- 公開日:2021年03月24日
“2021年 ヒット予想”のキーワードは『レスして リッチに』
先が見通せない時代、これからどんな生活が待っているのか
新型コロナが私たちの暮らしに大きな影を落として、はや1年。この間、緊急事態宣言などによりビジネスで大きな痛手を受けた方も多いかと思います。仕事だけでなく、大学などではいまだにオンライン授業などが多く、以前の生活にはなかなか戻れそうもありません。
「ニューノーマル」「アフターコロナ」「ウィズコロナ」といった言葉が、昨年半ばあたりから盛んに叫ばれるようになりましたが、その実態はまだわからないことも多いといえるでしょう。
そのような中で、注目したいレポートが発表されました。2020年10月のリリースのものですが、今後を読み解くキーワードとして興味深いものがありましたのでご紹介します。
その発表とは、博報堂生活総合研究所が行った「生活者が選ぶ"2021年ヒット予想"&"2020年ヒット実感"ランキング」です。同研究所はその中で、2021年のヒット予想のキーワードとして『レスして リッチに』を挙げています。
『レスして リッチに』とは、いったいどういうことなのか、私たちのビジネスにおいてどのような意味を持つのか、少しご説明したいと思います。
ヒット予想ランキング分析による『レスして リッチに』というキーワード
博報堂生活総合研究所は、首都圏、京阪神圏の15歳から69歳の男女を対象に、「2020年のヒット商品や話題および2021年にヒットする、あるいは話題になると思うものは何か?」を調査しました(有効回答者数:1,008)。その結果から、2021年の「ヒット予想」を分析したうえで読み解かれたキーワードが『レスして リッチに』です。
※ランキング方法:調査対象者に80項目の商品やサービスを提示、それぞれ「ヒットした/話題になった」「話題になりそう/生活に普及・浸透していそう」と思うかどうかを「そう思う」「ややそう思う」「そう思わない」の3段階で回答してもらい、それぞれ100点、50点、0点とし平均得点を算出したもの。
同研究所はこの結果より、2020年に始まった体験が2021年も続き、「ニューノーマル」として発展すると考えられると述べています。また、2021年のヒット上位には「従来の慣習に基づく無駄や無理をレス(少なく)して、生活の質をリッチ(高める)にする。そんな『レスして リッチに』の暮らしを叶える商品やサービス」が挙がると予想しています。
2021年のニューノーマルになりうる『レスして、リッチに』とは、いったいどんなものなのか?同研究所が挙げている4つの『レスして リッチに』をご紹介しましょう。
2021年のニューノーマルとなる、4つの『レスして リッチに』
4つの『レスして リッチに』とは、以下の通り。
(順位は2021年ヒット予想ランキングに基づく)
●「慣習」をレスして、「選択肢」をリッチに
「テレワーク(4位)」「オンライン診療(21位)」「副業(21位)」など、これまでは慣習に縛られていたものも、規制をレスすることで選択肢がリッチになり、より生活を豊かにできる。
●「移動」をレスして、「時間」をリッチに
「オンライン会議(5位)」「オンライン授業/学習(12位)」「ライブ配信(18位)」など、移動時間をレスして、やりたいことをする自由な時間が生まれる。「テイクアウト(11位)」や「フードデリバリー(15位)」も、料理を待つ時間や出かけるための支度時間をレスし、おうち時間をリッチにできる。
●「心配」をレスして、「安心」をリッチに
「ドライブレコーダー(2位)」は事故やトラブル、「エコバッグ(2位)」は環境問題やレジ袋有料化、「感染防止対策用品(12位)」はコロナ禍といった、社会に広がる心配をレスし、安心感を高める。
●「所有」をレスして、「体験」をリッチに
「サブスクリプション(25位)」など、所有せずともさまざまな商品やサービスが体験できることや、「フリマアプリ(25位)」など、自分が不要とした商品の所有をレスする、あるいは人が所有をレスした商品を安価で譲り受けることで、よりリッチな体験が可能となる。
これが4つの『レスして リッチに』の具体例となります。これらの4つの『レスして リッチに』は、新型コロナに加え、IT技術の進歩が相まって可能となったものです。その影響は私たちの暮らし全般に及ぶもので、当然ながらビジネスの世界も大きく関わってきています。次章では、ビジネスにおける『レスして リッチに』の状況を考えてみたいと思います。
現在の企業風土の中での『レスして リッチに』の難しさ
先に挙げた『レスして リッチに』を現実のものとするには、大きなきっかけが必要です。4つの中で最初に挙げられているのは、「『慣習』をレスして、『選択肢』をリッチに」ですが、「慣習」を変えるというのは、生半可なことではできないからです。
今回は「新型コロナ禍」という未曾有の厄災に直面し、誰もが先の見えない不安の中で否応なく、「暮らし方を変えていく」必要に迫られています。しかしビジネスの世界では長年、蓄積したやり方、つまり「慣習」を変えるのは容易なことではありません。実際、テレワークが認知され広く浸透しはじめた現在においても、「当社の仕事でテレワークなんて、絶対に無理」と検討すらされない企業がまだまだたくさんあるのです。
また慣習を変えるのは自社だけで留まる話ではなく、得意先や顧客にまで影響を与えうるからです。そのような「慣習」を変えることに二の足を踏む企業でも、『レスして リッチに』を推進できるとしたら、その理由のひとつは「DX(デジタルトランスフォーメーション)」ではないかと考えます。
「DX」とはITの浸透により、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させるという意味ですが、程度の大小はあれどITが多くの企業に浸透した現在だからこそ、いろんな慣習やしがらみを超えて、『レスして リッチに』という新しい企業風土を定着させる可能性が生まれてきたのではないでしょうか。
DXによって可能となった、ビジネスにおける『レスして リッチに』
テレワークとともにすっかり定着した「リモート会議」ですが、これもインターネットという基盤に加えZoomやTeamsといった多彩なサービスなどITの進化があってこそ、初めて可能となったものです。「テレワーク」はまさにビジネスにおける「移動」のレスによるリッチな「時間」を創出していることに他ならないのです。
またネットワークの充実は企業内における情報のシェアを促進し、そこにマーケティングオートメーションなどのITツールが導入されることで、ビジネスを科学的に分析し確度の高い戦略が構築できるようになりました。今までは「個人の長年の経験」として誰かに「所有」され顕在化されにくかった仕事の肝やポイントといったものが、社内情報として「シェア」されることで標準化され、社員誰もが「体験」できるものとなります。
以前の本記事でもご紹介した「RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)」による単純作業や「電子契約」における契約書発行での煩雑な作業の解消(レス)により、従業員がもっと余裕を持って創造的(リッチ)な作業に従事できるようになります。またデジタル化されることによって、よりセキュリティが高まる可能性もあり、DXはそれまでの「心配」を解消し、企業、従業員双方に大きな「安心」を与えています。
このような「DX」という新しいトレンドの浸透と、昨年からの「新型コロナ禍」という2つの大きな波によって、ビジネスにおける『レスして リッチに』は、少しずつ着実に進んでいるように思われます。
ビジネスの世界ほど、『レスして リッチに』の考え方が不可欠となる
世間が「新型コロナ」一色で染まる以前は、ビジネスの世界では「働き方改革」に、大きな注目が集まっていました。その時点ですでにテレワークや多彩な働き方が提唱されていましたが、本格的に導入が進んだのは「新型コロナ」の影響だったのは否定できません。当然「働き方改革」は、これからも継続し、進化させていかなくてはならないですが、その一つの指針となるのが、この『レスして リッチに』なのです。
4つの『レスして リッチに』のうち、はじめに挙げた「『慣習』をレスして、『選択肢』をリッチに」。このように「選択肢をリッチに」準備できることが、これからの企業の目指す在り方ではないかと思います。
企業として従業員にさまざまな働き方を「選択肢」として提示できれば、より多彩な人材を集めることができます。たとえば業界歴が長く定年退職したベテラン、出産育児で退職したが高い技能を持つ主婦、副業で自分の腕を磨きたい若手・・・。時間(出社~退社までの拘束)と場所(仕事場への出社という拘束)という条件をレスするだけで、その可能性(選択肢)は大きく広がっていきます。
これからの企業の魅力は、多彩な「選択肢」にある、そんな時代がやってきたといえます。企業として何を「レス」し何を「リッチ」にしていくのか、そんな姿勢を問われる時代になったのではないかと思います。みなさんもこの機会に自身の暮らしや関わるビジネスを、どう『レスして リッチに』していくか、考えてみてはいかがでしょうか?
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