- 公開日:2021年09月21日
2021年「EdTech」が、社員教育の新しい夜明けとなる!?
新型コロナの影響も受け、教育の分野で「ICT化」が急浸透
新型コロナの影響は計り知れず、ビジネスの世界だけでなく生活のあらゆる分野に、大きな影響を及ぼしました。そのひとつが「教育」の分野です。
昨年春の卒業式、入学式が相次いで中止に追い込まれて以来、2020年度は多くの学校が休校を余儀なくされ、運動会、遠足、修学旅行など子どもたちにとって楽しい思い出を残したであろうイベントも中止となりました。そして残念ながら、現在も続いているのです。
多くの教育現場では「リモート授業」が試行されていますが、以前から導入している学校、コロナ禍でも比較的スムーズに導入できた学校、教師が右往左往し導入が進まない学校など、各校でITスキルの違いがあり、下手をすると「教育の機会均等」を揺るがしかねない問題となっています。
新型コロナによって、ビジネスの分野でテレワークやDXの普及が進んだように、教育の分野でも否応なくIT化、デジタル化が推進されていくことは間違いありません。そのような状況にあって、世界的に注目を集めているのが「EdTech(エドテック)」です。
国が提唱する「STEAM教育」を支える「EdTech」テクノロジー
「EdTech」とは、「Education(教育)」と「Technology(科学技術)」の造語で、「教育工学」と訳される場合もあります。要するに、教育の分野にITやデジタルといった最新のテクノロジーを取り入れることでイノベーションをもたらすことを意味します。教育分野における「DX(デジタルトランスフォーメーション)」といえるでしょう。
現在、教育の現場で一般的に取り組まれている「EdTech」として代表的なものは、タブレット端末を使った授業です。児童・生徒は今までの教科書や問題集、ノートの代わりに個々のタブレットに配信された内容を読み取り、問題に解答していきます。教師はクラウドなどにアップされた児童・生徒一人ひとりのスタディログを見ることで、答えだけでなく勉強の方法、解答までのプロセスなどを把握し、最適な指導が実施できます。
そんな「EdTech」は、国家戦略でもあります。経済産業省が「未来の教室」というテーマサイトを設けており、その中で「EdTech」に触れていますので、ちょっと見てみましょう。
参考サイト:経産省「未来の教室」
国が打ち出している教育理念のひとつに「STEAM教育」があります。これはScience(科学)、 Technology(技術)、 Engineering(工学)、Art(芸術)、Mathematics(数学)の頭文字を組み合わせたもので、5つの領域を対象に理数教育に創造性教育を加えた教育理念のことをいいます。「探求」と「創造」のサイクルによって分野を横断した学びを展開することを目的としており、その「STEAM教育」を支えるテクノロジーとして、「EdTech」が位置付けられています。
「EdTech」は、「誰ひとり取り残さない」教育の実現を目指す
「EdTech」に期待されている最大の効果は、ICTやデジタル技術によって児童・生徒一人ひとりの理解度、学習ペースにあわせた最適な学習法を提供できることです。それにより個性を伸ばす教育が可能となります。
従来の、教師が多くの生徒を対象に一律に行っていた(行わざるを得なかった?)授業の場合、講義内容が物足りないと感じる者も、勉強についていけない者も、全く同じ授業を受けるしかありませんでした。しかし長年にわたるその課題が、「EdTech」なら解消できます。
今までの評価軸では「劣等生」として捨て置かれていた生徒が、潜在的な能力を発揮するチャンスが生まれるのです。反対に、理解度の早い生徒に対してはより進んだ内容の授業を受けさせることが可能になります。
結果的に、それは社会にとっても有意義なことになるはずです。今、盛んに叫ばれている「多様性」という考え方が、教育の場でも実践できるわけです。つまりSDGsで訴える「誰ひとり取り残さない」教育の実現につながります。
「EdTech」の導入には、もうひとつの狙いがあります。現在、国を挙げて教師の「働き方改革」が進められています。従来から指摘されている人手不足には、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、スクールロイヤーといった専門人材、あるいはサポートスタッフや部活動指導員などの派遣が行われています。これらの試みに加え、「EdTech」で教育を効率化することにより、教師の負担を軽減しつつ質の高い教育を実践する狙いです。
少しずつではありますが、学校、教育機関における「DX」は着実に進んでいます。
「EdTech」によって実現したアダプティブラーニングとは?
「EdTech」は、学校だけでなく、企業における社員教育にも大きな威力を発揮するとされています。もちろん社員教育にインターネットやデジタル技術などを応用する試みは、以前からありました。eラーニングと呼ばれるものです。「EdTech」はさらに最先端のICTやAI技術、ビッグデータなどを活用したもので、それによってアダプティブラーニングという学習手法が可能となりました。
アダプティブラーニングは「最適学習」と訳されることもありますが、具体的にどのようなものなのか、社員教育での一例をあげてご説明していきましょう。
(1) AIが社内ネットなどを使い、従業員に問題を送信
(2) 従業員が問題を解答し、システムに返信
(3) AIが解答を自動採点。さらに採点に基づき従業員一人ひとりの理解度、習熟度を分析、判定
(4) 一人ひとりに最適化された問題を送信
(5) 返信された解答の分析によりAI判定の精度を向上
上記の(4)と(5)を繰り返していくことで従業員のストロングポイントをさらに高め、弱点の克服を図ります。このように個々で異なる能力、理解度に応じ、最適化(アダプティブ)された教育・指導カリキュラムを用意できることがアダプティブラーニングの神髄ともいえるでしょう。
「EdTech」なら、どんな従業員も一人残さずキャリアアップさせる!?
個々の従業員に対してアダプティブラーニングが実施できる他、「EdTech」には、下記のようなメリットがあります。
●従業員のモチベーションを高める
個人に合わせた教育内容により、自分自身の成長を実感できるため、従業員のやる気を呼び起こせます。
●「人事」における負荷の軽減
採点・査定など、今まで人力で行っていた作業の自動化が図れるなど、人事考課における省力化が実現できます。
●テレワークの徹底
会社に集合することなく、在宅などでも社員教育が可能になります。人事セクションのテレワークも推進できます。
●パワーハラスメントの予防
間違いの指摘といった部分で人間の関与がないため、従業員の精神的プレッシャーが低減でき、「パワハラではないか?」という印象を与えずに済みます。
また「教育」や「研修」が苦手という従業員もいるかと思いますが、「EdTech」なら映像や音楽、VR、ARなどの技術を応用したゲームのようなカリキュラムを組むこともでき、楽しみながら学ばせることが可能となります。あらゆる従業員に、質の高い教育・研修が提供できるようになります。
新型コロナの影響もあり、学校教育の現場では猛烈な勢いで「EdTech」の導入が進められています。多くのベンダーからアプリケーションやツールも提供されており、それらを応用した企業向けのサービスもますます充実してくるでしょう。2021~22年は「社員教育」の分野でも「EdTech」導入が本格化する年となるかもしれません。
企業として従業員の底上げを図り、次世代を勝ち抜くために、あなたの会社でも「EdTech」による社員教育を検討されてみてはいかがでしょうか。
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