- 公開日:2025年01月14日
「なぜなぜ分析」で組織内の問題を解決!具体例や分析のコツを紹介
発生した問題事象に対して「なぜ」という問いかけを繰り返し、根本の原因を明らかにする「なぜなぜ分析」。実践すれば問題の再発防止や改善に役立てられますが、誤ったやり方をしてしまうと、根本原因にたどりつかず問題が再発する場合もあります。
そこで本記事では、なぜなぜ分析を行うメリットをはじめ、具体的なやり方や事例、実施する際のコツを紹介します。なぜなぜ分析は個人から組織まで幅広く活用できる分析手法なので、組織内の問題解決に役立ててみてください。
なぜなぜ分析とは
なぜなぜ分析とは、「なぜ」の問いかけを繰り返すことで問題の原因を探ることができるフレームワークです。
トヨタ自動車が製造過程で生じる問題の原因究明・再発防止を目的に行っていた分析手法で、問いかけを5回繰り返すことから「5Whys」とも呼ばれています。なぜなぜ分析は製造や建設、ITなどの業界で主に活用されていますが、業界を問わず取り入れられるのが特徴です。
なお、問いかけを繰り返す回数に厳密な決まりはありません。5回前後が適度な回数と考えられていますが、分析する問題によっては問いかけの数が増減することもあります。
企業が「なぜなぜ分析」を行うメリット
業務の遅延やミス、顧客とのトラブルなど、組織内で発生する問題にはさまざまなものがあります。こうした問題の原因究明・再発防止のため、多くの企業でなぜなぜ分析が実施されている理由をご存知でしょうか。
ここからは、企業がなぜなぜ分析を行う3つのメリットを解説します。
原因の究明・対策を行える
なぜなぜ分析を通じて、問題の根本的な原因を明らかにすることで、企業は再発防止と改善に取り組めます。
例えば、工場の機器が故障してしまったケースについて考えてみましょう。ここで原因を深く探らなければ、機器の修理や買い替えといった対処をすることになるかもしれません。しかし、故障の原因が過負荷によるオーバーロードだった場合、修理や買い替えを行っても再発する可能性が高く、根本的な解決はできません。
その点、問題の原因を深く掘り下げるなぜなぜ分析を行えば、事象の連鎖を把握できます。何度も問いかけを繰り返すことで、原因の究明・対策ができるほか、類似のトラブルを未然に防ぐことも可能です。
幅広いシーンで活用できる
なぜなぜ分析は製造業で考案された分析手法ですが、その汎用性の高さからビジネス全般やプロジェクトマネジメントにおける課題解決にも活用できます。
例えば、顧客満足度の向上に役立てることが可能です。顧客からのクレームや満足度が低い評価について原因を深掘りすることで、製品・サービスの改善に向けた具体的な施策を考案できます。ほかにも、業務プロセスの無駄や非効率の原因を探り、ワークフローを再構築すれば、業務効率化を図ることもできるでしょう。
このように、なぜなぜ分析はビジネスやプロジェクト管理など、幅広い場面で活用できるのが特徴です。
チームビルディングに役立てられる
なぜなぜ分析はチームビルディングにも役立ちます。実際に生じた問題に対してチームでなぜなぜ分析を行えば、メンバー間のコミュニケーションを促すことができ、チーム全体の連携強化を図れます。
メンバーそれぞれが意見を出し、さまざまな視点から原因を探れば、原因究明と同時に相互理解を深められるでしょう。また、通常の会議では問題発生の原因が個人に言及されることもありますが、なぜなぜ分析では事実に基づいた分析を行うため、人ではなく原因に焦点を当てられるのもポイントです。
なぜなぜ分析のやり方【4ステップ】
なぜなぜ分析は「なぜ」という問いかけを何度も繰り返すことで根本の原因を探る手法です。適切なやり方を把握しておかなければ、うまく分析できない場合もあります。
組織の活性化や問題解決になぜなぜ分析の活用を検討している方は、ここで紹介する4つのステップを参考にしてみてください。
1.分析する問題を定義する
なぜなぜ分析を行う際は、発生した問題にすぐ「なぜ」と問いかけをしてはいけません。まずは解決したい問題を具体的に定義することが重要です。
仮に「配送中にトラブルが発生した」「売り上げが低い」など、抽象的な表現で問題を定義すると、根本の原因が見つかりにくく、適切な対策を講じることはできないでしょう。
分析する問題を定義する際は、問題の内容や程度をできるだけ具体的に設定することが大切です。
2.「なぜ」の問いかけを繰り返す
問題を具体的に定義したあとは、根本の原因が特定できるまで「なぜ」の問いかけを繰り返していきましょう。分析する問題によっては、複数の原因が出てくるケースも珍しくありません。さまざまな要素が絡み合っている可能性もあるため、複数の原因が出た場合は分岐させてそれぞれの原因を深掘りしていきます。
なお、なぜなぜ分析での問いかけでは、事象のつながりを飛ばさないように連鎖してつなげることが大切です。事象を飛躍させすぎると分析の精度が低下する可能性があります。細かく分析していきましょう。
3.根本原因の解決法を策定する
根本の原因を特定できたら、問題の解決や再発を防止する方法を策定します。ここで重要なのは、具体的かつ実現可能な方法であるかどうかです。問題解決のために何をどうするかが明確でなければ、問題が再発してしまったり、時間的・金銭的コストがかかったりしてしまいます。
なぜなぜ分析でうまく原因を究明できたとしても、解決策で失敗するケースもあるため、実行可能で具体的な方法を策定しましょう。
4.解決策の実施・検証を行う
最後は解決策を実行に移しますが、早急に実行に移してしまうと該当の現場が混乱する可能性があります。解決にあたる責任者を決めたり、必要なリソースを確保したりと、綿密な計画を立てたうえで実施するのがおすすめです。
また、解決策を実施したあとは評価・検証も行いましょう。問題が解決されれば仕組みとして取り入れ、解決できなかったり改善の余地があったりする場合は再び分析をします。
なぜなぜ分析を一度行うだけでは問題の根本的な原因を明らかにできない可能性もあります。仮説・実行・検証を通じて解決策の精度を高めていくことが大切です。
【業界別】なぜなぜ分析の事例
ここからは、なぜなぜ分析の事例を3つ紹介します。なぜなぜ分析の進め方をより具体的に理解するためにも、それぞれ確認しておきましょう。
IT業界の場合
【問題点:月に一回以上の頻度でシステム障害が起きている】
- 「なぜ」システム障害が頻発しているのか?
→システムの定期的なメンテナンスが行われていなかったから
- 「なぜ」定期メンテナンスが行われていなかったのか?
→メンテナンススケジュールが適切に管理されていなかったから
- 「なぜ」スケジュール管理が適切に行われていなかったのか?
→管理者がスケジュール策定に十分な時間を割けていなかったから
- 「なぜ」管理者がスケジュール策定に時間を割けなかったのか?
→人手不足で、複数のタスクを掛け持ちしていたから
- なぜ人手不足やタスクの掛け持ちが発生しているのか?
→人材確保や業務の効率化が進んでいなかったから
このように、人員の不足や業務量の多さが原因と判明した場合、人員の増強・育成やメンテナンススケジュールの策定、外部委託の活用などを解決策として検討してみてもよいでしょう。
飲食業界の場合
【問題点:2023年から食品ロスが増加傾向にある】
- 「なぜ」2023年から食品ロスが増えたのか?
→材料の仕入れ量が需要に合っていなかったから
- 「なぜ」仕入れ量と需要が合っていないのか?
→アフターコロナの売り上げ予測が不正確だったから
- 「なぜ」売り上げ予測が不正確なのか?
→コロナ禍以前のデータや市場動向を活用していなかったから
- 「なぜ」データや市場動向を活用していないのか?
→データ分析のスキルやツールの導入が不足していたから
- 「なぜ」データの分析スキルやツールが不足しているのか?
→研修やIT投資に対する意識が低かったから
飲食業界における食品ロスは、SDGsの観点からもできるだけ抑えたい問題です。上記の例では、需要予測システムや在庫管理システムを導入したり、廃棄を減らす意識を向上させる研修を実施したりといった解決策が考えられます。
運送業界の場合
【問題点:荷物の破損が頻繁に起きる】
- 「なぜ」荷物の破損が頻繁に起きるのか?
→荷物の取り扱いが丁寧でなかったから
- 「なぜ」荷物の取り扱いが丁寧ではないのか?
→作業員が急いで仕事をしていたから
- 「なぜ」急いで仕事をするのか?
→配送スケジュールに余裕がなかったから
- 「なぜ」配送スケジュールに余裕がないのか?
→過剰な案件を受注してしまったから
- 「なぜ」過剰に受注しているのか?
→営業部門と現場部門のコミュニケーションが不足していたから
運送業で荷物の破損が頻繁に起きている例では、根本の原因が営業と現場のコミュニケーション不足だと判明しました。これを解決するために、まずは両部門で定期的にミーティングを開くことから始めてもよいかもしれません。
話し合いにより、配送スケジュールの見直しや破損を防ぐ設備の導入など、次のアクションが見つかる可能性があります。
なぜなぜ分析を行う際のコツ
最後に、なぜなぜ分析で失敗しないためのコツを3つ紹介します。精度の高い分析を行うためにも、ここにまとめたポイントを把握しておきましょう。
分析の起点や要因を明確にする
なぜなぜ分析は事実に基づいて分析を進めていく必要があるため、分析の起点や要因を明らかにすることを意識しましょう。
分析の起点や要因が曖昧なままなぜなぜ分析を進めた場合、問題の根本原因も漠然としたものになってしまいます。例えば、売り上げが下がった原因を「顧客の減少」だと漠然ととらえてしまうと、具体的な解決策を導き出すのは難しくなるでしょう。
そのため、なぜなぜ分析を行うときは「特定の時間帯に来客数が減っている」「新商品の売れ行きが低迷している」など、具体的な原因を探ることが重要です。
「個人のミス」で終わらせない
なぜなぜ分析を行うときは個人のミスに帰着せず、組織としての体制づくりにつながる原因究明・改善策の提案を行うことが肝心です。仮になぜなぜ分析で個人のミスに帰着してしまうと、当事者のみに責任を追及することになり、別の人が同様のミスをしてしまう可能性があります。
たしかに業務上のミスは改善の必要があるものの、なぜなぜ分析では犯人探しのようなことはせず、「なぜ問題が起きてしまったのか」「どうすれば防げたのか」など、再発を防ぐ体制づくりにつなげることが大切です。
対処可能な原因に帰結する
なぜなぜ分析を進めていると、個人や組織では解決できない原因に帰結してしまうことがあります。
例えば、「売り上げが少ない」という問題をなぜなぜ分析し、「今年は景気が悪いから」と外部要因に帰結してしまうと、個人や組織では対処できない問題に行き着き、改善策を実行に移すことができません。
そのため、上記の例では「商品の魅力が顧客に伝わっていない」「特定の市場で競合他社の商品に負けている」など、対処可能な課題にたどりつくようにしましょう。
なぜなぜ分析で組織内の問題解決に取り組もう
「なぜ」の問いかけを繰り返し、問題の根本原因を探る「なぜなぜ分析」。自動車メーカーのトヨタで実践されて有名になった分析手法ですが、業界やシーンを問わず活用できるのが特徴です。そのため、組織内で発生した問題を解決することはもちろん、業務効率化やチームビルディングなどを目的に、なぜなぜ分析を行ってみてもよいでしょう。
ただし、なぜなぜ分析は解像度の高さも重要なポイントになります。問題の定義から解決策の提案に至るまで、できるだけ具体的にする必要があることを把握しておきましょう。
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