- 公開日:2021年01月27日
コロナ禍の今こそ考えたい「ユニーク就職試験」で企業の魅力をUP!
「ユニーク就職試験」、大きく分けると2通りに分類
さて、いきなりですが、あなたに問題です。
Q:20代から40代の社員が集うカラオケ宴会があります。あなたはそこで何を歌いますか?
実はこれ、ある有名玩具メーカーの就職試験の問題です。就活を取り上げたNHKの番組(2019年5月放送)で紹介されたので、ご存じの方がいるかもしれません。肝心の解答ですが、玩具メーカーの人事担当者によれば「答えはない。ただし理由が大切」とのこと。
学力テストの結果や短時間の面接だけではなかなか把握しづらい就活生のパーソナリティを、何とかつかもうと必死なことがよくわかる質問だといえるでしょう。
この記事をお読みの方の中には、リクルート担当の方もいるかと思います。自社にとっての適正人材を確保するために、日夜、頭を悩ませておられることでしょう。ましてや現在は新型コロナウイルスの感染拡大が、まだまだ終息しない状況。リモート会議システムなどを使った就活生との面談に、歯がゆい思いをしているのではないでしょうか。
そこで今回は気分転換も兼ねて、ユニークな就職試験をいくつかご紹介したいと思います。ただ、ひとくちに「ユニーク」といっても、大きく2つに分けられるのではないかと思います。ひとつは、通常の筆記式試験であるが「問題がユニーク」であるもの。そしてもうひとつは、「採用方法自体がユニーク」なもの。
まずは、「問題がユニーク」なものから始めましょう。
「問題がユニークなタイプ」は、その背後に企業のさまざまな思惑が・・・
「問題がユニークなタイプ」も、大きくは2つに分けられます。ひとつは、冒頭で紹介したカラオケ曲を答える問題に代表されるように、解答そのものよりも解答を導き出すプロセスが重要視されるもの。つまり発想力や機転、熱意を計ろうとする問題です。このような例があります。
●1万部しか売れていないけどとんでもなく面白いマンガと、100万部売れているけどありきたりなマンガ、どちらを担当したいですか?(講談社)
●フライパンを買いに来るお客さまに子ども靴を買ってもらうために、あなたならどうしますか?(小田急百貨店)
●人生の大きな挫折をブログに書く場合、そのブログのタイトルを考えてください。(サイバーエージェント)
「解答はない」とは書きましたが、よく見れば企業がどんな考えを求めてこの質問を考えたのか、何となくわかる気がしますね。
たとえば講談社の1万部のマンガと100万部のマンガの担当の件。このような質問の場合「量より質」という点から、どうしても「1万部でも面白いマンガ」と答える方が無難に思えます。しかし「ありきたりなマンガ」だとしても、100万部も売れているには必ず理由があるはず。そこに着目して欲しいのではないでしょうか。さらにビジネスとして考えれば、100万部の方がはるかに出版社に貢献しているわけです。就活生の考えがそこまでしっかりと及んでいるのか、企業側としてはしっかりと見極めたいのだと思います。もちろん1万部でも100万部でも、編集者として「ぜひ担当したい!」という理由と想いがしっかりと、具体的に伝われば、どちらでも構わないのかもしれません。
小田急百貨店の問題は一見突飛な印象もありますが、実は販売という仕事において、マーケティングやプロモーションプランニングのセンスを求めているように考えられます。フライパンを買いに来たお客さまに、目的ではないものもご購入いただき客単価を上げるのは、小売業に従事する者としては極めて当然なことなのです。
最後のサイバーエージェントは、一種のセルフプロデュース能力を試したいのではないかと思えます。「自伝のブログのタイトル」というのは、一種の自分自身のキャッチフレーズです。自分自身や人生を強くひと言で表すことが求められます。強いキャッチで自分を明確にプロデュースできるかどうか、その能力を探ろうとしているように思えます。
以上のことからわかるのは、このようなユニークに思える問題は、どれも自社の求める人材像はどのような思考を持つ人なのかをよく検討した上で、出題されているということです。
(念のため書いておきますと、各社質問に対する上記の解説は、あくまで筆者の個人的なものであり、各企業の想いを代弁するものではありません。)
あえて突飛な問題を出すことで、冷静な思考力を見極めようとするIT業界
「問題がユニークなタイプ」のもうひとつは、突飛な問題に見えて、実はしっかりと答えが導き出せるというものです。まず例でご紹介しましょう。
●あなたは10円玉の大きさに縮められて、ミキサーの中に入れられました。もとの密度を保ったまま、あなたの質量は小さくなります。ミキサーの刃はあと60秒で動き出します。さて、どうする?(グーグル)
「10円玉の大きさに縮められて」という表現から、一見とんでもない問題に思えますが、これには解答がちゃんとあります。ポイントは「もとの密度を保ったまま、あなたの質量は小さく」という点。つまり身体は小さくなるが密度は変わらないので筋力も変わらないわけです。従って今と同じ筋力のまま軽くなった身体でジャンプすると、ミキサーぐらいすぐに飛び出せるというわけです。
マイクロソフトやグーグルなど世界の先端を行くIT企業は、しばしばこのような問題を出題することが多いようです。もうひとつ、グーグルの問題から。
●ある国では、人々は生まれてくる子には男の子だけを欲しがりました。そのため、どの家族も男の子を産むまで子供を作り続けました。この国では男の子と女の子の人口比率はどうなりますか?
これを「数学の確率論か? よくわからない!」などと頭を抱えてしまうと、グーグルの思う壺となります。答は「ほぼ1:1」です。新生児の男女比は多少の誤差はあるものの、あらゆる時代でほぼ1:1です。男の子が生まれるまで産むというのなら、女の子が続いて産まれることも多々ありますので、つねにほぼ1:1で変わらないのです。
上記のグーグルの例でわかるのは、一見、荒唐無稽なように思える問題も、冷静に考えれば極めてシンプルな解答が導き出せるということです。それにしっかりと気付けるかどうかを、企業として見極めたいのではないかと思われます。
「麻雀」までが試験になる!「一芸」就職試験
さて、「問題がユニークなタイプ」の次は、「採用方法自体がユニークなタイプ」です。採用方法を面白いものにする目的としては、今までよりも多くの就活生にエントリーしてもらい、その中からより業務に適した人材を発掘したいという意図があるようです。
またゲーム開発やアプリ開発といったITクリエイティブ系の企業では、型にはまった人材よりも自由でユニークな発想を持つ人材を求める傾向があるため、一般企業よりもさらに「面白い」採用を取り入れていることが考えられます。いくつかご紹介すると・・・
●「いちゲー採用」
よく「一芸採用」という言葉を耳にしますが、ゲームやアプリを開発しているカヤック社は「いちゲー採用」を取り入れています。つまり「ゲー」とは「ゲーム」のこと。同社では授業や部活動以上にゲームへの熱中度合いを評価軸に置いています。具体的には、プラチナトロフィー(PS4でのゲームのやり込み度が高いものに与えられるもの)をひとつでも持っていれば一次試験合格という「プラチナトロフィー選考」。一番やりこんだゲームの攻略法などを書き込む「ゲーム履歴書選考」など、ゲームに特化したものです。
●「麻雀採用」
勉学に励むことなく麻雀ばかりしている大学生は、どの大学にも居たと思いますが、そんな人たちに朗報なのがスターティア社の「麻雀採用」。企業ITをサポートする同社は、麻雀が一種の「頭脳スポーツ」と捉えられること、麻雀に必要な思考やスキルは、そのままビジネスの場でも活かせることから、この就職試験・・・というより一種のイベントを取り入れています。
学生が社員と麻雀の点数を競い、上位入賞者には面接フリーパスなどの特典が与えられます。「麻雀」という言葉が強烈で勘違いしやすいですが、「面接フリーパス」などの特典があるものの、さすがに麻雀の腕だけで入社できるわけではないようです。
ユニークな就職試験は、企業の魅力を引き上げることにつながる
先に紹介した「いちゲー採用」を取り入れているカヤックは、他にもユニークな就職試験で注目を集めています。たとえば「エゴサーチ採用」。グーグルなどで自分の名前を検索し(エゴサーチ)、一番上にくるブログや作品を入力するだけで、エントリーできるというものです。また違う年度では、「エイプリル採用」が話題になりました。これは自分の経歴を詐称せよ、という採用方法です。経歴をどれほど面白く捏造できるかによって、クリエイティブな能力を試すやり方です。
ここで気が付くのは、このようなユニーク就職試験が就活生の内面を掘り下げ、その潜在的な能力を探るという目的だけのものではないということです。就活生が「この企業は、とても面白い採用方法を取り入れている」という評価を定着させることで、より多くのエントリーが獲得できるようになり、よりよい人材を選ぶための分母が拡大できるからです。そしてエントリーの増加が、企業の魅力を引き上げる要因となるわけです。
先に何度かご紹介したソフト開発会社、カヤックは毎年、このようなオモシロ採用を続けることで若い就活生の心を捉えるとともに、「面白い就職試験を行う会社」イコール「面白いゲームやアプリを作る会社」というアピールを展開しています。そしてその戦略は、かなり成功していると思われます。
採用は人間に優劣を付ける作業であり、人の人生を左右するものでもあります。それだけに企業側も就活者側も、多大な労力をかけて臨むものだといえるでしょう。そんな中で、リクルートを企業の魅力を引き上げるものとして、今回ご紹介した事例を参考にしていただけるのではないかと思います。
今回ご紹介したようなユニーク就職試験は新卒だけでなく、中途採用で優れた人材を確保する上でもヒントになるかもしれません。
ぜひ参考にしていただき、よりよい人材の確保にお役立てください。
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