たかがゲームと侮るなかれ。eスポーツ、ビジネスにどう生かす?

たかがゲームと侮るなかれ。eスポーツ、ビジネスにどう生かす?
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年収数十億円のプロ・プレーヤーも登場!「eスポーツ」って何だ?

最近、よく耳にする言葉のひとつに、「eスポーツ(esports)」があります。ご存じでしょうか。eスポーツとは「エレクトロニック・スポーツ(Electronic Sports)」の略で、FPS(一人称視点のシューティングゲーム)、RPG(ロールプレイングゲーム)、アクション、格闘などのゲームを、コンピューター、モバイル端末など電子機器を使って競技するスポーツのことです。「なんだ、テレビゲームか、たかが子どもの遊びじゃないか・・・」と思った方もいるかと思います。しかし、そう決めつけてしまうのは、いささか早計かもしれません。

今や海外では、スポーツ競技のひとつとして認識され、プロのプレーヤーも多数、存在しています。優勝賞金が3億円を超える大会もあります。またプロ・プレーヤーの生涯獲得賞金はデンマークのN0tail選手が現在、世界ランク1位で約7億6千万円。日本人選手では世界ランク83位のfeg選手が最高で、約1億円(esportsearnings.com "Top 100 Highest Overall Earnings"より)と、「たかがゲーム」と侮れない金額になっています

このような状況から、eスポーツはビジネス面においても、大きな影響力を持つようになるのではないかと期待されているのです。今日はそんな、eスポーツ事情について、ご紹介していきましょう。

(※)賞金総額、ランキング、換金レートはいずれも2020年1月17日現在のものです。

ご家庭でもおなじみのゲーム競技が、すでに大規模スポーツ大会で実施されていた!

「eスポーツ」は実は、大規模なスポーツ大会で、すでに競技されたことがあります。それは2018年にインドネシアで開催された第18回アジア競技大会(アジア版オリンピック)でのこと。あくまでエキシビションという位置づけでしたが、以下の6つのゲーム競技が行われました。

『ウイニングイレブン 2018(PRO EVOLUTION SOCCER 2018)』

『クラッシュ・ロワイヤル(Clash Royale)』

『StarCraft Ⅱ: Legacy of the Void』

『ハースストーン(Hearthstone)』

『リーグ・オブ・レジェンド(League of Legends)』

『Arena of Valor』

「家で、いつもやっているよ!」と思わず叫んでしまったあなた、いずれ大きな大会に出て賞金を手にできるかもしれませんね。たくさんの方におなじみのゲーム名が並んでいます。ゲームに詳しくない方でも、TVCMなどで聞いたことがあるのではないでしょうか。

この時のアジア大会では『ウイニングイレブン2018』において、日本代表チームが決勝戦でイラン・チームを接戦の末、撃破!見事、金メダルを獲得しています。

約1年半前に行われたアジア大会によって注目を集めたeスポーツは、もはや「子どもの遊び」などと侮ってはいられない存在になろうとしているのです。

急拡大するeスポーツの市場規模と視聴人口

ビジネスとしてのeスポーツを考えた場合、その市場規模はどれほどになるのでしょうか。2018年の世界市場規模は、大手の調査会社「Newzoo」社のレポート(2019年7月)によると8億6,500万ドル(約943億円)と、ゴルフの世界市場規模に近いとされています。さらにeスポーツの躍進は続き、2019年には10億ドルを突破、2022年には2018年の2倍以上となる約17.9億ドルと予測されています。

一方、冒頭でも少し述べましたが賞金も年々上昇しており、2019年では人気対戦ゲーム『フォートナイト』の世界大会で、賞金総額3,000万ドル(優勝賞金300万ドル)という巨大な資本が動く大会が開催されており、世界中から多くのプレーヤーが挑戦しています。

さて、スポーツ競技の一種となる以上、そこには「観客」が必要です。競技場に来場し、ナマの対戦ならではの臨場感を体験するのもよいのですが、eスポーツの場合、ネット配信などで対戦中の映像をリアルタイムで視聴する、という楽しみ方もあります。

前述の「Newzoo」社のレポートでは、このような競技視聴人口の推移も掲載されています。それによると2018年が3億9,500万人、2019年が4億5,400万人、2022年が6億4,500万人と大幅な伸長が予測されています。22年には地球上の人類の10人に1人が、パソコンやモバイル機器でeスポーツを観ているという時代が来るのです。

このような状況により、eスポーツは、特に若者に対する有力な宣伝メディアとして認識されはじめています。大手の企業がこぞって競技会のスポンサーや広告主に名乗りを上げるようになったのです。

グローバル市場の規模は、2022年には2018年の倍以上に!

(Newzoo「Globaleスポーツ Market Report 2019」より)

日本におけるeスポーツは、2017年から急成長

大手グローバル企業が注目するeスポーツですが、どのような動きがあるのでしょうか。大きな話題を集めたのが、スポーツの最大手企業ナイキが2018年10月に行った契約です。ナイキは『League of Legends』の中国のチームに所属するUziことJian Zihao選手とスポンサー契約を締結したのです。プロサッカーやプロ野球、ゴルフなどリアルスポーツの選手と、何ら変わりない扱いです。

海外の派手な動きに比べ、動きがやや鈍かった国内eスポーツ動向ですが、ここ2年ほどで大きな変化が生まれています。

テレビ放送局や芸能事務所などが相次いで、プロチーム設立に動き、eスポーツをビジネスとして捉える動きが活発化しています。その背景には、若者層の取り込み、囲い込みという想いがあるのではないでしょうか。

ソニー生命が2019年に実施した、日本の中学生の「なりたい職業」ランキングではプロのeスポーツプレーヤーが2位になっています。前回2017年の調査ではベストテンにも入っていません。2017年から2019年の2年間で、若者たちはeスポーツが魅力的なコンテンツであることをしっかりと認識したのです。このような背景が、多くの企業をeスポーツ連携へと走らせているのかもしれません。

中学生男子の「なりたい職業ベストテン」2019年、2017年比較

(複数回答形式(3つまで)/ソニー生命発表(2019年8月))

「参加のしやすさ」がeスポーツの魅力。それを企業活動に活かせないか・・・

ところでeスポーツを、あなたの企業で活かすことはできないでしょうか?前述したようにチームや競技のスポンサー、あるいは広告主としてeスポーツを支援し、若者に訴えるという活動もありうると思います。ただし、そのような活動には莫大な費用が必要となりますし、費用対効果を十分に検討しなければなりません。「流行っている」から、すぐに期待通りの効果が得られるわけでもないのです。

愛知県のある企業は、eスポーツの実業団チームを立ち上げて、若者をリクルートする際の訴求力を高めることにつなげたそうです。このように、たとえば地方で地道なモノづくりを行っている企業が、有望な人材を集めるひとつの手段としてeスポーツを活用するのもいいかもしれません。

eスポーツの良いところは、サッカーや野球のように広大な敷地(グラウンド)が必要でないこと、身体が動かしづらいなどの事情があっても参加しやすいこと、ある程度高齢の方でも参加できることなどが挙げられています。要するに、参加するハードルが他のスポーツに比べて低いといえるのです。

企業が核になってeスポーツを展開することで、その地域にeスポーツを中心にしたコミュニティができ、そこに若者が集まることで結果的に地域の活性化にもつながる可能性を持っています。「子どもの遊び」と思い込んで切り捨ててしまう前に、「将来有望なコンテンツでありビジネスである」という見方で、あらためて捉えなおしてみる必要があると思います。

◎製品名、会社名等は、各社の商標または登録商標です。

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著者 OPTAGE for Business コラム編集部

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