シングルサインオン(SSO)とは?導入メリットとIDaaS活用のポイントを解説

シングルサインオン(SSO)とは?導入メリットとIDaaS活用のポイントを解説

近年のクラウドサービスの普及はID管理を複雑化させています。この課題を解決するのがシングルサインオン(SSO)です。SSOは一度のログインで複数のサービスにアクセスできる効果的な手段を提供します。さらに、このSSOを強化し、セキュリティを高める技術として注目されているのがIDaaS(Identity as a Service)です。
本記事では、SSOとIDaaSの導入がもたらす業務効率の向上とセキュリティの強化と、ゼロトラストセキュリティとの連携に焦点を当てて解説します。

Contents

シングルサインオン(SSO)とは

シングルサインオン(SSO)は、複数のアプリケーションやサービスに一度のログインでアクセスできる認証システムです。SSOは、さまざまなプラットフォームにおけるログイン手続きを簡素化し、安全で一貫したユーザーエクスペリエンスを提供します。クラウドサービスを多用する現代のビジネス環境において、SSOは業務の効率化とセキュリティの向上に貢献する欠かせない技術です。

例えば、GoogleアカウントにログインすることでGmail、Googleドライブ、Googleカレンダーなど複数のサービスが一括で利用できるのはSSOの典型例です。このように、日常的にSSOを利用しているユーザーも多く、業務においても同様の利便性が求められています。

シングルサインオン導入イメージ

シングルサインオン(SSO)が必要になった背景

企業内で利用されるクラウドサービスの数は増加の一途をたどっており、業務に必要なツールが分散しています。その結果、1人の社員が5~10個以上のIDやパスワードを管理することも珍しくありません。

こうした状況では、パスワードの使い回しやメモによる管理、入力ミスの頻発などがセキュリティリスクや業務効率の低下を招きます。SSOはこれらの課題に対する解決策として注目され、特に大企業や多拠点に展開する組織での導入が進んでいます。

シングルサインオン(SSO)の導入メリット

シングルサインオン(SSO)の導入メリット

SSOは、従業員の利便性を高めるだけでなく、管理者にもメリットをもたらします。SSOのメリットは以下のとおりです。

不正アクセスと機密情報漏えいリスクの軽減

SSOは、従業員が複数のパスワードを管理する負担を軽減し、セキュリティを強化します。一元化された認証システムにより、パスワードの使い回しや簡易パスワードによるリスクが減少。これにより、不正アクセスの機会が減り、機密情報漏えいの可能性も低下します。

さらに、パスワードの強度や有効期限、再設定の条件を企業全体で統一しやすくなるため、ガバナンスの観点でも有効です。ユーザーが複数サービスで同じパスワードを使う必要がなくなることで、フィッシング攻撃などの被害も低減されるでしょう。

IT部門の負担軽減

SSOの導入により、IT部門は複数のアカウント管理の負担から解放されます。個々のアカウント設定やパスワードリセットなどに要する作業時間が減少し、業務効率が向上します。結果として、IT部門はセキュリティシステムの強化や新技術の導入など、より重要な戦略的タスクに注力できます。

特に人事異動が多い企業や、派遣社員・業務委託者などの外部スタッフが頻繁に出入りする業界では、ID発行・削除の工数削減効果が大きく、管理作業の標準化にもつながりやすいでしょう。

ユーザーエクスペリエンスの向上

SSOを導入することで、ユーザーエクスペリエンスが向上します。異なるアプリケーションやサービス間でシームレスな移行が可能となり、ユーザーは一度のログインで必要なサービスに簡単かつ迅速にアクセスできます。また、ユーザーの満足度も向上し、日々の作業におけるストレスが減少します。

例えば、業務でGoogle WorkspaceやSalesforce、Slackなど複数のクラウドサービスを利用している場合、毎回ID/PWを入力せずにすむことで業務への集中力が途切れにくくなり、生産性の向上にも寄与します。

シングルサインオン(SSO)のデメリットとその対策

シングルサインオン(SSO)のデメリットとその対策

多くのメリットをもたらすSSOですが、一方でデメリットもあります。デメリットは以下のとおりです。

不正アクセス時の被害拡大

SSOのデメリットは、不正アクセス時に被害が拡大する可能性があることです。もしSSOシステムが攻撃されると、連携された全てのシステムが侵害されるリスクが生じます。この危険性を抑制するためには、多要素認証や追加のセキュリティ対策を取り入れることが効果的です。これにより、セキュリティ侵害から生じるリスクを最小限に抑え、より安全な環境の維持が可能です。

認証システムへの依存

SSOのデメリットとして次に挙げられるのが、認証システムへの依存です。SSOシステムがダウンすると、連携している全てのシステムへのアクセスが遮断され、業務の停滞や事業継続性に重大な影響を及ぼす可能性があります。このようなリスクを軽減するためには、トラブル発生時の迅速な対応計画や事業継続計画をあらかじめ策定し、準備しておくことが重要です。

シングルサインオン(SSO)対応に伴う追加コスト

SSOは万能ではなく、全てのシステムやWebサービスがSSOに対応している訳ではありません。一部のシステムでは、SSO対応のために追加コストが必要になるケースもあります。例えば、オンプレミスの古いシステムをSSOに統合するには、追加の開発作業が必要になるでしょう。

そのため、多様なシステムを管理する際には、全てのシステムをSSOに統合するのではなく、認証回数をできるだけ減らすという観点でための柔軟に検討しましょう。例えば、SSO非対応のサービスについてはIDパスワード管理ツールを併用するなどの手段が考えられます。

シングルサインオン(SSO)の6つの方式と仕組み

シングルサインオン(SSO)の6つの方式と仕組み

SSOを実現するための認証方式は、技術の進化に伴い、さまざまな形で進化してきました。SSOの方式は、社内認証や社外クラウドサービスへの対応など、利用方法によって異なります。ここでは、それぞれの認証方式について紹介します。

ケルベロス方式

ケルベロス方式は、WindowsのActive Directoryによく用いられる認証方式で、ドメイン内の複数サーバ間でSSOを実現します。この方式では、認証に成功したユーザーに特定のチケットが発行され、各サーバはこのチケットをもとにユーザーのアクセスを許可します。

この方式は企業内ネットワーク環境での利用に適しており、高速かつ安全な認証処理が可能です。Windowsとの親和性が高く、企業内ネットワークでは広く使われていますが、インターネット経由の認証やクラウドサービスには適していません。

エージェント方式

エージェント方式では、Webアプリケーションサーバに特定の認証機能を持つ「エージェント」ソフトウェアを導入します。この方式の仕組みは、ユーザーが認証に成功すると、認証サーバから認証済みCookieがエージェントに対して発行されます。このCookieを利用することで、ユーザーはその後のアクセスで繰り返し認証する必要がなくなり、認証状態を維持することが可能です。

この方式は、細かなアクセス制御が可能で、既存のアプリケーションに手を加えずに導入できる特徴があります。ただし、各サーバにエージェントを個別に導入する必要がある点と、システムの規模が大きくなると運用が煩雑になる点がデメリットです。特に社内Webアプリケーションを多く利用する環境では効果を発揮しやすいでしょう。

リバースプロキシ方式

リバースプロキシ方式では、全てのアクセスがリバースプロキシサーバを介して行われ、認証処理もこのサーバが担当します。ユーザーがリバースプロキシで正しく認証されると、認証情報が連携先のサーバに伝達され、ユーザーはログイン状態を維持できます。

この方式は、既存のWebシステムを改修することなくSSOを実現できるという点がメリットです。一方で、サーバの設定やセキュリティポリシーの管理が複雑になるため、設計・運用には高度なスキルが求められます。古いWebシステムが混在する大企業でよく採用されています。

代理認証方式

代理認証方式では、端末にエージェントソフトウェアを導入し、ユーザーが複数のサーバへアクセスを試みる際に、このエージェントが認証手続きを代行します。このアプローチにより、ユーザーは一度のログインで複数のシステムにアクセスでき、操作の手間が軽減されます。

導入が比較的容易で、IDとパスワードによるログインしか対応していないアプリケーションにも、SSOの仕組みを適用できる点がメリットです。ただし、認証サーバに登録しているIDやパスワードと、エージェントが管理しているIDやパスワードを常に一致させておかなければなりません。また、ログイン画面のURLやデザインが変更された場合はエージェント側でも対応が必要になります。

フェデレーション方式

フェデレーション方式は、異なるシステムやWebサービス間で認証情報を共有するためのプロトコルや、データ規格を標準化した方法です。この方式では、IDプロバイダーと呼ばれるユーザー認証を管理するサービスと連携し、その認証結果を基に、ユーザーが対象サービスへのアクセスを許可します。

SAML(Security Assertion Markup Language)やOpenID Connectといったプロトコルが一般的に使用され、異なるドメイン間での認証や属性情報の共有が可能です。複数企業やグループ企業間のSSO、SaaSとの連携に適しているものの、設定が煩雑で導入には一定の技術的知識が必要です。

透過型方式

透過型方式は、ユーザーが明示的にIDやパスワードを入力することなく、アクセスするだけで自動的に認証が行われるSSOの仕組みです。

代表的な例としては、会社で使っているパソコンを起動して社内システムにアクセスしたとき、何もしなくても自動的にログインが完了するケースが挙げられます。ユーザーにとって操作が不要でストレスがなく、業務開始時の手間を大幅に軽減できるのが大きなメリットです。

ただし、端末の設定やOS、ブラウザー環境に依存することが多く、動作が限定される場合もあります。主に社内ネットワーク内での利用が想定され、インターネット経由のリモートワークなどゼロトラストの環境には不向きとされています。

シングルサインオン(SSO)導入に伴うゼロトラストの重要性

シングルサインオン(SSO)導入に伴うゼロトラストの重要性

SSO導入時、ゼロトラストモデルが大きな役割を果たします。

ゼロトラストは、ネットワーク内外の全てのアクセス要求に対して疑念を持つという原則に基づいています。このモデルをSSOに組み込むことで、ユーザーの使い勝手を維持しつつ、不正アクセスやデータ漏えいのリスクを最小限に抑制します。SSOの便利さとゼロトラストの厳格なセキュリティ措置を融合することにより、企業はセキュリティを強化し、効率と安全性を両立させることが可能です。

新しいシングルサインオン(SSO)の技術として期待されるIDaaSとは?

新しいシングルサインオン(SSO)の技術として期待されるIDaaSとは?

クラウドサービスやリモートワークが普及し、従来の認証管理では対応が難しくなった現在、より柔軟でセキュアなSSOを実現する手段として「IDaaS」が注目されています。

ここからはIDaaSの基本と活用のポイントについて詳しく見ていきましょう。

IDaaSとは何か?その基本的な仕組み

IDaaSは「Identity as a Service」の略で、ユーザーの認証を一元管理するクラウドサービスです。

従来は社内ネットワーク内部で運用されていたIDやパスワードの管理、アクセス制御、認証の仕組みを、クラウドからインターネット経由で一元的に提供します。主な機能には、複数のクラウドサービスに一度のログインでアクセスできるSSO(シングルサインオン)、多要素認証、ユーザー属性に応じたアクセス権限の自動割当などがあります。Microsoft Entra ID(旧Azure AD)やOktaなどが代表的なIDaaSで、既存の社内システムとも連携可能です。

IDaaSを効果的に活用する3つのポイント

IDaaSの利便性とセキュリティを両立させるためには、以下の3点が重要です。

  1. 「誰が、いつ、どこにアクセスできるのか」を明確にルール化し、アクセス制御を強化すること。
  2. 新入社員のアカウント発行や退職者の権限削除など、ライフサイクル管理を自動化し、人的ミスや漏れを防ぐこと。
  3. Google WorkspaceやMicrosoft 365など、使用しているクラウドサービス全体とIDaaSを連携させて、権限情報を一元的に同期・管理すること。

これらを実践することで、運用コストを抑えながら高いセキュリティレベルを維持できます。

導入時によくある課題とその対処法

IDaaS導入にあたっては、以下のような課題がよく見られます。

  • 古い社内システムがIDaaSに対応していない
  • クラウドサービスごとに異なる細かな権限設定が必要
  • 導入・運用コストが高い

これらに対しては、古い社内システムとIDaaSを橋渡しする連携ツールの導入や、権限管理ルールの計画的な整備が必要です。

このような課題がある場合、全社導入をいきなり目指すのではなく、まず特定の範囲でテスト的に導入し、効果を確認しながら導入範囲を広げていく、といった段階的導入が推奨されます。計画的な導入により、費用対効果を最大化できるでしょう。

シングルサインオン(SSO)システムの選定ポイント

シングルサインオン(SSO)システムの選定ポイント

SSOを導入する際にはいくつかの注意点があります。以下では、選定時に押さえておくべき4つのポイントを紹介します。

自社システムとの連携性

最も重要なのは、自社で利用している業務システムやSaaSとSSOシステムが連携可能かどうかです。

Google Workspace、Microsoft 365、Salesforceなど、主要なクラウドサービスに加え、自社開発やオンプレミスの業務システムと連携できるのか事前に確認しましょう。連携可能な範囲が広ければ、それだけSSOの利便性と管理効果も高まります。

セキュリティ機能の充実度

SSOは便利である一方、不正アクセスを受けた際の被害が広がるリスクもあるため、セキュリティ機能の強さも選定のポイントです。

多要素認証(MFA)に対応していることはもちろん、IPアドレスや端末ごとのアクセス制御、ユーザー行動の異常検知といったゼロトラストに対応した機能が備わっているか確認しましょう。

特に高度な機密情報を扱う企業では、ログの監査機能や即時遮断などの管理機能も求められます。

コストとサポート体制

SSOの導入には、初期費用に加え、ユーザー単位での月額・年額の課金が発生します。そのため、導入の際にはトータルのコストを確認しておくことが重要です。

また、海外製のシステムを導入する場合は、日本語サポートの有無や範囲、障害発生時の連絡体制などについても事前に確認しておきましょう。

対応デバイスの範囲

SSOシステムが対応するデバイスやOSの種類も重要です。

パソコン・スマートフォン・タブレットといったマルチデバイス対応は必須であり、Windows、macOS、iOS、Androidなど主要なOSへの対応状況も確認しましょう。私物の端末の業務利用を許可している場合は、端末ごとのセキュリティ制御や、アクセス制限機能の有無も評価対象となります。特にフィールドワークや在宅勤務が多い企業では、この観点が導入効果を左右するでしょう。

シングルサインオン(SSO)導入のステップ

SSOの導入は、単にシステムを導入するだけでは完了しません。

業務システムとの連携やユーザー管理体制の整備など、段階的かつ計画的なプロセスが必要です。以下では、導入までの4つの主要ステップを紹介します。

計画と準備

まずは、現在利用中の業務システムとログイン方法を整理することから始めます。Active Directoryなどの既存認証サービスや、Google Workspace、SalesforceなどのSaaSツール、オンプレミスのアプリケーションなどを棚卸しして、どのシステムをSSOの対象とするかを決定します。あわせて、導入目的を明確にし、優先順位をつけて対象範囲を定めておきましょう。

設計と構築

次に、選定したSSO方式やIDaaSの仕組みに基づき、どのようなシステムにするか設計します。アクセス制御や多要素認証(MFA)、既存の社内システムとの連携など、自社のセキュリティ要件を満たすようにシステムを構築していきます。また、運用開始後のトラブルに備え、管理者やユーザー向けのドキュメントもこの段階で整備しておくとスムーズです。

テストと導入

構築が完了したら、すぐに本番環境へ適用するのではなく、まずは限定的なテスト環境での検証を行いましょう。テストでは、対象システムへのログインができるか、多要素認証は正常に機能するかなどを入念に確認します。その後、特定のチームや部門のみで小規模に運用してみて、問題がなければ全社展開へと進めます。ユーザーへの周知や操作説明、社内のヘルプデスクの体制構築も並行して進めましょう。

運用と改善

導入後は、定期的に認証ログを確認し、不正アクセスの兆候や異常な挙動を早期に検知できる体制を整えます。また、ポリシーの見直しや組織変更に伴うアクセス権限の再設定、業務システムの追加などに応じて、SSOの設定や構成を柔軟に更新していく必要があります。IT部門と現場部門が連携しながら、継続的に改善を行っていきましょう。

まとめ

まとめ

組織のデジタル化が進むなかで、SSOの導入は企業の業務効率化とセキュリティ強化のために欠かせない要素です。SSOを導入する場合には、自社のビジネス環境に応じた細やかな計画が求められます。

オプテージでは、SSO環境を支える IDaaSソリューションを提供しており、クラウド・オンプレミスを問わず、多様なシステムとの連携を実現可能です。さらに、導入が容易でコストパフォーマンスにも優れるGMOトラスト・ログインとの連携により、ゼロトラストモデルの実現をより柔軟に支援します。

SSOの導入から運用、セキュリティ強化までの総合的なサポートが必要な場合は、ぜひオプテージにご相談ください。総合的なサポートで、お客さまの安全かつ効率的な業務を支援いたします。


◎製品名、会社名等は、各社の商標または登録商標です。

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著者 OPTAGE for Business コラム編集部

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