- 公開日:2022年02月22日
これぞSDGs。ビジネスアイデア次第で、「廃●●」がよみがえる!
朽ち果て「心霊スポット」とも見做される「廃ホテル」を再活用!?
バブル崩壊後、かつての勢いを失ったかのような日本社会ですが、その象徴ともとれるものが「廃●●」ではないでしょうか。「●●」には、さまざまなものが入ります。わかりやすいのは「ホテル」「旅館」。他には「廃校」「廃トンネル」「廃テーマパーク」「廃線(鉄道)」・・・。
今回は、気になる「廃●●」の再活用の物語です。
まずはお馴染み、「廃ホテル」から。
温泉街などで、まるで幽霊屋敷のように朽ち果ててしまった廃ホテルを見かけることがあります。たった1軒だけでも悪目立ちしてしまい、地元観光地全体に大きなダメージを与えています。廃墟となった建物は、その異様さから「心霊スポット」と呼ばれるようになり、イメージの悪さから再活用など難しいとも思えます。
しかしそんな廃ホテルを再活用、ホラー会場に仕立てたイベントがあります。ホテルの運営管理・コンサルティング業を展開する株式会社GG.PROが実施したもので、六甲山の廃ホテルで行われている「きもだメッセ」というイベントです。いわば「肝試し」でもあり、リアル脱出ゲームです。
「お化け屋敷」的な印象も受けますが、このイベントでは人為的な脅かしは一切ないそうで、「廃ホテル」という存在と雰囲気が、十分すぎるほどの「脅かし」要因というわけです。
もちろん、廃ホテルがあればすぐにイベントが展開できる、というものではありません。当然ですが来場者への安全が担保されており、一切の危険がない中で怖すぎるほどのホラー体験を提供できることが、開催の最低限の条件となります。しかし、今まで廃ホテルの再活用を阻んでいた「気持ち悪さ」を逆手にとった着眼点は、ホラーというより「痛快なアイデア」だといえるでしょう。
文部科学省が推進する企業と廃校のマッチング、「みんなの廃校プロジェクト」
次は「廃校」問題です。
「廃校」というと地方の限界集落にある、木や草に埋もれた古い木造の校舎などを連想されるかもしれません。確かにこれは、廃校のひとつの典型例です。しかし、それだけではありません。かつて「ニュータウン」として何十万もの人が居住していた巨大な街が、高齢化の進んだ「オールドタウン」となり、その中に存在していた小中学校の統廃合が進んでいます。街の中にも廃校は増えつつあるのです。
このような状況から、国を挙げて廃校の活用を促進するプロジェクトが進んでいます。文部科学省が推進する『~未来につなごう~「みんなの廃校」プロジェクト』です。廃校施設を「地方公共団体にとっての貴重な財産である(同プロジェクトのホームページより)」とし、有効活用していくための情報集約・発信・マッチングなどを活発に行っています。
この中で再活用の実例がいくつか挙げられていますので、ご紹介しましょう。
●せんべい工場(北海道小清水町・旧北陽小学校)
●グループホーム(岩手県二戸市・旧太田小学校)
●製材所&バイオマス発電所(栃木県那賀川町・旧馬頭東中学校)
●若手起業家向けオフィス(愛知県新城市・旧黄柳野小学校)
●カプセルホテル(徳島県三好市・旧出合小学校)
●酒造会社酒蔵(熊本県菊池市・旧水源小学校)
地方では工場や農産物の生産・加工所、観光・宿泊施設など。都市部ではオフィスや介護施設、ミュージアムなど。さらには学校という特性を生かした研修・訓練施設などの活用法が多いようです。
廃校の場合、比較的大きな施設が割安で活用できるというメリットがあります。プロジェクトのサイトには、各地域の活用可能な物件情報も掲載されていますので、業容拡大をお考えの方は一度、ご覧になってみてはいかがでしょう。
みんなの廃校プロジェクト ※出典:文部科学省ホームページ
廃校活用だけでなく、地域おこしにもつながった「むろと廃校水族館」の挑戦
国を挙げて活用法が模索される廃校ですが、ひとつの成功例として参考にしたいのが、次に紹介する「むろと廃校水族館」です。
「むろと廃校水族館」は2018年オープン。2006年に廃校となった室戸市立椎名小学校を活かして作られた小さな水族館です。25メートルプールにはアカウミガメ。教室にはいくつもの水槽が並び、さまざまな魚や水生動物が泳いでいます。小さいながらも、どこか懐かしい印象を与えてくれるスポットとして人気となり、オープン1年あまりで20万人が来館(高知さんさんテレビより)したそうです。
人口わずか12,319人(2021年12月31日現在・同市ホームページより)という街に、20万人もの来観客を集めることで地域にも莫大な貢献をしており、まさに「廃校再活用」のチャンピオンといえるでしょう。
この施設のユニークな点は、ただ入れ物として施設を使うだけでなく、跳び箱を使った金魚鉢など、備品なども学校イメージで徹底させていることです。開館・閉館時間も「登校・下校時間」と表記するなど、「元学校」という特性を活かした遊びゴコロがいっぱいで、それが人気のヒミツなのかもしれません。そもそも名称が「むろと廃校水族館」。「廃校」という言葉をうまく取り込んでいることが、成功に導いた要因のひとつだと考えられます。
むろと廃校水族館 ※出典:室戸市ホームページ
飲料、食料生産から研究まで、多方面での再活用が進む「廃トンネル」
数々ある「廃●●」の中で、ひときわ再活用が進んでいると思われるのが「トンネル」です。耐久性と安全性という課題があるものの、それさえクリアできれば意外にも使い道は広いといえます。山地などの地中にあり日射が当たらないため、一年を通して気温が安定しているというメリットがあります。ワインセラー(浜松ワインセラーなど)、ビアハウス・ビール醸造所(ビアケラー札幌開拓使など)、農産物栽培・貯蓄(神奈川県山北町シルバー人材センターによる「箒沢隧道」でのウド栽培など)といった食物の生産・保管に活発に利用されています。
また鉄道トンネルの場合、旧国鉄などの廃線に伴うものが多く、軌道跡との組み合わせでレールサイクルなどのアクティビティへの転身も目につきます(レールマウンテンバイク Gattan Go!!など)。
廃トンネルはその安定した環境から、1990年代より研究施設として活用されることも多く、たとえば奈良県五條市にある「大阪大学核物理研究センター大塔コスモ観測所」は、1997年に旧国鉄五新線(未成線)の天辻トンネルに作られたものですが、現在でも物質や宇宙の起源を探るための研究が続けられています。
巨大なホテル、グラウンドやプール、体育館を備えた学校、深い山を何メートルも掘って進むトンネルは、どれも莫大な費用をかけて作られたものばかり。時代に取り残され、見向きもされなくなったからといって、そのまま朽ち果てさせるのは惜しいですね。建造物としてすでに存在しているわけですから、「むろと廃校水族館」のようにアイデアがあれば、うまく再活用でき、新たな価値を生み出せるかもしれません。「持続可能な開発目標」、つまりSGDsの観点から見て、非常に理に適った考え方だと思います。
大規模な施設だけではない、「空き家」「廃屋」でも進む再活
今まで挙げてきた例は、ホテルや学校、トンネルなど大規模な施設ばかりです。しかし「廃●●」は、決して大規模な施設だけとは限りません。朽ち果てた一軒家など、あなたのご近所で見かけたことはありませんか? 居住者が亡くなるなどして「空き家」「廃屋」となった住宅、あるいは閉店しシャッターが閉まったまま放置されている商店などが、しばしばマスコミなどで「社会的な問題」として取り上げられています。
今まで「邪魔モノ」「負の遺産」として捉えられてきたこれらの廃屋物件を、「地域の宝物」として見直し、再生しようという動きも活発になっています。地域の工務店や不動産会社が中心になり、リノベーションを行うことで公共施設やシェアハウス、カフェやレストランに再生しようという試みが各地でなされています。店舗や事業をはじめたいというアイデアを持っている人に建物を割安で貸し出し、新しいタイプのショップを誘致することで、地域に客を呼び込み、活性化を図ろうとするものです。「地域おこし」という観点から、中には「タダでもいいから借りて欲しい」「お金を払ってもいいから、誰か使って欲しい」という物件もあり、起業家にとっては大きなチャンスを生み出す場にもなっています。
このように、「廃●●」は、草深い山の中や、自宅から離れた観光地だけに存在するわけではありません。ちょっと注意深く周囲を見てみると、一軒家の廃屋など多くの物件があるはずです。
あなたもひとつ、アイデアをだして再活用し、「廃●●」に新しい価値を与えてみませんか?
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