急激な円安で注目される「クラウド破産」とは?原因と対策を解説

急激な円安で注目される「クラウド破産」とは?原因と対策を解説

昨今、急激な円安が進行し、日本経済に大きな影響を与えています。特に、外資系クラウドを利用している企業では、クラウドサービスの利用料金が高額化し、企業のIT予算を圧迫する事態が発生しています。
この現象は「クラウド破産」と呼ばれ、多くの企業が対策に頭を悩ませています。本記事では、クラウド破産の原因と対策について詳しく解説するとともに、国産クラウドの利点を紹介。円安などに起因するクラウドコストの増大から企業を守る方法をお伝えします。

Contents

クラウド破産とは?

クラウド破産とは、クラウドサービスの利用料金が予期せず高額になることを指す俗語です。クラウドサービスは、柔軟性や拡張性といった多くのメリットがありますが、料金体系の理解不足やサービスの設定ミスなどから、想定外の高額請求が発生するケースがあります。

クラウド破産が発生すると、IT予算が圧迫され、他の重要な投資に影響を及ぼす可能性があります。また、金額の規模によっては、企業の財政に大きな打撃を与える場合もあります。クラウドサービスを活用して自社サービスを提供している場合は、サービス原価の高騰となり、サービス収支の悪化、価格競争力の低下へとつながる恐れもあります。

クラウド破産の主な原因とメカニズム

クラウド破産はどのような原因から発生するのでしょうか?クラウド利用料金の高額化の原因は主に3つあります。ここでは以下の3つの原因について解説します。

  • セキュリティインシデントの発生
  • サービスの設定ミス
  • 円安の影響

セキュリティインシデントの発生

セキュリティインシデントの発生

クラウド利用料金の高額化の主な原因の一つに、セキュリティインシデントの発生が挙げられます。攻撃者がクラウドサービスのアカウントに不正アクセスし、大量のインスタンスを起動したり、高負荷な処理を実行したりすることで、短時間で膨大なリソースを消費される事態が発生します。

また、クラウドサーバがマルウェアに感染し、攻撃者の指示に従って不正な処理を実行するケースもあります。例えば、マルウェアに感染したサーバがDDoS攻撃の踏み台にされると、大量のトラフィックが発生し、通信料金が増大します。これらのセキュリティインシデントは、脆弱なパスワードの使用や不適切なネットワーク設定、脆弱性対策の不備など、企業側の管理体制の甘さに起因することが少なくありません。

サービスの設定ミス

クラウド利用料金の高額化を招く原因として、サービスの設定ミスも見過ごすことができません。使用済みのインスタンスやストレージを削除し忘れると、不要なリソースに対して課金が継続してしまいます。また、サービスの実装時のプログラミングのミスにより、不要なプログラムが大量に実行され、想定外の課金が行われた事例もあります。これらを防ぐためには、プログラムの実装時にミスはないかよくチェックすることに加え、長期間使用していないリソースや、テスト環境で作成したリソースの管理にも注意を払う必要があります。

さらに、アプリケーションの負荷に応じてインスタンスを自動的に増減させるオートスケーリング機能の設定が不適切だと、必要以上のインスタンスが起動し続け、コストが増大する恐れがあります。クラウドサービスの料金体系や課金対象となるリソースについて十分に理解し、適切な設定をおこなうことが重要です。さらに、定期的にリソースの利用状況をモニタリングし、不要なリソースを適宜削除するなど、継続的な運用管理が求められます。

円安の影響

外資系クラウドサービスの多くは、米ドル建ての課金体系を採用しています。そのため、米ドル以外を使用する国での支払いは、為替レートの変動に大きな影響を受けます。日本では、円安が進行すると、為替レートの影響によって利用者が支払うクラウド利用料金が大幅に増加してしまいます。

この為替リスクは、企業のIT予算に大きな影響を与え、クラウド利用料金の高額化を招く要因の1つとなっています。円安の進行によるクラウド利用料金の増加は、企業のコスト管理を困難にし、クラウド破産のリスクを高めると言えるでしょう。

急激な円安によるクラウド利用料金の高騰のリスクと影響

急激な円安によるクラウド利用料金の高騰のリスクと影響

クラウド利用料金の課金体系が米ドルを代表とする外貨の場合、為替の影響を受けやすいことを先述しました。ここでは、クラウド利用料金の高騰リスクと影響についてさらに深堀りします。

急激な円安がもたらすコスト増の具体例

まずは円安がもたらすコスト増の具体例を見ていきましょう。例えば、1米ドル110円のときに月額5千ドル(日本円で55万円)のクラウドサービスを契約した企業の場合、1米ドル150円になると、月額費用が75万円に跳ね上がります。これは、月額で20万円、年間では240万円ものコスト増を意味します。

急激な円安は、予算策定時には想定していなかった為替リスクをもたらし、IT予算を大きく圧迫します。特に中小企業では、このようなコスト増が経営に与える影響は小さくありません。為替変動の予測は難しいものではありますが、為替リスクを見据えた適切なクラウド利用計画と、コスト管理の徹底が求められます。

クラウド利用料金の高騰が企業経営に与える影響

クラウドコストの増加により、他のIT投資や事業計画に割り当てられる予算が減少し、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進や新サービスの開発などに支障をきたす恐れがあります。

また、外資系クラウドを活用して自社サービスを提供している場合は、クラウド利用料金の高騰がサービス原価へ大きな影響を与えます。利用料金の高騰がサービス収支の悪化へとつながり、原価削減に向けた取り組みやサービス価格の見直しを与儀なくされる他、価格競争力の低下にもつながる恐れがあります。

さらに、コスト削減のためにクラウドリソースの利用を控えめにすると、アプリケーションのパフォーマンスが低下し、業務効率やサービス品質が落ちる可能性があります。これは、従業員の生産性低下や顧客満足度の低下につながり、ビジネスの競争力を損なう要因となり得ます。

円安によるクラウド利用料金の高騰は、企業のコスト管理と事業戦略に大きな影響を与えます。これらを防ぐには為替リスクを考慮したIT予算の策定と、クラウドコストの最適化に向けた取り組みが不可欠です。

クラウド破産を防ぐための具体的な対策

外的要因にも左右されるクラウドサービスの利用料金の高騰ですが、防ぐ方法はあります。ここでは次の対策について解説します。

  • 監視ツールによる料金アラート設定で、異常な請求を早期検知
  • 使用リソースの可視化と最適化
  • 予約割引や月額コミットプランの適切な活用
  • 国産クラウドサービスの選択

監視ツールによる料金アラート設定で、異常な請求を早期検知

クラウド破産を防ぐためには、適切な監視と早期対策が欠かせません。主要なクラウドサービスは、料金アラート機能を提供しており、ユーザーが設定した予算閾値を超えた場合に通知を送信します。それらの機能を活用して、異常な料金発生を早期に検知し、原因究明と対処を速やかに実施できます。

アラート設定をおこなう際は、月次予算や日次予算などの閾値を適切に定義することが重要です。また、アラートを受信した際の対応手順を明確にしておくことで、迅速かつ効果的な対策が可能となります。

使用リソースの可視化と最適化

クラウドのコストを最適化するには、リソース使用状況を定期的に確認し、分析することが重要です。クラウドサービスの管理画面や、サードパーティ製のコスト可視化ツールを活用することで、各リソースの利用状況や料金の内訳を詳細に把握することができます。

この情報をもとに、不要なインスタンスやストレージ、未使用のデータ転送帯域などを特定し、縮小や削除をおこなうことで、無駄なコストを削減することが可能です。また、リソース使用量と実際のビジネスニーズのギャップを分析し、適切なサイジングをおこなうことも重要です。定期的なレビューと改善を通じて、クラウドの費用対効果を最大化し、クラウド破産のリスクを低減しましょう。

予約割引や月額コミットプランの適切な活用

クラウド破産を防ぐうえで、リザーブドインスタンスといった予約割引や月額コミットプランの活用は有効な手段の一つです。これらのプランでは、一定期間の利用を約束することで、オンデマンド料金と比較して大幅な割引を受けることができます。

ただし、これらのプランを利用する際は、長期に渡る割引と、構成を変更しにくいという柔軟性の低下というデメリットを十分に検討する必要があります。

国産クラウドサービスの選択

円安リスクを回避し、クラウド破産を防ぐうえで、国産クラウドサービスの利用も有効な選択肢の一つです。国産クラウドは、円建ての課金体系を採用しているため、為替変動の影響を受けずに安定したコストでクラウドを利用できます。また、定額の料金メニューを用意しているところも多く、精度の高い予算管理といった日本企業特有のニーズにも対応できます。

さらに、国産クラウドは、国内のデータセンターで運用されているため、日本の法規制やコンプライアンス要件に適合しやすいというメリットがあります。加えて、きめ細やかな日本語サポートを提供しており、問題解決や技術的な相談がスムーズに行えます。

自社のニーズや予算、利用形態に合った国産クラウドサービスを選択することで、クラウド破産のリスクを抑えつつ、円滑なクラウド活用を実現できます。為替リスクの回避と、日本企業に最適化されたサービスの提供により、企業は安心してクラウドを利用でき、業務効率の向上や安定したサービス品質の提供につながります。

まとめ

クラウド破産を防ぐためには、適切なクラウド運用が欠かせません。料金体系や権限設定、利用状況を定期的にチェックし見直すことで、高額請求のリスクを減らすことが可能です。

また、国産クラウドの選択も有効です。オプテージのクラウドサービス「オプテージ コネクティビティ クラウド・ストレージ(OCCS)」は、日本国内のオプテージのデータセンターで提供している国産クラウドです。ストレージやネットワークに強みを持ち、円建てでの定額メニューや日本語サポートなどきめ細やかなサービスが特長です。

さらに、クラウドの導入や運用には、クラウドに関する深い知見を持つ人材による管理が理想的ですが、自社にクラウド管理の適任者がいない場合や、人材確保が難しい場合は、クラウドベンダーが提供するマネージドサービスの利用が有効です。

オプテージでは、24時間365日、監視、障害対応、運用保守といったクラウドマネージドサービスをご提供しています。クラウドマネージドサービスを利用することで、専門知識を持つエンジニアによるクラウド運用を任せることができ、安心してクラウドを活用できます。

クラウド管理の適任者がいない場合にはぜひオプテージにご相談ください。

◎製品名、会社名等は、各社の商標または登録商標です。

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著者 OPTAGE for Business コラム編集部

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