- 公開日:2024年12月16日
会社のデータを守るバックアップとは?具体的な手法や重要なポイントを紹介
現代のビジネスでは、データは企業にとって欠かせない貴重な資産となっており、確実に保護することが求められています。しかし、自然災害やサイバー攻撃、操作ミスによるデータ消失リスクが増しており、万全なバックアップ体制の構築が重要です。
本記事では、バックアップが必要な理由やバックアップにおすすめのストレージ、企業がバックアップを導入する際のポイントについて紹介します。
バックアップとは
バックアップとは、データの破損や消失に備えて、重要な情報を事前に複製し、別の安全な場所に保管しておく仕組みのことです。パソコンやサーバ、スマートフォンといった機器に保存されているデータを、外部のハードディスクやクラウドストレージにコピーすることで、万が一のデータ消失に備えることができます。
企業にとって、情報は「人・物・金」に次ぐ「第4の経営資源」ともいわれ、重要性が高まっています。そのため、データが消失した場合には、単なる業務の停止にとどまらず、法的リスクや取引先・顧客からの信頼喪失といった重大な問題が発生する可能性があります。このような背景から、バックアップの重要性が企業で再認識され、関心が高まっています。
データバックアップが必要となる背景
ここでは、企業がデータをバックアップするべき4つの理由について紹介します。
従業員などによる操作ミス
従業員や委託業者などの不手際による操作ミスによって、企業の重要なデータが消失してしまうことがあります。
例えば、委託した事業者がハードディスクの増設作業中に、新しいディスクのフォーマットをすべきところ、誤って旧ディスクを初期化し、そこに保存されていたデータを全て失ってしまうといったケースも発生しています。
一度消失したデータの完全復旧は難しく、重要な情報が戻らないことも多々あります。さらに、委託先に賠償を求めても、契約内容や規約によっては補償が受けられない場合もあります。このような背景から、企業においてはバックアップの必要性が改めて見直されています。
ランサムウェア感染などのサイバー攻撃
ランサムウェアは、感染した端末内のデータを暗号化し、復旧のために身代金を要求する手口で、攻撃を受けた企業がデータにアクセスできなくなるケースも多々あります。バックアップが行われていなかったり、バックアップデータが攻撃に巻き込まれたりした場合、データの復旧ができずに重大な損失を被ることがあります。
特にクラウドストレージを活用する企業では、バックアップデータがサイバー攻撃の影響を受けないよう、アクセス制限などの対策が重要です。こうしたサイバーリスクが高まるなか、企業には万一の事態に備えたデータ保護がますます求められています。
ランサムウェアの脅威や対策方法については以下の記事で詳しく解説しています。
関連記事:ランサムウェア対策に不可欠なバックアップ|クラウド活用で確実に情報を守る!
BCP対策
BCP(事業継続計画)とは、地震や台風などの自然災害、火災、サイバー攻撃といったリスクが発生した際に、企業が中核となる事業を中断せず、または早期に復旧させるための計画を指します。この計画は、被害を受けた拠点や工場の代替施設・要員の確保、データのバックアップ、指揮系統の確認、社員の安否確認を含む初動対応や復旧目標などを事前に定め、事業停止などの経営リスク軽減を図ることを目的としています。
特に、データのバックアップはBCPの要となる要素です。バックアップを怠ると、重要なデータが消失し、事業の継続が困難になる恐れがあります。また、バックアップデータをマスタと同じサーバやデータセンターに保存している場合、災害時に同時に被災するリスクがあります。そのため、地理的に離れたデータセンターやクラウドサービスを活用することで、リスクの軽減につながります。
BCP・DRとバックアップについては以下の記事で詳しく解説しています。
関連記事:BCP・DR対策とバックアップ|災害時に事業を確実に継続させるために必要なこと
SaaSの利用拡大にともなうデータ消失のリスク
近年、メールやグループウェアなどのオフィスアプリをクラウド上で利用するSaaSの普及が進んでいます。その一方で、マルウェアによるセキュリティ被害やユーザーの誤操作、クラウド上のデータ損傷といったトラブルも増加しているのが現状です。
SaaS環境では、クラウド事業者とユーザーの責任範囲を明確にする「責任共有モデル」が採用されており、インフラの管理はクラウド事業者側が担当しますが、データのバックアップはユーザー側の責任範囲となります。そのため、ユーザー自身がデータ保護の対策を講じる必要があります。
特にMicrosoft 365のような統合型オフィスアプリケーションサービスでは、データが複数のサービスに分散して保存されているため、バックアップやリストア時に注意が必要です。
SaaSデータのバックアップについて以下の記事で詳しく解説しています。
関連記事:SaaSデータのバックアップ、とれていますか?必要性と導入のポイントを解説!
バックアップの種類
バックアップには、データの取得期間や方法に応じて大きく4つの種類があり、これらを組み合わせて使用することで、効率的かつ効果的にデータを保護できます。
ここでは、バックアップの種類について詳しく紹介します。
フルバックアップ
フルバックアップとは、システム内の全てのデータを丸ごと複製するバックアップ手法です。ファイルやフォルダ、設定情報など、全ての要素が対象となります。復元時には一度の操作で完全なデータ復旧が可能なため、手間が少なく済みます。
しかし、バックアップ作業には時間がかかり、保存先のストレージ容量も多く必要とする点がデメリットです。そのため、フルバックアップは定期的に実施し、他のバックアップ手法と組み合わせて運用することが一般的です。
差分バックアップ
差分バックアップとは、前回のフルバックアップ以降に変更されたデータだけを保存するバックアップ手法です。フルバックアップと最新の差分バックアップがあれば復元が可能で、全ての変更を短時間で元に戻すことができます。
差分バックアップは、フルバックアップと比べて保存データの容量を減らせるメリットがありますが、更新が重なるにつれてバックアップファイルのサイズが増加しやすい点が特徴です。定期的なフルバックアップと組み合わせることで、効率的なバックアップ運用が可能になります。
増分バックアップ
増分バックアップは、前回のバックアップ以降に変更されたデータのみを保存する手法です。バックアップにかかる時間が短く、ストレージ容量の節約も可能ですが、復元時には全ての増分バックアップが必要となり、手間がかかることがあります。
フルバックアップは全てのデータを対象にし、差分バックアップは最後のフルバックアップ以降の変更を保存しますが、増分バックアップは直前のバックアップとの変更点のみを保存する点が特徴です。増分バックアップは、定期的にフルバックアップと組み合わせることで、効率的なデータ保護を実現できます。
永久増分バックアップ
永久増分バックアップは、差分バックアップと増分バックアップのメリットを取り入れたバックアップ手法です。最も古い増分バックアップとフルバックアップを合成し、フルバックアップのデータを更新します。これにより、最新のデータを効率的に保持しながら、バックアップサイズを抑えることができます。
他のバックアップ方法と比べ、ストレージ容量の節約と管理の手間を軽減できるため、定期的に大規模なフルバックアップを取る必要が少ない点が特徴です。
企業のバックアップにおすすめのストレージとは?
ここまで、バックアップについてさまざまなポイントを踏まえて紹介しましたが、実際にどのようなストレージを使用したらよいのでしょうか。ここでは、企業がバックアップを行う際におすすめのストレージを紹介します。
外付けHDD・SSD
外付けHDDとSSDは、データのバックアップだけでなく、データの保存において広く利用されているストレージデバイスです。
HDDはIT黎明期から長年使用されており、USB接続で手軽に利用できるのが特徴です。バックアップデータを保存したパソコンが故障しても、他のパソコンでデータの復元が可能です。また、2ドライブ内蔵のモデルであれば、一方が故障しても他方にデータが保持されるため、信頼性が高まります。ただし、HDDは熱や衝撃に弱い点に注意が必要です。
一方、SSDはHDDよりも耐久性が高く、高速な読み書き性能を持つのが特徴です。そのため、データの転送やアクセスが迅速に行えます。しかし、SSDはHDDに比べて価格が高い傾向にあります。データのバックアップ方法として、HDDとSSDの特性を理解し、用途や予算に応じて適切なデバイスを選択することが重要です。
ネットワークHDD(NAS)
ネットワークHDD(NAS)は「Network Attached Storage」の略で、LANを介してネットワーク接続できるHDDです。通常のHDDがUSB接続なのに対し、NASは複数のパソコンからアクセス可能で、社内でのデータ共有やバックアップに役立ちます。
NASには複数台のHDDが内蔵されていることが多く、そのうち一部が故障してもデータを保持し、運用を継続できる信頼性の高さが特徴です。ただし、NASは社内に設置されるため、災害時にはパソコンと同様に被災リスクがある点に注意が必要です。バックアップを効率的に管理したい場合、NASは便利な選択肢ですが、災害対策としては他の手段との併用が望ましいでしょう。
クラウドサービス
クラウドサービスを利用したバックアップは、データをクラウドプロバイダーの提供するストレージに保存する方法です。拡張性の良さや利便性、コストの面などから、バックアップデータの保存先として、クラウドサービスを利用するケースが増えています。また、企業がストレージを管理する必要がないため、専門人材を配置する必要がないことから、導入がしやすい点も人気のポイントです。
さらに、クラウドサービスは冗長化構成により、複数の地理的に分散したデータセンターにデータを保存できます。これにより、災害や障害で一部の施設が利用できなくなった場合でも、他のデータセンターでデータが保護されるため、事業継続性を確保できます。インターネットさえあれば、どこからでもアクセスでき、遠隔地からのデータ復元が可能であるため、災害対策としても有効です。
企業での運用が難しい場合は、IT運用を外部委託できる「マネージドサービス」を活用することで、専門家の支援を受けながら安定した運用が可能になります。
バックアップ導入時のポイント
企業がバックアップを導入する際には、どのような点を考慮して計画を立てるとよいでしょうか。ここでは、重要なポイントを3つ紹介します。
バックアップの目的を明確にする
バックアップを効果的に行うためには、まずその目的を明確にすることが重要です。目的が不明確なままでは、どのデータをどの頻度でバックアップすべきか判断が難しくなり、適切な対策が取れません。
例えば、自然災害やサイバー攻撃、人的ミスなど、想定されるリスクに応じてバックアップの方法や頻度は異なります。そのため、保護すべきデータやサーバを特定し、各データの重要度や特性の把握が必要です。
さらに、RPO(目標復旧時点)やRTO(目標復旧時間)などの目標値を設定することで、復旧の範囲や時間を明確にし、効率的なバックアップ戦略を策定できます。これらのステップを踏むことで、企業はデータ保護の体制を強化し、万が一の事態にも迅速に対応できるようになります。
管理体制の設計および維持
バックアップデータの管理体制を設計し、維持することは、復旧作業をスムーズに行うために欠かせません。復元作業を担当する社員や責任者をあらかじめ特定し、役割を明確にしておくことが重要です。また、総務省や内閣府のガイドラインでも、情報セキュリティポリシーにバックアップの方法や頻度を組織内のルールとして明確に記載することが推奨されています。
もし自社での設計や維持が難しい場合は、マネージドサービスの活用も有効です。BCP(事業継続計画)対策として、異なるデータセンターやクラウドサービスを利用することでリスクを分散でき、さらにサービスによっては、24時間365日のサポートを受けられるため、万が一の時にも迅速な対応が可能になります。
社員教育の実施
社員教育を通じて、データバックアップの重要性を全社的に認識させることは、企業のセキュリティレベル向上に直結します。IT担当者が担当する共有データのバックアップに加え、個々の社員が管理するデータについても、各自でバックアップを行う必要があるケースも多くあります。そこで、社員にバックアップの方法や保存先を明確に指示し、定期的な教育を実施することが重要です。
社員教育を通じて、各自がバックアップを行う意識を高めることで、バックアップの習慣化を図り、リスクの分散につなげられます。これにより、全社的なセキュリティ体制が強化され、データ保護に対する意識も高まるでしょう。
まとめ
本記事では、バックアップが必要な理由やバックアップにおすすめのストレージ、企業がバックアップを導入する際のポイントについて紹介しました。
現代のビジネス環境において、情報は企業の重要な資産であり、その保護には万全の体制が求められています。特にデータバックアップの重要性は年々高まっており、不測の事態にも備えたデータ保護が必須です。
オプテージは、クラウドサービス「オプテージ コネクティビティ クラウド・ストレージ(OCCS)」を提供しております。安価で大容量のストレージに加え、データ転送料も無料で、膨大なデータを扱うバックアップに最適なクラウドサービスです。個人情報保護法をはじめとする日本の法律と規制に準拠しており、最新のセキュリティ対策を講じているため、安心してご利用いただくことが可能です。
また、「梅田北データセンター」は、免震構造や災害対策設備を備えたオプテージが保有するデータセンターで、利便性と安全性を両立しています。梅田北データセンターと各クラウドをダイレクトに接続するネットワークエクスチェンジを活用することで、社内のオンプレミスサーバとクラウドサービスを活用したハイブリッド環境を利用することも可能になります。
バックアップについてお悩みのことがありましたら、ぜひオプテージまでお気軽にご相談ください。
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