏見に気づけたら、従業員一人ひとりを尊重しようという考え方が広まります。その結果、離職率の低下を実現できるでしょう。

社内のダイバーシティを促せる

多様な考え方や価値観を尊重することで、新たなアイデアや戦略立案の機会が広がります。性別や年齢、国籍などに対するアンコンシャスバイアスを取り除き、社内のダイバーシティを促しましょう。

アンコンシャスバイアスへの対処法を3ステップで解説

アンコンシャスバイアスへの対処法を3ステップで解説

アンコンシャスバイアスに対処するには、知る・気づく・対策を講じるという3つの基本ステップが重要です。下記のステップに沿って取り組んでみてください。

1.知る

まずは、アンコンシャスバイアスの存在を知るところから始めましょう。アンコンシャスバイアスは誰もが持っているものであり、職場をはじめどこにでも潜んでいます。アンコンシャスバイアスの特徴や種類を知ることこそ、アンコンシャスバイアスへの対処の第一歩となります。

2.気づく

アンコンシャスバイアスの存在を知ると、自分のなかに潜んでいるアンコンシャスバイアスに気づくことができます。「他者や自分に対する偏見などない」「職場では十分に気をつけている」と思っている人も、なんらかのアンコンシャスバイアスを持っている場合がほとんどです。

3.対策を講じる

自分のなかにある無意識の思い込みや偏見に気づいたら、さっそく具体的な対策を講じましょう。例えば、部下や同僚に対する接し方を見直したり、アンコンシャスバイアスやダイバーシティに関する研修に参加したりするのもおすすめです。

また、管理職として部下を指導および管理している方は、従業員への意識調査や、アンコンシャスバイアスの理解を促す社員研修の実施も視野に入れましょう。

まとめ

まとめ

アンコンシャスバイアスとは無意識の思い込みや偏見のことです。これをそのまま放置しておくと、ダイバーシティ&インクルージョンを妨げかねません。アンコンシャスバイアス自体に問題があるわけではありませんが、アンコンシャスバイアスが原因で職場環境や業務に悪影響が出ている場合は、いち早く対処することが望ましいでしょう。

アンコンシャスバイアスへの対処の第一歩は、誰もが無意識の思い込みや偏見を持っていると知ることです。職場における「普通」「常識」を見つめ直し、よりよい職場環境作りに努めましょう。

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著者 OPTAGE for Business コラム編集部

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