- 公開日:2024年10月17日
ゼロトラストネットワークアクセス(ZTNA)とは?|導入課題やメリット、課題について解説
ゼロトラストネットワークアクセスは、現代のビジネス環境において注目を集める新しいセキュリティ対策です。従来の境界型セキュリティとは異なり、すべてのアクセスを疑い、常に検証することを基本としています。
本記事では、ゼロトラストネットワークアクセスの概要や普及の背景、そして導入によるメリットと課題について解説します。
ゼロトラストネットワークアクセス(ZTNA)の概要
ここでは、ゼロトラストネットワークとゼロトラストネットワークアクセス(ZTNA)の概要について紹介します。
ゼロトラストネットワークの考え方
ゼロトラストネットワークとは、『すべてのアクセスや通信を信頼しない』という考え方に基づく新しいネットワークモデルです。
従来のセキュリティ対策では、企業内部のネットワークは比較的安全と見なされることが多かったのですが、ゼロトラストではそのような考え方を捨て、すべてのアクセスを『疑う』ことから始めます。ネットワーク内外のどのデバイスからのアクセスも、たとえ社内のものであっても自動的に信頼することはありません。
かわりに、アクセスが行われるたびに、その通信が安全であるかどうかをチェックし、必要なログを記録します。これにより、不正アクセスや予期しない通信が行われるリスクを減らし、ネットワーク全体のセキュリティを強化することができます。
ゼロトラストネットワークアクセス(ZTNA)とは
ゼロトラストネットワークアクセス(ZTNA)は、ゼロトラストネットワークの考え方に基づいた新しいリモートアクセスの方法として注目されています。
従来、リモートアクセスの際に利用されてきたVPNは、従業員が企業内の情報資産に外部からアクセスする際、セキュリティを保つための仕組みとして利用されてきました。しかし、VPN機器の脆弱性を狙った不正アクセスが急増していることなどを背景にVPNに変わる新しい技術が必要になってきました。
ゼロトラストネットワークアクセスは、利用者がアクセスするたびに評価を行い、必要に応じてアクセスを制御することで、より高いセキュリティを実現します。これにより、認証情報の漏えいによる不正アクセスやサイバー攻撃などのリスクを大幅に軽減できるため、近年、多くの企業で導入が進んでいます。
従来の境界型セキュリティとの違い
境界型セキュリティとは、ネットワークの内側と外側を明確に区別し、外部からのリスクを防ぐためのセキュリティモデルです。このモデルでは、ネットワークの外部を『危険』と見なし、内部を『安全』とすることで、外部からの不正アクセスや攻撃を防ぐことを目的としています。例えば、社内ネットワークと外部ネットワークの「境界線」にファイアウォールやIPSなどのセキュリティ機器を配置するなどの対策を施し、問題ある通信を検知したら、通信を遮断するなどの方法があります。
ゼロトラストネットワークでは、ネットワーク内外の区別に依存せず、すべてのアクセスを信頼せずに逐一検査することで、セキュリティを強化します。ただし、ゼロトラストの考え方に基づくと、ネットワークの境界にファイアウォールやデフォルトゲートウェイなどのセキュリティ機器が不要かというと、そうではありません。
そのため、境界型セキュリティとゼロトラストセキュリティを、自社のネットワーク利用目的や環境に応じて相互に補完することで、さらなるセキュリティ強化につなげることができます。
ゼロトラストネットワークが注目される理由と普及の背景
ここでは、ゼロトラストネットワークがなぜ注目されているのかその理由と普及が進む背景について紹介します。
コロナ禍によるリモートワークの普及
新型コロナウイルス感染防止対策として、リモートワークが急速に普及し、多くの企業で新たな働き方として定着しました。
リモートワークでは、自宅やサテライトオフィスなど、社外から社内ネットワークに常時アクセスする必要があります。この状況により、社外と社内のネットワークの境界が曖昧になり、従来の境界型セキュリティでは十分なセキュリティ環境を提供することが難しくなりました。
その結果、ネットワークの内外を問わず、すべてのアクセスを疑い、検証するゼロトラストネットワークへの関心が高まるようになりました。
クラウドサービスの利用増加
近年、多くの企業がクラウドファーストをITシステムポリシーとして採用し、社内情報や個人情報をはじめ、メールやスケジューラーなどのアプリケーションまでクラウド環境に移行する動きが加速しています。
クラウドサービスは、データの管理やアクセスを柔軟に行える一方で、許可されていないクラウド環境へのアクセスや、不正利用によるデータの盗難や改ざんといったリスクも伴います。
こうしたリスクへの対応策として、ゼロトラストネットワークの考え方を導入することで、クラウド環境でのセキュリティが強化され、企業は安心してクラウドサービスを利用することができます。
内部不正によるセキュリティ被害の増加
近年、従業員の退職時によるデータ持ち出しや情報漏えいが社会問題になっています。
IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)の報告によると、2016年は『誤操作、誤認等』が21.2%で最も多い理由であったのに対し、2020年は『中途退職者』による漏えいが36.3%と最も多くなりました。
出典:「営業秘密の漏えいルート」「企業における営業秘密管理に関する実態調査2020」報告書(IPA(独立行政法人 情報処理推進機構))
社内ネットワークを信頼する境界型セキュリティでは、このような内部不正による情報漏えいへの対応は非常に困難ですが、ゼロトラストネットワークでは組織が所有するデバイスのみでなく、組織に接続する個人所有のデバイスに対しても監視を行うため、有効な手段となっています。
社外企業とのデータ共有の増加
近年、PPAPの廃止やマルウェア『Emotet』対策の一環として、社内や取引先などの外部とのデータ共有にオンラインストレージを導入する企業が増加しています。
オンラインストレージは、手軽にファイルを共有できる便利なツールですが、データ漏えいや不正アクセスのリスクも伴います。特に、社外とのデータ共有が増えると、外部からの攻撃に対する防御がますます重要になります。そのため、従来のセキュリティ対策に加えて、より高度な保護が求められるようになりました。
このような状況を背景に、ゼロトラストネットワークは、外部とのデータ共有においても信頼性を向上させる手段として評価され、多くの企業でその必要性が認識されています。
ゼロトラストネットワークアクセス導入における3つのメリット
ここまでゼロトラストネットワークについて解説してきましたが、実際に導入することで得られるメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。ここでは、ゼロトラストネットワークアクセス導入のメリットを3つ紹介します。
セキュリティの向上
ゼロトラストネットワークアクセスを導入することで、アプリケーションやデータへのアクセス時に、利用者ごとに権限が細かく管理されます。そのため、たとえ認証情報が漏えいしたとしても、許可されたリソース以外へのアクセスが制限され、被害を最小限に抑えることができます。
さらに、ゼロトラストネットワークアクセスはソリューション提供ベンダーのアクセスポイントを利用して通信を行うため、企業のVPNゲートウェイが外部にさらされるリスクがなくなります。これにより、不正アクセスからの保護が強化され、企業のセキュリティがいっそう向上します。
加えて、ゼロトラストネットワークアクセスと一緒にEDRやEPPなどのエンドポイントセキュリティを併用することで、デバイスレベルでのセキュリティも強化され、企業全体のセキュリティ対策がより堅固なものになります。
サイバーインシデント発生時の迅速な対応
ゼロトラストネットワークアクセスでは、すべての通信が常に監視され、その記録がログとして収集されます。このログを活用することで、サイバーインシデントが発生した際に、問題がどこで起きたのかを迅速に特定することが可能です。
攻撃が疑われる動きを検出した場合、該当する端末を即座にネットワークから隔離することができ、被害の拡大を未然に防ぐことができます。このような迅速な対応により、企業はサイバー攻撃に対してより強固な防御態勢を整えることができます。
認証やセキュリティポリシーの一元管理
ゼロトラストネットワークアクセスには、MFA(多要素認証)やSSO(シングルサインオン)などの認証・認可ポリシーを一元的に管理する機能が備わっています。この機能により、複数の業務環境やアプリケーションに対して一貫したセキュリティポリシーを適用することが可能です。これにより、利用者は必要な認証を簡単に行え、セキュリティを維持しながら業務効率を向上させることができます。
さらに、すべてのアプリケーションにMFAを適用することで、認証情報の漏えいリスクを大幅に軽減し、企業全体の安全性が向上します。ゼロトラストネットワークアクセスを活用することで、リスクマネジメントがより効率的になり、複雑なセキュリティ環境でも安心して運用できるようになります。
ゼロトラストネットワークアクセス導入における課題と注意点
ゼロトラストネットワークアクセスにはメリットもある一方で、デメリットも存在します。
ここでは、ゼロトラストネットワークアクセスの導入において知るべき課題と注意点について紹介します。
導入に時間とコストがかかる
ゼロトラストネットワークアクセスは、すべてのアプリケーションやシステムに対して細かい制御を行うため、社内のネットワークやシステム環境に合わせた準備が必要です。そのため、導入の初期段階から対応範囲が広がり、時間とコストがかかる場合があります。
ゼロトラストネットワークアクセスには、自社内で設備を整える『スタンドアロン型』と、必要な機能だけをサービスとして利用する『クラウドホスティング型』の2種類がありますが、多くの企業や組織は、設備を必要としないクラウドホスティング型を選んでいます。
スタンドアロン型は、オンプレミス環境のように自社で設備を揃えるため初期コストはかかりますが、自社の要件に合わせてセキュリティ強化や、ネットワーク環境などを構築しやすいメリットがあります。
一方、クラウドホスティング型は、自社で設備を整える必要がなく、必要な機能だけを効率的に利用できるため、導入にかかる時間とコストを抑えることが可能です。
企業にとってどちらのタイプが適しているかを慎重に検討することが推奨されます。
業務効率を下げる場合がある
ゼロトラストネットワークアクセスでは、アプリケーションごとに細かい認証や認可の設定が可能なので、高いセキュリティを保つことができます。しかし、短時間で認証が切れてしまう仕組みが多く、利用者は頻繁に認証をやり直さなければならないことがあります。このように、セキュリティが強化される一方で、認証手続きの煩雑さが業務効率の低下につながる場合があります。
この問題を解決する方法のひとつとして、シングルサインオン(SSO)の導入が考えられます。SSOを導入することで、一度のログインで複数の情報資産にアクセスできるようになり、認証手続きの煩わしさを軽減しつつ、業務効率を維持することが可能になります。
セキュリティレベルの設定の難しさ
ゼロトラストネットワークアクセスを導入する際、セキュリティ設定が過度に厳しすぎると、重要度の低いファイルにまでアクセス制限がかかり、業務の利便性が損なわれる可能性があります。そのため、企業のニーズや業務環境に合わせた適切なセキュリティレベルを設定することが重要です。
特に、導入直後は新たなセキュリティポリシーに対応するため、業務効率が一時的に低下することがあります。これを避けるためには、ゼロトラストネットワークアクセス導入による工数の増加や利便性の変化を事前にしっかりと検討し、バランスの取れたセキュリティ設定を行うことが求められます。
まとめ
この記事では、ゼロトラストネットワークアクセスの概要や普及の背景、そして導入によるメリットと課題について解説しました。
ゼロトラストネットワークは、社外だけでなく、すべてのネットワークやデバイスを『信頼できないもの』と見なす新しい考え方です。このアプローチは、保有する情報を守るうえ非常に重要であり、今後さらに普及すると見込まれています。
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ゼロトラストネットワークについてお悩みのことがありましたら、ぜひオプテージまでお気軽にご相談ください。
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