OPTAGE IMPACT Vol.1 Nov.2020 ─ オプテージ インパクト ─
完全版 ITライター森川滋之氏が徹底取材 OPTAGE 5Gの現在と未来
いよいよ到来した5G時代。通信業界における10年に一度といわれるこの大変革期に、オプテージも市場参入を果たします。自社の技術やインフラを最大限に生かしたOPTAGE 5Gの特徴や狙い、展望はどういったものなのか。IT関連で多くの実績をもつライター森川滋之氏からの質問に、5G事業化推進チームマネージャーを務める白野綾介が答えました。
Interview OPTAGE✕森川滋之
Topics.1 法人向けローカル5Gサービズ
オプテージ5Gは、基本的に法人に向けたローカル5Gサービスとうかがいました。
はい。製造業における工場や、電力プラントの監視などを主なユースケースとして想定しています。他にも鉄道などのインフラ監視、更に将来は物流倉庫の監視や医療、教育といった分野にも広げていきたいと考えています。
また、弊社は「eo光」というFTTH(光ファイバケーブルを一般住宅に引き込んだネットワーク回線)サービスも運営しております。マンションやその中の住居に光ファイバーを引き込めないケースもあり、ラストワンマイルのFWA(ユーザーとインターネット通信事業者を無線でつなぐデータ通信システム)としてローカル5Gを活用することも検討しています。
なるほど。サービスの具体的な内容について詳しく教えてください。
5Gの最大の特長は「超高速」「超低遅延」「多数同時接続」ですが、全国均一な基地局を設計・展開していくキャリア5Gに対して、より柔軟性をもつのがローカル5Gの特長です。例えばある工場に5Gを導入する場合、「超低遅延」はマストでも「超高速」や「多数同時接続」は求められないケースもあり得ます。こうした場合、弊社は基地局のメーカーと調整して「超低遅延」に特化した基地局を開発できます。すべての特長を備える必要がないため、トータルの開発コストが抑えられます。またキャリア5Gは、1つの基地局につながる一般の5Gスマートフォンが多すぎると、セキュリティや安定性に影響を受けますが、提供エリアが「工場の中だけ」などに限定されるローカル5Gにはその心配がありません。
Topics.2 オプテージ5Gの強み
オプテージのローカル5Gならではの特長はどういった点にありますか?
ローカル5Gにはいくつかのモデルがあり、弊社は「プライベートNW(ネットワーク)型」といって、コアネットワークを我々の通信局舎に設置し、弊社のVPN(光ファイバーネットワーク)を活用するモデルを想定しています。「オンプレ型」といってコアネットワークや端末などをユーザーサイトに設置する方式もありますが、全ての機器がお客さまのもとにあるとトラブル発生時の対応が難しくなると想定しています。オプテージの「プライベートNW型」は、我々の局舎に設置した機器でしっかりとした監視運用体制がとれるため、24時間365日の監視・保守サービスを提供することも可能になります。
オンプレ型
すべての機器をユーザーサイトに設置 トラブル発生時に対応が難しい利用者とはVPNでつなぐことになりますが、その分コストがかかることはありませんか?
5Gの機器はまだまだ高額なのですが、「プライベートNW型」はコアネットワーク部分を複数ユーザーでシェアすることで、コストダウンが図れます。「オンプレ型」はユーザーサイトごとに全ての機器を設置するため、VPN構築のコストを考慮しても「オンプレ型」を下回ることができると試算しています。
ちょっと贅沢仕様の「オンプレ型」に対して、「まずはやってみよう」というときに選びやすいのが「プライベートNW型」だと感じました。
他に「クラウド型」という方式もあるとお伺いしました。
「クラウド型」も「プライベートNW型」と同様に24時間365日の監視・保守サービスがしやすいというメリットはありますが、クラウドサーバまでインターネット回線を使用する方式では、遅延が発生することが予想されます。弊社ではイーサネットVPNを使いますので、拠点間通信まで含めたトータルで「クラウド型」よりも低遅延性を実現することができます。
なるほど。そうした強みは具体的にはどのようなメリットをもたらすでしょうか?
工場のケースでいうと、ロボットの制御を無線化することで、遠隔からでもタイムロスのない操作を行えます。また、工場では生産ラインの組み換えをすることが多いそうですが、無線化することで、配線にかかるコストも削減することができます。
他の分野ではいかがでしょうか?
物流倉庫やプラント、発電所などでは高速大量通信のメリットが生かせます。4Kや8Kの高精細映像をリアルタイムで送ることができ、異常があればすぐにアラームをあげて作業者に知らせるということが可能になります。医療機関では、現在通話に使われているPHSが近々サービスを終了する予定ですので、その代替として低遅延・多数同時接続性に優れたローカル5Gに関心が集まっています。
Topics.3 2022年度のサービス化に向けて
オプテージが5Gサービスに参入する意義はどういった点にあるのでしょうか?
弊社にはこれまで固定通信の分野で培ってきた技術や設備、また機器メーカーとの連携力があります。これらを生かすことで、お客さまの個別のニーズに沿って柔軟にネットワークを構築し、お客さまの業務課題を一気通貫で解決するお手伝いができると考えています。
そうした取り組みは、社会全体にとっても有益なことだと思います。
はい。例えば工場では、粉塵が舞う環境でロボットを制御されている方もいます。そこに弊社のローカル5Gが導入されることで、工場内のより安全な場所や、自宅からでも制御できるようになります。そういった意味では働き方改革や「ウィズコロナ」時代にも適したサービスになると考えています。
そうしたサービスを進めていく「5G事業化推進チーム」について教えてください。
メンバーは私を入れて現在16名で、ほとんどが技術者です。弊社は固定通信事業をメインとしてきましたが、学生時代に無線通信を学んだ社員や、新たに無線技術に挑戦したいという社員もいます。社内でプロジェクトメンバーを公募したところこうしたメンバーが集まり、今は専任プロジェクトとして取り組んでくれています。また、技術分野の業務だけでなく、ともにプロジェクトを進めていくメーカーや関係会社との連携・調整、ローカル5G事業の戦略検討やマーケティングも担当しています。
技術集団でありながら、コミュニケーションスキルも、ビジネススキルも備えたチームということで、白野さんもチームマネージャーとしてとても心強いですね。
ありがとうございます。
今後の展開についてお聞かせください。
今年の6月に「OPTAGE 5G LAB」をオープンさせ、10月末から川崎重工業さまのフィールドでローカル5Gの実証実験を開始します。
オプテージさんの「eo光」は関西向けのサービスですが、ローカル5Gはいかがでしょうか?
ローカル5Gの提供エリアは全国を予定しています。そのために、関西以外のエリアでの実証実験にも取り組んでいきたいです。
本格的なサービス開始は2022年を予定しており、その後はできるだけ早く年間売上100億円を達成することを目標に、ローカル5G市場におけるトップシェアを狙っていきたいと考えています。
期待しています。本日はありがとうございました。
インタビュアー/森川滋之
Profile 森川 滋之氏
システム開発・ITコンサルティングの豊富な実績を背景に、ビジネスライターとして企業の顧客事例やホワイトペーパー制作などを中心に執筆。また経営者やコンサルタントの著作制作支援も行っている。著書に『SEのための価値ある「仕事の設計」学』、『奇跡の営業所』など。IT関連雑誌への寄稿も多数。