- 公開日:2023年03月22日
ウィズコロナの時代を行く若手社員、どう接する、どう育てる?
新人の入社に備えて、最新情報は収集できていますか?
まもなく、新入社員がやってきます。最近、話題になっていることに、「ゆるい職場」問題があります。あなたの会社は大丈夫でしょうか。大事なのは新人を含む、若手社員たちとの関係。どう接し、どう育てるべきか。今回は特にコロナ禍以降に社会人になった世代に注目し、調査結果などの情報を踏まえ考えていきます。
若手社員を企業の有効な戦力に育て上げるためにも、ぜひお読みいただけたらと思います。
テレワークをものともしない、2020年入社組の強さ
この3年間に企業に入社してきた社員は、多かれ少なかれ、コロナ禍の影響を受けざるを得なかった世代です。その中でも注目すべき世代は、2020年4月の入社組です。まさに「コロナ第一世代」ともいえます。
企業によって異なると思いますが、入社式もなく、研修はリモート。そして、いきなりのテレワーク・・・という名の出社待機を命じられた新人は少なくないはず。「孤独だったのではないだろうか」と心配してしまいますが、この世代は実は、とても頼もしい世代でもあったのです。
その実態が如実にわかるのが、公益社団法人 全国求人情報協会が行った「2020年卒 新卒者のテレワーク実態調査リリース」です※。
(※)調査期間:2020年10月16日~11月13日/調査方法:インターネット調査/調査対象:2020年新卒者のうち、新卒入社予定の企業・団体等に入社した人671名
回答者のうち実際にテレワーク/在宅勤務を経験した人は、389人(58.4%)と半分以上でした(有効回答数666人)。やはり過半数の人がテレワークを経験していました。
●2020年新卒者のテレワーク/在宅勤務経験
「テレワークできなかった理由」としては、1位が「テレワークできる業務ではなかった」(73.2%)と、2位の「テレワーク環境が整備されていなかった」(9.0%)を圧倒的に上回っており、もしテレワーク可能な業務なら、経験者の比率はもっと上がっていたと思われます。
テレワークは、転職・離職の大きな理由にはなっていない
テレワークへのネガティブな印象のひとつに、「自宅で一人孤独に仕事」「企業の組織から孤立」といったイメージがあります。それが転じて、若手社員が転職・離職する原因のひとつになっているのではないかという懸念がありました。
しかしテレワークは、今のところ転職・離職の大きな原因ではないと思われます。先に挙げた公益社団法人 全国求人情報協会の調査で、「入社後の転職意向」という質問も行っていますが、興味深い調査結果が出ています。
●テレワーク/在宅勤務経験有無別就業意識
テレワーク未経験者の転職志向が36.2%と1/3を超えていたのに対し、テレワーク経験者が26.5%と約1/4に減少しています。テレワークによって孤独感を深め、それで会社を辞めてしまうということは、少なくとも2020年組では少数派であることがわかります。
それを裏付けるデータもあります。「今後もテレワーク/在宅勤務を利用するか」という問いに対しても、「利用したい」が51.6%と過半数を占め、「利用したくない」は、わずか12.3%にとどまりました。この世代は、むしろ積極的にテレワークを活用しようとしていることがわかります。
●2020年新卒者の今後のテレワーク/在宅勤務の利用希望
考えれば2020年入社組以降は、「Z世代」の中でも「デジタルネイティブ」と呼ばれ、IT機器を使いこなしながら成長してきた世代でもあります。先の調査での上司や先輩社員とのコミュニケーションについての質問にも、半数近くが「Teamsなどの社内コミュニケーションツールやチャットで常時、相談・会話」(47.8%)と回答しており、想像以上に円滑な報・連・相を行っていたことがわかりました。つまり「テレワーク」と親和性の高い世代であり、そういう点ではむしろ、「頼りになる世代」とも考えられます。
「石の上にも三年」ということわざ通り、2020年入社組も今年4月から企業人として4年目に入ります。つまり、社員として企業の業績に大きく貢献できるキャリアに差し掛かってきました。ある意味、たくましさを持った世代ともいえるので、上司や先輩社員は躊躇することなく、彼らの力を頼ってみるものいいでしょう。
2020年から22年に入社した若手、さらには今年入社の23年組は「Z世代」と呼ばれ、どちらかというと「挑戦することよりも、失敗回避を選ぶ」傾向の強いジェネレーションだといわれています。しかし彼らの能力を信頼し、しっかりとサポートしつつ任せてみることが、若手社員を育てる方法だと言えるでしょう。
◎本コラムのバックナンバーで「Z世代」をご紹介しています。あわせてお読みください。
「ゆるい職場」にご注意。転職・離職を促す大きな要因に・・・
若手社員の転職・離職について、深刻な問題になっているのが、「ゆるい職場」です。最近、新聞やテレビなどで取り上げられることも多いので、ご存じの方も多いと思います。
「ゆるい職場」とは、企業内におけるハラスメントを危惧するあまり、若手社員への指導が優しくなりすぎること。また、ブラック企業というイメージの定着を恐れ、若手社員への仕事の負荷を少なくすること。そんな職場の状況から、若手社員が「厳しく指導してもらっていない自分は、このままでは成長できないかも」という不安を感じ、転職・離職を促す要因の1つとなっているのです。
ではどうすれば、「ゆるい職場」という印象を持たせないようにできるのか。ここで間違ってはいけないのは、「ゆるい職場」問題の本質は「職場の雰囲気」ではなく、若手社員の自己実現にあるということです。
人材紹介事業を行っているUZUZ(ウズウズ)が、今年の2月28日に公開した調査結果によると、実はZ世代の6割は、「ゆるい職場で働きたい」という意向を持っていることがわかりました。「働きたくない」「どちらかといえば働きたくない」は、4割強で、敢えて言えば少数派となります。
つまり「ゆるい職場」に嫌気がさして転職を考える人は、世代的な傾向とは反対に、仕事を通じ自身のスキルアップを求めるタイプではないかと察せられます。そういう意味では、むしろ鍛えがいのある人達ともいえるでしょう。このようなタイプには、自分が会社から学び、成長していけるという実感を与えることが、大きなカギとなります。
【調査リリース】Z世代の「やりがい」に関する意識調査/第二新卒・既卒の60%近くが「ゆるい職場で働きたい」と回答
たとえば、社内横断的な若手社員だけのプロジェクトチームを作り、本業に関わるテーマを与えて研究開発させることで、自分のキャリアアップを実感させるといった方法が考えられます。
もちろん日常業務では、しっかり指導する時は指導し、時にはしっかりと褒め、若手社員でも企業に貢献できることを実感させる必要があります。そして達成感を共有することで、会社に対するエンゲージメントを向上させ、長年にわたって会社に貢献してくれる優秀な社員に育ってくれるのです。
お互いがお互いを、必要以上に恐れないことが大切
「最近の若手を、どう扱えばいいのだろうか」「上司や先輩と、どう接すればいいのだろう」・・・このような悩みは、今に始まったことではありません。50年前には50年前の同様の悩みがあり、20年前には20年前の同様の悩みがありました。
若手に対し「自分には、全く理解できない世代だ」と思ったことがある人も、たぶん昔、上の世代からいわれてきたのではないでしょうか。現在の悩みに特異性があるとすると、IT技術などに対する理解力の差かもしれません。しかし本当に重要なのは、お互いがお互いを必要以上に恐れないこと。
上司・先輩のみなさん、「仕事終わりに一杯誘ったら、イヤな顔をされるかな?」なんていわず、一度は誘ってみませんか。案外、一緒に来てくれるかもしれません。もし断られたら、あっさり引き下がればよいだけ。声を掛けないより、よほどいいのでは?そして仕事については、時に大胆に任せてみるのもいいかもしれません。
会社なので、年齢や役職に上下があるのは当たり前です。ただ人間としてお互いを尊重し合い、よりよい職場・企業を作っていきたいですね。
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