- 公開日:2024年02月28日
VOC分析で顧客満足度を高める!分析の目的と方法、活用事例を紹介
VOC分析は、顧客のニーズや問題点を把握し、顧客満足度を高める重要な活動です。しかし、VOC分析は決して容易にできるものではありません。VOCの量が多すぎて管理できない、分析に必要な人材やツールが不足している、分析結果を活用できていないなど、身に覚えのある担当者も多いでしょう。
この記事では、VOCの概要を解説するほか、VOC分析を実践した企業の事例とVOC分析を成功させるポイントを紹介します。VOCの基本を知り、自社のマーケティング活動に活かしましょう。
VOCとは?定義から解説
VOC分析とは、顧客の意見や声といった情報を収集・整理・分類・要約・抽出・分析・解釈・可視化・報告する一連のプロセスのことをいいます。
VOCとは「Voice Of Customer」の略で、日本語では「顧客の声」です。VOCには、アンケートやインタビューなどで直接聞いた意見や要望、コールセンターへの問い合わせやクレーム、SNSやレビューサイトなどで発信された感想や評価などが含まれています。
VOCは顧客のニーズや問題点、満足度や不満度、感情や動機などを知る貴重な情報源です。
VOC分析の目的は、顧客の本当のニーズや問題点を把握し、顧客にとって価値のある商品やサービスを提供することです。VOC分析は顧客満足度を高めるだけでなく、売上・利益の増加や競合との差別化にもつながるでしょう。
VOC分析の活用事例と成功のポイント
VOC分析は、さまざまな業界や業種で活用されています。ここではVOC分析を実践した企業の事例と、VOC分析を成功させるためのポイントについて見ていきましょう。
事例1:大手ショッピングプラットフォーム
VOCの収集といえば、世界最大のオンラインショッピングプラットフォームが有名です。自分のニーズに合った本や日用品がオンラインサービス上で提案され、驚いたことがある人も多いでしょう。
このような提案が可能なのは、ユーザーのレビューや評価、購入履歴などのデータを活用し、顧客の嗜好や行動を分析しているからです。
ショッピングプラットフォームのVOC分析には次の特徴があります。
- 直接的な意見・要望だけでなく、顧客の行動や購買履歴などのデータからも分析する
- 分析結果を迅速に商品開発やサービス改善に反映する
こうしたVOC分析の活用により、次のような成果が期待できます。
- 満足度やロイヤルティを高める
- ニーズに応えた新商品やサービスを開発する
- 購買意欲やリピート率を向上させる
事例2:大手コーヒーショップチェーン
大手コーヒーショップチェーンもVOCを上手に活用していることで知られています。専用アプリやSNS、店舗でのフィードバックなどのチャネルで顧客の意見や要望を収集し、それによって顧客のニーズをとらえた新商品やサービスを開発しています。大手コーヒーショップチェーンのVOC分析の特徴は次のとおりです。
- VOCを多様なチャネルや方法で収集する
- 定量的なデータだけでなく、定性的なデータも考慮して分析する
集めたVOCは次のように活用しています。
- 満足度やロイヤルティを高める
- ニーズやトレンドに合わせた新商品やサービスを開発する
- 顧客とのコミュニケーションや関係性を強化する
VOC活用の成功のポイント
上記2つの事例から、VOC活用のポイントを次のようにまとめることができます。
【収集】
- 多様なチャネルや方法を使い、顧客の声を幅広く集める
- 顧客の声を定期的に収集し、最新の状況を把握する
【分析】
- 定量的なデータだけでなく定性的なデータも考慮し、顧客の感情や動機を理解する
- 顧客の声をテーマやカテゴリーに分類し、重要なポイントを抽出する
- 顧客の声の原因や影響を分析し、解釈する
【活用】
- 商品開発やサービス改善に反映し、価値を提供する
- マーケティングや販売促進に活用し、購買意欲を高める
- 社内で共有し、顧客志向の組織文化を築く
次の項ではVOCの収集方法と、その特徴を見ていきましょう。
VOCの収集方法とそれぞれの特徴
VOCを収集する方法は、主に次の4つに分類できます。
- 顧客からの問い合わせ
- アンケート/インタビュー
- SNS/レビュー
- 購入履歴/行動ログ
自社に合ったVOC分析をおこなうためにも、それぞれの特徴や違いを確認しておきましょう。
顧客からの問い合わせ
VOCの収集方法としてのコンタクトセンターは、顧客からの直接的なフィードバックを受け取る重要な手段です。電話、メール、チャットなどの複数のチャネルを通じて顧客の声を収集します。集めた商品やサービスに関する意見、感想、クレームを分析し、サービス改善や新商品開発、マーケティング戦略の策定などに活用します。
メリット
【直接顧客の意見を収集できる】
コンタクトセンターは顧客からの直接的な意見や感想を収集するため、リアルタイムでのフィードバックが得られます。
【問題の深掘りができる】
双方向のコミュニケーションにより、顧客の問題点を詳細に理解し、真因を探ることができます。
デメリット
【データを分析しにくい】
音声データが中心となるため、効率的な分析には音声をテキスト化するツールなどの活用が必要となります。
【ネガティブなフィードバックの対応が必要】
クレームなどのネガティブなフィードバックに対して、迅速かつ適切な対応が必須となります。
アンケート/インタビュー
アンケートやインタビューも、顧客の意見や要望を聞ける手段です。アンケートはメールやWebで配信し、顧客自身に回答してもらいます。インタビューは電話や対面などでおこない、顧客と対話しながら回答してもらう形式です。
メリット
【顧客の声を正確に把握できる】
顧客に直接質問をすることで、顧客の意見や要望を正確に知ることができます。顧客のニーズや問題点を深く掘り下げることも可能です。
【質問の内容や対象を自由に設定できる】
調査の目的に合わせて対象者を絞ったり、質問の内容や回答の形式を変えられるなど、自由度が高いのが特徴です。
デメリット
【回答率が低い】
顧客にアンケートやインタビューに協力してもらうのは簡単なことではありません。顧客の興味や関心を引き、回答のメリットを伝えることが必要です。また、回答に時間や手間がかかると、顧客の負担になります。
【質問の作成や分析に手間がかかる】
顧客に聞く質問は、明確でわかりやすく、回答を誘導するような偏り(バイアス)のないものでなければなりません。質問の作成には専門的な知識や技術が求められるほか、回答の集計や分析にも多くの時間や労力が必要です。
SNS/レビュー
SNS・レビューの特徴は、顧客が自発的に投稿することで商品やサービスの感想や評価を知れることです。ソーシャルメディアや口コミサイトを活用します。
SNSやレビューの具体的なメリット・デメリットについては、以下を見てみましょう。
メリット
【顧客の感情や動機を理解できる】
顧客が自発的に投稿することで、リアルな感想や評価を知ることができます。満足度や不満度、感情や動機なども分析できます。
【大量のデータを収集できる】
SNSやレビューサイトは多くの顧客が利用しているため、大量のデータを収集できます。顧客の嗜好やトレンド、セグメントの分析にも活用可能です。
デメリット
【感想や評価に偏りがある】
SNSやレビューサイトの投稿は、顧客の自発的なものです。そのため、顧客の声に偏りが生じる可能性があります。感想や評価は個人的な主観や感情に基づいたものであることも多く、一般的な顧客とは異なる傾向や特徴を持つ場合もあるでしょう。
【分析までのコストが大きい】
アンケートやインタビューなどと違い、SNSやレビューでは自社が求める情報や要件を設定することが困難です。また、対象となるデータが膨大であるために人手を使って収集・分析すると、コストがかかります。
購入履歴/行動ログ
購入履歴/行動ログを通じて、顧客が購入した商品やサービスの履歴や行動の記録をたどることで、ニーズや思考を分析できます。購入履歴・行動ログには次のようなメリットとデメリットがあります。
メリット
【顧客の実際の行動を追跡できる】
商品やサービスを利用した顧客の実際の行動を知ることができます。同時に購買パターンや利用頻度、離脱率などの分析も可能です。
【客観的なデータを収集できる】
顧客の行動は、意見や感想に比べて、実際のニーズや問題点を反映するため、信頼性の高いデータとして利用できます。
デメリット
【意見や感想の背景や意味を把握できない】
購買履歴や行動からは、意見や感想の背景や意味を把握できません。なぜそのような行動をとったのか、どのような感情や動機があったのか、どのような価値観やライフスタイルを持っているのかなどは知ることができないため、アンケート・インタビューなど他の分析手段との併用が必要になるでしょう。
【プライバシーの問題がある】
購買履歴や行動は、顧客のプライバシーに関わる情報を含むことがあります。購買履歴や行動を収集する際は、個人情報の保護や管理方法などを確認することが必要です。プライバシーの問題に対処しておくことは、リスクヘッジの観点から重要な事項といえるでしょう。
VOCを分析するためのステップ
続いて、VOCの分析ステップを見ていきましょう。VOC分析には次の4つのステップがあります。
- 整理と分類
- 要約と抽出
- 分析と解釈
- 可視化と報告
ここからは、それぞれのステップを詳しく説明します。
VOCの整理と分類
VOCの整理と分類のステップでは、VOCの全体像を把握します。VOCの整理と分類には次のポイントがあります。
【カテゴリーに分ける】
VOCをカテゴリーに分けることで、構造や傾向を明らかにできます。例えば、商品やサービスの機能や品質、価格やコスト、利便性や使いやすさ、サポートやアフターサービスなどのカテゴリーに分類するとよいでしょう。
【量や質を評価する】
VOCの量や質を評価すると、VOCの重要度や優先度が判断できます。評価の指標には、VOCの数やそれぞれのカテゴリーの割合、頻度や新鮮度、信頼性や客観性などがあります。
VOCの要約と抽出
VOCの要約と抽出のステップでは、VOCの共通点や問題点を見つけます。VOCの要約と抽出をおこなう際は次の2つをおこないましょう。
【共通点や相違点を見つける】
VOCの要約と抽出をおこなうことで内容を整理できます。共通点や相違点は、顧客のニーズや問題点、満足度や不満度、感情や動機などを比較・対比することに役立ちます。
【ニーズや問題点を明らかにする】
共通点や相違点を整理すると、VOCの背景や意味を理解できるようになります。顧客が何を求めているのか、何に困っているのか、何に満足しているのか、何に不満を感じているのかなどを抽出できるでしょう。
VOCの分析と解釈
続いて、VOCの分析と解釈をおこないます。VOCの分析と解釈のポイントは以下のとおりです。
【原因や影響を分析する】
深層的な理由や結果を把握するには、物事の因果関係の考察が不可欠です。テキスト解析ツールや統計ソフトウェアを活用することで、データを可視化し、パターンや傾向を識別しやすくなります。
【感情や動機を解釈する】
顧客が「どのような感情を抱き」「どのような価値観やライフスタイルを持っているのか」といった観点を持ち、顧客がどのような動機で行動しているのかを解釈します。テキスト分析ツールなどを活用し、言葉の選択や文脈から感情を読み取るのもひとつの方法です。
VOCの可視化と報告
VOCの可視化と報告とは、解釈したVOCを可視化し報告することで、VOCの結果を共有するステップです。VOCの可視化と報告には、次のポイントがあります。
グラフや表などで可視化する
VOCの分布や比較、関係性などをグラフや表で示すと、VOCの傾向やパターンを視覚的に表現できます。
結論や提言を報告する
VOCの分析結果から導き出された結論や提言を報告書やプレゼンテーションなどで示すと、VOCの活用方法や方針を共有できます。
そして、VOC分析は一度きりではなく、継続的におこなうことが大切です。さまざまな要因から顧客のニーズは不定期に変化するため、定期的な分析をおこないながらも顧客の声に耳を傾け続け、顧客満足度の向上に努めましょう。
VOC分析を効率的におこなうツールとサービス
VOC分析を効率的におこなうには、適切なツールやサービスの活用が重要です。 ここではVOC分析に役立つツールやサービスの種類と特徴を見ていきましょう。
アンケートツール
顧客にアンケートを送信し、回答を収集できるツールです。 アンケートの作成や配信、集計や分析が容易で、多くの顧客にアンケートを実施できるのがメリットです。
テキスト分析ツール
レビューやSNSなどのテキストデータを分析できるツールです。テキストデータの分類や要約、感情分析やトピック抽出などが可能で、大量のテキストデータを高速に処理できるのがメリットです。
AIチャット
AIチャットとは、人工知能(AI)を搭載したチャットボットのこと。自然言語処理や機械学習などの技術を活用してテキストや音声入力に対応できるほか、顧客の言葉を分析して意図や感情を理解し、適切な回答を生成してくれます。学習によって精度が向上し、あらかじめ設定されていない自由質問にも回答できるため、問い合わせ自動化にも役立ちます。
また、気軽に意見を入れてもらいやすく、履歴をVOC分析に活用しやすいのもAIチャットならではの魅力です。
その他
上記のほか、コールセンターの通話内容の音声認識など、多様なサービスがあります。 これらのサービスは、顧客とのコミュニケーションを円滑にし、顧客の声をリアルタイムに収集できるのが特徴です。
まとめ
VOC分析は、顧客のニーズや満足度を把握し、商品やサービスの改善に活かすための手法です。 VOC分析を効率的におこなうには、アンケートやテキスト分析、AIチャットなどのツールやサービスを活用するとよいでしょう。これらのツールは顧客の声を簡単に収集・分析できるだけでなく、顧客とのコミュニケーション向上にもつながります。
オプテージが提供する「Enour AI ChatSupport(AIチャット)」は、問い合わせ対応の自動化だけでなくVOCの収集にも役立ちます。またオペレーター支援サービスの「Enour CallAssistant(エナー コールアシスタント)」では、そのままではVOC用データとして利用しにくい音声データのリアルタイムテキスト化に加え、自動要約機能により顧客の困りごとや問い合わせの趣旨が容易に把握できるようになるため、VOCを進めやすくなります。これらのツールをご活用いただき、社内でのVOC分析を進めてみてください。
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