IaaSとは?導入前に知っておきたい基礎知識と注意すべきポイントについて

IaaSとは?導入前に知っておきたい基礎知識と注意すべきポイントについて

近年、クラウドコンピューティングの利用が急速に拡大しており、特にIaaS(Infrastructure as a Service)は、柔軟性とスケーラビリティを兼ね備えた重要なサービスとして注目されています。
本記事では、IaaSの基本的な仕組みやPaaS・SaaSとの違い、普及が進む背景や導入前に知るべき注意点について紹介します。

Contents

IaaSの概要

IaaSの概要

ここでは、IaaSの基本情報や、日本におけるIaaS市場の現状について紹介します。

IaaSとは?

IaaS(イアース/アイアース)は「Infrastructure as a Service」の略で、「サービスとしてのインフラ」を意味します。これはクラウドコンピューティングの一種で、企業が自社でサーバやネットワーク機器を保有する代わりに、インターネットを通じて仮想サーバやネットワーク、ストレージなどのインフラ機能を利用できるサービスです。IaaSを利用することで、初期費用を抑えながら柔軟かつスケーラブルなインフラを構築できます。

似たようなサービスとして「レンタルサーバ」があります。レンタルサーバは、導入が簡単で運用の手間が少ない一方で、提供される設定や機能に制限があることが多く、利用用途が限定されることがあります。一方、IaaSはプロバイダーが提供する仮想サーバやネットワーク、ストレージなどのリソースを選択して自由に構成できるため、企業のニーズに応じた柔軟な運用が可能です。そのため、事業規模や利用目的に応じて、どちらを選ぶかを慎重に検討することが重要です。

IaaSの現状

日本におけるパブリッククラウドサービス市場は、新型コロナウイルス感染症の世界的流行によるリモートワークの普及や、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進などを背景にますます拡大しています。

特に、大手クラウドサービスプロバイダーであるAWS、Microsoft Azure、Google Cloud Platform(GCP)の利用が顕著です。MM総研「国内クラウドサービス需要動向調査」(2022年6月時点)によると、なかでもAWSは国内の利用率が50%を超えていることから、その高い人気がうかがえます。

国内クラウドサービス需要動向調査 出典:MM総研「国内クラウドサービス需要動向調査」(2022年6月時点)

このように、IaaS市場は今後も拡大を続け、企業のITインフラ戦略において重要な役割を担うでしょう。

PaaS・SaaSとの違い

PaaS・SaaSとの違い

IaaSと似た言葉に「PaaS」「SaaS」があります。ここではIaaSとPaaS、SaaSとの違いについて紹介します。

項目 IaaS PaaS SaaS
サービス内容 サーバやネットワークなどのインフラ基盤を提供 アプリケーション開発に必要なプラットフォームを提供 クラウドを活用したサービスを提供
代表的なサービス AWS、Microsoft Azure、Google Cloud Platform Google App Engine、Azure App Service、Heroku Microsoft 365、Google Workspace、Salesforce、Slack
カスタマイズ性

PaaSとは

PaaS(パース)は「Platform as a Service」の略で、アプリケーション開発や実行に必要なプラットフォームをインターネット経由で利用できるサービスです。ユーザーは開発環境や実行環境を簡単に利用できるため、インフラの構築や管理にかかる負担を大幅に軽減できます。これにより、開発者はアプリケーションの開発作業に集中できるのが大きな特徴です。

代表的なPaaSに、Google App Engine、Azure App Service、Herokuなどがあります。これらのサービスは、迅速な開発を可能にするための機能が充実しています。ただし、IaaSと比較するとカスタマイズ性に制約があるため、提供された環境内での利用に限られる場合があります。

PaaSは、IaaSと比較して高度な技術や知識を必要とせず、管理の手間を大幅に削減できる点が魅力です。特に、インフラの管理を最小限に抑えたい開発などにおすすめのサービスとなっています。

SaaSとは

SaaS(サース/サーズ)は「Software as a Service」の略で、インターネット経由でソフトウェアやアプリケーションを利用できるサービスです。ユーザーはソフトウェアをインターネットを通じて利用するだけで、インフラやソフトウェアの管理は必要ありません。SaaSは、使いやすさが重視されており、技術的な設定や導入作業はほとんど必要ありません。

代表的なSaaSに、Microsoft 365、Google Workspace、Salesforce、Slackなどがあります。これらのサービスは、企業や個人の生産性向上に貢献し、手軽に利用できるため、ITスキルがなくても幅広いユーザーに支持されています。

IaaSと比較すると、SaaSは利用のハードルが低く簡単に導入できる一方で、カスタマイズ性に制約がある場合もあります。

IaaSの普及が進む背景

IaaSの普及が進む背景

IaaSが普及している背景にはどのような理由があるのでしょうか。ここでは、3つのポイントに分けて紹介します。

コスト削減につながる

IaaSは、ハードウェアを自社での購入や保有・管理する必要がないため、初期費用を大幅に削減できるのが大きな特徴です。オンプレミス環境ではサーバやネットワーク機器の購入や設置が必要ですが、IaaSではその負担がなく、必要なインフラをインターネット経由で手軽に利用できます。

また、開発プロジェクトが終了した場合でも、IaaSを解約するだけで完了し、余分な機器が手元に残る心配がありません。これにより、撤退時のコストや手間も最小限に抑えられます。さらに、IaaSには利用状況に応じた従量課金制を採用しているサービスも多く、必要な分だけ支払うことで無駄な運用コストを抑えることが可能です。

ハードウェアの管理や更新が不要

IaaSを利用する場合、ハードウェアの管理や更新作業はクラウドサービスプロバイダーが対応します。この仕組みは「責任共有モデル」と呼ばれ、ユーザーとプロバイダーの管理範囲が明確に分けられているのが特徴です。これにより、企業はハードウェアの保守や更新にかかる手間を省き、アプリケーションやサービスの開発に専念できます。

また、IaaSではファームウェアやドライバーの管理もプロバイダー側で行われるため、ユーザーはセキュリティパッチの適用やハードウェアが原因の障害対応などをする必要がありません。これにより、システム全体の安定性とセキュリティが確保される点も大きなメリットです。

BCP対策に活用できる

IaaSは、企業のBCP(事業継続計画)対策に有効な手段としても注目されています。IaaSでは、サーバがクラウドサービスプロバイダーの施設内に設置され、管理もプロバイダーが行います。このため、自社の物理的な設備に依存せず、遠隔地にある安全なデータセンターを利用することで、自然災害やトラブルが発生してもシステムの稼働を確保できます。

また、IaaSの特性を活かしてシステムを冗長化することで、データセンターが災害で停止しても、別の拠点からデータやサービスを迅速に復元可能です。これにより、システムのダウンタイムを最小限に抑え、事業を継続できる環境を構築できます。

IaaS導入前に知っておくべき注意点

IaaS導入前に知っておくべき注意点

ここまで、IaaSの普及が進む背景について解説してきましたが、導入前に知っておくべき重要なポイントがあります。ここでは、それらを3つのポイントに分けてご紹介します。

セキュリティ対策の徹底

IaaSは、社外ネットワーク上にあるため、サイバー攻撃の標的になりやすい特性があります。そのため、基本的なネットワーク監視に加えて、構築したアプリケーション側のセキュリティ対策も重要です。具体的には、最新のセキュリティパッチの適用や、必要なセキュリティソフトの導入を徹底する必要があります。

また、一部のクラウドサービスプロバイダーは、セキュリティパッチの適用状況や、利用中サービスのセキュリティ対応状況を可視化できるツールを提供しています。これらのツールを活用することで、セキュリティリスクを効果的に管理し、迅速な対応が可能です。

IaaSを安全に運用するためには、プロバイダー任せにせず、自社でのセキュリティポリシーをしっかりと定め、適切な運用を行うことが欠かせません。これにより、安定した運用環境を確保しつつ、リスクを最小限に抑えることができます。

ポリシーの設計

IaaSを利用する際、仮想マシンやOSのセキュリティ対策はユーザーが主体的に行う必要があります。具体的には、ファイアウォールやアンチウイルスソフトの導入、パスワードやアクセス権の管理といった広範囲のセキュリティ対策が求められます。これらは、クラウドサービスプロバイダーが対応する部分とは異なり、ユーザーの責任範囲に含まれます。

そのため、IaaS導入時には、自社のセキュリティポリシーやルールをクラウド環境にも適用できるように設計することが重要です。明確なポリシーがない場合、運用方針が曖昧になり、セキュリティ事故やシステムの可用性低下といったリスクを招く恐れがあります。

適切なポリシー設計を行うことで、IaaSの特性を活かしながら安全かつ効率的な運用が可能になります。事前の準備が、トラブルの予防とシステムの信頼性向上につながります。

人材の確保

IaaSは、PaaSやSaaSと比べて高度な専門知識を必要とします。IaaSはインフラ機能のみを提供するため、導入しただけではシステムの利用や開発は行えません。導入後にOSや必要なソフトウェア、ツールをインストールし、自社の目的に合った開発環境を構築する作業が求められます。このように、IaaSは自由度が高い一方で、環境構築や管理には自力で対応するスキルが必要です。

専門知識を持つ人材がいない場合は、人材育成や採用を検討することが不可欠です。しかし、IT人材不足が深刻化している現状では、人材確保が難しいケースも少なくありません。このような場合には、ICT環境の運用管理や保守を専門に行う「マネージドサービス」を活用するのも有効です。

活用することで、IT人材不足による影響を最小限に抑え、運営を円滑に進めることが可能になります。

まとめ

まとめ

この記事では、IaaSの基本情報やPaaS・SaaSとの違い、普及が進む背景や知っておくべき注意点について紹介しました。

IaaSは、クラウドコンピューティングのなかでも、柔軟性やスケーラビリティを備えた重要なサービスとして注目されています。情報社会の進展に伴い、企業のITインフラ戦略におけるIaaSの役割はますます大きくなるでしょう。

オプテージでは、ハードウェアの運用保守やIT人材不足など、企業が直面する多様な課題を解決する「クラウドソリューション」を提供しています。設計・構築から監視・運用保守までトータルで対応し、クラウド運用に不慣れな企業や人材不足にお悩みの企業をサポートします。また、クラウドとデータセンターを組み合わせたハイブリッドクラウドなど、企業のニーズに応じた最適なソリューションの提案も可能です。

IaaSなどのクラウドサービスについてお悩みがありましたら、ぜひお気軽にご相談ください。

◎製品名、会社名等は、各社の商標または登録商標です。

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著者 OPTAGE for Business コラム編集部

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