先達の事例に学ぶ、テレワーク成功への道

先達の事例に学ぶ、テレワーク成功への道
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新型コロナウイルス感染拡大で加速するテレワークへの流れ

現在、新型コロナウイルスの感染拡大で改めて注目されているのが、2019年9月の本記事でもご紹介した「テレワーク」です。会社が新型コロナウイルスのクラスターになる恐れや、従業員が通勤電車などで感染する事態を避けるため、出社せず自宅で仕事をすることが推奨されています。

以前の記事でご説明した通り、テレワークはITを使って会社から離れた場所で仕事をすることを意味し、決して「在宅勤務」だけを指すものではありませんが、今回は政府や自治体からの外出自粛要請があったため、「在宅勤務」という印象が強まってしまいました。しかし本来はサテライトオフィスや出張先などでの作業を含むことも、十分理解しておいてください。

このような状況下、一挙にテレワークが叫ばれだしたのですが、簡単には導入できないという方も多いはず。そこで今回は、すでにテレワークに取り組み、一定の成果を挙げている事例をご紹介しながら、いかに導入していけばいいのかを検討したいと思います。

企業、就業者、社会のすべてがWin-Win-Winになれるテレワーク

ご存じかと思いますが、テレワークは「働き方改革」実現の切り札のひとつとして、政府を挙げて強力に後押ししています。おさらいとして、総務省の資料よりそのメリットを確認しておきましょう。

 (総務省サイト「テレワークの効果」掲載図版を元に作成)

上図でも分かる通り、テレワークによる多彩で柔軟な働き方の提示は、多様な人材を集めることを可能とし、それがひいては労働力人口の増加など社会的な利益にもつながります。従って企業は、テレワークを今回の新型コロナウイルスによる暫定措置として捉えるのではなく、自社あるいは従業員にとって将来的にベネフィットを生み出すものとして、本格的に導入を進めていくべきと考えます。

それでは、実例をご紹介しながら、どう導入していけばいいのかを考察してみましょう。

実例A:Web制作・ソフトウエア開発会社のテレワーク化

◆導入の経緯

将来有望な従業員が家族の介護のため、帰郷せざるを得なくなったことを契機に、テレワークのテスト運用にチャレンジ。問題なく運用できたため、正式にテレワーク規定を整備し、本格的に導入。

◆テレワークの概要

コミュニケーション手段としては電話の他、メール、テレビ電話システムを使用し、社内に居る場合と同等の連絡業務を実現。

◆導入の効果

● 育児や介護などを理由にした優良社員の退職を防ぐことができた。
● 通勤時間の短縮、顧客先への外出に際し直行直帰が増えるなど時間の有効利用が可能となり、売上を維持したまま従業員全体の残業時間の削減につながった。

実例B:公認会計士事務所のテレワーク化

◆導入の経緯

従来、訪問等が中心であった会計コンサルティング業務を、オンラインおよびクラウドサービスをベースにした方法に変更。それにより勤務地や担当者の所属にとらわれず業務可能になったため、本社から離れた土地で求人を実施。サテライト、在宅でも勤務を推進した。

◆テレワークの概要

● それまでローカルネットワークの共有フォルダに置いていた社内情報を、信頼性のあるクラウドサーバに移管。
● オンラインでミーティングができるアプリケーションを常時接続、お互いが距離感なく、すぐに話せるような環境を作った。これにより、孤独な作業に陥りがちになるというテレワーク特有のデメリットを解消し、従業員が一体感を持ち、高いモチベーションで働けるようにした。

◆導入の効果

● 移動がなくなることで、付加価値業務に専念できた。
● 広い本社が不要となり、固定費で月に約150万円が削減できた。
● 能力はあるが、子育て中などで出勤が難しい方を、積極的に採用できた。

実例C:マーケティング、広告制作会社のテレワーク化

◆導入の経緯

クリエイティビティが求められる業務を行う同社では、一人ひとりの時間を大切にし、ワークライフバランスを取ることを最重要視している。そこで事務所だけでなくあらゆる場所での業務を推奨することとした。

◆テレワークの概要

● 週2回まで、全社員(試用期間を除く)を対象として実施。

● カフェや有料ワークスペースを利用する際には、会社から補助が支給されるようにした。
● テレワークでありがちな、孤独な長時間労働を防ぐため、テレワーク開始時と終了時に、メッセージアプリで社内報告を義務付けている。

◆導入の効果

● 交通費が、月平均で約10万円削減。
● テレワークが評判を呼び、ITリテラシーの高い人材のリクルーティングに成功した。
● ワークライフバランスを取れることで、従業員の満足度が向上した。

テレワークは、システムの問題よりも実施する企業の「気持ち」が重要

さて3つの事例をご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。「えっ!この程度で、できるものなの?」と思われた方も多いのではないでしょうか。一体、どんなIT技術を導入しているのだろうと思ったら、その答えが「電話・メール・テレビ電話システム」とは・・・。「これなら当社もすでに使っている」と思われたのではないでしょうか?

そうです、テレワークは特別な何らかの技術が必要なわけではありません。その気になれば電話とメール、あるいはFAXでも可能です。そこに情報のセキュリティという課題がクリアされれば、ほとんどの企業ですぐに導入が可能だと思います。

ここでご紹介した実例をよく見れば、課題はテレワーク用ITツールではなくテレワーカーをどう孤立させないか、どう社内環境と同等の労働環境を与えるのか、という点にあることがわかるでしょう。もちろん先にも述べたように、企業としてセキュリティが担保されていることが大前提です。テレワーカーも含めた社内ネットワークは、外部からの侵入を防ぐ閉塞的なネットワークや強力なセキュリティ・ツールが必要になりますので、専門のパートナー企業への相談は不可欠となるでしょう。

それよりもテレワーク導入における最大の難問は、経営陣やいわゆる「テレワーク食わず嫌い」層への説得、従業員への理解促進とされています。

例えば、接客担当者や現場作業従事者など、基本的にテレワークできない業務に就いている従業員が、テレワーカーに対し「不公平感」を持ってしまうことも考えられます。この場合、週2日の部分的な試行導入からはじめるなど、少しでも不公平感を払拭し、テレワークの効果を得られるようにすることが必要でしょう。

このような「気持ちの問題」は、事例でも紹介したように具体的な成果や数値を示し、しっかりと説得・理解促進を重ねることが重要だと思います。

(参考:総務省「働き方改革のためのテレワーク導入モデル(PDF)」)

上記の総務省の資料には、たくさんの事例が紹介されていますので、ぜひ参考にしてください。それができれば、テレワーク導入は決して難しい問題ではないと思います。

テレワークは活用次第で、企業・就業者・社会の三者がみんな「Win」になれるシステムです。あなたの会社でもぜひご検討いただき、大きな成果を手にできることを期待しています。

◎製品名、会社名等は、各社の商標または登録商標です。

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著者 OPTAGE for Business コラム編集部

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