- 公開日:2019年04月24日
新時代の定番ビジネスモデルになるか?「サブスクリプション」
従来の大量生産、大量消費のビジネスモデルでは、もう生き残れない
もうすぐ新しく、「令和」時代が始まります。本当に「昭和は遠くなりにけり」という感じになってしまいましたね。昭和の時代、高度経済成長とともに技術立国として世界を席巻した日本は、昭和の終焉に合わせるように右肩上がりの時期を終え、平成の30年間は新しいビジネスモデルを模索しながら、なんとか前に進んできたようにも思えます。
かつての日本成長の要因は、第二次大戦後の日本と世界の市場拡大に合わせ、大量生産・大量消費の波に乗ったことにあります。大量生産によって得られる最大のメリットは、低価格化でした。リーズナブルな価格ながら高品質な日本製品は、世界各国で大きな需要を獲得し、「Japan As No.1」とまで言われるようになりましたが、残念ながら現在、その地位には中国や韓国、台湾、さらには成長著しい東南アジアやインドが就こうとしています。
あらゆる機器がインターネットでつながるIoT時代においては、大量生産・大量販売によってシェアを高めマーケットリーダーになることは、通信やインターフェースの「規格」や「プラットフォーム」を牛耳ることにつながります。それがさらに、機器の販売を後押ししていくという「寡占の循環」になるわけです。今、次世代携帯電話の規格「5G」で日本がリードできないのは、携帯電話機や交換機の世界シェアの低迷に由来しているとも言えるでしょう。
では「令和」の時代、私たちはどのようなカタチで利益を獲得していかねばならないのか、そのひとつの答えが「サブスクリプション」だと言われています。
リースやローンより多彩なサービスが可能になる
「ところで、サブスクリプションって何?」とおっしゃる方がおられるかもしれません。そこで「サブスクリプション」について、少し説明しておきたいと思います。すでにご存じの方は、復習としてお読みください。
「サブスクリプション」とは、機器やサービスのある一定利用期間における利用料を支払う方式や料金体系のことを意味します。音楽や映像コンテンツのダウンロードサービスなどでよく耳にする「1カ月●●円でダウンロードし放題!」や「1カ月定額●●円」というのが、「サブスクリプション」にあたります。「サブスクリプション」は、利用する期間に対する支払いなので、その間、何度使用しても(全く使用しなくても)料金は同じになるのが特長です。
「サブスクリプション」の実例としては、先に紹介した音楽や映像、ゲームの配信、あるいはフィットネスクラブなどが代表的なものですが、最近ではクラウドを利用したアプリケーション使用(AdobeのCreative Cloudなど)や自動車、ドリンク飲み放題などのサービスも登場しています。「いやいや、車は以前からリースがあったし、ドリンクはファミレスでドリンクバーがあったし、それとどう違うの?」とおっしゃるかもしれませんね。
例えば車の場合、リースは一定期間借りている「自動車」そのものの利用料金として支払うのに対し、サブスクリプションはその期間、いろんな車を自由に乗り換えられるというサービスまで含まれます。ドリンクの場合は、例えば月額3,000円で、系列の全ての店舗でお好きなドリンクを好きなだけ飲めるという、従来のイメージを超えた活用方法が広がっています。
モノが売れにくい時代に、しっかりと利益を出すシステム
なぜ今、こんなにも「サブスクリプション」が注目されているのかと言うと、それは冒頭で説明したように、大量生産した安価な製品を売り切って終わりというビジネスモデルでは、特に利益の面で立ち行かなくなったからです。物品販売の場合、多くは製品を売った時点でお客さまとの関係は終わります。もちろんアフターサービスはありますが、それはあくまで製品を売るための付随的なサービスでしかありません。
「サブスクリプション」は、製品を売って終わりではなく、ある期間、製品をお使いいただくことを前提としており、その期間は安定した売り上げを得られることを意味します。製品売り切りビジネスの場合、売るために価格を下げたり売れ残った製品の減価償却を考えたりと、売り上げが不安定になりがちなのと対照的だと言えるでしょう。
大量生産は薄利多売に陥りがちで、大量に売れないと充分な儲けが出ませんが、「サブスクリプション」はお客さまに心地よく製品やサービスを活用していただき、「使用期間を延長したい」と思っていただくことで、大きな労力をかけずとも一定の売り上げを確保し続けることができる・・・ある種「打ち出の小槌」とも考えられるビジネスモデルだと言えるのです。このような場合、重要になるのは「モノ」そのものを売るのではなく、「モノによってできるコト」の訴求です。「コト」にバリューを置くことで、継続した利用を推進しなければなりません。
例えばこのイラストのように、車という「モノ」の価値ではなく、車を使ってできる快適な「コト」を訴えることが重要です。
「サブスクリプション」の4つのタイプ。あなたの会社の商材は、どうですか?
「サブスクリプション」には当然ながら、「向いている商材」「向いていない商材」があります。それを考えるために、まず「サブスクリプション」の4つのタイプを説明しましょう。
(1)会費徴収型
Amazonプライム、コストコ、フィットネスクラブなど、入会費と会費を払うと、そこでのサービスが受けられるというシステム。お店やコンテンツビジネス、シェアサービスに向いています。おそらく今現在、「サブスクリプション」で、もっとも多いタイプだと考えられます。
(2)おすすめ型
専門家が、各人の好みに合わせて最適な商品カテゴリーを提案する方式。ファッションや雑貨、アクセサリー、栄養食品などに向いています。
(3)消耗品型
オイシックスなど、定期的に無農薬野菜をお届けしたり、サプリメントが無くなる時期に合わせ、次回摂取量を届けるサービスなど。食品、飲料など消耗品に向いています。
(4)頒布型
連続ドラマ出演の女優のコーディネートファッションを、放送ごとに送ったり、有名ブランドや有名人がピックアップした商品を送るなどのサービス。「おすすめ型」が、毎回顧客ごとに異なる商品を送る(顧客一人ひとりに適したものをお薦めする)のに対し、「頒布型」は参加している顧客に、同じ商品を送る点が異なります。
このように、「サブスクリプション」にもいろいろなタイプがあり、これからも新しいタイプ、商材が出てくる可能性もあります。
「サブスクリプション」はお客さまとWin-Winになれる。しかしデメリットも・・・
「サブスクリプション」は、お客さまにとっても、都合のよい方式です。一定の金額で好きなだけ利用できるのですから、使えば使うほど得をすることになります。頻繁に利用したい方にとっては非常に魅力的な方式と言え、多くのユーザーを獲得することにもつながります。また、購入するよりも初期費用を抑えることができるため、利用しやすくなります。
これをサービス提供側から見ると、熱烈なファンを獲得しやすいというメリットになります。多くのファンが集まることで、さらに新しいファンが雪だるま式に獲得できます。またファンの意見が収集しやすいので、新サービスや製品の開発に活かせる利点も生まれます。加えて関連する製品やサービスの広告宣伝媒体としても利用(いわゆるアフィリエイト)できるなど、さまざまな活用が可能となります。
もちろんメリットばかりではありません。「サブスクリプション」では、継続利用で利益を生み出しますから、製品やサービスが陳腐化すると、一挙にお客さまが離れビジネスとして破たんする可能性もあります。そもそも、お客さまに「契約してみたい」と思わせる魅力があるかが重要です。先の自動車の場合、お客さまが満足できるだけの車種があるか、ダウンロードサービスなら、人気の高いキラーコンテンツが揃っているかというリソースの問題に関わってきます。さらにリソースを継続して補うためのコストが必要となります。
「サブスクリプション」は、まだまだ発展途上のシステムで、これからもさまざまなタイプのサービスが登場すると思われます。あなたの会社でも、何か適合する商材、サービスがあれば、取り組まれてみるのもいいかもしれません。
この新しいビジネスモデルに、これからも注目していきましょう。
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