フィジタルとは?現実とデジタルの融合が生み出す新たな価値を解説

フィジタルとは?現実とデジタルの融合が生み出す新たな価値を解説

「フィジタル」とは、現実とデジタルの融合を指し、技術発展によりオンラインとオフラインの境界が曖昧になっている現象です。
新型コロナウイルスの影響もあり、今まで実店舗で物品を購入していた人が、オンラインで買い物を済ませるケースも増えました。
また、フィジタルの概念はマーケティングにも用いられ、現実とデジタルの要素をかけ合わせた体験を消費者に提供する企業も増えてきました。
今回はフィジタルの概要をはじめ、企業での実施事例やNFTとの連動など幅広く紹介します。

Contents

フィジタルとは

フィジタルとは

フィジタルは「Physical(フィジカル)」と「Digital(デジタル)」をかけ合わせた造語です。概念としては現実とデジタルの融合を指しており、マーケティング用語では双方を合わせた購買体験を消費者に提供する意味として使われます。

フィジタルの範囲は広く、飲食店での注文や支払いを自身のスマートフォンで行ったり、乗り物の運転や操縦をバーチャル空間でシミュレーションしたりといったことも、フィジタルによる体験といえるでしょう。

また、似たような用語に「人間拡張」があります。テクノロジーを使って人間の能力や知覚を拡張させる技術のことを指しており、パワーアシストスーツやロボットの遠隔操作、VRやARなどが代表例です。

どちらもリアルとデジタルがかけ合わさる点では共通していますが、フィジタルは体験、人間拡張は技術を指しているものだととらえておきましょう。

人間拡張について詳しく知りたい方は、人間拡張とは?基礎知識やビジネスモデルの事例を紹介をご覧ください。

フィジタル体験に注目が集まる理由

フィジタルへの注目度が高まっている背景には、顧客の購買体験の変化があります。消費者が購買に至るまでの変化や、昨今のマーケティング戦略についてみていきましょう。

購買体験の変化

これまでの購買行動は顧客が実店舗を訪れて商品を購入していましたが、近年はオンライン上で購入するケースも増えてきました。

総務省統計局が発表した「2022年 家計消費状況調査 ネットショッピングの状況」によると、2022年の二人以上の世帯におけるネットショッピング利用世帯の割合は52.7%となっており、新型コロナウイルスの影響が少ない2019年に比べると9.9ポイント高くなっています。

インターネット検索やSNSなどから情報を得て、そのままECサイトなどのネットショップで購入する人は年々増加しているのです。

デジタルとリアルを合わせた戦略

購買行動の変化に合わせて、企業のマーケティング戦略も以前とは異なるものが誕生しています。

例えば顧客との接点を増やし、販売促進につなげるための戦略として「オムニチャネル」を実践する企業も増えてきました。実店舗だけでなく、ECサイトやSNSといった複数のメディアを活用し、パーソナライズされた情報提供が可能となったため、顧客にシームレスな購買を促せるようになったのです。

また、販売チャネルの一つとして、SNS・動画共有サービスなどを活用して商品紹介から購買までを促す「ライブコマース」に取り組む企業・店舗もあります。

実店舗へ行く手間を省き、写真や動画など没入感のあるコンテンツを顧客に提供して購入につなげるという一連の流れも、フィジタル体験といえるでしょう。このように、フィジタル体験はユーザーにとっての利便性を高めながらも企業の利益につなげられるため、さまざまな業界で注目が集まっているのです。

フィジタル体験を提供するメリット

フィジタル体験の提供は、企業にとって大きなメリットをもたらす可能性を秘めています。

例えば、自分事のように感じられるフィジタル体験を通じて、顧客はブランドやサービスなどとのつながりをより強く感じるようになるかもしれません。また、ライブコマースのようにオンライン上で双方向のやりとりを行えば、顧客から好印象を持たれる要因の一つとなるでしょう。

このほか、デジタルコンテンツの提供によって顧客の情報を得られるケースもあり、パーソナルな情報を分析することでより良いサービス提供に役立てられます。

もちろんどういったコンテンツを提供するかが重要ですが、企業はフィジタル体験によって利益拡大やブランディング、サービスの質向上などを図れるでしょう。

フィジタルの具体例

フィジタル体験はショッピングの場で使われるイメージを持つかもしれませんが、私たちの身近なところに数多くあります。

シーン フィジタル体験の例
お店 スマートフォンでQRコードを読み取り、注文・決済を行う
学習 ARやVRを活用し、体験的な学習を行う
医療 オンライン通話などで遠隔地から診療・治療を行う、VRを使った治療シミュレーション
娯楽 ARやVRを使ったライブやコンサート、旅行の疑似体験、ゲームなど
生活 AIやIoTを活用したスマートホーム(自動掃除機、スマートロック)、ARを使ったインテリアのシミュレーションなど
宿泊 ホテルのデジタルチェックイン、キーレスエントリーなど

このほか、SNSユーザーが登録した居住地や年齢、性別などを元にターゲティング広告を出すこともフィジタルの例として挙げられます。

フィジタル体験は幅広いものがありますが、こうしたテクノロジーによって新しい体験や価値を顧客に提供するものとしてとらえておくと良いでしょう。

フィジタル体験提供のために知っておくこと

フィジタル体験提供のために知っておくこと

業界を問わずさまざまなシーンで活用できるフィジタルですが、実際に取り組む際は具体的なロードマップを描いておくことが大切です。

例えば、自社の商品やサービスを整理するだけでなく、顧客の行動や価値観を分析し、どうすればフィジタル体験として提供できるのかを戦略的に考える必要があります。

そして、フィジタル体験を提供する場合は、複数のメディアを運用したりライブ配信を行ったりしてみるのも良いでしょう。飲食店の場合、ライブ配信で店内を紹介しながら動画内にリンクを設置すれば、興味を持った視聴者はスムーズに席の予約ができます。

企業のフィジタル実施事例

すでにフィジタル体験を提供している企業は数多くあります。アパレルや自動車業界など業界別の実施事例を以下にまとめました。フィジタル体験の提供を検討している企業はぜひ参考にしてみてください。

アパレル業界

アパレル業界はフィジタルとの親和性が高く、デジタルとリアルと融合させたさまざまなサービスを展開しています。

例えば、3Dレンダリングを活用した試着コンテンツ。ユーザーはスマートフォンのカメラを自身の足にかざすことで、AR技術による靴のバーチャル試着が可能となりました。スマートフォンの画面上で靴の質感を確かめられるほか、色味の変更ができるのは嬉しいポイントでしょう。

また、時計やイヤリング、メガネといった装飾品をバーチャル上で試着できるサービスもあり、ユーザーは店舗に足を運んだり着替えたりする手間がなくなり、試着から購入までスムーズに行えます。

美容業界

近年はバーチャルでヘアスタイルを確かめられるサービスも開発されています。

ヘアスタイルに関する悩みでは、美容室で希望のイメージがうまく伝わらず「思い通りの髪型に仕上がらなかった」とがっかりする人は少なくないでしょう。その点、髪型を事前にシミュレーションできれば、イメージと仕上がりのギャップが小さくなり、顧客満足度の向上につながります。

このほか、バーチャル上でメイクを試せるサービスを展開している企業もあります。自社で展開している化粧品をユーザーに試してもらい、サービス上で商品購入まで促しているのは、フィジタルの代表例といえるでしょう。

自動車業界

約60兆円もの市場規模を誇る自動車業界でも、フィジタル体験を提供する動きが見られます。

例えば、VR技術を使った試乗体験。VRゴーグルを装着したユーザーは、車内の質感や雰囲気だけでなく、走行中の様子も体感できます。

また、自宅の車庫に車を停めた場合のイメージを画面上で確認できるサービスや、新商品発表会をメタバース上で行う企業も現れ、顧客の購買につながる取り組みが展開されています。

インテリア業界

これまで、自宅に家具を設置しようと思っても、購入前にサイズや雰囲気などが合うかどうかは確かめにくいものでした。しかし、インテリア業界ではシミュレーションサービスが開発され、ユーザーは室内の写真を撮影することで家具を設置した場合の様子を確かめられるようになったのです。

ほかにも、3Dシミュレーターで自宅の間取りや枠組みを作成し、気になる家具をバーチャル空間上に配置できるサービスもあります。

実際に販売されている家具を使ってインテリアを考えられ、気に入ったものがあれば画面上で購入できるため、ユーザーの満足度と企業の利益につなげることが可能です。

NFTとフィジタルの連動も

ブロックチェーンを基盤に作られた非代替性トークン「NFT」も、フィジタル体験に関わりがあります。

NFTはデジタルデータが持つ価値を資産として証明する技術であり、現在の所有者だけでなく、これまでの所有者の変遷を証明することが可能です。この技術を使い、ゲーム内のアバターなどに着せるデジタルファッションが「ウェアラブルNFT」として高価格で取引されることもあります。

そして、近年はNFTのタグがついた服を現実世界で購入することで、同じ服をバーチャル空間のアバターに着せられるなど、デジタルファッションが現実世界とリンクする事例も増えてきました。

NFTはアートやアパレルをはじめ、ゲーム、観光、農業などの分野でも活用されており、市場規模は今後もさらに大きくなるでしょう。

まとめ

まとめ

現実とデジタルの融合技術は以前から存在していましたが、最近になって「フィジタル」という用語が登場したことで、その利用への関心が一層高まっています。特にAIをはじめARやVRなどの技術の発展はめざましく、これまで以上に現実世界とデジタル世界がシームレスにリンクするようになりました。

この記事で取り上げたように、ファッションや自動車業界などでフィジタル体験の提供に取り組む企業が増え、この流れはますます広がっていくことでしょう。ぜひ今後の動向にも着目してみてください。

◎製品名、会社名等は、各社の商標または登録商標です。

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著者 OPTAGE for Business コラム編集部

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